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Red Bull Untapped 2021 日本大会
第7回戦:佐藤 レイ vs. 宇都宮 巧 ~レッドエッグ、翼をさずける~
5勝1敗で第7回戦のフィーチャーマッチに選ばれたのは、MPLからMPLガントレットに進出し、第4回戦で登場した井川と同様に全世界で16名しか出場できない第27回マジック:ザ・ギャザリング世界選手権にも出場したMPLプレイヤー、佐藤 レイだ。
対する宇都宮 巧は、3度のグランプリトップ8経験のほかプロツアー出場経験もあり、今年に入ってからは4月の日本選手権2021 SEASON1でもトップ8に入賞した構築フォーマットの名手。
デッキは佐藤が使用人数では4番手のアーキタイプである「白緑人間」を駆るのに対し、宇都宮は今大会の使用率13%超えで押しも押されぬトップメタである「イゼット・フェニックス」。だが、宇都宮のリストはテンプレートとは少し異なる調整が施されている様子。
ここで勝利すれば2日目進出は確定的というところ。はたして勝つのは人間の叡智か、それとも不死鳥の生命力か?
ゲーム1
先攻の宇都宮が《ドラゴンの怒りの媒介者》スタートに対し、後攻の上にダブルマリガンの佐藤は《エスパーの歩哨》を召喚する立ち上がり。が、これは追加1マナを支払いながらの《邪悪な熱気》で処理される。
佐藤が続けて《スレイベンの守護者、サリア》を送り出すとここには除去が飛んでこず、セットランドのみでターンを返す宇都宮に対して2点アタックから《不屈の護衛》を出すが、ダブマリが響いて3枚目の土地が置けない。一方宇都宮はエンド前の《選択》で見つけた《くすぶる卵》を返しに召喚する。
一般的なリストに採用されている《スプライトのドラゴン》でも《弾けるドレイク》でも《嵐翼の精体》でもなく、《くすぶる卵》を採用しているのが宇都宮のリストの特徴だが、0/4というサイズがアグロに対してすこぶる強いことは言うまでもなく、想定マッチアップにきっちりハマった格好となる。
さらに面白いのは、この局面で佐藤の《スレイベンの守護者、サリア》で呪文が重くなったことで相乗効果を発揮している点だ。「イゼット・フェニックス」というデッキは軽い呪文を連打するデッキのため《スレイベンの守護者、サリア》は除去対象となりやすいが、そもそも《スレイベンの守護者、サリア》が生きていると「白緑人間」の側も《集合した中隊》がかなり打ちづらくなるというジレンマがある。
そこに《くすぶる卵》があれば、《スレイベンの守護者、サリア》を生かしておきつつも打点としては殺した状態にすることで相手の《集合した中隊》を封じながら戦える上に、《スレイベンの守護者、サリア》で重くなったマナの分も燃えさし・カウンターが置かれるので、少ない呪文の使用回数で《くすぶる卵》を変身させられるということになるのだ。
一方、それ以前になおも土地が詰まっている佐藤は《サリアの副官》で強引に打点を伸ばしにいくが、3/2サイズが2体という状況で0/4にすっかり打点を吸収されてしまっている。さらにエンド前の《選択》で《大魔導師の魔除け》を手札に加えた宇都宮は続けて自ターンに《表現の反復》から《ドラゴンの怒りの媒介者》を送り出し、《くすぶる卵》の変身まであとカウンター1個という状態まで持っていく。
ここでようやく3枚目の土地を引いた佐藤は《イーオスのレインジャー長》から《巨人落とし》をサーチするが、2体目の《くすぶる卵》までもが着地し、いよいよ猶予がない。
それでも返すターンに4枚目の土地が引けなかった佐藤は、「出来事」モードが構えられない《巨人落とし》をやむなく召喚してからの《サリアの副官》で戦線を打開しにかかる……が、ここには待ってましたとばかりの宇都宮の《大魔導師の魔除け》が打ち消しモードで当たり、「レッドブル」ならぬ「レッドエッグ」が翼をさずかって《灰口のドラゴン》へとついに孵化したのを見届けたところで、佐藤はたまらず投了ボタンを押すことを選択したのだった。
佐藤 0-1 宇都宮
ゲーム2
《光輝王の野心家》スタートの佐藤に対し、《邪悪な熱気》を2枚持っていた宇都宮だったが、これを放置して《くすぶる卵》からの立ち上がり。だが、返すターンに佐藤が3枚目の土地を置けないながらも《サリアの副官》を召喚したことで、一気に4/4サイズにまで育つのを許してしまう。
とりあえずメインで《選択》を唱える宇都宮だったが目当ての《溶岩コイル》は見つからず、むしろこのアクションの結果2マナしか余らせなかったことで、続けて出てきた《エスパーの歩哨》用の追加マナを支払う余裕がなくなってしまう。さらに《巨人落とし》も追加されてからの戦闘は、どうにか《邪悪な熱気》2枚で4/4となった《サリアの副官》を討ち取るも、《光輝王の野心家》が定着している上に手札の呪文はすでに尽きている始末。
それでも、ここで宇都宮が引き込んだのは《信仰無き物あさり》!……だが期待に胸を躍らせてのドローは土地2枚で、「フラッシュバック」と合わせて《灰口のドラゴン》へと変身はさせるものの、マナはフルタップ、しかも手札はなおも土地ばかり。
しかも佐藤が返すターン唱えたのは《ドロモカの命令》!《灰口のドラゴン》を屠った《光輝王の野心家》はいよいよ5/5にまで成長し、フルアタックを受けて宇都宮の残りライフは4点と既に風前の灯。
さらに《不屈の護衛》を追加されたところで、ようやくトップした《神々の憤怒》と《溶岩コイル》との合わせ技で盤面を《エスパーの歩哨》のみの状態にする……のだが、そもそも佐藤は土地が詰まっていた上にこれまでの呪文詠唱のたびに散々カードを引かれてしまっており、宇都宮の手札が空っけつなのに対して佐藤はなおも無数にクリーチャーを出し続けられるのだった。
佐藤 1-1 宇都宮
ゲーム3
除去なし、しかも土地が2枚のみで、相手の《スレイベンの守護者、サリア》でハマりそうな手札を意を決してキープした宇都宮。1ターン目《エスパーの歩哨》、2ターン目《スレイベンの守護者、サリア》という佐藤のロケットスタートに対し、スタック《考慮》で3枚目の土地をどうにか掘り当てると、キープ基準となったカードを戦場に叩きつける。
すなわち、《歴戦の紅蓮術士》! これによって4/4サイズ分のブロッカーを供給すると同時に一気に手札をシェイプアップした宇都宮は、返す動きが《スレイベンの検査官》のみで初動以外満足なカードを引けていない佐藤を尻目に《くすぶる卵》をも着地させ、ゲームを加速させていく。
一方、早急にこの「レッドエッグ」を対処しなければならないはずの佐藤の続くアクションは《安らかなる眠り》でいまいち噛み合わない。
そしてまたしても相手の《スレイベンの守護者、サリア》の手伝いで重くなった《考慮》と《邪悪な熱気》で燃えさし・カウンターを溜めた宇都宮は、さらに《表現の反復》から《選択》と唱えてついに「レッドドラゴン」へと翼をさずける。
あふれんばかりのエナジー(?)を受けて意気軒高な様子の《灰口のドラゴン》を前に、マナフラッドに陥ってしまっていた佐藤は自らのアイコンを爆発させるほかなかった。
佐藤 1-2 宇都宮
ちなみに、この後宇都宮は初日最終第8回戦で敗北するも、6勝2敗で10位と「イゼット・フェニックス」勢としては最上位の成績で2日目に進出することとなった。
よくよく考えてみるとこの「イゼット・フェニックス」というデッキには、レッドブル飲んだら「昂揚」して翼をさずかる《ドラゴンの怒りの媒介者》と、7マナ分もレッドブル飲みまくってドラゴンに孵化する《くすぶる卵》と、レッドブル3本飲んだら墓地から出てくるほどテンション上がっちゃう《弧光のフェニックス》とが入っている。さらに宇都宮は《アゴナスの雄牛》という限りなく本物に近い「レッドブル」も採用しているわけで、このRed Bull Untapped 2021という大会にこれ以上ふさわしいデッキもない(?)ようにも思える。
はたしてこの符合・伏線は回収されるのか。宇都宮の2日目の活躍に期待したい。
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