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ワールド・マジック・カップ2017

トピック

ワールド・マジック・カップ2017 注目の話題

川添 啓一

Corbin Hosler and Frank Karsten / Tr. Keiichi Kawazoe

2017年12月3日


 ワールド・マジック・カップ2017は、思い出深い話題、活気に満ちたチームワーク、エキサイティングな試合、そして面白いデッキにあふれたものとなった。以下にその出来事を記そう。

ダークホースのドラゴンがアメリカのスーパーチームを下した

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 ウェールズ代表は、ウェールズの国旗に描かれるドラゴンを纏った服装で観客と他の選手の目を奪った。そして土曜日の最終ラウンドでのアメリカ代表との戦いは、この週末で最も印象的な試合の一つであった。すでにフィリップ・グリフィス/Philip Griffithsがオリヴァー・トマコ/Oliver Tomajkoとの自身の試合を落とし、現在1-1で3ゲーム目に向かうサム・ロルフ/Sam Rolphとアーロン・ボイヤン/Aaron Boyhanにマッチの結果が託されていた。そして、彼らはそれを華々しく成し遂げたのだった。

 まずボイヤンはプロツアー王者ジェリー・トンプソン/Gerry Thompsonとの緊迫の一戦で、《人質取り》と《スカラベの神》が入り組んだやり取りを見事に制して勝利を収めた。そしてサム・ロルフは、アメリカのキャプテン、リード・デューク/Reid Dukeが使う白青《王神の贈り物》デッキに対する《巧射艦隊の追跡者》の力を見せつけた。その瞬間、ダークホースがアメリカのドリーム・チームをひっくり返したのだ。

ワールド・マジック・カップのトップ8には多分届かなかった。でも、オリヴァー・トマコとリード・デュークは最高のチームメイトだ。そして、思った以上に、このトーナメントは僕のマジック人生有数の楽しいイベントだったよ! また戻ってくるぞ!


 ウェールズは残念ながら準々決勝でポーランドに敗れたものの、彼らの偉業はウェールズのマジック・コミュニティにとって誇るべきものとなるだろう。

「白青サイクリング」と「4色コントロール」が現実世界に

 この週末がスタンダードのメタゲームにもたらした影響は、「白青サイクリング」と「4色コントロール」だろう。

Piotr Gaogowski - 「白青サイクリング」
ワールド・マジック・カップ2017 準優勝 / チーム共同デッキ構築・スタンダード (2017年12月1~3日)[MO] [ARENA]
8 《平地
6 《
4 《灌漑農地
4 《氷河の城砦
1 《シェフェトの砂丘
1 《イプヌの細流

-土地(24)-

2 《秘法の管理者

-クリーチャー(2)-
4 《検閲
3 《アズカンタの探索
4 《相殺の風
4 《新たな信仰
3 《ドレイクの安息地
1 《見捨てられた石棺
4 《排斥
4 《ヒエログリフの輝き
4 《残骸の漂着
3 《燻蒸

-呪文(34)-
3 《威厳あるカラカル
2 《奔流の機械巨人
4 《領事の権限
2 《ジェイスの敗北
2 《不許可
1 《見捨てられた石棺
1 《ドレイクの安息地

-サイドボード(15)-

 73チームの大半は、このチーム構築スタンダードにおいて《熱烈の神ハゾレト》と《霊気との調和》の重複を防ぐために青白のデッキを1つ使っていた。しかし、驚くべきことに、実に17ものチームが《王神の贈り物》や《副陽の接近》デッキではなく、《ドレイクの安息地》を青白デッキとして選択していたのだった。そのうちの1人であるピオトル・グロゴウスキ/Piotr Glogowskiは、最終的に決勝に進出したポーランド代表のメンバーである。

 基本的に、このデッキは《残骸の漂着》や《燻蒸》に依存したコントロールデッキであり、このフォーマットのクリーチャー・デッキに対して非常に強い構造となっている。また、デッキ内にサイクリングできるカードが大量にある結果、この全体除去を見つけることが比較的容易である。

 このデッキの重要な利点は、勝利に必要なカードが7マナではなく3マナと軽く、そして多くの対抗策をかいくぐることができる点だ。このマナの違いは特にサイドボード後に相手が《否認》でゲームプランに対応しようとしているときに有効で、特にグロゴウスキはそれを活かしたのだった。

Marc Tobiasch - 「4色コントロール」
ワールド・マジック・カップ2017 ベスト4 / チーム共同デッキ構築・スタンダード (2017年12月1~3日)[MO] [ARENA]
1 《
2 《
1 《
1 《
4 《植物の聖域
4 《花盛りの湿地
2 《異臭の池
1 《水没した地下墓地
2 《竜髑髏の山頂
4 《霊気拠点

-土地(22)-

4 《光袖会の収集者
4 《ならず者の精製屋
3 《つむじ風の巨匠
1 《豪華の王、ゴンティ
2 《スカラベの神
3 《奔流の機械巨人

-クリーチャー(17)-
4 《霊気との調和
4 《致命的な一押し
3 《本質の散乱
3 《蓄霊稲妻
2 《至高の意志
3 《ヴラスカの侮辱
2 《天才の片鱗

-呪文(21)-
3 《貪る死肉あさり
1 《豪華の王、ゴンティ
2 《チャンドラの敗北
4 《否認
1 《蓄霊稲妻
2 《人工物への興味
1 《至高の意志
1 《秘宝探究者、ヴラスカ

-サイドボード(15)-

 73チームのうち4チームは、「4色コントロール」または「青黒コントロール」を選択した。そして、その4チームは全てトップ8に進出した。ほとんどのチームが「エネルギーデッキ、赤アグロデッキ、そして白青デッキ」という組み合わせを選択する中で、《奔流の機械巨人》と《ヴラスカの侮辱》は非常に強力であり、それは(マティア・リッツィ/Mattia Rizziやサム・ロルフのように)《本質の摘出》や《アズカンタの探索》であったり、(マルク・トビアシュ/Marc Tobiashやエリアス・クロッカー/Elias Klockerのように)《霊気との調和》と《つむじ風の巨匠》によってバックアップされていた。

 特に、ドイツ・オーストリアの「4色コントロール」デッキは、他のエネルギー・デッキに対して容易に優位を築けるエネルギー・シナジーを構成していた。

皆のための世界的なゲーム

 今週末に行われたこの競技は、確かにスタンダードのメタゲームにおける最善の選択を巡る争いが主眼であったが、一方でワールド・マジック・カップはマジックが世界的なゲームであることも示している。世界中から73にもおよぶ国と地域が参加したということは、真の意味で世界のマジックの祭典だったと言えよう。

 参加している多くの国にとって、この週末は年間を通して最も重要な週末であり、国家の誇りが懸かっていた。大半のチーム――特に小規模なコミュニティを代表するチーム――にとってこのワールド・マジック・カップはその国の存在を世界最高の舞台でマジック・プレイヤーに示す機会であり、そして一部は実際にその素晴らしいパフォーマンスによってファンを獲得するのだ。

 ワールド・マジック・カップは小規模な国からも非常に多くのプレイヤーが参加する初めてのプレミア・レベルのイベントであり、そして地元のフライデー・ナイト・マジックでしかプレイしていなかったプレイヤーたちにとっては完全に新しい世界である。

 初めて地元の店の外でプレイしたマッチ――それがこのイベントの最初のラウンドだった――でアメリカ代表を下した、パナマ代表のハイメ・ソリアノ・サラザール/Jaime Soriano Salazarの意見を聞いてみよう。

「うん、これに慣れられるかもしれないね」と彼は笑った。

 ワールド・マジック・カップは、また同様にこのゲームがいかに人を受け入れるものであるかをも実証している。世界中バラバラの国から集まり、全く違う習慣で過ごし、違う言語を話していたが、それでも笑いが雰囲気を作り、そしてマジックが成し遂げた特別な機会とコミュニティが皆を受け入れたことにより、ゲーム自体もフレンドリーに進行したのだった。

これすき。


ワールド・マジック・カップでの大きな出来事の一つは、それぞれの国が自国の誇りを示したことです。その素晴らしい例はスピリット・アワードを獲得したチームで、今年は特に目立つ服装のウェールズ、メキシコ、そしてスコットランドです!


イタリアが2勝目寸前まで

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 スロバキアやオーストリアと並び、イタリア代表チームはワールド・マジック・カップで3回目のトップ8に進出した。さらに素晴らしいことに、それは3年連続であり、全てで準決勝にも進出しているのだ!

 2015年、イタリアはトロフィーを手にした。2016年、彼らは準決勝で敗退した。そして今年、マティア・リッツィと、2015年以来の代表復帰を果たしたアンドレア・メングッチAndrea Mengucci、さらにアドリアーノ・モスカート/Adriano Moscatoをメンバーに迎えた。もし今日勝ち抜いていれば、イタリアはワールド・マジック・カップで複数回の優勝を成し遂げた初の国になるところだった。

 しかし、それは成されなかった。準々決勝では、近年台頭が噂されつつも今年ようやくワールド・マジック・カップで初めての成功を収めていた中国代表に、初顔合わせで勝利した。しかしその後、準決勝で全力を尽くしたが、日本のオールスター・チームに敗北を喫したのだった。

日本の錚々たるメンバーがついに戴冠した

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 今年のワールド・マジック・カップが始まる直前、アメリカやブラジル、そして実際に結果を残したイタリアなど、優勝候補と目された国がいくつかあった。

 しかしその中で、日本よりも高い期待を集めた国はなかった。日本代表は生涯プロ・ポイントの合計が1195という驚異的な数字を誇っていたのだ。しかもその大半は2人の殿堂顕彰者、渡辺雄也と八十岡翔太によるものだったが、日本チャンピオンの原根健太もまた、彼がプレイを始めてからのプロツアーとグランプリで69点を稼いでいる。参考までに、この日本代表3人の平均より生涯プロ・ポイントが多いプレイヤーは、このマジックの歴史上25人しかいない。日本代表は、まさに優勝のための最高の布陣だったと言えよう。

 そして、彼ら自身もそれを自覚していた。

 渡辺は、「このチームはいいチームだってわかってたから、5割は優勝できると思ってました」と言う。

 全ての「スーパーチーム」が同じような成功を収められたわけではない。ブラジル代表は初日落ちし、またアメリカもトップ8を賭けた最後の大勝負に勝てなかった。イタリアはトップ8には進出したものの、決勝進出を懸けたこの日本との準決勝で敗退した。そして、そうしたスーパーチーム相手に金星を積み上げてきたポーランド代表との戦いで、コントロール・マスターとして知られる八十岡が使っていたデッキとプレイに驚かなかった者はいないだろう。

 そう、「ラムナプ・レッド」だ。

 ......え、何だって!?

 何にせよ、八十岡はこのデッキをコントロールデッキのように扱ってみせた。ゲーム最終盤の詰めで、《ボーマットの急使》から8枚ものカードを手に入れ、そしてそれを《熱烈の神ハゾレト》につぎ込み勝利をもぎ取り、そして日本はワールド・マジック・カップ優勝のタイトルを獲得したのだった。

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RESULTS

対戦結果 順位
最終
S2-3 S2-3
S2-2 S2-2
S2-1 S2-1
S1-3 S1-3
S1-2 S1-2
S1-1 S1-1
7 7
6 6
5 5
4 4
3 3
2 2
1 1

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