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EVENT COVERAGE
ワールド・マジック・カップ2018
準々決勝ダイジェスト
2018年12月16日
(編訳より:埋め込み動画は英語実況のものです。)
金曜日の朝に今大会の開幕を迎えたのは74チーム。それからチーム・シールド3回戦とチーム共同デッキ構築スタンダード10回戦を経て、残るは8チームになった。見事トップ8に入賞したチームの各メンバーには、ミシックチャンピオンシップ・クリーブランド2019への参加権利とトラベル賞が授与される……そして彼らは、さらなる賞金と「ワールド・マジック・カップ2018優勝」のタイトルとトロフィーを手にすべく、最後の戦いに挑む。
優勝チームを決める最後のレースは、準々決勝から始まる。4つの試合では実にさまざまなデッキが――「ゴルガリ・ミッドレンジ」8個、「イゼット・ドレイク」4個、「セレズニア・トークン」3個、「ジェスカイ・コントロール」3個、「ボロス・アグロ」2個、「ボロス・天使」1個、「セレズニア・アグロ」1個、「ターボ・フォグ」1個、「ビッグ・レッド」1個が、しのぎを削った。そして何より、この舞台には国の誇りを胸に戦う24人のマジック・プレイヤーがいた。
香港代表 vs. スロバキア代表
香港代表は猛烈な勢いで今大会を勝ち進み、ワールド・マジック・カップで自国初のトップ8入賞を果たした。プロツアー・トップ8入賞5回を記録し今年殿堂入りしたリー・シー・ティエンを先頭に、彼らは予選ラウンドを全勝で走り抜けたのだ。今大会を通して1試合も落とさなかったのはこのチームだけであり、そしてその勢いは準々決勝でも止まることはなかった。
一方のスロバキア代表は、今回でワールド・マジック・カップのトップ8入賞4回目――そのすべてをキャプテンとして率いたのがイヴァン・フロック/Ivan Flochだった。プロツアー『マジック2015』王者のフロックは、今大会でもチームのコーチとして絶大な力を発揮した。この準々決勝でも、試合を通して各テーブルを行き来してはゲームの助言をして回ったのだ。
The Slovaks prayed to their god and he delivered! Slovakia advances to the top 16!!!!! pic.twitter.com/ka54pvQOKw
— #ivancoverage (@ivancoverage) December 15, 2018
最初に決着したのはC席。香港代表のアレクサンダー・ダディコとスロバキア代表のミラン・ニズナンスキー/Milan Niznanskyによる、「ゴルガリ・ミッドレンジ」の同系戦だ。ダディコは手早く1ゲーム目で勝利を収めると、2ゲーム目でも《ラノワールのエルフ》2枚によるマナ加速から早い段階で《秘宝探究者、ヴラスカ》を繰り出した。ニズナンスキーはこれに回答を差し向けることができず、生成された海賊・トークンと《殺戮の暴君》を前に為すすべなく敗れ去った。「ゴルガリ・ミッドレンジ」同系戦においては、《殺戮の暴君》による強打が鍵となるのだ。
B席ではキャプテン同士が激戦を繰り広げた。リー・シー・ティエンは《大将軍の憤怒》や《突破》、《最大速度》を用いるコンボに寄せた「イゼット・ドレイク」を使用し、一方のイヴァン・フロックは一般的な「ジェスカイ・コントロール」を手にしている。特に1ゲーム目は両者のプレイが光り、そのハイレベルな試合は必見のものだった。個人的には、ワールド・マジック・カップ史上最高のゲームと言える。
4ターン目、リーは《弧光のフェニックス》を2体戦場に戻すことに成功したが、《封じ込め》を意識して攻撃に向かわなかった。さらに数ターン後にフロックが4マナ立たせている状況でも、リーは攻撃の手を止めた。今度は《残骸の漂着》を回避するためだ。こういったプレイの連続に、フロックはマナを効率的に使うことができなかった。そしてついに、イヴァンの土地が立っている状況でもリーは攻撃を始めた。それは最悪のシナリオを回避しつつ攻撃を繰り出す、完璧なバランス感覚だった。そのときのフロックが対応し得る3つの可能性(《残骸の漂着》か、《封じ込め》か、《封じ込め》2枚)をすべて織り込んだ上で、致命的な一撃を繰り出したのだ。フロックといえどもこれを捌き切るのは難しく、リーは見事なプレイにふさわしい勝利を手にした。
2ゲーム目は《パルン、ニヴ=ミゼット》を駆使するフロックが勝ち取ったが、両者の戦いが決着を迎えることはなかった――A席の試合が先に決着したからだ。A席では、「ボロス・天使」を操るウー・コンファイが「セレズニア・トークン」のリチャード・ホーナンスキー/Richard Hornanskyを打ち破った。驚くべき速さで1ゲーム目を奪ったホーナンスキーだったが、結局1/1や2/2が並ぶセレズニアの軍勢では《正義の模範、オレリア》と《黎明をもたらす者ライラ》のコンビを乗り越えられなかった。2ゲーム目、ホーナンスキーは《大集団の行進》で大量のトークンを生み出すが、天使たちを前に攻撃を仕掛けられない。ウーも《クロールの銛撃ち》の「宿根」を最小限に留められるように防御の姿勢を構えており、まさに盤石だった。そして3ゲーム目も同様の展開になった。「セレズニア・トークン」は絆魂と飛行を持つ大型クリーチャーに屈したのだった。
香港代表がスロバキア代表を2勝0敗で下し、準決勝へ!
イスラエル代表 vs. 中国代表
中国代表キャプテンのリウ・ユーチェン/Liu Yuchenは、トップ8入賞を果たした昨年のワールド・マジック・カップに続き、再び代表チームの一員として今大会を迎えた。彼とスー・ミン/Xu Mingはプロツアー・トップ8入賞の経験を持ち、中国最高のプレイヤーと評されている。もうひとりのチームメイトであるソン・ロン/Song Longは彼らほどの実績を持ってはいないが、今日こそは勝つと意気込みを見せていた。だがしかし、そんな彼の前に立ちはだかるイスラエル代表キャプテンは、かなりの強敵だ。
イスラエル代表を率いるのは、2度の世界選手権優勝と4度のグランプリ優勝を誇るシャハール・シェンハー。ワールド・マジック・カップのトップ8入賞は初めてのことであり、またひとつプレミア・イベントのトップ8入賞を増やすことになった。同じ国の仲間2人(今大会最年少、15歳のユヴァル・ザッカーマンと同じくワールド・マジック・カップ初出場のアミト・エトガル)とともに成し遂げられたのは、シェンハーにとって特別なことだという。このまま今日も勝ち続ければ、個人戦と団体戦の世界選手権を制覇した数少ないプレイヤーのひとりとして、歴史に名を刻むことになるだろう。
Israel made Top 8 for the first time ever !!! I'm so proud of my teammates!! They have played marvelously against tough teams and Very tough opponents#MTGWMC
— Shahar Shenhar (@shaharshenhar) December 15, 2018
A席では、「ゴルガリ・ミッドレンジ」のリウ・ユーチェンが「ボロス・アグロ」のユヴァル・ザッカーマンを素早く切って落とした。先手の「ボロス・アグロ」が有利と見られたが、リウは《野茂み歩き》で盤面を食い止めると《採取 // 最終》で一気に天秤を傾け、《ビビアン・リード》で勝利への道を開いてみせた。2ゲーム目もサイドボードから入れた《黄金の死》と《煤の儀式》による全体除去で完封した。
C席では、「ゴルガリ・ミッドレンジ」を操るアミト・エトガルが勝利を収めた。スー・ミンの「ビッグ・レッド」は《殺戮の暴君》を対処できる《絶滅の星》をメインに採用しておらず、それが1ゲーム目の明暗を分けた。2ゲーム目はミッドレンジでの激しい攻防が繰り広げられた。特筆すべきは、「両プレイヤーとも」《採取 // 最終》による全体除去を放ったことだろう。(エトガルが唱えた《採取 // 最終》を、スーが《凶兆艦隊の向こう見ず》で奪ったのだ。)そして長期戦の末に勝負を決めたのは、《ビビアン・リード》だった。その「紋章」は《殺戮の暴君》にさらなるキーワード能力とパワーを与え、《殺戮の暴君》の攻撃は致命打に至ったのだった。
B席では「《蒸気孔》使用デッキ」同士の対決が行われた。シャハール・シェンハーの「イゼット・ドレイク」とソン・ロンの「ジェスカイ・コントロール」による戦いの鍵を握ったのは、《パルン、ニヴ=ミゼット》だった。1ゲーム目はシェンハーの《パルン、ニヴ=ミゼット》にソンは回答を用意できず、そのまま体勢を立て直せなかった。2ゲーム目は両者の戦場に《パルン、ニヴ=ミゼット》が着地し、ドラゴン同士の決戦となった。先に出していたソンがアンタップを迎えると、ドロー・ステップの誘発に合わせて彼は《薬術師の眼識》を唱え、さらに自分の呪文を対象にX=0で《中略》を唱える(!)。《薬術師の眼識》による2枚ドローを合わせて5点のダメージを、対戦相手の《パルン、ニヴ=ミゼット》へ撃ち込んだのだ。かくしてソンの《パルン、ニヴ=ミゼット》だけが残り、彼はそのまま2ゲーム目を勝ち取った。
そして迎えた3ゲーム目は、歴史に残る一戦となった。このゲームでシェンハーは、《パルン、ニヴ=ミゼット》を1体ならず2体、いや3体も乗り越えたのだ! 1体目は《イゼット副長、ラル》の[-3]能力で撃ち抜き、2体目は《標の稲妻》の「再活」で退場させた。しかし3体目の対処は困難を極めた。《イクサランの束縛》によって、シェンハーは2体目の《イゼット副長、ラル》を繰り出すことを封じられていたのだ。しかしその時点で、ソンの残りライフはすでに5点まで落ち込んでいた。そこでシェンハーは自身も《パルン、ニヴ=ミゼット》を着地させ、その後一度に大量の呪文を連打してソンの残りライフを削り切ってみせた。《発見 // 発散》によるドローと呪文を唱えた誘発で2点。《選択》でさらに2点。そしてさらなる《選択》で止め。このファイン・プレイで、シェンハーはチームを勝利に導いたのだった。
イスラエル代表が中国代表を2勝1敗で下し、準決勝へ!
フランス代表 vs. 日本代表
日本代表は昨年のワールド・マジック・カップを制し、今大会はディフェンディング・チャンピオンとして連覇を目指している。今年の代表キャプテンは、プロツアー・トップ8入賞4回とグランプリ・トップ8入賞10回を誇る行弘 賢だ。彼は難波 直也と森山 真秀とともに予選ラウンドを勝ち抜き、とりわけスタンダード・ラウンドは全勝という活躍を見せた。
一方フランス代表を率いるのは、グランプリ・ワルシャワ2017王者にしてプロツアー『イクサランの相克』トップ8入賞者のジャン=エマニュエル・ドゥプラ。フランス代表の3人は全員がワールド・マジック・カップ初出場だが、2013年にフランスがタイトルを獲得した喜びを胸に刻んでいる。対戦相手と同様に、ワールド・マジック・カップ史上初の2回優勝の栄誉を手にするべく、決戦に挑む。
TOP 8 !!!#mtgwmc
— J-E Depraz, Team France Captain (@JEDepraz) December 15, 2018
Israel had the dragons, but France has the fire.
A席では、行弘 賢の代名詞とも言える「一風変わったデッキ」の新作を目にすることができた。彼はセレズニア・デッキに《大集団の行進》や《苗木の移牧》、《不和のトロスターニ》などのトークン生成手段を採用せず、代わりに《無効皮のフェロックス》や《不屈の護衛》、《茨の副官》などを採用してよりアグレッシブな構成に仕上げていた。それらのクリーチャーに支えられた行弘は1ゲーム目に高速の動きを見せ、ジャン=エマニュエル・ドゥプラが6枚目の土地を引き込み《採取 // 最終》や《殺戮の暴君》をプレイする前に勝負を決めた。だがしかし、その後の2ゲームはドゥプラが《野茂み歩き》で行弘の攻勢を止めることに成功し、強力な6マナ呪文で勝利をものにしたのだった。
C席は「イゼット・ドレイク」を用いる森山 真秀と「セレズニア・トークン」を操るティモシー・ジャモの対戦だ。1ゲーム目はジャモが《奇怪なドレイク》と《弾けるドレイク》を前に苦境に立たされていたが、《不和のトロスターニ》からクリーチャーを4体「召集」して《議事会の裁き》とマナを最大限に有効利用したプレイを見せると、流れが変わった。彼は続くターンに再び同じ動きを決め、それが逆転の一手になったのだ。2ゲーム目は森山が接戦を制し、勝ち星は1つずつで並んだ。しかしこの試合は決着しなかった。B席が先に終了したのだ。
B席では、アルノー・オクミラーが「ジェスカイ・コントロール」の理想的なゲーム・プランを実現させた。つまり打ち消し呪文でゲームの流れを支配し、大量の除去呪文で盤面を制圧したのだ。とりわけサイド後は《轟音のクラリオン》に《残骸の漂着》、《浄化の輝き》、《絶滅の星》と引き込み、全体除去があふれ出んばかりだった。だがこの試合で最も印象的だったのは、1ゲーム目にカメラの前でオクミラーが見せた勝ち方だろう。今大会を通してフランス代表が何度も決めてきたように、彼は《火による戦い》を《発展 // 発破》でコピーし、一挙20点のダメージを与えたのだった。
フランス代表が日本代表を2勝0敗で下し、準決勝へ!
イタリア代表 vs. オーストラリア代表
イタリア代表は4年連続でワールド・マジック・カップのトップ8入賞を達成した。アンドレア・メングッチはそのすべてで代表メンバーに入っており、このイベントを「メングッチ・インビテーショナル」だと言う者も多い。彼によると、イタリア代表の強さの秘訣はハードワークにあるという。「やっぱりいい結果を残したいならプレイテストは大事なんだよ。ちゃんとやれば、その分有利になるんだ。僕のチームメイトは1つのイベントのためにこんなに一生懸命やったことはないって言ってたから、僕はそこに自信を持ってるんだ」と、彼はインタビューに答えている。
オーストラリア代表はイタリア代表ほどの安定した成績を残してはいないものの、それでもキャプテンのデヴィッド・マインズ/David Minesは2016年のオーストラリア代表メンバーとしてワールド・マジック・カップのトップ8入賞を経験している。マシュー・ハーナム/Matthew Harnhamとベナヤ・リー/Benaya Lieの2人はワールド・マジック・カップ初出場だが、彼らの活躍は比較的小さなコミュニティでも格上相手と渡り合えるということを示してきた。
A席ではティエンファ・ムンの「セレズニア・トークン」とベナヤ・リーの「ボロス・アグロ」による、白のクリーチャーを駆使するデッキ同士の戦いが繰り広げられた。1ゲーム目は両者とも序盤から《敬慕されるロクソドン》を用いて強力な軍勢を作り上げ、どちらの盤面も5体ほどのクリーチャーで合計パワー13を超えた。この難しい状況に両チームともキャプテンが加わり戦闘の助言を行ったが、最終的には大量のマナを《大集団の行進》に注ぎ込んだムンに軍配が上がった。そして2ゲーム目も、多くの点で1ゲーム目と同じ展開になった。両者とも序盤から戦線を構築していったものの、ゲーム後半になるとボロスのカードよりセレズニアのカードの方がより強力だった。リーは《啓蒙》で《議事会の裁き》を破壊し《黎明をもたらす者ライラ》を救ったが、ムンは《大集団の行進》からの《開花 // 華麗》の「コンボ」で乗り越えていったのだった。
March of the Multitudes + Flower / Flourish is the new Deceiver Exarch + Spliter Twin. GW Tokens was the surprise of this weekend. Really loved it, especially in the hands of my teammate Tian Fa Mun! #MTGWMC
— Andrea Mengucci (@Mengu09) 15 december 2018
B席ではアンドレア・メングッチとデヴィッド・マインズによる「ゴルガリ・ミッドレンジ」同系戦が行われた。1ゲーム目はメングッチが土地2枚で止まり、3枚目を引き込む頃にはもう手遅れだった。2ゲーム目も「土地」をめぐる戦いになったが、今度はある1枚の土地――《探知の塔》が勝敗を分けた。デヴィッド・マインズは1枚手に入れ、メングッチの盤面にはそれがなかったのだ。つまりマインズが放つ《ヴラスカの侮辱》は《殺戮の暴君》を追放でき、一方のメングッチにはこの強大な呪禁持ちクリーチャーを対処するすべがなかった。この違いは決定的であり、B席はオーストラリア代表が制することになったのだった。
C席では、イタリア代表のマティア・バジリコが操る「イゼット・ドレイク」とオーストラリア代表のマシュー・ハーナムが用いる「ターボ・フォグ」が激突した。1ゲーム目はバジリコが繰り出すドレイク軍団がハーナムに襲いかかり、ハーナムが《浄化の輝き》で一掃する頃には残りライフ5点まで追い込まれた。しかもバジリコの攻勢はそれで止まらなかった。《パルン、ニヴ=ミゼット》を繰り出すと、さらに《潜水》で《ドミナリアの英雄、テフェリー》の[-3]能力からも守ってみせ、最後の5点を削り切ったのだ。2ゲーム目はハーナムが《ドミナリアの英雄、テフェリー》と《水没遺跡、アズカンタ》のカードアドバンテージ・コンボを揃えて勝利。そして3ゲーム目は1体の《奇怪なドレイク》が最後まで生き残り、ハーナムはそれに対処できなかった。オーストラリア代表が敗北を認めて右手を差し出すと、イタリア代表の面々は抱き合い、勝利の喜びを共有したのだった。
イタリア代表がオーストラリア代表を2勝1敗で下し、準決勝へ!
こうして、イタリア代表とフランス代表の「ワールド・マジック・カップ史上初の2回優勝」という夢は次へつながった。彼らは準決勝で雌雄を決することになる。
(Tr. Tetsuya Yabuki)
RESULTS 本大会の対戦結果・順位
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