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週刊デッキ構築劇場

第27回:伊藤敦のデッキ構築劇場?レガシーからモダンへ?

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週刊デッキ構築劇場

2011.08.29

第27回:伊藤敦のデッキ構築劇場~レガシーからモダンへ~

演者紹介:伊藤 敦

 日本マジック個人ブログ界でも屈指の人気を誇り、『まつがん』のハンドルネームで知られる。
 「役割が近いカードはできるだけ種類を分散させる事によって、よりデッキの汎用性を動きの柔軟性を獲得できる」という銀弾理論をひっさげてトーナメントを駆け抜ける『銀弾の猛進者(シルバービリーバー)』。
 代表的なデッキは、銀弾理論の存在を世間に知らしめた銀弾キスキン、レガシーでも銀弾理論が有効であることを証明し、「敗北を知りたいデッキ」として連勝を重ねた銀弾マーフォーク、「3人あわせて3-9でサンキュー」で知られるプロツアー・京都09での使用デッキ青白GAPPOを銀弾理論でリファインした銀弾GAPPOことウルトラソリューション他多数。


 8月12日。

 プロツアー・フィラデルフィア、突然のフォーマット変更

 エクステンデッドからモダンへ。それは多くのプロツアー参加者にとって、調整の日々が少なからず無駄になることを意味していた。

 そしてそれは、この私にしても例外ではない。


Caw-Blade(エクステンデッド)[MO] [ARENA]
4 《
3 《平地
4 《天界の列柱
4 《金属海の沿岸
4 《秘教の門
2 《氷河の城砦
3 《地盤の際
2 《変わり谷

-土地(26)-

4 《石鍛冶の神秘家
3 《戦隊の鷹
4 《ヴェンディリオン三人衆

-クリーチャー(11)-
4 《定業
2 《流刑への道
2 《四肢切断
4 《精神的つまづき
2 《乱動への突入
2 《謎めいた命令
4 《精神を刻む者、ジェイス
1 《饗宴と飢餓の剣
2 《殴打頭蓋

-呪文(23)-
2 《テューンの戦僧
2 《神への捧げ物
3 《瞬間凍結
3 《機を見た援軍
2 《審判の日
1 《遍歴の騎士、エルズペス
1 《ギデオン・ジュラ
1 《地盤の際

-サイドボード(15)-


 2週間をかけて調整した、プロツアーでの使用(暫定)第一候補のデッキだった。

 もちろん、今となってはこんな禁止カードだらけのデッキがモダンで再現できるはずもない。調整は白紙に戻ったのだ。だからこうして何の意味もないデッキリストを晒しているのは、「もはやありえないエクステンデッドのプロツアー・フィラデルフィア」への未練によるものだ。

 とはいえいずれにせよ、あの「環境の6割が石鍛治」と目されていた(私見)エクステンデッド環境において、この程度のデッキで十分な差別化が図れていたとは到底思えない。何せこのデッキ、どう見てもちょっと前のスタンダードと大して変わらないようなカードしか入っていない。

 そう、あのままプロツアーが行われていたら、今度こそ本当に「トップ8に石鍛治が32枚」だった可能性もあるのだ。

 だから、プロツアーへ参加する予定の、いちプレイヤーとしての意見を述べるならば。今回のフォーマット変更は、確実に環境を面白くしたと思う。

 何せ、モダンはデッキがとても多様なのだ。

 ゼンディカーのフェッチランドとラヴニカブロックのギルドランドが織り成すシナジーにより、デッキ構築の自由度は(エクステンデッドと比べて)飛躍的に高まった。

 加えて、第8版と旧ミラディン以降の(今となってはかなり昔の)カードが使用可能となったことによる、カードプールの大幅な拡張。

 これらを踏まえて、モダンについて最初に得た印象。それは、「これはレガシーに近いな」というものだった。

 禁止カードが大量にあるとはいえ、例えばZooなどはデュアルランド以外ほとんどレガシー同様のスペル構成を再現できるのだ。

 最近のカードがいかに強いかが、わかろうというものだ。

 ともあれ、そうなると当然他のデッキもレガシーのZooと遜色ないレベルのデッキパワーが求められることになる。

 しかし、そんなデッキが何もないところからそうそう出来上がるはずもない。

 ならば、まずはどこかからデッキアイデアを持ってくるしかないだろう。どこか?そう、レガシーの世界だ。


 そんなわけで、今回はレガシーで活躍する様々なデッキのコンセプトをモダンに移植するところから始めてみようと思う。 


◎マーフォーク

Silver Bullet Merfolk(モダン)[MO] [ARENA]
12 《
4 《変わり谷
4 《ちらつき蛾の生息地

-土地(20)-

4 《呪い捕らえ
4 《銀エラの達人
4 《珊瑚兜の司令官
4 《アトランティスの王
4 《メロウの騎兵
3 《呪文づまりのスプライト
1 《幻影の像
1 《ヴェンディリオン三人衆
1 《誘惑蒔き

-クリーチャー(26)-
4 《霊気の薬瓶
4 《呪文嵌め
3 《変異原性の成長
3 《四肢切断

-呪文(14)-


 モダンの長めの禁止カードリストは一見して「これがあったら環境が壊れるやばいカード」を全て網羅しているように思えるが、たまに「え、ちょっとこれ野放しにして大丈夫なの?」というカードが書いてなかったりする。

 その一つが《霊気の薬瓶》だ。

 一時期はエクステンデッドで禁止になっていたこのカードが何故今回は解禁されているのか。調整の結果問題ないと判断されたのか定かではないが、とにかく使えるものは使っておこう。

 さて肝心のデッキだが、クリーチャー陣を見ると《アトランティスの王》まで健在でまさしくレガシーと何ら変わらないラインナップである。これは期待できそうだ。

 ところがスペルの方に目を移してみると・・・


 ウィルもねぇ!スティルもねぇ!デイズもそんなに入ってねぇ!おらこんなモダン嫌だ~と思わず口ずさみたくなるような貧弱ぶりだ。《精神的つまづき》も禁止のため、やむなく《呪文嵌め》を採用している。

 もちろんこの構成では4マナ以上の呪文など到底カウンターできないのだが、普通に《差し戻し》や《謎めいた命令》を入れるくらいならいっそのこと全部無視してしまえ、と開き直って《変異原性の成長》と《四肢切断》でクリーチャー戦闘を重視している。

 《不毛の大地》の代わりに入っている《ちらつき蛾の生息地》が《変わり谷》をパンプできるのがチャームポイント。

 しかしさすがにこのスペル陣のままでは厳しいため、色を足してみるなど新しいアプローチが必要となるのかもしれない。


◎発掘

Agadeem Dredge(モダン)[MO] [ARENA]
1 《
1 《
4 《アガディームの墓所
4 《湿った墓
1 《繁殖池
1 《草むした墓
4 《霧深い雨林
4 《新緑の地下墓地

-土地(20)-

4 《面晶体のカニ
4 《臭い草のインプ
4 《ゴルガリの凶漢
4 《通りの悪霊
4 《絞り取る悪魔
3 《死体の鑑定人
1 《臓物を引きずる者
2 《変幻影魔
1 《ケデレクトのリバイアサン
1 《命運縫い

-クリーチャー(28)-
4 《壌土からの生命
4 《留まらぬ発想
4 《不可思の一瞥

-呪文(12)-


 2011年・・・モダンは禁止の炎に包まれた!《ゴルガリの墓トロール》は枯れ《戦慄の復活》は裂け、あらゆる発掘デッキは絶滅したかに見えた。しかし発掘は死滅していなかった!!

 ・・・といっても、もはやレガシーのようなメイン最速最強の理不尽なコンボデッキの姿はそこにはない。

 どちらかというと禁止の残り滓の発掘システムを使った「ちょっと強い蘇生デッキ」といった方が正しいだろう。

 キーカードとなるのはこの2種のソーサリー。連打できれば発掘と合わせてあっという間に墓地が肥える。

 このデッキでは《通りの悪霊》も単なる圧縮に留まらず、墓地で黒い生物としてカウントされる仕事が待っている。また、手札に溜まってしまった発掘カードを墓地に送り込める《変幻影魔》もいぶし銀だ。

 スタンダード時代は《不気味な発見》で無理矢理《アガディームの墓所》を拾っていたが、このデッキではナチュラルに積める《壌土からの生命》がケアしている。もっとも、緑マナの捻出には多少苦労するが・・・

 このデッキは土地破壊以外での妨害されにくさは強みだが、構造上5キルがほとんどなので速度不足を改善する必要があるだろう。《記憶の放流》や《秘本掃き》の採用を検討してもいいかもしれない。あるいは・・・

 このデッキなら《Ancestral Recall》も夢じゃないかも?


◎NO RUG

 《自然の秩序》がないよ!諦めよう!


◎親和

Affinity(モダン)[MO] [ARENA]
4 《ダークスティールの城塞
4 《ちらつき蛾の生息地
4 《闇滑りの岸
2 《空僻地

-土地(14)-

4 《羽ばたき飛行機械
4 《メムナイト
4 《信号の邪魔者
4 《大霊堂のスカージ
4 《電結の荒廃者
4 《大霊堂の信奉者
4 《闇の腹心

-クリーチャー(30)-
4 《霊気の薬瓶
4 《頭蓋囲い
4 《物読み
2 《バネ葉の太鼓
4 《オパールのモックス

-呪文(16)-

 《金属モックス》が禁止となったモダン環境で、1ターン目に2マナを出す方法は限られる。

 実用的なのはせいぜい《炎の儀式》《猿人の指導霊》と、このデッキの一番の強みである《オパールのモックス》くらいだろう。

 何故か1枚だけ禁止を免れているアーティファクト土地《ダークスティールの城塞》を使えば《オパールのモックス》の金属術は容易に1ターン目に達成できる。そこからの「1ターン目ボブ」が魅力だ。

 往年のコンボも健在。余った《オパールのモックス》を食べてよし、《大霊堂のスカージ》に接合して《悪斬の天使》を作るもよし。

 色つき呪文を安定してキャストするために今回は採用を見送ったが、やろうと思えば「8蛾土地」なんてことも出来る。《墨蛾の生息地》に《頭蓋囲い》をつければすぐに毒殺できるだろう。

 新旧ミラディンが揃ったモダンでは親和に入りうるカードは余るほど存在する。《オパールのモックス》《バネ葉の太鼓》を生かした多彩な組み合わせも親和の大きな魅力の1つだ。

 自分だけの最強の親和を、是非見つけてみて欲しい。



 いかがだっただろうか。

 もちろんモダンはレガシーの焼き直しではなく、モダンでしか存在できないデッキも多数存在する。あるいはまだ見ぬコンボデッキが爪を研いでいるかもしれない。

 今週末のプロツアー・フィラデルフィアでは果たしてどのような結果となるのか。

 プロの回答は、そして優勝するのはどんなデッキか。

 それらを楽しみにしつつ、今週はこの辺で筆を置くとしよう。

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