プレイヤーズツアーファイナルに出場するには、２日間のスイスラウンドで11回以上の勝利を重ねる必要がある。少なくとも、中村 篤史にとっては。

　プレイヤーズツアー・名古屋2020、そのスイスラウンド最終戦で、中村はいよいよあと１勝というところまでやってきた。あと１勝で、世界最高峰の舞台へ。至高のプレイヤーが集まる激戦区へ足を踏み入れることができる。

　しかし、プレイヤーズツアーファイナルの入口までやってきた中村の前に立ちはだかるのは、そんな世界最高峰の舞台で戦う至高のプレイヤーの１人だった。

　アジア最強のプレイヤーとの呼び声も高い、MPLプレイヤーが１人。Hong Kong's Champion（香港の王者）、リー・シー・ティエン/Lee, Shi Tian。

　全世界2000万人にも及ぶマジック人口、その頂点に立つのがMPLプレイヤーだ。そのリーが今、挑戦者・中村 篤史と相対する。

　はたして中村はこのあまりにも強大なラスボスを倒し、プレイヤーズツアーファイナルへと足を踏み入れることができるのか。

中村 篤史(写真左) vs. リー・シー・ティエン(写真右)

ゲーム１

　後攻の中村が１ターン目から《戦慄の放浪者》で動き出すと、リーは《思考囲い》で中村の手札から《漆黒軍の騎士》を抜きつつ《致命的な一押し》で《戦慄の放浪者》を除去する。

　効率的に、そして的確に攻撃の担い手を処理されてしまった中村は、空白の第２ターンを迎え、続く第３ターンにやむなしとばかりに《思考囲い》でリーの手札を覗き見る。しかし、これに対応してリーは《海の神のお告げ》。このエンチャントが、リーの手札にあった唯一の呪文だった。

　空振りに終わった《思考囲い》だったが、得たものはあった。少なくとも、リーの手札に除去はない。続くターンに《どぶ骨》と《残忍な騎士》を送り出し、返すリーの《神秘を操る者、ジェイス》には２枚目の《残忍な騎士》で応じ、いよいよ中村が急襲の狼煙をあげようとしていた。

中村 篤史

　だが、中村が序盤に攻めあぐねていた分、リーには時間が与えられていた。そしてその時間はリーに勝利をもたらすのに十分なものだった。

　中村のターン終了時に唱えられた《時を越えた探索》が《真実を覆すもの》を探し出し、続くリーのターンにプレイされる。これによって、墓地にあった《神秘を操る者、ジェイス》と《時を越えた探索》の２枚が新たなライブラリーとなり、中村は事実上の王手をかけられる形となった。

　リーのライフはまだ11点も残されており、戦場には６/６飛行。中村がいかにクリーチャーを攻撃に向かわせようと、そのライフを削り切るには至らない。その上、リーの勝利手段に干渉する術もなかった中村は、第１ゲームの勝利を明け渡すこととなった。

中村 0-1 リー

ゲーム２

　《虚空の力線》をキープした中村はゲーム開始とともにリーの目の前に力線を引き、第１ターンに《思考囲い》でリーの手札を狙う。

　明かされたのは《神秘を操る者、ジェイス》、《真実を覆すもの》、《致命的な一押し》、《タッサの神託者》と土地３枚というこれ以上ない布陣。中村はこれに頭を抱えつつも、比較的対処方法が限られる《神秘を操る者、ジェイス》を捨てさせる。

リー・シー・ティエン

　ここまで順調な滑り出しを見せた中村だったが、リーも負けてはいない。中村の２枚の《屑鉄場のたかり屋》にそれぞれ《致命的な一押し》を撃ち込み、しっかりとターンを稼ぐ。その間にも着々と土地は伸び、コンボを始動するのに十分な６マナまでももう一歩という段階まで来ていた。

　ここで中村は２枚目の《思考囲い》でリーの手札を検める。しかし、ここで痛恨のミスをしてしまう。その手札に《タッサの神託者》と《真実を覆すもの》があったのだが、捨てさせたのは２枚目の《神秘を操る者、ジェイス》。

　これが意味することは何か。返すターンに６マナを得たリーは、答え合わせをするかのごとく土地を横向きに寝かせて、《真実を覆すもの》と《タッサの神託者》を並べる。

　リーの新たなライブラリーは０枚。それもそのはず、中村はこのゲームで《虚空の力線》をプレイしており、リーの墓地にカードは１枚もなかったのだ。

　《タッサの神託者》は虚空を映し出す。

中村 0-2 リー