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週刊デッキ構築劇場
第26回:浅原晃のデッキ構築劇場・思い出のモダン焼き【現代アート】
読み物
週刊デッキ構築劇場
2011.08.22
第26回:浅原晃のデッキ構築劇場・思い出のモダン焼き【現代アート】
演者紹介:浅原 晃 マジック界のKing of Popとして知られる、強豪プレイヤーにして、デッキビルダー・ライター。主な戦績は、世界選手権05・世界選手権08トップ8、グランプリ優勝2回、The Finals2連覇など。 |
お好み焼きというのは、お好みという名前の示す通り、ある程度、自由に作れることに魅力があると思う。お好み焼き屋がトッピングを自由に選んでもらい客の手によって作らせるという手法があるのも、好みに合わせていろいろな形が作れるというのが好まれているからだと思う。
そして、モダン焼きという、関西風のお好み焼きにそばやうどんを入れたお好み焼きの一種がある。お好み焼きにそばも入れちゃおうという発想。公式に採用されたレギュレーションであるモダンで重要なのはそれだと直感的に自分は感じた。デッキの作り方というのはモダン焼きのようなものだ。
お好み焼きも食いたいしそばも食いたいとなれば、自分の好みと合理的の結合であるモダン焼きを食べればよい。デッキとして考えると、それは、最高の形と言えるだろう。面白くてさらにおいしい、それが一番なのだ。
というわけで、モダンというレギュレーションの隠された真の意味を捉えるならば、「作るのが楽しいくらいの量のトッピングのお好み焼きである」ということが言えるだろう。これがヴィンテージやレガシーだと「イタリアから食材を輸入しました」といった高級食材なので萎縮してしまうし、エクステンデッドやスタンダードではおいしいのだが牛丼屋のようにトッピングできる量が少なく好みに合わせづらい。
となると、後は、いかにして自分の好みに合わせた最高のモダン焼きを作れるかということになる。
そこで、自分のような比較的古いプレイヤーがモダンに生かせるものを考えた。それは経験、つまり、思い出だ。今までのブロックから得てきたもの、今回は、自分自身の思い出をトッピングしながらモダンという環境を焼き、現代にデッキというアートとして甦らせてみたいと思う。
それでは、思い出の材料達を紹介していこう。
■材料1-《歯と爪》
ミラディンブロックで好きなカードの一つが《歯と爪》だ。当時はすぐに勝負を決められるものは出せなかったが、今のモダン環境に置いては通せば勝ちレベルのカードにまで成長している。
《エメリアの盾、イオナ》と《絵描きの召使い》の呪文ロックや、《鏡割りのキキジキ》+《やっかい児》といった無限トークン、《メフィドロスの吸血鬼》+《トリスケリオン》の相手だけ《神の怒り》、《蒸気打ちの親分》×2のからくりブラザーズなどが考えられる。これらのカードを組み込んでいくことで、こってりとした、パンチのあるデッキに仕上がるだろう。
■材料2-《不朽の理想》
神河ブロックでもっとも好きなカードがこの《不朽の理想》。かつて、自分が世界選手権2005で使ったカードでもある。
呪文こそ唱えられなくなるものの、《ズアーの運命支配》でロックしつつ、《世界の源獣》や《ドラゴン変化》など、高コストのエンチャントを持ってきて勝利。デッキの直球のアクセントとして、心に響く味を出してくれるに違いない。
■材料3-《山賊の頭、伍堂》、《けちな贈り物》
神河ブロック構築で行われた、グランプリ・新潟2005で《けちな贈り物》のコントロールに《山賊の頭、伍堂》を組み合わせたデッキを森勝洋が使っていたのが思い出に残る一品。《けちな贈り物》で墓地に落とした《山賊の頭、伍堂》を《御霊の復讐》で釣り上げるといった形での瞬殺も存在した。
今では装備品の数も増えており、かつての《龍の牙、辰正》だけでなく《殴打頭蓋》も選択肢に入る。現代の調味料に合わせることでさらなる深みとコクを生み出す、デッキの隠し味としても最適だ。
■材料4-《倍増の季節》
ラヴニカブロックで登場したこのカードは、《トリスケリオン》が倍打てるなどで、当時嬉々として使っている人がいた思い出がある。今では、プレインズウォーカーの忠誠度が最初から倍になるなどで、こちらもコンボカードとしての価値が上がっている。プレインズウォーカーというデッキの華を際立出せるのに最適なカードであり、脇役ながらデッキの主役の味を最高のものにしてくれる。
■材料5-《ザルファーの魔道士、テフェリー》+《神秘の指導》
《神秘の指導》から《ザルファーの魔道士、テフェリー》をサーチし戦場に出すことで、その後、あらゆるクリーチャーをサーチできる、時のらせんブロック構築などで活躍したコンボ。
これで、1枚挿しの《さまようもの》などもサーチ可能となるなど、デッキの構造を強力にサポートするカードだ。一滴たらした醤油のように、デッキの格を底上げしてくれるに違いない。
■材料6-《リリアナ・ヴェス》、《炬火のチャンドラ》、《記憶の熟達者、ジェイス》
ローウィンブロックから始まった今に至るプレインズウォーカーの歴史。《リリアナ・ヴェス》や《解放された者、カーン》や《復讐のアジャニ》、《炬火のチャンドラ》や《記憶の熟達者、ジェイス》など、その強さとプレインズウォーカーに敬意を表して、出来る限り多くのプレインズウォーカーを入れておきたいところだ。デッキの華となるカード、見た目も麗しい。
■材料7-《戦隊の鷹》+《粗石の魔道士》+《不死の霊薬》
《戦隊の鷹》を持ってきたが、死んでしまったというときのアフターケアも万全の《不死の霊薬》。昨年度のプレイヤー・オブ・ザ・イヤー、ブラッド・ネルソンにそのデッキを教えたら、ちゃんと《不死の霊薬》のエンジンを抜かれてたのはいい思い出。デッキの栄養分を賄う、健康第一。
■材料8-《翻弄する魔道士》 【中村修平氏殿堂入り記念材料】
指定を間違えても気にしない。もしくは、指定したらモメないようにちゃんと紙に書いておく。味としては微妙。
●調理
では、これらの材料をいかにデッキに調理していくかだが、ここでの調理法は簡単、これらを全部集めて煮る。そして、これらの材料を一度に賄えるだけのデッキといえば、The Finals 2005で一世を風靡したこのデッキ、《機知の戦い》デッキしかない。
かなりおいしそうな焼き上がりではないだろうか。
《不朽の理想》からの《機知の戦い》なども爽快で、《不死の霊薬》によってライブラリーが200枚を割っても補充できるのもうれしい。ただ、《機知の戦い》だけでなく、多くの勝利手段があるため、デュエルのたびに勝ち方が変わるデッキというのが最大の特徴だ。
見た目訳が分からないリストに見えるかもしれないが、実際は単体で勝ちに繋がるカードが多く、デッキの面白さに加えて勝てるかもしれないというワクワク感に満ちている。
補足としては、ラヴニカブロックの《湿った墓》などのショックランドとゼンディカーの《霧深い雨林》などのマナベースもあるが、このデッキではフェッチランドのシャッフルがめんどいという理由で却下した。
モダンという新環境。あなたはどんな味を求めてデッキを作りますか?
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