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原根健太の徹底解説!スタンダード・アナライズ
第17回:『ファウンデーションズ』が築く新時代の基盤と多種均衡のスタンダード環境
皆さんこんにちは。原根健太(@jspd_)です。
本稿は『ファウンデーションズ』リリースを受けてのスタンダード環境に関する記事になります。現在ストアチャンピオンシップやチャンピオンズカップファイナル予選の開催期間中で、スタンダードシーズン真っ只中といったところでしょうか。今回はそういった皆様の一助となれるよう『ファウンデーションズ』環境を徹底解説します!
次世代の基盤を担う『ファウンデーションズ』
『ファウンデーションズ』は単なる新セットではありません。スタンダード環境における「基盤」として導入された新たな試みであり、このセットは少なくとも2029年まで、つまり約5年間使用することができます。
マジックには従来「基本セット」と呼ばれる枠組みが存在しました。初心者向けのわかりやすいカードデザインを中心とする、まさにマジックの基本的な位置付けとなるセットです。しかしながら、様々な事情から『基本セット2021』を最後にしばらくリリースが無く、今回の『ファウンデーションズ』は約4年ぶりとなる基本セットのリリースとなりました。
ちなみに従来の基本セットは翌年に新たな基本セットが発売されるまでの1年でローテーションが発生していましたが、今回の『ファウンデーションズ』は5年間使用可能ということで、かなりの長期に渡ってスタンダードシーンを形成する土台となります。収録されているカードは今はまだ出番が無くとも5年という期間があればどこかで活躍する可能性が出てきますので、カードプールの把握には余念がないようにしましょう!
基本セットの系譜を継ぐにあたり、カードデザインは初心者向けのものが多いです。キーワード能力も丁寧に説明されていたり、複雑な能力を持つカードは稀少度の高いものに絞られる傾向にあります。こうした事情から、構築フォーマット事情としては「このセットのカードを中心にデッキを構築する」というよりは「他のセットのカードを中心にデッキを構築し、その周りを支えるカードをこのセットから採用する」流れになるかと思います。まさに基盤です。
そして基盤の中にはこの5年間フルに働いてくれそうな、過去に実績のある定番カードも多くあります。昨年スタンダードのローテーションが2年から3年へ拡大する変更が行われましたが、この『ファウンデーションズ』はそのさらに上を行く期間使用が可能となるため、これらのカードとは長い付き合いになることでしょう。
『ファウンデーションズ』環境のスタンダードデッキ
さて、ここからは実際に『ファウンデーションズ』がリリースされて以降のスタンダードデッキを追いかけていきたいと思います。
前回の『ブルームバロウ』リリース時の執筆の際は直近のイベントだった「ジャパンオープン2024」の結果を基にご紹介しました。今回はMagic Online上で開催されているイベントを基に紹介します。Magic Onlineでは毎日のように数十人が参加するトーナメントが開催されており、中には349名が参加したイベントもありました。分析の対象としては十分だと言えるでしょう。
まずは執筆時点の直近1週間(11/17~11/24)のイベント結果を集計します。集計対象のイベントは以下の通りです。
- 11/17 Standard Challenge 参加者:78名
- 11/18 Standard Cahllenge 参加者:90名
- 11/19 Standard Challenge 参加者:95名
- 11/21 Standard Challenge 参加者:62名
- 11/22 Standard Challenge 参加者:76名
- 11/23(1回目) Standard Challenge 参加者:45名
- 11/23(2回目) Standard Challenge 参加者:46名
- 11/24 Standard Challenge 参加者:81名
- 11/23 Standard Showcase Challenge 参加者:349名
上記7大会のトップ8を集計した結果、以下の通りとなりました。
入賞者数 | アーキタイプ |
---|---|
17 | 赤系アグロ(赤単7、グルール6、ボロス4) |
15 | ディミーア・ミッドレンジ |
10 | ゴルガリ・ミッドレンジ |
8 | カワウソ・コンボ |
7 | 白単コントロール |
5 | 版図ランプ |
10 | その他(※) |
※アゾリウス・テンポ2名、アゾリウス眼魔/ジェスカイ召集/ディミーア・コントロール/シミック・テンポ/ジャンド・ミッドレンジ/黒単ミッドレンジ/ディミーア・リアニメイト/ウラブラスク・コンボ各1名
アグロ・ミッドレンジ・コントロール・コンボ・ランプと、スタンダードでメジャーなアーキタイプが満遍なく複数回入賞しており、綺麗なバランスを保っています。ローテーション期間が3年に伸びたことで現在のスタンダードは非常にパワフルなカードに溢れていますが、この状態でバランスが保たれているのは本当に凄いことです。
それでは、各デッキ順を追って掘り下げていきましょう。
赤系アグロ(赤単、グルール、ボロス)
17 《山》 4 《岩面村》 -土地(21)- 4 《熾火心の挑戦者》 4 《心火の英雄》 4 《僧院の速槍》 4 《多様な鼠》 4 《叫ぶ宿敵》 4 《雇われ爪》 -クリーチャー(24)- |
4 《稲妻の一撃》 4 《巨怪の怒り》 4 《噴出の稲妻》 3 《魔女跡追いの激情》 -呪文(15)- |
2 《石術の連射》 3 《陽背骨のオオヤマネコ》 4 《塔の点火》 3 《歪んだ忠義》 3 《ウラブラスクの溶鉱炉》 -サイドボード(15)- |
5 《山》 4 《銅線の地溝》 1 《不穏な尾根》 2 《岩面村》 4 《ソーンスパイアの境界》 4 《カープルーザンの森》 -土地(20)- 4 《熾火心の挑戦者》 4 《心火の英雄》 2 《探索するドルイド》 4 《多様な鼠》 4 《叫ぶ宿敵》 4 《僧院の速槍》 -クリーチャー(22)- |
4 《巨怪の怒り》 4 《稲妻の一撃》 2 《蛇皮のヴェール》 2 《弱者の力》 4 《噴出の稲妻》 2 《薮打ち》 -呪文(18)- |
2 《毒を選べ》 2 《脚当ての陣形》 3 《塔の点火》 2 《亭主の才能》 3 《焦熱の射撃》 1 《蛇皮のヴェール》 2 《探索するドルイド》 -サイドボード(15)- |
4 《感動的な眺望所》 3 《眠らずの露営》 1 《騒々しい移動遊園地》 9 《山》 4 《戦場の鍛冶場》 -土地(21)- 4 《熾火心の挑戦者》 4 《精鋭射手団の目立ちたがり》 3 《叫ぶ宿敵》 4 《僧院の速槍》 4 《雇われ爪》 -クリーチャー(19)- |
2 《破片魔道士の救出》 4 《ボロスの魔除け》 4 《巨怪の怒り》 4 《噴出の稲妻》 4 《稲妻波》 2 《稲妻のらせん》 -呪文(20)- |
1 《叫ぶ宿敵》 1 《真紅の鼓動の事件》 4 《邪悪を打ち砕く》 3 《善意の騎士》 1 《抹消する稲妻》 3 《塔の点火》 2 《稲妻のらせん》 -サイドボード(15)- |
このデッキタイプは『ファウンデーションズ』のリリースにより最もわかりやすく強化されました。特にボロスのカラーリングは3種の火力呪文を獲得し、スタンダードでは久しいバーンのような動きも可能になっています。
《ボロスの魔除け》のあるボロスは直接火力を多めに採用したバーン型のリストになることが多いですが、赤単とグルールはいわゆる果敢型のリストがメインです。バーン型も結果は出ていますが、現状は果敢型の方が優勢ですね。
『ブルームバロウ』によって獲得したハツカネズミギミックが非常に強力で、わずか数ターンで凄まじいダメージを叩き出します。この強力過ぎる攻めが「クリーチャーを放置する」という選択肢を許さず、それゆえ環境に存在するあらゆるデッキが軽量除去呪文の採用を余儀なくされており、間違いなく環境を定義するデッキとなっています。
赤系アグロが環境の筆頭という認識は赤系アグロ同士でも共通認識で、ミラーマッチで引けを取らないためにも《叫ぶ宿敵》のメインボード採用が一般化されており、このカードは対赤のゲームにおいて無類の強さを誇ります。そのため赤系アグロだけではなく、対赤のメタカードとして、アグロ以外のデッキがサイドボードに採用し始めているほどです。
グルールのバージョンではこのカードと相性の良い《薮打ち》も採用されており、前環境から存在するデッキではありますが直近のメタゲーム事情に合わせて少しずつチューンナップが施されています。
ディミーア・ミッドレンジ
4 《闇滑りの岸》 2 《噴水港》 4 《グルームレイクの境界》 3 《島》 3 《不穏な浅瀬》 4 《沼》 1 《地底街の下水道》 3 《地底の大河》 -土地(24)- 4 《大洞窟のコウモリ》 4 《遠眼鏡のセイレーン》 3 《永劫の好奇心》 4 《フェアリーの黒幕》 2 《止められぬ斬鬼》 3 《フラッドピットの溺れさせ》 1 《マネドリ》 1 《黙示録、シェオルドレッド》 2 《分派の説教者》 -クリーチャー(24)- |
2 《苦痛ある選定》 3 《切り崩し》 2 《悪夢滅ぼし、魁渡》 2 《幻影の干渉》 3 《喉首狙い》 -呪文(12)- |
2 《強迫》 2 《否認》 1 《悪意ある覆い隠し》 2 《ギックスの命令》 1 《悪夢滅ぼし、魁渡》 1 《苦痛ある選定》 2 《黙示録、シェオルドレッド》 1 《除霊用掃除機》 2 《ティシャーナの潮縛り》 1 《三歩先》 -サイドボード(15)- |
前セット『ダスクモーン:戦慄の館』にて《永劫の好奇心》と《悪夢滅ぼし、魁渡》を獲得し飛躍的な進化を遂げたディミーア・ミッドレンジ。『ファウンデーションズ』のカードは1枚も採用されていませんが、その分『ダスクモーン』のカードが10枚近く採用されており、直近で人気の出たアーキタイプです。
メインデッキから手札破壊・除去・打ち消しといった幅広い戦略を有しており、どの相手に対しても柔軟に戦うことができる万能さがあります。前述の通り現在はありとあらゆるデッキタイプが結果を収めている都合、対応力の高さは十分過ぎるほどデッキの売りになっています。
ゴルガリ・ミッドレンジ
4 《ラノワールの荒原》 1 《魂石の聖域》 4 《花盛りの湿地》 4 《眠らずの小屋》 5 《森》 6 《沼》 1 《噴水港》 -土地(25)- 4 《ラノワールのエルフ》 4 《苔森の戦慄騎士》 2 《腐食の荒馬》 3 《グリッサ・サンスレイヤー》 4 《ドロスの魔神》 2 《名もなき都市の歩哨》 1 《分派の説教者》 -クリーチャー(20)- |
4 《不浄な別室 // 祭儀室》 4 《喉首狙い》 2 《苦痛ある選定》 2 《切り崩し》 2 《強迫》 1 《大渦の脈動》 -呪文(15)- |
1 《強迫》 2 《羅利骨灰》 2 《切り崩し》 1 《ギックスの命令》 2 《除霊用掃除機》 1 《無力化》 2 《締めつける瘴気》 1 《向上した精霊信者、ニッサ》 1 《大渦の脈動》 1 《ビビアン・リード》 1 《黙示録、シェオルドレッド》 -サイドボード(15)- |
ディミーア同様ミッドレンジにカテゴライズされますが、デッキの方針はまったく異なります。ディミーアが打ち消し呪文を扱いながら「対戦相手を縛って押さえ込む」ような動きをするのに対し、ゴルガリは「力でねじ伏せる」タイプのデッキです。《グリッサ・サンスレイヤー》《ドロスの魔神》《不浄な別室 // 祭儀室》といったパワーカードをふんだんに取り揃え、除去されようが打ち消されようがどれか1枚残れば勝つ力強さを表しています。
『ファウンデーションズ』からは《ラノワールのエルフ》を獲得し、マナ加速を行えるようになりました。従来のゴルガリ・ミッドレンジは3マナ域にどのクリーチャーを採用するか議論が発生するほどこのマナ域が渋滞しており、なおかつ強力なカードが揃っていました。《分派の説教者》《止められぬ斬鬼》《名もなき都市の歩哨》《グリッサ・サンスレイヤー》《不浄な別室 // 祭儀室》。どれも4枚投入されていても不思議ではなく、贅沢な悩みでした。一方で2マナ域は《苔森の戦慄騎士》は素晴らしいものの、次点の《大洞窟のコウモリ》や《腐食の荒馬》はやや物足りず、複数枚採用するのは考えもの、3マナ域の面々と比べると見劣りしてしまうのは否めませんでした。《ラノワールのエルフ》はこれら2マナ域を選択することなく、強力な3マナ域に直通させることのできるクリーチャーです。すんなりとこのデッキに採用されたのも頷けるでしょう。
さらに万能パーマネント除去として《大渦の脈動》を獲得しました。この枠はこれまで《羅利骨灰》が使われており、このカード自体も優秀で悪くないカードなのですが、《大渦の脈動》の方がメインボードの採用に向いているように思えます。
主な用途であるクリーチャーに向けてのプレイは1マナ軽く、そして何より同一名称のカードを展開されていた場合アドバンテージをもたらす可能性があります。基本的にどのデッキも強力なカードは複数枚投入する傾向があり、同一名称のカードが並ぶ展開は珍しくありません。またこのカードが存在することにより展開の抑止になったりと、思っているよりも影響度の高い1枚です。
1点注意点として、このカードの同一名称破壊は自分のパーマネントにも影響するため、特にミラーマッチでは自分側に被害が出ないように気を付けてプレイしましょう。また《不浄な別室 // 祭儀室》のような部屋カードは開いている扉側のカード名のみ持つという特殊な動きをするので、部屋の開け方にも注意を配る必要があります。
カワウソ・コンボ
2 《尖塔断の運河》 2 《島》 2 《カープルーザンの森》 1 《山》 4 《森》 4 《銅線の地溝》 4 《植物の聖域》 2 《ヤヴィマヤの沿岸》 -土地(21)- 3 《永劫の活力》 4 《稲妻罠の教練者》 3 《渓間の洪水呼び》 -クリーチャー(10)- |
2 《イクサランへの侵攻》 4 《薮打ち》 4 《咆哮する焼炉 // 蒸気サウナ》 1 《トーテンタンズの歌》 4 《嵐追いの才能》 4 《この町は狭すぎる》 4 《塔の点火》 2 《豆の木をのぼれ》 4 《希望の種子》 -呪文(29)- |
2 《解剖道具》 2 《雑草学の指導者》 2 《脚当ての陣形》 2 《轟く機知、ラル》 2 《軽蔑的な一撃》 2 《逆棘芽の農家》 2 《除霊用掃除機》 1 《否認》 -サイドボード(15)- |
スタンダードでは時折目を見張るようなコンボデッキが出現しますよね。少し前の《事件現場の分析者》ランプはそれに該当し、このデッキは『ニューカペナの街角』の《斡旋屋一家の潜伏先》などがローテーション落ちしてしまったことで構築できなくなりました。またしばらくはそうしたデッキを見ることは無いのだろうと思っていたのですが、なんと早速出ました。このカワウソ・コンボはスタンダードにおける無限コンボデッキです。世のデッキビルダーは本当に凄い。我々にいつも夢と興奮を与えてくれます。このデッキも非常にユニークな動きをしますので、簡単にですが紹介します。
このデッキは最終的に無限コンボを達成しますが、コンボ達成のためには4枚のカードが必要です。《永劫の活力》《渓間の洪水呼び》《嵐追いの才能》《この町は狭すぎる》が該当します。手順は以下の通り。
①召喚酔いしていないクリーチャー(このデッキの場合カワウソかネズミ)と《嵐追いの才能》を用意する。
②《永劫の活力》と《渓間の洪水呼び》を戦場に並べる。
③永劫の能力で場のカワウソたちからマナを出し、《この町は狭すぎる》を唱え、自分の《嵐追いの才能》を戻す。
④非クリーチャー呪文を唱えたことで洪水呼びが誘発。戦場のカワウソたちがアンタップする。
⑤手札に戻した才能をプレイ。戦場のカワウソたちがアンタップする。
⑥才能のクラスレベルを2に上げ、墓地の狭すぎるを回収する。
③~⑥を繰り返すことで場のカワウソたちが《渓間の洪水呼び》で強化されていき、なおかつ《この町は狭すぎる》で少しずつ相手のブロッカーが減っていくので、最終的に致死量のダメージが出ます。
基本的には8マナを継続的に生み出せる状態が作れればループが成立しますので、召喚酔いしていないカワウソたちが4体以上戦場にいればループに入れます。ただしこれはコンボルートの1例に過ぎず、それ以外にもパターンがいくつもあり、ここでその手順について書き出すともはやカワウソ・コンボだけの記事になってしまうため割愛します。かなり難しいデッキなので使いたい場合は要練習です。
4枚コンボかつ場にあらかじめクリーチャーが必要になるのでコンボ達成までには時間が必要です。《塔の点火》や《咆哮する焼炉 // 蒸気サウナ》のような除去呪文や、《この町は狭すぎる》を時間稼ぎに使用し、後々回収してコンボに向かうことになります。
コンボパーツがどれもそこそこの性能を持っており、コンボデッキの割にはコンボ以外でも十分戦うことができるのがこのデッキの強みでもあります。
白単コントロール
18 《平地》 4 《噴水港》 3 《沈んだ城塞》 -土地(25)- 4 《永劫の無垢》 1 《ミストムーアの大主》 4 《跳ねる春、ベーザ》 -クリーチャー(9)- |
4 《世話人の才能》 4 《人参ケーキ》 4 《軍備放棄》 4 《失せろ》 2 《魂の仕切り》 2 《大天使エルズペス》 4 《太陽降下》 2 《忠義の徳目》 -呪文(26)- |
3 《領事の権限》 2 《加護をもたらす戦乙女》 4 《エルズペスの強打》 2 《悪魔祓い》 3 《安らかなる眠り》 1 《別行動》 -サイドボード(15)- |
《軍備放棄》登場以降、形を変えながら環境に存在し続けている白単コントロール。打ち消しを使う青系のコントロールが下火な現在、コントロールに分類される唯一のメジャーなデッキタイプかもしれません。
現在の白単コントロールは『ブルームバロウ』で追加された《世話人の才能》を中心にした構造になっており、《人参ケーキ》や《噴水港》でアドバンテージを得ていきます。『ダスクモーン:戦慄の館』で追加された《永劫の無垢》は追加のアドバンテージ源として安定感の上昇に大きく寄与しています。
『ファウンデーションズ』からの追加にサイドボードの《領事の権限》があります。見たままの通り赤系アグロへの対策として非常に優秀で、速攻クリーチャーのタップインとライフゲインのどちらもゲームに寄与します。特筆すべきは《ウラブラスクの溶鉱炉》に対する強さで、コントロール系デッキは同カードに何度も苦汁を舐めさせられてきました。赤系アグロは他にアーティファクトを一切採用していないのにアーティファクト破壊を用意せざるを得ない不利な対策を要求されがちだったのですが、この《領事の権限》があればもうそんな心配は不要です。一度プレイしてしまえば相手の溶鉱炉は途端にこちらにとってのライフゲイン装置に早変わり。
さらに凄いのが、アーティファクト破壊カードでの対策と異なり、このカードは1枚プレイしてしまえば相手の2枚目以降の溶鉱炉をすべて無力化できます。1マナと軽いのも素晴らしく、1枠の変更ではありますがマッチアップの影響度は非常に大きいと言えるでしょう。《領事の権限》は今後も白いコントロールデッキでよく見る赤系アグロ対策となりそうです。
版図ランプ
3 《平地》 3 《ハッシュウッドの境界》 2 《森》 4 《魂の洞窟》 2 《迷路庭園》 4 《草萌ゆる玄関》 2 《行き届いた書庫》 2 《薄暗い裏通り》 2 《フラッドファームの境界》 1 《島》 1 《沼》 -土地(26)- 4 《ホーントウッドの大主》 3 《ミストムーアの大主》 3 《フラッドピットの大主》 4 《永遠の策謀家、ズアー》 -クリーチャー(14)- |
4 《豆の木をのぼれ》 4 《力線の束縛》 2 《群れの渡り》 2 《別行動》 2 《巻物変容》 2 《太陽降下》 4 《失せろ》 -呪文(20)- |
2 《否認》 4 《領事の権限》 3 《エルズペスの強打》 1 《ドッペルギャング》 2 《安らかなる眠り》 3 《脚当ての陣形》 -サイドボード(15)- |
もうこの連載の中で何度版図ランプのことを取り上げてきたことでしょうか。本当に息が長いデッキで、トーナメントシーンで長期に渡り活躍し続けています。ローテーションによりデッキの軸となるカードを奪われ、もうだめかと思われた中でも度重なるチューンナップで生き残ってきました。
『ダスクモーン:戦慄の館』で得た《ホーントウッドの大主》はこのデッキが失った要素の中でも特に大きい3色サイクリング土地(《スパーラの本部》など)をカバーする《偏在地》トークンを生み出します。また他の大主含め《豆の木をのぼれ》の誘発要素が増え、失われたばかりではなく強化された要素もあります。
また短所を塞ぐのではなく長所を伸ばせとはよく言われるものですが、この《永遠の策謀家、ズアー》もその教えに沿うカードです。版図ランプは例に漏れずアグロデッキの高速展開に弱く、メインデッキから《エルズペスの強打》や《一時的封鎖》を大量に投じるチューンも珍しくありません。しかしこういったチューンを行ってしまうとこれらが有効でない相手に不利を被ったり、せっかくマナが伸びても何もすることがないなどの状況に陥ったりします。ランプデッキですべてに対応しようとすることは非常に困難です。
そんな中ズアーは「デッキの長所を生かしつつアグロ相手にも勝ちに行けるカード」です。このカードは対象のエンチャントを呪禁と絆魂付きでクリーチャー化させるのですが、このデッキには10枚の大主と4枚の《力線の束縛》があり、マナを踏み倒して最速4ターン目に巨大な絆魂クリーチャーを戦場に繰り出すことができます。またズアーでクリーチャー化した大主は攻撃時の能力もきちんと使用可能という完璧な噛み合いを見せており、非常にパワフルな動きを実現します。
デッキ自体はバントカラーを主体として構築されているため黒マナの発生にやや難がありますが、《ホーントウッドの大主》に加え、《群れの渡り》《魂の洞窟》および少量の諜報土地でなんとか運用をカバーしています。
そしてこのデッキのサイドボードにもやはり《領事の権限》。既に白いコントロールデッキでは定番化しています。またこのカードの採用に合わせて《一時的封鎖》の採用を取りやめているのにも注目です。自分への影響が出てしまうため、《別行動》など別種の全体除去に切り替わっています。《太陽降下》では間に合わない相手も多いですからね。《審判の日》という選択肢もありますので、今後メタゲームに応じて使い分けが生じていくことでしょう。
大主リリース後は版図ランプも構成を大きく変化させており、かつてデッキの看板だった《偉大なる統一者、アトラクサ》や《怒りの大天使》は姿を消し、《群れの渡り》も数を減らしました。長く存在するデッキタイプではありますが、環境に合わせて適応、変化し続けていますね。
今回はここまで。いかがでしたでしょうか?3年のローテーションに加え5年使用可能な『ファウンデーションズ』が追加されたことでスタンダードのカードプールはいよいよ広大なものとなりました。様々なデッキタイプが入り乱れ、結果を残しています。使用できるカードが多いということは、それだけ可能性の追求が行えるということですので、ぜひ自分の気に入ったデッキタイプを追求してみてください。
それではまた次回。
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