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週刊デッキ構築劇場
第53回:鍛冶友浩のデッキ構築劇場:《信仰無き物あさり》
読み物
週刊デッキ構築劇場
2012.03.19
第53回:鍛冶友浩のデッキ構築劇場:《信仰無き物あさり》
演者紹介:鍛冶 友浩
『世界のKJ』。世界的な認知度の高いデッキビルダーであり、現在はトーナメントシーンの一線を退いてはいるが、多くの練習とレベルの高い理論により、数々のプレイヤーから信頼を得ている。
スクラップ&ビルドを繰り返し、練習時に欠点を洗い出した上で、独創的な方法で克服した練度の高いデッキを構築することから、『欠点の破壊者(クラックスミス)』の二つ名がある。
主な戦績は、プロツアー・チャールストン06優勝・世界選手権05トップ4を含むプロツアートップ8入賞3回、グランプリ・北九州05優勝など。代表作は、Rage against the Machine・セプターチャント(北九州の形はモリカツ型と呼ばれるが、メインの構築者は鍛冶)・ストラクチャー&フォース他多数。
現在、mtg-jp.comにて火曜日に『鍛冶友浩の「デジタル・マジック通信」』を週刊連載中。
「闇の隆盛」が発売して約1月が経ち、プレイヤー間のカード評価もだいたい固まってきたのではないだろうか?
個人的なこのセットNo1カード《未練ある魂》が、事前の予想通りに幅広くカードが使われることを嬉しく思う。
反面、もう一枚の注目カードであった《信仰無き物あさり》の使用率はいまだ低く、予想が外れた気がして残念に感じているところだ。
《未練ある魂》は、プロツアー・闇の隆盛におけるJon Finkelの「Delver-Spirits」での活躍だけでなく、
5 《島》 1 《平地》 1 《沼》 4 《金属海の沿岸》 4 《闇滑りの岸》 3 《氷河の城砦》 2 《進化する未開地》 2 《ムーアランドの憑依地》 -土地(22)- 4 《秘密を掘り下げる者》 4 《瞬唱の魔道士》 3 《幻影の像》 4 《ドラグスコルの隊長》 2 《地下牢の霊》 -クリーチャー(17)- |
4 《ギタクシア派の調査》 1 《はらわた撃ち》 4 《思案》 4 《蒸気の絡みつき》 2 《マナ漏出》 1 《神への捧げ物》 1 《存在の破棄》 4 《未練ある魂》 -呪文(21)- |
1 《幻影の像》 2 《地下牢の霊》 2 《外科的摘出》 2 《はらわた撃ち》 1 《啓蒙》 1 《天界の粛清》 1 《神への捧げ物》 1 《存在の破棄》 1 《マナ漏出》 1 《否認》 1 《雲散霧消》 1 《四肢切断》 -サイドボード(15)- |
先週末にインディアナポリスで開かれたレガシーのグランプリでも優勝デッキに4枚入っていたことで、フォーマットを問わない実力の持ち主であることも明らかになった。
2 《島》 1 《平地》 1 《Karakas》 1 《沼》 3 《Tundra》 3 《Underground Sea》 1 《Scrubland》 4 《溢れかえる岸辺》 2 《湿地の干潟》 3 《汚染された三角州》 1 《市長の塔》 -土地(22)- 3 《瞬唱の魔道士》 4 《石鍛冶の神秘家》 1 《ヴェンディリオン三人衆》 -クリーチャー(8)- |
4 《渦まく知識》 2 《思案》 1 《呪文嵌め》 4 《剣を鍬に》 2 《思考囲い》 2 《コジレックの審問》 1 《対抗呪文》 1 《直観》 4 《未練ある魂》 1 《名誉回復》 3 《Force of Will》 1 《梅澤の十手》 1 《殴打頭蓋》 3 《精神を刻む者、ジェイス》 -呪文(30)- |
3 《外科的摘出》 2 《呪文貫き》 1 《青霊破》 1 《暗黒破》 1 《コジレックの審問》 1 《解呪》 1 《盲信的迫害》 2 《非業の死》 1 《Force of Will》 1 《仕組まれた爆薬》 1 《饗宴と飢餓の剣》 -サイドボード(15)- |
そして実は、《未練ある魂》は翌年のスタンダードを占う環境と言われているイニストラード・ブロック構築でも猛威をふるっている。
《イニストラードの君主、ソリン》と共に《無形の美徳》の恩恵を受け、単体除去の効かないクリーチャーデッキとしてメタゲームの中心のアーキタイプとして意識されている。
現に、この週末に行われたMagic OnlineのプレミアイベントのTop8の半数のプレイヤーがメインボードに4枚の《未練ある魂》を積み、その対策として大量の《死の支配の呪い》が搭載される、という事態になっている。
ISD Block Premier(Magic Online Constructed ISD Block Constructed Event #3567575)
この強さはひとえに、墓地から唱えられる、フラッシュバックという能力から来ていると考えられる。
普通に呪文を唱えらて墓地に行ったのか、そうでないのかは問わないので、《未練ある魂》はスタンダードで《思考掃き》といった相棒を見つけ、レガシーではなんと《直観》と一緒に使われて、カード1枚で都合8体のトークンを生み出している!
では、なぜ同じ「闇の隆盛」に収録された、赤い《入念な研究》こと《信仰無き物あさり》は、フラッシュバックを持つのに使用率が低いのだろうか。
よくよく考えると、過去の《神秘の指導》や《獣群の呼び声》、帰ってきた必須サイドボードの《古えの遺恨》に《天啓の光》、現役の《堀葬の儀式》も、前回の構築劇場で扱われた《追跡者の本能》にも、いずれも共通して使われる明確な理由があった。
それは唱えるだけでカードアドバンテージに繋がるということ。
たしかに《信仰無き物あさり》は唱えると手札を1枚失い、フラッシュバックしても損を取り返すことはできない。
これでは《槌のコス》を使うような赤いデッキに何も考えずに入れるなんてことをしても、引きすぎた《山》を処分するのに困らなくなるだけで、カードのポテンシャルを引き出すことには繋がらないだろう。
《チャンドラのフェニックス》や《燃え上がる憤怒の祭殿》といったカードとのシナジーはあるが、青いデッキの《熟慮》とは違い、赤マナが出るだけでは使いこなせない、非常にクセのあるカードなのだ。
そんな中、《信仰無き物あさり》を非常にうまく使ったデッキがプロツアーに現れた。
殿堂プレイヤーでもあるRaphael Levyが構築してきたのは、懐かしのリアニメイト!
6 《森》 1 《平地》 1 《山》 4 《剃刀境の茂み》 4 《銅線の地溝》 4 《黒割れの崖》 2 《闇滑りの岸》 1 《根縛りの岩山》 -土地(23)- 4 《極楽鳥》 4 《アヴァシンの巡礼者》 1 《ラノワールのエルフ》 2 《業火のタイタン》 2 《ワームとぐろエンジン》 4 《大修道士、エリシュ・ノーン》 -クリーチャー(17)- |
4 《信仰無き物あさり》 4 《根囲い》 4 《追跡者の本能》 4 《未練ある魂》 4 《堀葬の儀式》 -呪文(20)- |
1 《最後のトロール、スラーン》 2 《ワームとぐろエンジン》 2 《核の占い師、ジン=ギタクシアス》 1 《墓場の浄化》 4 《古えの遺恨》 3 《天啓の光》 2 《記憶の旅》 -サイドボード(15)- |
今回はこれを参考に、新しくデッキを構築してみたい。
このデッキの本質は、《信仰無き物あさり》から《大修道士、エリシュ・ノーン》を墓地に送り、《堀葬の儀式》で釣り上げること。
それ以外のカードは、極端に言えばデッキの潤滑油にすぎない。
《極楽鳥》らマナサポートはデカブツを通常通り唱えることを視野にいれての採用で、《業火のタイタン》と《ワームとぐろエンジン》も《大修道士、エリシュ・ノーン》の追加という見方が正解だろうか?
この《極楽鳥》らマナクリーチャーに頼っているために、《はらわた撃ち》などの軽量除去の的になってしまうことが欠点でもあると感じる。
ところで、現在のスタンダードには、補助的な手段を用いて大型クリーチャーを戦場に出す、という同じようなコンセプトの、《心なき召喚》デッキがある。
8 《島》 3 《沼》 4 《闇滑りの岸》 4 《水没した地下墓地》 4 《埋没した廃墟》 -土地(23)- 4 《幻影の像》 4 《マイアの超越種》 4 《大建築家》 4 《宝物の魔道士》 4 《ファイレクシアの変形者》 3 《真面目な身代わり》 2 《ワームとぐろエンジン》 -クリーチャー(25)- |
4 《思案》 4 《心なき召喚》 2 《破滅の刃》 1 《喉首狙い》 1 《精神隷属器》 -呪文(12)- |
1 《真面目な身代わり》 2 《ルーン傷の悪魔》 1 《霊捕らえの装置》 3 《虚無の呪文爆弾》 2 《喉首狙い》 3 《漸増爆弾》 2 《ミミックの大桶》 1 《幽霊街》 -サイドボード(15)- |
そこで、《心なき召喚》のコンセプトとハイブリッドして作ってみたものを紹介したい。
4 《山》 3 《沼》 2 《平地》 4 《孤立した礼拝堂》 4 《黒割れの崖》 4 《断崖の避難所》 4 《進化する未開地》 -土地(25)- 3 《真面目な身代わり》 3 《業火のタイタン》 2 《虐殺のワーム》 2 《ワームとぐろエンジン》 4 《大修道士、エリシュ・ノーン》 1 《囁く者、シェオルドレッド》 -クリーチャー(15)- |
3 《太陽の宝球》 4 《信仰無き物あさり》 4 《心なき召喚》 4 《堀葬の儀式》 3 《鞭打ち炎》 3 《審判の日》 -呪文(21)- |
大量の全体除去を擁し、今のクリーチャー中心のメタゲームを強く意識した構成になっている。
動きは至ってシンプルで、2通りの手段で《大修道士、エリシュ・ノーン》や《業火のタイタン》といった大型クリーチャーを素早く出し、盤面を一掃してコントロールする。
《信仰無き物あさり》でデカブツを墓地に送って《堀葬の儀式》でリアニメイトのプランB。
それまでの時間稼ぎは《審判の日》と《鞭打ち炎》が採用されているが、いかんせん全てが大味なので、サイドボードには《感電破》のような軽量カードを取り入れるべきだろう。
気持ち良く4ターン目に《大修道士、エリシュ・ノーン》を戦場に出せたなら、クリーチャーベースのデッキには負けようがないし、たとえ除去されても後続はいくらでも!
というわけで今回はここまで。
それではまた週刊連載で!
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