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週刊デッキ構築劇場
第28回:鍛冶友浩のデッキ構築劇場・モダン環境を予習して学んだこと。
読み物
週刊デッキ構築劇場
2011.09.05
第28回:鍛冶友浩のデッキ構築劇場・モダン環境を予習して学んだこと。
演者紹介:鍛冶 友浩 『世界のKJ』。世界的な認知度の高いデッキビルダー。主な戦績は、プロツアー・チャールストン06優勝・世界選手権05トップ4を含むプロツアートップ8入賞3回、グランプリ・北九州05優勝など。 |
急遽種目の変更されたプロツアー・フィラデルフィアが終わり、新しいフォーマットであるモダンという環境がどういったものだったのかを現役のプロたちが見せてくれたわけだが、皆さんにとって驚きや、斬新だと思わせるアイディアは見つけられただろうか?
今回のデッキ構築劇場は、普段よりも実践に近い思考の過程を伝えたいと思い、Magic Onlineでモダンが始まった8/24~8/31までの一週間の記録から構成してみた。
この原稿をご覧いただく頃には、既にプロツアーのメタゲームや、活躍したアーキタイプもはっきりしているだろうし、ここで紹介するデッキの上位互換のものもあるかもしれないが、この記事を読んでもらった後に、なぜそのデッキが活躍したのかを判断する材料になってもらえたら幸いだ。
また、ここに上げるサンプルデッキはカヴァレージからの抜粋なので(モダン構築 サンプルデッキ集(英語記事「A Modern Primer」より抜粋) より)、調整期間のものとは少し違ったものになる。
☆はじまりは。
自分の週刊連載である『デジタル・マジック通信』第1回:Magic Onlineに「モダン」登場!でもお伝えしたが、8/24にモダンのトーナメントが大量に開催され始めた。
2人や8人構築ではデッキは公開されないのだが、その初日に行われたデイリーイベントの結果には世界中のプロツアー参加者達の視線が注がれただろう。(このページ右下)
事前の予想では、《雲上の座》を使った緑ベースのエルドラージデッキ「12post」が最有力とのことで、実際に4-0デッキの中にもそのアーキタイプを簡単に見つけることができた。これは黒田正城氏の「エターナルへの招待」・『モダンへの招待』編 その2に詳しい。
かのローウィン・ブロックで行われていたスタンダードでは、《苦花》の出現でフェアリー一強と言われ、『フェアリー以外はファンデッキ』という名言まで出たほどだが、それほどに「12post」はモダン環境を支配できるポテンシャルを持っているのか?
その疑問に、プレイヤー達はそれぞれのデッキを持ち寄り、手探りで環境を理解しようと必死になっていた。
当然、環境初期は参考にするデッキリストもほとんど存在せず、各プレイヤーの構築センスが問われるわけだが、これだけのカードプールで多色構築する際のマナバランスを考えるだけでも一苦労。
《雲上の座》が強いならば土地破壊が良いのでは?という安易な理由で《大爆発の魔道士》の使えるジャンドを構築するも、「12post」に対しては勝率が悪く、むしろその他のクリーチャーデッキに対してはめっぽう強かった。
その理由は、《燃え柳の木立ち》+《罰する火》のコンボを内蔵していることのようで、後から知ったが一般的な形ではなかったようだ。
2 《森》 2 《山》 2 《沼》 4 《怒り狂う山峡》 2 《踏み鳴らされる地》 1 《根縛りの岩山》 1 《血の墓所》 3 《草むした墓》 3 《竜髑髏の山頂》 4 《新緑の地下墓地》 2 《乾燥台地》 -土地(26)- 4 《朽ちゆくヒル》 2 《闇の腹心》 4 《台所の嫌がらせ屋》 2 《罰する者、ゾーズー》 4 《血編み髪のエルフ》 2 《強情なベイロス》 -クリーチャー(18)- |
4 《稲妻》 3 《コジレックの審問》 3 《思考囲い》 4 《荒廃稲妻》 2 《大渦の脈動》 -呪文(16)- |
2 《闇の腹心》 1 《強情なベイロス》 3 《トーモッドの墓所》 3 《大祖始の遺産》 4 《溶鉄の雨》 2 《魔力のとげ》 -サイドボード(15)- |
そして数ゲームをプレイして、「12post」に当たれば負け、クリーチャーデッキに当たれば勝ち。
そんな単純作業に飽き飽きし、このデッキに魅力を感じなくなった頃、青赤の《紅蓮術士の刈り痕》+《ぶどう弾》のストームとマッチアップされた。
結果は圧敗。
これはダメだと思わせてくれたのが、後手1ターン目に《思考囲い》をキャストしてコンボパーツの抜き取ったのに、返しの相手のターンにトップデック、で2ターンキルを決められてしまったことだ。(とは言っても《魔力変》や《ギタクシア派の調査》といったフリースペルの連打でたどり着かれたのだが)
さすがにこのデッキで「12post」に負ける姿が想像できなかったので、見よう見まねで青赤ストームを構築してみた。
4 《島》 4 《沸騰する小湖》 4 《シヴの浅瀬》 2 《蒸気孔》 -土地(14)- -クリーチャー(0)- |
4 《ギタクシア派の調査》 4 《思案》 4 《定業》 4 《炎の儀式》 4 《手練》 4 《捨て身の儀式》 4 《ぶどう弾》 4 《魔力変》 3 《紅蓮術士の昇天》 1 《発熱の儀式》 4 《紅蓮術士の刈り痕》 4 《煮えたぎる歌》 2 《巣穴からの総出》 -呪文(46)- |
3 《稲妻》 2 《破壊放題》 1 《払拭》 2 《否定の契約》 4 《窯の悪鬼》 2 《残響する真実》 1 《巣穴からの総出》 -サイドボード(15)- |
しかし、いざ自分で使ってみるとマリガンの多さ、そもそも土地が少なく並ばないこと、サイドボード後もメタられていることが多く、とても苦戦した。
そこで、《詐欺師の総督》+《欠片の双子》といったプランも試すも、そのままのカードバランスでは土地枚数からマナが伸びにくく、コントロール的なプレイングで相手のカードを処理しようとしても、マナソースばかりで手札が持たない。
かといって、コンボを始めようにもストームが足りなかったり、見切り発車することもままあり、自分の好みのデッキではなかった。
だが、このストームをプレイした経験から、《定業》と《思案》を使ったデッキの安定性はとても高く、無理に速度にこだわる必要は無いんじゃないか、というように考えるようになる。
そして、次に構築したのがこのアーキタイプ。
5 《島》 1 《山》 3 《蒸気孔》 4 《滝の断崖》 4 《燃え柳の木立ち》 4 《沸騰する小湖》 3 《霧深い雨林》 -土地(24)- 4 《詐欺師の総督》 4 《やっかい児》 3 《鏡割りのキキジキ》 -クリーチャー(11)- |
4 《否定の契約》 4 《思案》 4 《定業》 1 《血清の幻視》 2 《罰する火》 4 《差し戻し》 2 《炎渦竜巻》 4 《欠片の双子》 -呪文(25)- |
3 《大祖始の遺産》 1 《剥奪》 2 《罰する火》 1 《払拭》 3 《血染めの月》 2 《金屑の嵐》 1 《炎渦竜巻》 2 《粉砕の嵐》 -サイドボード(15)- |
ストームとは違い、最速キルターン数は倍の4になってはしまうが、コンボに必要なカードはたったの2枚であり、各種儀式で無理やり加速していた部分をよりユーティリティな幅広く対応できるカードに変更することができた。
環境内にあるデッキの中で、安定性という意味では一番良い選択肢だと思われたが、まだこのままではムラッ気のある初手がとても多く、手札にコンボパーツは揃っているのに妨害されてしまい勝ち切れないことが多発した。
具体的に、《鏡割りのキキジキ》や《やっかい児》では《流刑への道》や《稲妻》を構えられただけで、それらを乗り越えるのにかなりのターンをかけなければならない。クリーチャーのコンボなので、除去に対し脆いのである。
そこで、あえてコンボのパーツを最小限に、コントロール要素を最大限にした構築はできないだろうか? と考え始めることになる。
初日からデイリーイベントの結果に全て目を通していたのだが、何故か《謎めいた命令》を使ったアーキタイプが全く現れず、かといって、このカードが弱いわけがないという自信だけはあった。
そして構築したのがこの形。
6 《島》 2 《山》 2 《蒸気孔》 2 《滝の断崖》 1 《繁殖池》 4 《燃え柳の木立ち》 4 《沸騰する小湖》 2 《霧深い雨林》 -土地(23)- 4 《詐欺師の総督》 -クリーチャー(4)- |
4 《思案》 4 《定業》 3 《払拭》 4 《罰する火》 4 《差し戻し》 4 《貫く幻視の祭殿》 3 《知識の渇望》 4 《欠片の双子》 3 《謎めいた命令》 -呪文(33)- |
4 《タルモゴイフ》 4 《瞬間凍結》 3 《古えの遺恨》 4 《炎渦竜巻》 -サイドボード(15)- |
サイドボードを含めればパーミッションと言っても過言ではない枚数の打ち消し呪文に、コンボデッキらしからぬアドバンテージ獲得手段の《知識の渇望》《謎めいた命令》。そして勝ち手段は2枚コンボと、「12post」のような中速デッキを目の敵にしたような構成だ。
《払拭》の選択や、メインの除去が2ダメージ火力ということもあり、《野生のナカティル》スタートや、《タルモゴイフ》《聖遺の騎士》というZOO相手にはコントロールしきれないかもしれないが、そういった場合にはスピード勝負に出れば間にあうし、2ゲーム目以降の《炎渦竜巻》の存在も心強い。
逆に、速度で負けている青赤ストームにも《煮えたぎる歌》などの爆発力の根源を打ち消せれば勝機はあるし、最序盤さえしのげればこちらに分があるはずだ。
双子コンボ全抜きのコントロール化して相手の動きに柔軟に対応していくのか、最速を狙うかなどとプランも幅広いので、相性負けというマッチアップは少ないだろう。
また、ついでに緑マナが出ることの恩恵も最大限発揮しており、親和の面倒な《殴打囲い》や《電結の荒廃者》、《出産の殻》、そして各種マナ・アーティファクトを破壊する《古えの遺恨》と、相手の使ってくる《根絶》のようなコンボ対策の対策も兼ねて、《タルモゴイフ》を採用した。
他に、《不忠の糸》や、《仕組まれた爆薬》といったカードもサイドボードの候補なのだが、《罰する火》の効かない相手への《瞬間凍結》で15枚の枠を使いきってしまった。
モダン環境は、ビートダウンとコンボデッキ、中速コントロールが多い印象だが、あえてパーミッション寄りのコンボデッキなんてどうだろうか?
環境の速度に適しているかはプロツアーの結果次第なのでまだわからないが、《双子の欠片》コンボ+《罰する火》コンボがこの新しい環境への自分の出した答えだった。
メタゲームや環境の理解度が上がることで、今使っているデッキの改良をすることは一般的ですね。
でも、いろんなデッキを使うことでも経験値は溜まって行きますし、思いついたコンセプトは別の形で表現する方が向いているかもしれません。
新フォーマットであるモダンの魅力とはなんだろうかと聞かれたら、強すぎるカードが禁止されたことで、広いカードプールのそれぞれにチャンスが与えられていることだと思います。
僕自身すっかり魅了されたわけですが、既に流行しているレガシーとは全く違う面白さがそこにはありますね。
構築フォーマットとしてすっかり定着したように思えるモダンは、これからどうなるのでしょうか?
それではまた、週刊連載で!
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