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ワールド・マジック・カップ2014

観戦記事

ステージ1第3回戦:マレーシア代表 vs. ギリシャ代表

矢吹 哲也
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Adam Styborski / Tr. Tetsuya Yabuki

2014年12月6日


 勝利/Victory。

 アルファベットにして7文字。ラッキー7の7だ。ワールド・マジック・カップ2014・2日目、『タルキール覇王譚』リミテッド・ラウンドの最終戦に臨むふたつのチームの脳裏には、この言葉しかない。グランプリでの活躍が目覚ましいレイモンド・タン/Raymond Tanを筆頭にしたマレーシア代表は、初日6勝無敗1分という成績を引っさげて今日の舞台に入ってきた。全チームの中から第1シードを獲得したマレーシアだが、しかし2日目はここまで1勝1敗と土をつけられている。何としてでもここで勝ち、2勝1敗で夢のワールド・マジック・カップ優勝への道を開きたいところだ。

(先述したレイモンド・タンをはじめ)才能に溢れたプレイヤーを擁し、世界選手権チーム部門でトップ8入賞4回という歴史を持ち、そして今大会でも第1シードを有するチームを過小評価するのは危険極まりない。だがこのラウンドで彼らと対するチームに、その心配は無用だろう。

 ギリシャ代表は高いシードを得てはいないものの、可能性を求めて全力を尽くしてきた。ギリシャ代表が世界選手権チーム部門で最後にトップ8入賞を達成したのは、2008年のことだ。今年のチームはみな、口を揃えて言う。再びあの場所へいくために、本気で取り組んできた、と。

「本音を言えば良いシードが欲しかったですね」 ビル・クロノポーラス/Bill Chronopoulosは初日の戦いを振り返り、言った。「プレイ技術には自信があったからこそ、良いシードが欲しかった」

「スタンダードの練習はみっちりやってきたからね」 チーム・キャプテンのマリオス・アンゲロプロス/ Marios Angelopoulosが同意する。「スタンダード・ラウンドは3勝1敗で、そのおかげで2日目に進出できたんだ」

 クロノポーラスは、チームメイトたちがどれだけ彼を支えてくれているかを興奮気味に語る。「このチームに絶対の信頼があります。チーム内で一番成績が悪いのは僕なんです」 彼がそう言うと、メンバーたちの笑い声が響く。「でも、僕の信頼も彼らの力になるはずです」

 プレイテスト中、彼らは作業を分担して行った。「僕らはスタンダードに対してもリミテッドに対しても、全員が同じ認識を持っている。普段からスタンダードをやるプレイヤーたちの方がデッキに通じているから、僕はスタンダードの練習に参加せず彼らに任せて、リミテッドの練習をしたよ」とアンゲロプロスが語る。

「うまくいったよね」 パナヨーティス・サヴィーディス/Panagiotis Savvidisがここまでの戦いを振り返り、言った。

「今日の目標は、ここを抜けてスタンダード構築で戦うことかな」とアンゲロプロスが口にするが、それは遮られた。

「違うよ!」 クロノポーラスがチームメイト全員に声を届かせる。「目標は優勝!」

「やめとけって」 サヴィーディスはその言葉に顔をしかめた。

「彼はね」 クロノポーラスがアンゲロプロスを指さし、説明を始めた。「謙虚でいたいんです。でも、ギリシャのみんなが僕らに注目してる」

「たとえ注目していなくても」 と、アンゲロプロスが続ける。「クロノポーラスが勝手にどんどん知らせていくんじゃないかな」この短い話の中で、Facebookの通知音が何度も鳴り響いていた。

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それぞれの故郷では、彼らの友人たちや家族が結果を見守っている。

「いや、絶対注目してるって」とクロノポーラスが強調した。「僕がネットで何か言う前にみんな知ってたからね」

それぞれのデッキ

マレーシア(1-1-0) vs. ギリシャ(1-1-0)

  • A席:レイモンド・タン vs. ソクラテス・ロザケス/Socrates Rozakeas
  • B席:ジョー・ソー/Joe Soh vs. マリオス・アンゲロプロス
  • C席:ポー・リャン・チュン vs. ビル・クロノポーラス

 チーム・シールドはいつだって大冒険になる。以下は、各チームの3人が組み上げたデッキである。

マレーシア
ギリシャ

ゲーム展開

 C席は3ゲーム目までもつれたが、最初に終わった卓となった。クロノポーラスが序盤に《ジェスカイの長老》を繰り出し、それは数ターンにわたってブロックされることがなかった。チュンは戦士・トークンと《雪花石の麒麟》の軍勢を集め圧倒しにかかるが、《龍鱗の加護》が《ジェスカイの長老》に十分な打撃力をもたらした。ゲームを通して手札に優位なカードを持っていたクロノポーラスが勝利をあげる。

 2ゲーム目は、チュンが3ターン目《マルドゥの隆盛》でプレッシャーをかけ、クロノポーラスを守勢に回らせた。チュンは最終的にクリーチャーを守るために《マルドゥの隆盛》を使うが、《子馬乗り部隊》がさらなるゴブリン・トークンを生み出していた。

 《隠道の神秘家》2体で強力な反撃ができそうに見えたクロノポーラスだが、ゲーム序盤から積み重ねられたダメージによって、ブロックに回さざるを得なくなっていた。その直後《石弾の弾幕》がクロノポーラスの戦場を焼き払い、チュンがゲームをタイに戻した。

 チュンが一番乗りを決めたものは何だったのか? チュンのデッキに入っているレア・カードがついに姿を現したのだ。第3ゲームは、《足首裂き》と《龍語りのサルカン》がクロノポーラスの繰り出すものをことごとく引き裂いた。これでマレーシア代表は1勝目を得たのだった。

 テーブル中央のB席ではアンゲロプロスが素早いスタートを切ったが、ソーの《アブザンの戦僧侶》がやがてライフを取り戻すことを約束していた。数ターン後に現れた《アラシンの上級歩哨》が、アンゲロプロスに対処すべき問題をさらに突きつける。しかし《マルドゥの隆盛》が、ソーの築き上げた防御を越えるひとつの道となった。ソーがどれだけ慎重にアンゲロプロスの戦場から最も強力なものを排除しても、《戦場での猛進》と《抵抗の妙技》が、アンゲロプロスのライフとクリーチャーに莫大な利益を与えたのだった。

 続けて、《マルドゥの荒くれ乗り》と《吠える鞍暴れ》という強力な援軍がアンゲロプロスの手札から繰り出された。ソーは再び後退を余儀なくされ、ダメージを受けていく。最後は、《矢の嵐》が残ったライフを奪い切ったのだった。

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マレーシア代表は今日も力強く第一歩を踏み出し、ステージ1通過のために勝利を狙う。だがしかし、勝利を望むのはギリシャも同じ。昨年のトップ16入賞の上を目指す。

 第2ゲームは序盤にソーの手札から《アラシンの上級歩哨》がプレイされ、防御を固める助けになりつつも空から攻撃を加える。それでも、アンゲロプロスは広く軍勢を展開し、ソーに解答を迫り続ける。《騎乗追撃》がアンゲロプロスに《アラシンの上級歩哨》を突破する手立てをもたらし、広く展開した軍勢はここからが力の見せどころだと気づいた。これでギリシャ代表が1勝を取り返す。

 決着はA席の結果に委ねられた。ロザケスは《アナフェンザの伝令》で軍勢を作り上げていくが、タンは《ジェスカイの風物見》と《霧炎の織り手》で地上の防御を越え、高空から攻め立てた。しかし《アラシンの上級歩哨》が駆けつけロザケスの守りに入り、その後間もなくして《アブザンの戦僧侶》も加わったことで、ロザケスはタンのクリーチャーたちにブロックを迫り始める。やがて、タンはダメージから身を守る手段を使い果たしたのだった。

 第2ゲームはロザケスの土地が3枚で止まり、それがしばらく続いた。とはいえ彼は《アブザンの戦僧侶》の「長久」連打で持ちこたえる見込みが立っていた。しかし《ケルゥの呪文奪い》がここぞというタイミングでロザケスの《必殺の一射》を奪い、状況はタンがコントロールした。

 だが、ここからタンは土地を引き過ぎてしまう。

 ロザケスは《軍備部隊》と「長久」を続けた《アブザンの戦僧侶》という危険な脅威を送り続け、状況はタンにとって厄介なものになった。《引き剥がし》が《アブザンの戦僧侶》の+1/+1カウンターをリセットし、もうひとつの脅威は《必殺の一射》で対処。だがロザケスはさらに広く軍勢を展開し、それはタンの持つ単体除去では対処しきれないほどになった。タンの残りライフが5点まで追い詰められたところで解答は尽き、5/5の《軍備部隊》が勝利に向かって整然と行軍するのだった。

「これで2勝はうちともうひとつだけ。入ったぞ!」 アンゲロプロスが声をあげる。ロザケスの電話がベルを鳴らし、彼はカードを片付けながら電話で短く話をした。

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戦いの結果優勝の夢を残したのは、ギリシャ代表だ。

「家で観戦してる友達からだった」とアンゲロプロス。「彼はどうやって俺らの勝利を知ったんだろう」

 クロノポーラスが肩をすくめるように両の手のひらを上に向け、照れくさそうに説明する。「僕がFacebookにアップしたんだ」

 メンバー全員が、互いに納得の表情を向け合うのだった。

ギリシャ代表 2-1 マレーシア代表
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RESULTS

対戦結果 順位
S2-3 S2-3
S2-2 S2-2
S2-1 S2-1
S1-3 S1-3
S1-2 S1-2
S1-1 S1-1
7 7
6 6
5 5
4 4
3 3
2 2
1 1

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