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ワールド・マジック・カップ2016
決勝:ベルギー代表 vs. ギリシャ代表
Chapman Sim / Tr. Keiichi Kawazoe
2016年11月20日
歴史をひも解くと、ギリシャはワールド・マジック・カップでは毎回結果を残している。実際、過去5回で毎回2日目に進出しているのはギリシャとスコットランドだけなのだ。ギリシャチームを率いるビル・クロノポロス/Bill Chronopoulosにとっても、その地位でワールド・マジック・カップ覇者を目指して戦うのは4回目である。
2年前、2014年のワールド・マジック・カップでは決勝で惜しくもデンマークに敗れ、その栄光を掴み損ねてしまった。ニコラス・カポニス/Nikolaos Kaponis、パナギオティス・パパドパウロス/Panagiotis Papadopoulos、そしてペトロス・ツィオティス/Petros Tziotisの3人とともに掴んだチャンスで、今度こそ栄冠を手に入れようとしている。
A席とB席では、クロノポロスとツィオティスはそれぞれ発掘とアブザンを使う。そしてC席では、パパドパウロスが感染を駆る。残るカポニスがこの3人のコーチを担当することになる。この選択は、対戦相手とどのようなマッチアップとなるだろうか? フィンランドとベラルーシを下したギリシャ代表チームは、またもヨーロッパ勢を相手どることになった。そう、ベルギー代表チームである。
ベルギーは他の72か国を抑えて初日をトップで通過した。その結果、2日目ステージ1の第1回戦では1勝のアドバンテージを得て、そのままステージ1・2ともに破竹の勢いで突破。準々決勝でパナマを破り、さらには王者返り咲きを狙っていたイタリアを準決勝で下し、ついに決勝でギリシャと相見えることになった。
A席を担当するジェローム・バストーニュ/Jerome Bastogneは《御霊の復讐》を、B席のブランコ・ナランク/Branco Neirynckはナヤ・バーンを、そしてC席のピーター・フィーレン/Peter Vierenは感染を使っている。忘れてはならないのがパスカル・フィーレン/Pascal Vierenの存在で、彼は自身のマジック人生の経験から、最も重要なマッチへのコーチを担当している。
2か国の8名に対して、与えられる栄光は1つだけ。さあ、結末を見届けよう!
B席: ブランコ・ナランク (ナヤ・バーン) vs. ペトロス・ツィオティス (アブザン)
アブザンはナヤ・バーンを打ち倒すための多くの手段を抱えている。例えば、《コジレックの審問》、《流刑への道》、《集団的蛮行》といった手札破壊や除去呪文は、ナヤ・バーンの足を確実に遅くする。序盤のクロックを止め、ライフの減少を食い止めることは何よりも重要なのだ。そして、アブザンは全てのアグロデッキにとって天敵とも言える《包囲サイ》を擁している。
ツィオティスにとって不運なことに、第1ゲームは5枚までマリガンすることを強いられてしまった。ナランクの《ゴブリンの先達》から2枚の土地を受け取りながらも、劣勢に立たされ続けていた。《野生のナカティル》まで加わり、ツィオティスのライフは既に半分まで削られていた。彼が《闇の腹心》でのブロックをしようとすると、ナランクはそのウィザードを《焼尽の猛火》で焼いてしまった。もう1回の攻撃を見て、ツィオティスは投了しサイドボードに手を伸ばした。
よくないことは重なるもので、ツィオティスは第2ゲームでも5枚までのマリガンを強いられた。率直に言って、これはワールド・マジック・カップ決勝を戦う上で非常によくないことだ。しかしながら、ナランクが最初のターンに召喚した2/2の《野生のナカティル》は、(《未練ある魂》を捨てて増呪した)《集団的蛮行》によって、ナランクの手札にあった《焼尽の猛火》とともに処分することができた。
ナランクは自身の軍勢を立て直すべく《僧院の速槍》、《野生のナカティル》、そして《大歓楽の幻霊》と並べた。一方ツィオティスは《未練ある魂》をフラッシュバックし、さらに《流刑への道》と《大渦の脈動》でそれぞれ《僧院の速槍》と《野生のナカティル》を処理した。こうしたプレイの目的は明らかで、対戦相手を自分自身の《大歓楽の幻霊》によって締め付けることだった。
ライフは11対10とナランクに若干の有利があったが、それもツィオティスが連続でトップデッキした《乱脈な気孔》、そして《包囲サイ》によってひっくり返った。こうなるともはや如何ともしがたく、スコアは1-1のタイとなった。
ここで、マッチはC席の放送をするために一度中断された。さあ、今度はそちらを見てみよう。
C席: ピーター・フィーレン (感染) vs. パナギオティス・パパドパウロス (感染)
もし他の生放送やカバレージ記事に注意を払っていたり、またはあなた自身がモダン好きであれば、この感染ミラーマッチは極めて独り相撲の様相を呈するとわかるだろう。お互いに相手に対して干渉する手段に乏しいため、相手を沈めるためのスピード勝負をするしかないのだ。
第1ゲーム、フィーレンは戦場を《貴族の教主》、そして3枚の《ぎらつかせのエルフ》で埋め尽くし、そして十分量の強化呪文で圧力をかけていた。しかし、劣勢かと思われたパパドパウロスはブロック不能な《荒廃の工作員》を持っており、そこに《古きクローサの力》と《変異原性の成長》を乗せた。フィーレンはこれに対処しなければならず、《巨森の蔦》での立ち消えを狙った。だが結局、パパドパウロスは駄目押しの《強大化》まで持っていたのだ。
第2ゲームは、よりパパドパウロスにとって順調に運んだ。両プレイヤーが《ギタクシア派の調査》を使ったため、お互いに相手の手札について完全な情報をもって始めることとなった。もしフィーレンが(第1ターンにプレイした《墨蛾の生息地》以外の)感染クリーチャーを引き当てられなければ、パパドパウロスが第1ターンに召喚した《ぎらつかせのエルフ》にやられてしまうだろう。
結局他のプレイをできず、フィーレンは《墨蛾の生息地》を起動して1つ毒を与えられただけであった。パパドパウロスが次のターンに引いたカードを見せると、チームメイトは彼の背中を叩いて応援した。
何が起きるのだろうか? この決勝で、2ターンキルが決まるのだろうか?
1枚だけあった《森》をタップして《古きクローサの力》を唱え、そこから《変異原性の成長》を3枚立て続けに唱え、ギリシャ代表が1勝目を確保した!
ギリシャ人の内輪での冗談として、パパドパウロスが「本当に大事なマッチ」で勝つとき以外全てのゲームを落としているという話がある。ステージ2で勝ったとき同様、この決勝も彼の「超能力」を発揮する格好の機会であった。
パナギオティス・パパドパウロスがピーター・フィーレンを2-0で破った。
A席: ジェローム・バストーニュ (御霊の復讐) vs. ビル・クロノポロス (発掘)
カメラがA席からC席に移動し、バストーニュとクロノポロスの試合に焦点が移った。クロノポロスは非常に、非常に勝利を渇望していた。ここで負けると、ワールド・マジック・カップで2度も準優勝となってしまっては、敗者の烙印を押されてしまうだろう。
閑話休題。
ギリシャ代表にとって幸運なことは、クロノポロスのデッキは非常に素晴らしく、あっという間に《ナルコメーバ》や《秘蔵の縫合体》、そして《恐血鬼》で盤面を構築してしまえたことだ。バストーニュのライフはもはや4しか残っておらず、戦場のクロックは10点分、さらに《燃焼》で9点を上乗せできるとあっては《滋養の群れ》で15点得たとしても生き残ることは不可能であった。ギリシャのチームリーダーは、素早く1ゲームをチームに献上した。
パパドパウロスは既にフィーレンとの感染のミラーマッチを制しており、もし次のゲームをバストーニュが落とせばこの大会は終わってしまう。お互いのデッキが墓地に依存しているため、両者ともサイドボードから墓地対策カードを取ることになる。
第2ゲーム、バストーニュは《信仰無き物あさり》で手札を整える一方で、クロノポロスも墓地を肥やしていった。同様に彼も《信仰無き物あさり》でエンジンに火を入れていくが、《安堵の再会》で《臭い草のインプ》を2枚捨てたことでその火はたちまち燃え上がった。そして、3体の《ナルコメーバ》に加えて《恐血鬼》と《秘蔵の縫合体》を盤面に揃えるまで時間はかからなかった。バストーニュがこの状況を打開するためには、《神々の憤怒》をすぐに引き当てるしかない。
しかしながら、クロノポロスはさらなる追い討ちを用意していた。《壌土からの生命》を発掘で回収して《ボジューカの沼》を手に入れ、バストーニュの墓地を空にしてしまったのだ。これによって、バストーニュが状況を立て直すためにはさらに時間を必要とすることになってしまった。
しかも、追加の《秘蔵の縫合体》を《恐血鬼》とともに盤面に追加したのだ。この苦境を耐えようと、バストーニュは《猿人の指導霊》を追放して《虚空の力線》を唱えた。
《虚空の力線》はこれから先墓地にカードが置かれることを止めはするが、一方で今既に墓地にあるカードを利用することを止めることはできない。それを考えてか、クロノポロスにはもう勝利への道筋が見えていた。《壌土からの生命》で土地を3枚回収しその1枚をプレイし、《災いの悪魔》を蘇生して《秘蔵の縫合体》と《恐血鬼》とともに攻撃した。この攻撃によって、バストーニュのライフは一気に17から6まで追い込まれた。彼は、生き残るための最後の希望をこめて、《神々の憤怒》を唱えた。ただ、彼が生き残れるかどうかは、クロノポロスが自身の墓地にある《燃焼》を忘れてくれていることを祈るしかない。
当然、そんなことは起きなかった。
クロノポロスはアンタップするとすぐに、墓地から《燃焼》を拾い上げ、手札の全てのカードとともにテーブルに置き、そのソーサリーをバストーニュの本体へと叩き込んだのだった。
彼は、永遠にも思えるほど長く待ち望んだ握手が差し出されるのを待った。そして、それがなされると、チームメイトとともに、言い表せないほどの歓喜に浸った。
ビル・クロノポロスが2-0でジェローム・バストーニュを破った。
そして、ギリシャ代表チームがベルギー代表チームを破り、2016年ワールド・マジック・カップ王者の栄冠を手にした。
「勝てるって言ったろ!」
そう、ギリシャチームは成し遂げたのだ、苦楽を共にした絆とともに。
特に2年前、目前にまで来ていたタイトルを逃したビル・クロノポロスにとっては、艱難辛苦の末に雪辱を果たした形となった。ニコラス・カポニス/Nikolaos Kaponis、パナギオティス・パパドパウロス/Panagiotis Papadopoulos、そしてペトロス・ツィオティス/Petros Tziotisもおめでとう、そして2016年ワールド・マジック・カップ王者となったギリシャ代表チーム、本当におめでとう!
2 《山》 2 《踏み鳴らされる地》 2 《血の墓所》 1 《蒸気孔》 4 《乾燥台地》 3 《血染めのぬかるみ》 4 《銅線の地溝》 2 《ダクムーアの回収場》 -土地(20)- 4 《傲慢な新生子》 4 《恐血鬼》 4 《ナルコメーバ》 4 《秘蔵の縫合体》 4 《臭い草のインプ》 4 《ゴルガリの墓トロール》 1 《災いの悪魔》 -クリーチャー(25)- |
4 《信仰無き物あさり》 2 《燃え立つ調査》 4 《安堵の再会》 3 《壌土からの生命》 2 《燃焼》 -呪文(15)- |
1 《復讐に燃えたファラオ》 2 《暗黒破》 2 《強迫》 2 《稲妻の斧》 2 《自然のままに》 2 《古えの遺恨》 2 《破壊的な享楽》 1 《骨までの齧りつき》 1 《ボジューカの沼》 -サイドボード(15)- |
1 《平地》 2 《沼》 1 《森》 1 《神無き祭殿》 1 《寺院の庭》 2 《草むした墓》 4 《湿地の干潟》 4 《新緑の地下墓地》 3 《乱脈な気孔》 2 《花盛りの湿地》 2 《黄昏のぬかるみ》 1 《ガヴォニーの居住区》 -土地(24)- 4 《闇の腹心》 4 《タルモゴイフ》 3 《漁る軟泥》 3 《包囲サイ》 -クリーチャー(14)- |
4 《流刑への道》 3 《コジレックの審問》 3 《思考囲い》 3 《突然の衰微》 4 《未練ある魂》 1 《大渦の脈動》 3 《ヴェールのリリアナ》 1 《最後の望み、リリアナ》 -呪文(22)- |
2 《虚無の呪文爆弾》 1 《仕組まれた爆薬》 2 《集団的蛮行》 2 《石のような静寂》 1 《原基の印章》 1 《盲信的迫害》 2 《失われた遺産》 1 《大渦の脈動》 1 《滅び》 1 《貪欲な罠》 1 《最後の望み、リリアナ》 -サイドボード(15)- |
2 《森》 1 《ドライアドの東屋》 2 《繁殖池》 4 《霧深い雨林》 3 《樹木茂る山麓》 2 《吹きさらしの荒野》 2 《ペンデルヘイヴン》 4 《墨蛾の生息地》 -土地(20)- 4 《ぎらつかせのエルフ》 4 《貴族の教主》 4 《荒廃の工作員》 -クリーチャー(12)- |
4 《ギタクシア派の調査》 4 《変異原性の成長》 4 《古きクローサの力》 2 《顕在的防御》 4 《巨森の蔦》 2 《ひずみの一撃》 2 《よじれた映像》 1 《使徒の祝福》 1 《四肢切断》 4 《強大化》 -呪文(28)- |
2 《呪文滑り》 1 《ヴィリジアンの堕落者》 4 《呪文貫き》 3 《自然の要求》 2 《墓掘りの檻》 2 《四肢切断》 1 《野生の抵抗》 -サイドボード(15)- |
5 《沼》 2 《山》 2 《血の墓所》 4 《血染めのぬかるみ》 2 《黒割れの崖》 4 《悪意の神殿》 -土地(19)- 4 《猿人の指導霊》 4 《グリセルブランド》 2 《怒れる腹音鳴らし》 4 《世界棘のワーム》 -クリーチャー(14)- |
4 《信仰無き物あさり》 4 《御霊の復讐》 4 《夜の囁き》 3 《捨て身の儀式》 2 《魔力変》 1 《苦しめる声》 1 《神々の憤怒》 4 《裂け目の突破》 4 《滋養の群れ》 -呪文(27)- |
2 《否定の契約》 3 《突然のショック》 1 《紅蓮地獄》 2 《神々の憤怒》 4 《虚空の力線》 2 《粉砕の嵐》 1 《仕組まれた爆薬》 -サイドボード(15)- |
2 《山》 2 《踏み鳴らされる地》 3 《聖なる鋳造所》 4 《沸騰する小湖》 4 《樹木茂る山麓》 3 《乾燥台地》 2 《銅線の地溝》 -土地(20)- 4 《ゴブリンの先達》 4 《僧院の速槍》 4 《野生のナカティル》 1 《渋面の溶岩使い》 4 《大歓楽の幻霊》 -クリーチャー(17)- |
4 《溶岩の撃ち込み》 4 《稲妻》 4 《アタルカの命令》 4 《ボロスの魔除け》 4 《焼尽の猛火》 3 《裂け目の稲妻》 -呪文(23)- |
1 《渋面の溶岩使い》 3 《流刑への道》 4 《破壊的な享楽》 3 《頭蓋割り》 2 《安らかなる眠り》 1 《跳ね返す掌》 1 《稲妻のらせん》 -サイドボード(15)- |
2 《森》 2 《繁殖池》 4 《霧深い雨林》 4 《新緑の地下墓地》 1 《吹きさらしの荒野》 1 《植物の聖域》 2 《ペンデルヘイヴン》 4 《墨蛾の生息地》 -土地(20)- 4 《ぎらつかせのエルフ》 4 《貴族の教主》 4 《荒廃の工作員》 1 《ヴィリジアンの堕落者》 -クリーチャー(13)- |
4 《ギタクシア派の調査》 4 《変異原性の成長》 4 《顕在的防御》 4 《古きクローサの力》 4 《巨森の蔦》 2 《ひずみの一撃》 1 《よじれた映像》 1 《四肢切断》 3 《強大化》 -呪文(27)- |
1 《呪文滑り》 3 《台所の嫌がらせ屋》 2 《払拭》 2 《自然の要求》 2 《呪文貫き》 1 《墓掘りの檻》 1 《よじれた映像》 1 《霊気のほころび》 2 《四肢切断》 -サイドボード(15)- |
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