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プロツアー『ゲートウォッチの誓い』
準決勝:Patrick Dickmann(ドイツ) vs. Ivan Floch(スロバキア)
Jacob Van Lunen / Tr. Tetsuya Yabuki
2016年2月7日
パトリック・ディックマン/Patrick Dickmann(親和) vs.イヴァン・フロック/Ivan Floch(無色エルドラージ)
今大会の準々決勝にて、パトリック・ディックマンは「エルドラージ」をひとつ切ってきた。彼のロボ軍団は3ゲームを瞬く間に奪い取り、アンドリュー・ブラウン/Andrew Brownを圧倒したのだ。
そして今、彼は再び「エルドラージ」と対峙する。相手はプラチナ・レベル・プロのイヴァン・フロック。プロツアーでの活躍目覚ましい、世界のベスト・プレイヤーと広く考えられている者のひとりだ。フロックは準々決勝にて、フランク・ルポール/Frank Leporeとの長い同系戦を経て、自身の方がこのデッキに熟達していることを証明してきた。
ディックマンはトップ8の舞台を知っている。プロツアー『神々の軍勢』にて、彼はトップ4に入賞したのだ。今私たちの目に映る彼は、2年前初めてプロツアー・サンデーの舞台に立った若きプレイヤーとは大きく異なる。不安と緊張が消えた彼の顔にあるのは、静かな自信のみだ。ここでの勝利は、ディックマンが殻を破る機会となるだろう。これまで成し遂げたことのない成功が、彼の経歴に加わるのだ。
フロックは長い間、プロツアー・トップ8入賞と縁のない日々を送ってきた。その日々はプロツアー『基本セット2015』にて終わりを告げ、そこから彼はあらゆる勝利を手にした。そして今日も、彼の姿は私たちの前にある。わずか2年に満たぬ間に、プロツアー・トップ8入賞3回。ここで再び優勝を勝ち取ろうものなら、同世代のプレイヤーでもひと際優れた者としての評価を確実にするだろう。
席についた両者は試合前のトークを始める。「さて、無敗の最強デッキ同士の戦いか」とフロックは言い放った。
「君も負けてないの?」とディックマンが問うと、「ああ」とフロックは答える。ディックマンは眉を上げ、「珍しいこともあるもんだね」と言葉を漏らした。
ディックマンの発言は正しい。プロツアーの構築部門無敗はそう簡単に達成できるものではない。その偉業を果たした者同士が準決勝の舞台で対峙するとは、驚くばかりである。
ゲーム展開
両者とも初手をキープし、ディックマンが《メムナイト》で戦いの火蓋を切った。それ自体は恐るべきものではないが、これが出てくるということはディックマンの手札が強力なツールで満ちているというサインだ。
フロックは《漸増爆弾》を設置し、カウンターを乗せていった。しかしディックマンもその間に《バネ葉の太鼓》に《鋼の監視者》と盤面を築き上げていく。フロックは《鋼の監視者》を《四肢切断》し、《エルドラージのミミック》を展開するとこちらも攻撃的な姿勢を見せた。ディックマンは《メムナイト》をもう1枚追加し、《エーテリウムの達人》を展開。ディックマンの攻撃に対してフロックは、《エルドラージのミミック》と《メムナイト》の交換を選んだ。
《漸増爆弾》は依然として脅威ではあるものの、ディックマンはそれに対して最適なプレイングを行った。各マナ域のカードを1枚ずつ繰り出しながら、アーティファクトの強力な相互作用での攻撃を可能にしたのだ。
《作り変えるもの》がフロックの盤面に現れるものの、《電結の荒廃者》を加えたディックマンの戦線から《エーテリウムの達人》を相討ちに取るには不十分なサイズだった。
ディックマンが攻撃を宣言すると、フロックは熟考した。そして《作り変えるもの》で《エーテリウムの達人》をチャンプ・ブロックし、《ちらつき蛾の生息地》を戦場に出した。
フロックは盤面にクリーチャーを失い、ディックマンの強大な軍勢と対峙することになった。カウンターをふたつ乗せた《漸増爆弾》による防御が利いているように見えるが、ディックマンは2マナのアーティファクトを《電結の荒廃者》で生け贄に捧げ、その後+1/+1カウンターを《メムナイト》に注ぎ込んだ。
X=5の《果てしなきもの》はディックマンの軍勢を倒せるだけの力を持っていたが、《頭蓋囲い》がその計算を狂わせる。ディックマンの攻撃で一度に12点ものライフを削られると、残りライフ4点となったフロックに残されたのはあと1ターンとなった。
そしてディックマンのロボ軍団がもう一度攻撃を仕掛けると、このゲームの勝利を決めたのだった。
2ゲーム目も両者7枚でキープ。フロックは2ターン目《果てしなきもの》、ディックマンは《信号の邪魔者》でゲームを始める。
フロックが続けて《作り変えるもの》を展開すると、ディックマンはこのマッチアップにおいて最も強力なカードの1枚である《鋼の監視者》で応えた。それでもフロックはディックマンのライフを攻めながらX=4で《果てしなきもの》を追加し、ライフ・レースを優位に進める。《鋼の監視者》の能力も《真髄の針》で止めると、フロックはディックマンのライフを残り10点まで削った。
そこでディックマンは《電結の荒廃者》を複数枚連打し、続くターンに大量のダメージが叩き出せる体勢を作った。フロックは《ちらつき蛾の生息地》で攻撃を続けるものの、これでライフ・レースはディックマン有利に傾いた。
しかし、それもフロックが2枚目の《真髄の針》を引き込むまでのことだった。
ディックマンは選択肢を吟味するものの、フロックの《ちらつき蛾の生息地》2体を突破するすべが見つからない。このゲームはやや膠着した状態になり、両者とも先に動くのを嫌った。相討ち上等の殴り合いは、突如として両者を複雑な盤面へ誘うもつれ合いに変わったのだ。
最終的に、フロックが毎ターン《ウギンの目》の能力を起動できるようになると、この膠着状態は終わりを迎えた。ディックマンは破滅の兆候を悟ると、カードを片付けて次のゲームに向かった。
3ゲーム目、初手をキープしたフロックに対して、ディックマンの7枚は思わしくなく、6枚に減ってもそれは改善されなかった......
「親和」の強さは、カードの相互作用によるものが大きい。だからこのデッキがマリガンを喫すると、その動きは酷いものになってしまう。5枚からの勝利も不可能ではないものの、それは茨の道だ。
ディックマンは《大霊堂のスカージ》で初動を飾るものの、それを《はらわた撃ち》で対処されると続くターンには《バネ葉の太鼓》をプレイするのみとなった。
一方のフロックは《エルドラージのミミック》、《作り変えるもの》、《現実を砕くもの》と強烈な回りを見せ、立ち上がろうとするディックマンをあっという間に倒したのだった。
ディックマンは4ゲーム目でも再び初手に悩まされ、フロックは7枚の手札に満足できた。フラストレーションを溜めるディックマンに対し、フロックの心はディックマンがそうありたいと願うほどに穏やかで揺るぎない。今回はマリガン1回で手札が改善され、ディックマンは《信号の邪魔者》で勝負の幕を開けた。
フロックはそこへ《はらわた撃ち》を差し向けると、《ウギンの目》により《エルドラージのミミック》を0マナで繰り出す。
ディックマンは続くターンに《羽ばたき飛行機械》へ《頭蓋囲い》を装備したが、フロックは《猿人の指導霊》を2枚消費して早くも《現実を砕くもの》を繰り出し、5/5となった《エルドラージのミミック》とともに攻撃に向かわせて10点もの打撃をディックマンに与えた。
ディックマンは《物読み》を唱え小型のクリーチャーを戦線に加えるが、フロックの《四肢切断》が《大霊堂のスカージ》へ撃ち込まれ再びの強打が襲いかかると、彼は引きつった笑顔を見せ始めた。これでディックマンのライフは残り3点と追い込まれた。
《頭蓋囲い》も、《漸増爆弾》によって実質的に機能せず。最後の攻撃がイヴァン・フロックを決勝の舞台へ上がらせたのだった。
イヴァン・フロックがパトリック・ディックマンを3勝1敗で下し、決勝へ!
4 《ちらつき蛾の生息地》 4 《ダークスティールの城塞》 4 《空僻地》 4 《墨蛾の生息地》 1 《島》 -土地(17)- 4 《羽ばたき飛行機械》 3 《メムナイト》 4 《信号の邪魔者》 4 《電結の荒廃者》 4 《鋼の監視者》 4 《大霊堂のスカージ》 2 《呪文滑り》 4 《エーテリウムの達人》 -クリーチャー(29)- |
4 《オパールのモックス》 4 《バネ葉の太鼓》 4 《頭蓋囲い》 2 《物読み》 -呪文(14)- |
2 《思考囲い》 1 《墓掘りの檻》 1 《はらわた撃ち》 1 《頑固な否認》 3 《古えの遺恨》 1 《虚空の杯》 1 《鞭打ち炎》 2 《刻まれた勇者》 2 《ギラプールの霊気格子》 1 《四肢切断》 -サイドボード(15)- |
4 《ちらつき蛾の生息地》 4 《エルドラージの寺院》 4 《ウギンの目》 4 《幽霊街》 3 《変わり谷》 3 《ヨーグモスの墳墓、アーボーグ》 2 《荒地》 -土地(24)- 4 《果てしなきもの》 4 《エルドラージのミミック》 2 《呪文滑り》 4 《作り変えるもの》 4 《猿人の指導霊》 4 《難題の予見者》 4 《現実を砕くもの》 -クリーチャー(26)- |
4 《虚空の杯》 2 《漸増爆弾》 4 《四肢切断》 -呪文(10)- |
4 《大祖始の遺産》 3 《はらわた撃ち》 2 《真髄の針》 1 《漸増爆弾》 1 《呪文滑り》 1 《歪める嘆き》 3 《忘却蒔き》 -サイドボード(15)- |
RESULTS 本大会の対戦結果・順位
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