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週刊デッキ構築劇場
第55回:浅原晃のデッキ構築劇場・心の想像構築
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週刊デッキ構築劇場
2012.04.02
第55回:浅原晃のデッキ構築劇場・心の想像構築
演者紹介:浅原 晃
マジック界のKing of Popとして知られる、強豪プレイヤーにして、デッキビルダー・ライター。主な戦績は、世界選手権05・世界選手権08トップ8、グランプリ優勝2回、The Finals2連覇など。
「構築戦はビルダーの舞踏会。タキシードでないデッキはジャージ」といいつつ、時に斬新なデッキを持ち込み、時にトップメタのデッキを使うという虚実入り交じった発言で人々を惑わせる『A級の虚影(エーツー)』。
ゴブリンデッキに《怒りの天使アクローマ》を投入するなどの柔軟な発想から海外でもカルトなファンが多く、また、構築・リミテッドを問わず見せる高いプレイスキルから国内プロからの信頼も厚い。・・・が、虚構も多いので、虚構を虚構と見抜ける人間でないと浅原のアドバイスを受けるのは難しいと言われている。
代表作は、自身のビルダーとしての原点という「アングリーハーミット・ゼロ」、荒堀 和明のグランプリ・仙台優勝によって世間の注目を集めた「アサハラ・ゾンビジム」、ヴァージョン6まで存在する勝ち手段の存在意義を問うた問題作「みのむしぶらりんしゃん」、God of the Deck略して「G.o.D.」、Wander Deck「The One」他多数。
※注意 役に立ちません
構築と心
デッキを構築するものは何かと聞かれれば、それは、心であると思う。好き嫌い使いたい強そう弱そう、そんなもろもろのカードに対する思い、マジックに対しての心のあり方がそのままデッキとなる。一番好きなデッキは何ですか? そんな質問にはっきりと答えられるだろうか。好きなデッキ、その心の造形と言えるものを見れば、その人となりが分かると言ってもいいかもしれない。
今回は構築の精神の原点である純粋な心、既成概念に縛られない心での構築というものを考えていきたいと思う。
まず、今のスタンダードを軽く見てみると、「闇の隆盛」が出てから2ヶ月ほど経ち、環境もまとまってきた感がある。そして、現在は《秘密を掘り下げる者》を使ったデッキが一つ抜けた環境になってきた。
このクリーチャーに私から一言を贈るなら「チョーウザイんですけどぉぉ」だ。1ターン目にひょっこり出てきて、3/2飛行に変身、マナリーク、バウンス、瞬唱、マナリーク、バウ......。おい! ということで、まずは純粋なる心のままにスタンダード構築は無視したいと思う。
ともあれ、気分は次のセット「アヴァシンの帰還」である。そう、あのプロモーションムービーをご覧になっただろうか? 《ヴェールのリリアナ》が出てきて、《スレイベンの守護者、サリア》が《獄庫》をぶっ壊して〈アヴァシン〉と〈グリセルブランド〉が出てくるというあれだ。今回の舞台となるイニストラードの世界観の面白さは段違いで、《獄庫》を巡る戦い、そのストーリーと取り巻くキャラクターの数々は物語を鮮烈に彩っており、知っていて損はないと思う。チェックしていない人はぜひいろいろとチェックしてほしい。
その「アヴァシンの帰還」、4月28日からプレリリースが始まることにはなっているが、それも、まだ先、今は情報も全く出ていない状態(4月9日からプレヴューが始まる予定)である。
となると今は「アヴァシンの帰還」について考えても意味はないのだろうか? それは否である。「先んずれば人を制す」という言葉があるように、早く動き考えたことそれ自体が財産になることだろう。いや、むしろ、「アヴァシンの帰還」のデッキ構築は始めようと心が思った瞬間にそこから始まっているとさえいえる。そう、デッキは心で作るもの、もはや、カードすら時には必要はないのかもしれない。
何を言ってるのか分からないという人も居るかもしれないが、今回はテンションが完全に「アヴァシンの帰還」に持っていかれたので、「アヴァシンの帰還」によって今後の環境がどう変わっていくのか、というところまで、勝手に独自予想して斬りこんでみたいと思う。
デーモンと私
「アヴァシンの帰還」の最大の見所は何か? と言えば《獄庫》を巡る戦いだ。
《獄庫》は既に「闇の隆盛」でカード化されているカードではあり、「アヴァシンの帰還」ではそれの破壊が発端となって物語が発展する。そして、その中に居るキャラクター、大天使アヴァシンと悪魔グリセルブランドの解放が今回の鍵の一つになっている。
大天使アヴァシンは悪魔など不浄の者を狩るためにソリンが生み出した存在だ。それに対して、〈グリセルブランド〉は悪魔を閉じ込めるために作られた《獄庫》の上に立つといった挑発を行い、そして、〈アヴァシン〉と幾日かの壮絶な戦いの後に相打ちとなった。
これは、かなりカッコイイ話で、〈アヴァシン〉は勿論として、それと双肩を成した〈グリセルブランド〉は相当やる奴であろうというのが分かるのではないだろうか。個人的にはこのデーモンには超期待しているといっても過言ではない。むしろ信奉者。
そして、その期待はこの2体の主要キャラクターがカード化されるであろうということにもつながる。この世界のカードや神話レアはトップダウンデザインが云々とマロー(Mark Rosewater)が言っていたので、多分間違いないのではないだろうか。というか、善悪のミケウスを2回も出してるくらいだから、これは鉄板に違いない。
となれば、この2体の主要キャラクターはどれだけ強いのかという話になってくるだろう。やはり、強さはもっとも気になるところではあるからだ。そこで、考えたのが「静けさの後にビッグハリケーン」現象だ。
これは、ゼンディカーブロックを思い出して貰えば分かると思うが、ゼンディカーでちょっと微妙なプレインズウォーカーがちんまりしていたところから、突如ワールドウェイクで超サイヤ人《精神を刻む者、ジェイス》が出現といった現象などが挙げられる。神の登場には、助走である静けさがあることも多い。
〈グリセルブランド〉はデーモンである、そして、静けさといえば、「闇の隆盛」の神話レアのデーモン枠《束縛の刃、エルブラス》の裏の人であろう。静けさで言えば、もはや出てきたことを見たことが無いレベルであり、裏の人の名前が思い出せないプレイヤーも多いのではないだろうか。もちろんこれに関しては何故か私も思い出せない。つまり、これは超期待できるということではないだろうか。天使枠も《大天使の光》だったことを考えると、かなり期待してもいいだろう。
「アヴァシンの帰還」は大型エキスパンションであり、今後のメタゲームを大きく変える可能性がある。停滞は良くないが、変化はすばらしい、実に心躍る現象の一つだ。
〈グリセルブランド〉はデカイ、強い、悪いであろう。そして、こいつでデッキを作りたい。ということを踏まえて「アヴァシンの帰還」以後のこれから先の予想されるメタゲームの流れを記しておきたいと思う。
Tier1
- 「グリセル・デーモンズ」
- 「カウンターグリセル」
- 「グリセルポッド」
- 「ゾンビグリセル」
- 「アヴァシン・エンジェルス」
Tier2
- 「アングリー・ノーグリセル」
- 「白青人間」
- 「虫人間(Delver)」
- 「ケッシグ」
- 「ナヤ殻」
- 「青黒コントロール」
概ね、このような感じになるだろう。やはり、グリセルブランド勢強しといったところだろうか。
Tier1は、グリセルブランド勢が占めることになるので少し解説していこう。
まず、オーソドックスなのが「グリセル・デーモンズ」だ。〈グリセルブランド〉を筆頭に各種デーモンを使ったこのデッキは圧倒的攻撃力と盤面に対する制圧力がある。ただ、どのデーモンもやはり重いという欠点があるので、カウンターデッキには少し弱いという欠点がある。〈グリセルブランド〉を引けたときの爆発的シナジーは魅力だが、勝ちすぎというのもやはり欠点に数えられるだろう。
その、カウンターに弱いという欠点を突いたのが「カウンターグリセル」だ。青黒コントロールの亜種である、このデッキは従来のフィニッシャー枠であった《墓所のタイタン》や《聖別されたスフィンクス》に割って入る形で、〈グリセルブランド〉が収まることになった。「グリセルデーモンズ」に強いのはもちろんだが、前述した2つの鉄板フィニッシャーの座を奪取したことは賞賛に値するだろう。
また、アグレッシブデッキの詰めに使う形で「ゾンビグリセル」も台頭した。こちらはビート型であり、ゾンビのスタイルが「カウンターグリセル」に強いという利点がある。これらのデッキが三つ巴となってメタゲームに在住している状態が序盤のメタゲームだ。
しかし、個人的に推したいのは「グリセルポッド」だ。こちらは、デッキリストを見ていただこう。
8 《島》 4 《沼》 1 《森》 4 《闇滑りの岸》 4 《水没した地下墓地》 3 《埋没した廃墟》 -土地(24)- 4 《危険なマイア》 3 《幻影の像》 3 《大建築家》 2 《宝物の魔道士》 4 《真面目な身代わり》 4 《ファイレクシアの変形者》 1 《先駆のゴーレム》 1 《ヘイヴングルの死者》 1 《血の贈与の悪魔》 2 《ワームとぐろエンジン》 2 〈グリセルブランド〉 1 《虐殺のワーム》 1 《深淵からの魂刈り》 1 《ルーン傷の悪魔》 -クリーチャー(30)- |
4 《心なき召喚》 2 《出産の殻》 -呪文(6)- |
デーモンは基本的にコストが高く、その戦闘力が高い。となると、うってつけなのがコストを一気に軽くできる《心なき召喚》だ。「青黒.《心なき召喚》」に《出産の殻》を加えた変形デッキであるこのデッキは、あらゆる角度で各種デーモン、そして、〈グリセルブランド〉にアクセスできる。
また、《幻影の像》や《ファイレクシアの変形者》を多く取っているため、伝説のクリーチャー、当然、〈グリセルブランド〉や〈アヴァシン〉に強い構造になっている。相殺という行為そのものが優秀な除去として機能するためだ。また、各種サブコンボ、《ヘイヴングルの死者》と《危険なマイア》と《心なき召喚》、《ルーン傷の悪魔》と《幻影の像》などなども状況に応じて使っていくことができる。
ただ、これらのデッキに欠点があるとしたら、デーモンを強烈にメタった純白の天使軍団、戦慄のアンチテーゼ「アヴァシン・エンジェルス」になってくるになるだろう。
デーモン狩りに特化したこのデッキは、Tier1のデッキに対して強烈な力を発揮し、3分で全てのデーモンを狩れるだけの力を持っているデッキだ。しかし、グリセルブランド勢も黙って見ているわけではない、それに呼応したかのように〈グリセルブランド〉を使用しないといった圧倒的発想の転換、カードパワーを犠牲にした「アングリー・ノン・グリセル」が誕生することとなり......。
☆教訓:少しは既成概念に縛られた方がよい。
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