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週刊デッキ構築劇場
第2回:塚本樹詩のデッキ構築劇場・《知識槽》
読み物
週刊デッキ構築劇場
2011.02.10
第2回:塚本樹詩のデッキ構築劇場・《知識槽》
演者紹介:塚本 樹詩 関東の草の根を中心に独創的なデッキ構築で知られるデッキビルダー。昨年のプロツアー・ホノルルにて初のプロツアー出場を果たし、《破門》マスターとして恐れられる。 |
ちょっと遅めの明けましておめでとうございます。
あるいは、ハッピーニューイヤー。
今年はさらにmtg.jp一番の濃さを目指して、頑張ろうと思います!
目指せ浅原晃!
気がつけば僕の目標はメムナイト好きの怪しい教祖を超える旅になってきました。
それでは「ツカモトクエスト2」いや「ツカモトファンタジーⅡ」をぼちぼち始めましょう。
ててててーてーてーてっててー。
今回紹介するデッキは実は少し前からある程度の「原型」が出来ていたデッキです。
ある1枚のカードがどうしても使いたくなって、僕は色々な形を試していました。
そのカードはプロツアー・サンファンの決勝戦で、パウロ・ヴィター(PV)が使っていた神話レアなのですが、
有り体にいえば《悪斬の天使》のように、まさに神話レアといった雰囲気を持つカードでした。
僕はサンファンという楽園に降り立った亡霊に魅せられてしまったのです。
まずはプロトタイプから。
15 《沼》 1 《森》 4 《新緑の地下墓地》 2 《湿地の干潟》 3 《地盤の際》 -土地(25)- 3 《マラキールの門番》 3 《ニルカーナの亡霊》 -クリーチャー(6)- |
4 《コジレックの審問》 4 《予言のプリズム》 3 《カルニの心臓の探検》 3 《血の署名》 1 《不気味な発見》 4 《大渦の脈動》 3 《砕土》 2 《堕落の触手》 4 《精神ヘドロ》 1 《リリアナ・ヴェス》 -呪文(29)- |
これがプロトタイプです。
《ニルカーナの亡霊》をどうしても使いたくて黒単で作ってみた所、正直カジュアルデッキとしてもモッサリ感満載。
黒単色として強いと思った部分は《精神ヘドロ》のみで、《精神ヘドロ》から次のターン《ニルカーナの亡霊》という動きが出来ないと勝ちにくいデッキでした。なので《精神ヘドロ》を早いターンに打てるようにと、緑をタッチしました。
これにより《大渦の脈動》という強力なカードも投入でき、この形に落ち着きました。
しかし所詮は「マナランプ系」。マナを伸ばす→どーん!の図式ではすぐに飽きが来てしまい、このデッキは自然に風化してい行ました。
それから数ヶ月。出会いあれば別れもあるコアセット入れ替えの時期。
《堕落の触手》は「基本セット2011」で生き残らなかったな、と思いつつもリストを眺めていたら新たな可能性が!
その名は《耕作》。これは《木霊の手の内》の生まれ変わりではないですか!
僕は狂喜乱舞。さっそく新しい形を模索する事に。
16 《沼》 1 《森》 4 《新緑の地下墓地》 3 《湿地の干潟》 1 《惑いの迷路》 -土地(25)- 3 《マラキールの門番》 1 《巡礼者の目》 3 《墓所のタイタン》 -クリーチャー(7)- |
4 《コジレックの審問》 3 《血の署名》 4 《予言のプリズム》 1 《不気味な発見》 2 《破滅の刃》 3 《耕作》 4 《大渦の脈動》 4 《精神ヘドロ》 3 《全ては塵》 -呪文(28)- |
気がつけば《ニルカーナの亡霊》は《墓所のタイタン》という強力なフィニッシャーに変わってしまいました。
しかしデッキの内容的には、《全ては塵》というリセットカードの採用によって安定性が増しました。
《ニルカーナの亡霊》が《墓所のタイタン》より優れている点は「マナが沢山出る」のみで、そのマナを活かせる構築でないと駄目だということがわかり、泣く泣くお蔵入りに。
しかし、頭の中に「黒単+緑色のマナ・ブースト」のギミックは深く刻まれる事になりました。
ですが、「ミラディンの傷跡」の登場によりアラーラブロックがスタンダードを離れてしまい、《大渦の脈動》というデッキの骨組みにも近いようなカードが使えなくなってしまったのです。
それは、「ミラディンの傷跡」で同じくらい強いカードが無いと復元は出来ないレベルのダメージでした。
世間では「緑黒ワッショイ!」なる《堕ちたる者、オブ・ニクシリス》+《起源の波》デッキや、
《ミミックの大桶》で各種CIPクリーチャーを使い倒す「黒単ミミック」が流行ったり廃れたりしていたのですが、
僕の琴線に触れるカードは特になく、このデッキにとっては長い長い暗黒時代に突入したようでした。
そして年が明け「ミラディン包囲戦」の発売。
塚本 「なんや...この......
他人と群れないと何か出来ないようなカードばかりのエキスパンションは...
ワイは...ワイは...わくわくしてきたで!」
とテンションを上げながら「ミラディン包囲戦」のカードリストを見ていると、頭の上の電球が点灯。
《黒の太陽の頂点》《喉首狙い》《太陽の宝球》、これらのカード達は...。
特に《太陽の宝球》はこのデッキの為に生まれたようなマナ・アーティーファクトで、基本セット2011の《耕作》よりも可能性を感じる1枚でした。
そして、今回紹介するデッキは現時点での最終形態となるのですが、果たして《ニルカーナの亡霊》が活きるデッキになったのか...。
15 《沼》 2 《森》 4 《新緑の地下墓地》 4 《湿地の干潟》 -土地(25)- 3 《ニルカーナの亡霊》 -クリーチャー(3)- |
4 《コジレックの審問》 4 《太陽の宝球》 4 《予言のプリズム》 4 《探検》 3 《砕土》 4 《精神ヘドロ》 4 《知識槽》 3 《精神隷属器》 2 《リリアナ・ヴェス》 -呪文(32)- |
2 《白金の天使》 4 《沈黙》 3 《自然の要求》 3 《記憶殺し》 3 《全ては塵》 -サイドボード(15)- |
そうです!今回のキーカードはこのテキストが凄くめんどくさい《知識槽》です!
このカードは、自分がプレイしたにも関わらず相手にも恩恵が発生してしまうような危ないカードです。
こんなカードを使いこなせたらゾクゾクしちゃいませんか?
僕は、普段何気ないことにもゾクゾクしちゃいがちなのですが、今回はちゃんとカードでゾクゾクしようと思い、このいかにも知性に満ち満ちた名前のカードを使おうと試行錯誤した結果できたのが、このデッキです。
でも「どうゾクゾクすればいいの!?」って人たちの為に、デッキの説明を。
まずは洗練された「+緑」の部分。
どのカードが一番いいの?という疑問は常に付きまとうもの。《耕作》と《砕土》は常にどっちがいいのかと考えるのですが、《太陽の宝球》《予言のプリズム》の存在によって、打った後に繋がる可能性のある「砕土」を採用する形に。
それによって《カルニの心臓の探検》を入れる事も考えたのですが、ドローもでき、すぐに土地が伸びる《探検》を試した所、中々良い働きをしてくれたのでこちらを採用。
そして、ドローしつつもマナを補うスペルが増えたので、《血の署名》を打たなくても手札が減り難くなりました。
そして《知識槽》を上手に使う方法。
このカードは上手くいけば、重くて強い呪文を本来のコストよりも軽いコストで唱えるられるようになるのです。
...が、相手にも同じ事が言えるので、6マナも掛かるこのカードを全力で唱えて「エンド!」では少し知性に欠けてしまいます。
相手に手札がない状態なら、リスクはとても少ないので《精神ヘドロ》で相手の手札を空にすれば、相手がライブラリーの上から呪文を引かない限りは安全です。
しかし、相手が強い引きをしてしまった場合は知性は崩壊してしまった事になるので、何か頭の悪いそうな言葉で嘆きましょう。
例1)「お前...俺より先に渡辺雄也になるのか...?」
例2)「心の台パンだけにしておいてやるよ、人が見てるからな!」
もちろん、《精神ヘドロ》さえ通ってしまえば、おおよその試合は楽になるのですが、それ以外の下準備の為に《精神隷属器》や《ニルカーナの亡霊》がいます。
この3枚のカードはどれも密接に関係していて、
《ニルカーナの亡霊》が無事に戦場に着地したのなら《知識槽》を置いたターンすぐに取り除いた呪文を唱えられるようになるし、《精神隷属器》もプレイから即起動できます。
《精神隷属器》で相手のターンを支配した後なら、安全に《知識槽》を置け、《ニルカーナの亡霊》の全力パンチが通りやすくなります。
《知識槽》だけは急に置くのは危険ですので注意してください!あなたの知性があぶないです!
《リリアナ・ヴェス》の真ん中の能力を使って、状況に応じたカードをライブラリーの上に置いてから《知識槽》で取り除くのはとっても知性です。
こうして《知識槽》の加入により《ニルカーナの亡霊》の一撃で相手を倒すデッキは面白さや知性を纏い、復活しました。
《精神ヘドロ》や《精神隷属器》《知識槽》を賢く使い、《ニルカーナの亡霊》と沼8枚だけで相手のライフを20点削れた時は凄くゾクゾクしてしまい、嬉しさのあまり
「きんもぢいいいいいい!!!!!」
と対戦相手がいるのも忘れて叫んでしまいそうになると思いますが、対戦相手にとても失礼なので、結果報告用紙を記入して「ありがとうございます」と言った後にしましょう。
折角あなたが積み重ねてきた知性が一瞬で恥性になってしまいます。
それではサイドボードのシークレットテクの時間です。
《白金の天使》はどんな場面からも一発逆転をもたらしてくれる正真正銘の天使。
《知識槽》からめくったり、サイドボードから投入した《記憶殺し》で相手のアーティーファクト破壊カードを封殺した後に出したりと、色々な論理付けはできるのですが...
細かい事はいいのです。皆さんもたまに、凄く無性に「ドラゴン」や「天使」が使いたくなる時がありませんか?
そんな時にそっと、サイドボードから入れるのです。
電車の中で偶然、先に上司や先輩を見つけてしまった時に体の向きを「そっと」変える時の様に「そっと」。
それに、なんとなく「天使」って英知...あ、間違った「知性」が溢れている存在だと思いませんか?
そんな「知性」の塊を自分の戦場でコントロールしているだけでゾクゾクするとは思いませんか?
負けそう場面でゾクゾクしてる時に、《白金の天使》を引いてしまった時はゾクゾクの相乗効果が現われて、ゾクゾク族になってしまいそうですね!
この例えは恥性でしたね。
MTGは頭の良さを競うゲームな筈なので、《白金の天使》を出してドヤ顔をすると知性が無くなってしまうので、表情には気をつけてくださいね!
それではサイドボードのシークレットテクの時間です。
今度は本当です。このデッキは「黒単風」のデッキであって、《探検》や《砕土》を唱える事によって、相手が緑色の存在を気に留めます。
それによってサイド後は《帰化》系の呪文の存在を意識するようになりますが、多くの対戦相手は「緑」以外の色の事までは意識していないと思います。
もし、これで相手の思考の隙間を縫うように新たな色の呪文をプレイできたのなら、相手の知性は崩壊するでしょう。
今回採用する事に決めた《沈黙》はまさにそんな、カードに書いてある効果以上の効果を発揮してくれる1枚です。
《精神ヘドロ》を唱えるターンまでに打てば、相手の展開できたであろう数枚のカードを縛ることができ、《知識槽》を相手に使われることを抑止できたりと、まさにその働きは万能。
早いデッキ相手には序盤に唱えられ、遅いデッキ相手には自分の呪文を守るために唱えられ、もう、メインデッキに入れてもいいくらい素敵なカードです。
そろそろお別れの時間ですが「ミラディン包囲戦」はリリースされたばっかりです!
まだまだ解明されていない「知性」が沢山隠されていると思うので、トーナメントシーンでいち早く披露して「ゾクゾク」してみてはいかがでしょうか?
週末にはプロツアーとグランプリの併催、というビックなイベント「マジック・ウィークエンド パリ」があるので、僕はスタンダードに風穴を開けるような、新たなアーキタイプの出現に「ドキドキ」しています!
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