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Red Bull Untapped 2021 日本大会
トップ8決定戦:宇都宮 巧 vs. 矢田 和樹 ~宿命のレッド(ブル)対決~
伏線は、回収されるためにある。
というのも、初日の第7回戦でも登場し、このRed Bull Untappedという大会とのこの上ないシナジーがあることが判明した(?)プレイヤー、宇都宮 巧が、期待に応えてこの「勝てばトップ8」というこの日の最終戦にまで勝ち残ったのだ。
しかも昨日時点では判明していなかったのだが、実はこのデッキ、つい2週間前に第27回マジック:ザ・ギャザリング世界選手権で見事優勝を果たした高橋 優太が製作し、この大会の3日前に記事として公開していた「イゼット・フェニックス」の75枚完全コピーだというのだ。
その意味で今回の宇都宮の快進撃は、もちろん他人が製作したデッキでもきちんと使いこなせる宇都宮の素晴らしい技量があってこそのものだが、高橋が「翼をさずけた」結果と言えるかもしれない。否、実際には一般的な「イゼット・フェニックス」と異なる部分は主に世界選手権を制覇したスタンダードのデッキにも採用されていた《くすぶる卵》なので、いわば「レッドブル 翼をさずける」ならぬ「高橋 卵をさずける」(?)といったところか。
対し、BIGs所属の矢田 和樹も3度のグランプリトップ8経験を持つ強豪。この大会の前週あたりからにわかに注目を集めていた流行のデッキである「赤単マッドネス」を駆り、ここまで勝ち上がってきた。
そしてこのマッチに伏線めいたものの存在を感じさせるのは、何も高橋がデッキを提供したという件があったからというだけではない。宇都宮のデッキには2枚、矢田のデッキにも1枚、この場を象徴する「とあるカード」が採用されているからだ。
そう、《アゴナスの雄牛》。つまりこのマッチはこれ以上ないほどに最終戦にふさわしい、正真正銘の「レッドブル対決」であると言えるわけだ。
互いに赤を主軸にした攻撃的なデッキタイプながら、リソース勝負にも長けたデッキ同士。ねじり合いを制してトップ8に進出するのは、はたしてどちらか。
ゲーム1
先攻の宇都宮が《ドラゴンの怒りの媒介者》スタートに対し、矢田も《信仰無き物あさり》から《マナ喰らいのフェニックス》《猛火のルートワラ》を捨ててルートワラを「マッドネス」する最高の立ち上がり。返す宇都宮も《くすぶる卵》で応え、互いにエンジン全開の様子である。
対し、矢田も1点アタックを通した後に《ドラゴンの怒りの媒介者》を送りだすのだが、宇都宮は《ドラゴンの怒りの媒介者》の2体目を着地させてから《邪悪な熱気》を矢田の《ドラゴンの怒りの媒介者》に打ち込み、「諜報」2回で細かく差を付けにいく。
宇都宮の側に恒久的な対処方法が存在しないために事実上永続的なクロックとなる《マナ喰らいのフェニックス》が既に矢田の墓地に落とされている以上、ゲームの焦点は「宇都宮がいかにしてダメージレースを切り返すか」でしかありえない。
そのことを認識している矢田は《猛火のルートワラ》が《ドラゴンの怒りの媒介者》と相打ちになった後に《歴戦の紅蓮術士》を召喚し、手札を変換しつつ土地を墓地に送り込んで《邪悪な熱気》の「昂揚」を狙いにいく。
対する宇都宮は「諜報」で落としていた《信仰無き物あさり》の「フラッシュバック」から《考慮》とつなげて《くすぶる卵》の変身を目論むが、返す矢田はここでトップデッキした4種類目のカードタイプとなるインスタントの《棘平原の危険》を宇都宮本体に打ち込むと、満を持して「昂揚」を達成した《邪悪な熱気》2枚で《くすぶる卵》《ドラゴンの怒りの媒介者》を除去しつつ《マナ喰らいのフェニックス》を墓地から戦場に戻すビッグプレイ!
これによりゲームプランの変更を強いられることとなった宇都宮はひとまず「レッドブル」こと《アゴナスの雄牛》を通常プレイしてリソースを補充しにかかるのだが、なおも矢田は《歴戦の紅蓮術士》でさらなる《マナ喰らいのフェニックス》を捨てると、飛行3点アタックから4/4サイズの《マグマの媒介者》を召喚して攻め立てる。
一方宇都宮も《信仰無き物あさり》を表裏連打して探し当てた《邪悪な熱気》でこれに対処しつつ、道中で捨てられた《弧光のフェニックス》を墓地から戦場に戻してブロッカーに立てるのだが、そもそも速攻を生かして切り返しの攻撃に移れないということ自体が宇都宮の不利を表しており、引き込んだフェニックスの枚数差が響いている格好。
他方、いまだに呪文が途切れない矢田はフェニックス同士が相打ちとなった後に《信仰無き物あさり》「フラッシュバック」からの《癇しゃく》「マッドネス」で、宇都宮のライフを残り8点まで追い込みつつ《マナ喰らいのフェニックス》のカウンターを再度溜め、攻撃の手を緩めない。
それでも宇都宮はドロー呪文を連打して《弧光のフェニックス》を再度復活させるのだが、《歴戦の紅蓮術士》のトークンと矢田の土地の中に密かに紛れた《バグベアの居住地》《ラムナプの遺跡》のプレッシャーが高く、切り返しに移ることがやはりできない。
やがて矢田が《邪悪な熱気》でブロッカーの《弧光のフェニックス》を除去しつつのフルアタックを敢行すると、宇都宮もさすがと言うべきか最後に抱えていた《邪悪な熱気》でお返しとばかりに《マナ喰らいのフェニックス》を除去してライフを残し、ブロックで墓地に落とした《アゴナスの雄牛》に望みを託すのだが、わずかに残ったそのライフを矢田の《癇しゃく》がピッタリ削りきったのだった。
宇都宮 0-1 矢田
ゲーム2
宇都宮がワンマリガンながらも2ターン目《くすぶる卵》という、赤単に対する最高の立ち上がり。これに対して矢田も《信仰無き物あさり》→《ドラゴンの怒りの媒介者》からの《魂標ランタン》で「諜報」し、早くも2体の《マナ喰らいのフェニックス》を墓地に落としにいく。
だが宇都宮はさらに2体目の《くすぶる卵》から《邪悪な熱気》で《ドラゴンの怒りの媒介者》を除去という理想的なムーブを継続。クロックを捌き、あとは変身までつなげるだけだ。
こうなると《くすぶる卵》の除去手段が欲しい矢田は《歴戦の紅蓮術士》でライブラリーを掘りにいくが、なおも返すターンの宇都宮は強気に《寓話の小道》をセット→起動から《表現の反復》! そしてこの「スペル2枚以外受け取る気はない」と言わんばかりのプレイが功を奏したか、1枚で4マナ分の燃えさし・カウンターを溜められる《信仰無き物あさり》を見つけ、即座に唱えて《アゴナスの雄牛》を墓地に送り込みつつ燃えさし・カウンターを4個とする。
それでも矢田は《反逆の先導者、チャンドラ》をプレイし、《マナ喰らいのフェニックス》1体を戦場に戻しつつ[-3]能力で《くすぶる卵》のうち1体を除去。さらに《魂標ランタン》を起動し、《信仰無き物あさり》《アゴナスの雄牛》などのリソースを墓地から綺麗に追放する。
だが宇都宮はエンド前の《考慮》でさらなる《信仰無き物あさり》を墓地に落とすと、「フラッシュバック」で唱えてついに《灰口のドラゴン》へと変身させ、さらに変身解決後に《信仰無き物あさり》をスタックに置きつつ《選択》をプレイというテクニックで呪文詠唱回数を稼いで、一切の無駄なく《反逆の先導者、チャンドラ》を落とすことに成功する。
こうなると矢田の《マナ喰らいのフェニックス》と宇都宮の《灰口のドラゴン》、どちらが早く相手のライフを削りきれるかという展開だが、「イゼット・フェニックス」の側には手札を交換するドロー呪文が大量に搭載されており、さすがに矢田の分の悪さは否めない。
それでも矢田は《信仰無き物あさり》を「フラッシュバック」で《マナ喰らいのフェニックス》を墓地から戻しながら《猛火のルートワラ》を「マッドネス」で召喚して最大出力で攻め立てるのだが、宇都宮は《考慮》を唱えて飛ばした2点で《歴戦の紅蓮術士》を除去してライフを守ると、しかもこれによって墓地に落ちたのがさらなる《信仰無き物あさり》!
さらに第2メインに《ドラゴンの怒りの媒介者》を立て、あわよくばブロックと手札に構えた《棘平原の危険》との合わせ技でどうにか《灰口のドラゴン》を除去しようと目論む矢田に対し、宇都宮は《表現の反復》からダメ押しの《約束の終焉》!
銃弾の嵐のように2点ダメージが飛び、矢田の戦線はもはや壊滅状態。無限に続く呪文連打で《灰口のドラゴン》にすべてのクロックを捌かれた格好となってしまった矢田に、もはやここから逆転できる手段が残されているはずもなかった。
宇都宮 1-1 矢田
ゲーム3
矢田がワンマリガンの土地1枚キープながらも《ドラゴンの怒りの媒介者》スタート、さらに2ターン目には《信仰無き物あさり》で土地を引き込みつつ《癇しゃく》と《ボーマットの急使》を捨てて2ターン目に早くも「昂揚」させながら3点を刻む。加えて戦闘後に2体目の《ドラゴンの怒りの媒介者》を送りだすというぶん回り。
《くすぶる卵》に対しても自身のアップキープに《邪悪な熱気》を打ち込み、「諜報」2回でライブラリーを掘りつつ切り返しの起点となる脅威をしっかりと除去。3枚目の土地にこそたどり着けなかったものの6点アタックで早くも宇都宮のライフを残り9点まで追い詰め、このままマッチの決着かと思われた。
だが、返すターンに宇都宮が唱えたのは《神々の憤怒》! 頼みの綱だった2体の《ドラゴンの怒りの媒介者》が、追放領域へと藻屑のように消えていく。
しかもなおも3枚目の土地が引けていない矢田が引き込んだ《猛火のルートワラ》を出すしかない一方で、宇都宮はさらに2体目の《くすぶる卵》を立てる。これは矢田が間一髪トップした《邪悪な熱気》で対処するも、《猛火のルートワラ》も《邪悪な熱気》されてしまいダメージが刻めない。さらに返す宇都宮は《表現の反復》で3枚目の《くすぶる卵》にたどり着くという仕上がりっぷり。
他方、なおも土地を引かない矢田はそれでも《マグマの媒介者》で対処を迫るが、《選択》《表現の反復》とライブラリーを掘りつつ燃えさし・カウンターを貯めた宇都宮は《霊気の疾風》にたどり着く。変身が目前のこの局面で1ターンも無駄にできない矢田はボトムに送らざるを得ないが、さらに《魂標ランタン》が設置されると矢田の《邪悪な熱気》が封じられ、《くすぶる卵》への対処手段がほとんどなくなってしまう。
それでもこのタイミングでようやく3枚目の土地を引き込んだ矢田だったが、すでに「諜報」で1枚が墓地に落ちており《くすぶる卵》へのカード単体での対処手段としては事実上最後の1枚となる《反逆の先導者、チャンドラ》を抱えているため、《歴戦の紅蓮術士》を出せない状態に追い込まれるという噛み合いの悪さ。
結局1ターンパスとなってしまう矢田だったが、その1ターンが致命的だった。さらなる《表現の反復》で《灰口のドラゴン》が孵ると、続けて宇都宮が唱えたのは《約束の終焉》!
これによって決定的なまでにリソース差が広がってしまうと、それは文字通りこの長かった対戦の終焉を意味していた。
返す矢田はようやく引き込んだ4枚目の土地から《反逆の先導者、チャンドラ》をプレイして《灰口のドラゴン》こそ落とすものの、有り余るリソースから放たれた2体の《弧光のフェニックス》が、速やかに矢田のライフを削りきったのだった。
宇都宮 2-1 矢田
宇都宮 巧、トップ8進出!
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