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プロツアー『ファイレクシア』
「プロツアー・ファイレクシア」トップ8ハイライト
2023年2月20日
(編訳注:埋め込み動画は英語実況のものです。)
トップ8ラウンドの開幕を飾るのは、現世界王者の対戦だった――他に誰がふさわしいというのだろう? 世界王者ネイサン・ストイア/Nathan Steuerと、同じく昨年の世界選手権に出場した殿堂顕彰者リード・デューク/Reid Dukeによる、大注目の一戦だ。テーブルトップのイベントの決勝ラウンドの舞台でこの両者が対峙し、怪物同士による決戦で日曜日が始まった。
両者とも、眩しい照明の中での戦いは十分に経験している。今大会では比較的控えめなスタートを切った両者だが、その後はそれぞれパイオニアのデッキの強さを土台に、着実に順位を上げていった。ストイアは《睡蓮の原野》をアンタップして大量のマナを生み出すオールイン・コンボを振り回し、一方のデュークは《不屈の独創力》から《歓楽の神、ゼナゴス》と《世界棘のワーム》を繰り出し30点のダメージを速攻で叩き込むというコンボ要素を持ったコントロールを選択した。
パイオニアでは一方的なマッチアップになることがあるが、この開幕の一番は互いのサイドボードが物語を紡いだ。ストイアは、デュークがなすすべなく見守る中で最初の2ゲームを素早く取った。さしもの達人も、1ターン目《樹上の草食獣》からマナの面で先行できる「ロータス・コンボ」デッキの爆発力を前にしては、妨害も速度も足りなかった。
こうして早くも、世界王者が殿堂顕彰者を追い詰めた。だがそこからは、デュークがありったけの打ち消し呪文を備えたサイドボードありのゲームだ。
打ち消しは大量にあった。《かき消し》に《軽蔑的な一撃》、《霊気の疾風》 ……デュークはストイアが繰り出そうとする脅威にすべて対応できた。《熟読》にも、サイドボードから投入した《龍王ドロモカ》や《終止符のスフィンクス》にも。
そして防御に徹していたデュークは、そこから3連勝で鮮やかな逆転劇を演じた。彼はストイアのコンボを何度も弾いた後に、《不屈の独創力》を決めてみせたのだ。第3ゲームはこのコンボをサイドアウトして臨み、第4ゲームでコンボを成功させる展開は、衆目を驚かせた。こうしてデュークは準決勝へ進出し、八十岡 翔太とデリック・デイヴィス/Derrick Davisの試合の勝者と対峙することになったのだった。
準々決勝第1試合と同様に、八十岡とデイヴィスの試合も一気に勝負が決した。デイヴィスが八十岡を3連勝で下したのだ。ラクドス・デッキが《創案の火》や《奇怪な具現》といったエンチャントなど特定のパーマネントへの対処に苦労することを考えると、その展開も大きなショックを受けるものではないだろう。だが八十岡を3連勝で破ったという事実は他のトップ8プレイヤーに衝撃を与えた。こうしてコンボを操るデイヴィスがデュークとの試合に臨むことになった。
もう一方のブラケットでも早い展開で試合は進んだ。そしてそれは、「ロータス・コンボ」使いにとって苦しいものだった。クリス・ファーバー/Chris Ferberは彼が使うコンボ・デッキの呪文を武器にトップ8までの道のりを歩んできた。しかしそれらの呪文は《スレイベンの守護者、サリア》を前にしては力を発揮できず、松浦 拓海が操る爆発的で驚くほど破壊的な「白単人間」デッキには不利を被る形になった。
ベントン・マドセン/Benton Madsenもまた、ガブリエル・ナシフ/Gabriel Nassifを素早く打ち倒し、見るものを驚かせた。殿堂顕彰者が差し向ける妨害手段や除去は、呪禁や《離反ダニ、スクレルヴ》に守られたクリーチャーの軍勢には効かず、ナシフは真っ直ぐ力強く向かってくるオーラ・デッキに負けずコンボのパーツを揃えるという苦しい戦いを強いられることになった。「ボーグルズ」はわずか4ゲームでナシフを敗退させたのだった。
こうして、戦いの舞台は準決勝へ。デュークはデリック・デイヴィスの「エニグマ・ファイアーズ」とのコンボ・デッキ同系戦に臨んだ。準々決勝でコントロールとコンボを自在に切り替えて戦ったデュークだが、ここでもデイヴィスを相手に同じ戦略を取ることができた――しかも今度は、0-2の崖っぷちからではない。デュークは第1ゲームを先取し(これで前の試合から4連勝)、デイヴィスにプレッシャーを与える側になった。
しかしデイヴィスにも秘策があった。地域チャンピオンシップでもトップ8に入賞したこのアトランタ出身のプレイヤーは、週末を通してプレッシャーに耐えてきた。2勝2敗から一歩ずつ順位を上げてここまできたのだ。そんな彼が大舞台で披露する秘策、それは《裏切りの工作員》でデュークのカードを彼自身に差し向けることだった。
しかし残念ながら、デイヴィスが殿堂顕彰者を制することができたのはその一度だけだった。サイドボーディング後のゲームが始まると、「イゼット・スペル」へと形を変えたデッキが高い柔軟性を発揮した。デュークはコントロールとコンボの戦い方をスムーズに切り替え、超巨大なワームを速攻で走らせゲームを決めるという脅威を与えながらデイヴィスのプランを挫いたのだった。
残るは、デュークの決勝戦の相手を決める戦いだ。その席には、今回自身初のトップ8入賞を果たした2人のどちらかが座ることになる。松浦の「白単人間」はこの週末を通して彼の活躍を支え、一方マドセンの「セレズニア・オーラ」は対戦相手の多くのカードを「機能不全」にすることから、「プロツアー・ファイレクシア」で最も強力なデッキ選択の1つであったことを証明してきた。
決勝戦の舞台に上がる権利を懸けた大事な一戦で、マドセンは最高の動きを見せた。「人間」は大量のマナを使うコンボ・デッキを仕留めるのには優れたデッキだが、マドセンが詰め込んだ1~2マナのオーラに対しては大きな優位を得られなかった。松浦はマドセンのライフを攻めてプレッシャーをかけるものの、武装を固めた《林間隠れの斥候》を相手に盤面の主導権を握れない。いずれも素早い展開の3ゲームを経て、マドセンの初出場のプロツアーにおける奇跡的な歩みは、ついに終着点へたどり着いた――リード・デュークとの決勝戦という最高の舞台へと。
(Tr. Tetsuya Yabuki)
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