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『ストリクスヘイヴン』チャンピオンシップ

トピック

友なくしてパーディーなし

Meghan Wolff

2021年6月9日

 

 グランプリ優勝2回、プロツアー・トップ8入賞2回、マジック:ザ・ギャザリング世界選手権出場2回――それにしても、サム・パーディー/Sam Pardeeの競技キャリアは見事なものだ。そんな彼の優れたプレイヤーとしての輪郭を定めているのは、戦いの舞台で築かれた友情であるという。さまざまなプレイヤーに広がった彼の友人の中には、マイク・シグリスト/Mike Sigristやマット・ナス/Matt Nass、そして現在の世界王者パウロ・ヴィター・ダモ・ダ・ロサ/Paulo Vitor Damo da Rosaといった偉大な者も含まれているのだ。

ジェスカイ変容の評価:

サム:相性は悪くなさそう
サム:どんなデッキかわからんが
パウロ:相性は良くなさそう
パウロ:どんなデッキかわからんが

 自身初の主要タイトル獲得となる「『ストリクスヘイヴン』チャンピオンシップ」での優勝を振り返ってみれば、それはまさにサム・パーディーを取り巻く友情の物語であり、互いに高め合ってきた友人たちと離れ離れになることを余儀なくされた世界への挑戦の物語だった。同じくトップ8に入賞したプレイヤーとの話を聞いても、マジックという共通言語を持ち、それを競技として追求するプレイヤーたちの間には、ゆるやかな友情のネットワークが広がっていることを懐かしく感じさせる。

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プロツアー『破滅の刻』にて、ダモ・ダ・ロサと対峙するパーディー

 

「(『ストリクスヘイヴン』チャンピオンシップのトップ8で)ローガン(・ネトルズ/Logan Nettles)と会えたのが一番嬉しかったかな」とパーディーは言う。「彼とは初めてプロツアーに参加したタイミングが同じだから、長い間知ってはいたんだ。その初参加のプロツアーが『プロツアー・名古屋2011』で、僕らは同じ地域から参加したようなものだった。初めてのプロツアーに本当に興奮して、おしゃべりが弾んだよ。僕は途中で敗退したけれど、たしか彼はかなり良いところまで行って、次のイベントへの参加権利を得ていたと思う。そのときに親交を深めたは素敵な思い出だし、その彼がまた活躍する姿を見られて嬉しかった」

 「かなり良いところまで行った」というパーディーの言葉通り、ネトルズは初参加にして13位という驚くべき成績を残している。そしてパーディーはもう少し時間を置くと、自身が達成したこの週末での偉業を振り返った。

「良い気分だよ。最終マッチの第3ゲームではひどいプレイをしたのに、それでも優勝できたのはちょっと面白い。もう少しうまくやれば、あんなに苦戦しなかったはずなのに……とはいえ週末全体を見ればうまくプレイできたから良しとしよう。最後に幸運に恵まれたのも、負けそうな場面から勝ちを拾えたのも、良いプランを立てて挑めたからだと思う。まあ、良い部分もあれば改善の余地がある部分もあるということで」

 今大会、パーディーにとって良くも悪くもある出来事は、最後の試合だけでなかった。トップ8に入るために、チームメイトでありルームメイトであり、長年の友人であるマット・ナスを打ち倒さなければならなかったのだ(英語動画)。パーディーがナスと対戦(し、勝つ)のは(前回2人揃って出場できた)「プレイヤーズツアー・フェニックス2020」以来2度目のことで、そのときも「2020プレイヤーズツアーファイナル」の参加権利を懸けた戦いだった。

@Smdsterのトロフィー置き場はまだ余裕ある。

「マットと僕は最高の親友さ。もう5年くらい一緒に住んでいて、常に練習をともにするし、チーム・イベントでは必ずチームで参加するし、基本的には常に一緒にいる」とパーディーは言う。「どうしても欲しいものが懸かった譲れない戦いでまた彼と戦わなくちゃいけないのは、辛かった。でもどちらかが確実に手に入るのは良いことだし、試合は楽しかったし、すごく接戦で面白かった」

 『ストリクスヘイヴン』チャンピオンシップ優勝へ続くこれまでの数年は、パーディーにとって「あと一歩」の連続で、悪くはないが決して大戦果というものでもなかった。

「MPLが創設された年はかなり調子良かったんだ」とパーディーは振り返る。

「4つのミシックチャンピオンシップでどれかあと1勝でもすれば、ライバルズ・リーグ入りだった。最後のチャンピオンシップのラスト2ラウンドを落としたときは、少し辛かったよ」

 そして2020年シーズンもパーディーは快調なスタートを切った。「うまくプレイできている実感があったし、惜しいところまで何度も行った。プレイのレベルを維持していれば結果はついてくる……これならいつか報われると思っていた」 プレイヤーズツアー・フェニックス2020では12勝4敗で2020プレイヤーズツアーファイナルの参加権利獲得。その後もプレイヤーズツアー・オンラインでトップ8入賞に何度も近づいた。

 だがライバルズ・リーグ入りを惜しくも逃がしたところで、世界は感染症の脅威に晒され、マジックのプロ・シーンも変容した。それ以降、パーディーは『ストリクスヘイヴン』チャンピオンシップまでプレミア・イベントへの参加が叶わなかった。

 「『カルドハイム』チャンピオンシップの参加権利を懸けた予選では、決勝で負けた。そのときは本当に落ち込んだし、だからこそ今回の権利を得たときは喜びもひとしおだったよ」とパーディーは言う。「できる準備はすべてやった。そうしたら、(『ストリクスヘイヴン』チャンピオンシップ)予選で100%負けだと思った場面から勝てたんだ……ここから勝つのは無理だと思ったけれど、毎ターン少しずつ差を縮めていった。そして最後まで渡りきって権利を獲得できたんだ」

 こうして参加権利を手にしたパーディーは、チームメイトである友人たちとの練習の日々を取り戻した。

「今大会の参加権利を得たことで一番嬉しかったのは、マイクやパウロ、マットのような古くからの相棒たちとまた、ともに練習できたことだ。本当に楽しい日々だった」とパーディーは言う。「Discordでしゃべりながらの練習を心から楽しんだよ。みんなで集まれたらもっと楽しんだろうけど、それはそれだ。僕は友人たちとの交流を一番大事にしている。ときには練習外で遊ぶこともあるし、おしゃべりを楽しむこともある。でもイベントに向けてともに取り組み、準備を進めるときに感じる仲間意識は格別だ」

 新型コロナウイルス感染症によって大会に向けた準備を離れ離れで行うようになっただけでなく、パーディーはマジックへの取り組み方を変えた。

「以前よりも、好きなゲームやフォーマットだけ遊ぶようになったよ。最近はモダンやリミテッドを楽しんでいたからスタンダードは久しぶりにやったし、特に大事なことがないなら自分の意思こそが大事だから、好きなことをやってもいいと感じた。だから僕は好きなフォーマットをプレイしてきたし、心から楽しめた! そのおかげでマジック熱を失わずにいられて、腕をなまらせずに済んだんだと思うよ」

「今はモダンが大好きで、ここ2セットほどはリミテッドにもハマっていた。かなりやり込んだよ」

ドラフトよりシールドの方が好きになり始めてるの、最高に「おじ」って感じだな?

 とはいえ『ストリクスヘイヴン』チャンピオンシップを迎えるにあたり、スタンダードは欠かせない。最終的にパーディーは、中くらいの勢力を集めた「赤単」に落ち着いた。他の「赤単」使いが不振にあえぐ中、パーディーはスタンダード・ラウンド6勝2敗の好成績でトップ8入賞を決めたのだった。

「僕らはどのデッキも同じくらい良いと感じた。どれも強いし、よく練り込まれている。『スゥルタイ』は僕の好みよりもコントロールに寄っていて遅めだったから、しっくりこなかった。だから攻め側に立とうと考えて、最も攻撃的なデッキを選んだんだ」

「メタゲームのことも少し意識した。(大会では)『アドベンチャー』系のデッキが少ないと考えたんだ。《恋煩いの野獣》は本当に勘弁願いたいからね」とパーディーは続ける。「読みは当たったよ! 一度も《恋煩いの野獣》と対峙しなかった」

 ヒストリックのデッキ選択では再びチームワークが重要な役目を果たし、パーディーとチームメイトたちは早い段階でデッキを決めることができた――今大会で大きく躍進したデッキだ。

「いやあ、完全に壊れてたね」とパーディーは「ジェスカイ・ターン」を評する。「ザカリー・キューネ/Zachary Kiihneのおかげで、僕らはかなり早くその強さに気づけた。彼と僕は同じチームに籍を置きながらも練習をともにするのは初めてだったけれど、マットやパウロ、マイクとは長年にわたって一緒に取り組んでいた。その彼が『ジェスカイ・ターン』を早い段階で見つけるのに大きく寄与し、僕らは素早くデッキを選択できた。その分多くの時間を反復練習と改善に注ぎ込めたんだ」

 こうしてパーディーは、誰よりも多くターンと表現を反復したデッキを手にトップ8の舞台へ上がった。そこでは殿堂顕彰者と、Magic OnlineやMTGアリーナからの大ボスが待ち構えていた。

「会心の出来だった」と、彼はトップ8での戦いを振り返る。

 それは、パーディーがこれまでで最も記憶に残っていた大会とは真逆の結果だった。パーディーはボストンで行われた「世界選手権2017」に出場したのだが、その年の世界選手権には「初日落ち」がなかった。つまりどんな成績でも、戦い続けることができた。

 その結果、パーディーは世界で最も負け続けたプレイヤーになった。マジックではもう何年もイベントの参加資格などにELOレーティングは使用されていないが、競技コミュニティの一部では今でも独自に記録を続けて評価しているという噂がある。だからパーディーは、レーティングに絡めて「あの世界選手権」の話をするのが気に入っていた。

「僕は1つのイベントで最も多くのレーティングを失った『記録』を持っているんだよ。」とパーディーは言う。「初日で1-6した時点で普通は終了だ。でも僕は後に引けなくなった。結局2日間全ラウンドでプレイしたんだ」

 当時の世界選手権では1勝ごとにプロ・ポイント1点が付与されたが、それは3勝した後に得られる特典だった。そしてパーディーは、最終的にわずか2勝しかできなかった。

「だからプロ・ポイント『-1点』くれってお願いしたよ」とパーディーはジョークを飛ばす。「(ウィザーズは)対応してくれなかったけどね」

 こんな話を楽しそうに語るパーディーにその理由を聞いてみると、彼はこう答えた。「僕はみんなが思うほど気に病んでいないから、ある意味では、そんな目にあうのが僕でよかったと思っている。もちろん負けるのは最悪の気分だし、世界選手権で勝ちたいという思いもあった。でもこの舞台に立ったばかりなんだから、これだけ負けることもあるだろうと納得したんだ。ちなみに僕の記録を打ち破るのはかなり難しいと思う。そもそも初日落ちがなくずっと戦える機会がめったにないだろうし、高いレーティングに到達するまで勝って、そこから振り出しに戻るくらい負けなきゃいけない。どちらも高いハードルだよ」

 『ストリクスヘイヴン』チャンピオンシップで優勝したことにより、パーディーは再び世界選手権の舞台に立つためのチャンスを得た。だが彼の目は今、その目標の前に立ちはだかるポストシーズンの「ガントレット」イベントに向いている。

「今は自分が参加できる『チャレンジャー・ガントレット』が一番楽しみだ。このチャンスに世界選手権への参加権利を獲得したいし、きっと素晴らしい大会になると思う。ここまでのイベントをチェックしてきたけれど、ガントレットに出てくるプレイヤーはみな強者揃いで、MPLの前の時代から知っているプレイヤーも多くいる。その中で戦うのが楽しみだよ」

 『ストリクスヘイヴン』チャンピオンシップへ至る旅路の中でも、大会に向けた練習の中でもそうであったように、パーディーの今後の目標は互いに支え合うプレイヤーたちとの再会だ。大会会場で「よう!」と声をかけるにせよ、大会に向けて練習をともにするにせよ、Discordを通してちょっとおしゃべりを楽しむにせよ、そこに彼の原動力がある。

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(左から)ジェイコブ・ウィルソン/Jacob Wilson、マット・ナス/Matt Nass、サム・パーディー。グランプリ・メキシコシティ2017トップ4入賞の、仲良し3人チーム。

 

「また久しぶりに、古くからの友人と練習したり遊んだりできたらいいね。それが僕にとって大切なことなんだ」

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RESULTS

対戦結果 順位
15 15
14 14
13 13
12 12
11 11
10 10
9 9
8 8
7 7
6 6
5 5
4 4
3 3
2 2
1 1

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