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プレイヤーズツアー・名古屋2020

観戦記事

第9回戦:薬師 英樹(富山) vs. 高橋 優太(東京) ~番町札屋敷~

Hiroshi Okubo

 プレイヤーズツアー・名古屋2020、初日のトップ・オブ・ヒルへと足を踏み入れたのは高橋 優太と薬師 英樹の2人だ。

 グランプリ含め、フィーチャーマッチテーブルに初めて呼ばれたという薬師は、落ち着かないのか延々と高橋に話しかける。全勝ですか、さすがですね、自分フィーチャーマッチ初めてで……高橋も比較的お喋り好きなプレイヤーだが、薬師はそんな高橋をさらに上回っていた。

薬師「すみません、喋ってないと緊張しちゃってw」

 そう言いながら薬師は照れるように笑う。対する高橋は余裕の様子で「おっと。じゃあ黙っていようw」と応じる。高橋は、スポットライトが当たるフィーチャーマッチテーブルも慣れたものだ。

薬師「ミラーマッチですね。うーん、カード散ってるな……これkanisterのリストとは結構違いますよね。ミラーマッチ難しいんですよね。実は今日ミラーマッチやってなくて。サイドボードも……なるほど。いやー、友だちが見てないときでよかった。めっちゃミスりそう。青黒けっこう回してますか? このデッキ強いですよね。試合終わったらいろいろ教えてください。あ、でも負ける気はないですよ。まぁ、負けたくてマジックやってる人なんていませんけどw」

r9_pregame.jpg

 デッキリストを交換している間も、薬師は緊張を紛らそうとしているのか、延々話しかける。それに対して高橋もなんだかんだで「この対戦形式(対戦前にデッキリスト公開)だとカード散らした方が有利ですよ」「あなたのデッキも強いので、油断はしませんよw」と相槌を打っていた。思わずプレイヤーズツアーの一幕であることを忘れてしまうような和やかな雰囲気に、周囲にいたジャッジも思わず微笑を湛えながらテーブルを眺めていた。

 しかし、あくまでもこれはプレイヤーズツアー・ファイナルへと続く長い道のりの大事な一歩であることに違いはない。互いにデッキリストを確認し終え、シャッフル、マリガンまでを終えると、いよいよ初日最終戦が幕を明けることとなった。

 今宵、井戸からいでしは久遠の闇の怪物。1枚足りないのは皿か札か。番町札屋敷のはじまりはじまり。

薬師 英樹(写真左) vs. 高橋 優太(写真右)
ゲーム1

 ゲームが始まるやいなや、すぐさま《寓話の小道》をセットしてターンを終える薬師に対し、高橋は第1ターンからじっくりと考え込みながら《湿った墓》をショックイン。その後もさらに熟考し、《思考囲い》で薬師の手札を覗き見る。そこにあったのは《時を越えた探索》2枚に《湖での水難》、《湿った墓》、《水没した地下墓地》、そして《寓話の小道》だった。

高橋 優太

 見かけ上はまだまだ勝利が遠そうなその手札を前に、高橋はさらに時間をかけて《時を越えた探索》を選択する。高橋の重々しい沈黙は、この「青黒《真実を覆すもの》」ミラーマッチの難しさを物語るかのようだった。

 返す薬師も《思考囲い》で高橋の手札から《真実を覆すもの》を奪い、互いににらみ合いの第3ターンを終えると、高橋は第4ターン目に《神秘を操る者、ジェイス》!

 高橋は自分と薬師のどちらを対象にするか熟考しつつ、最終的に自身を対象に[+1]能力を起動。ドロ―によってアドバンテージを得てターンを返すと、薬師も負けじと引き込んでいた《時を越えた探索》をプレイして手札を整え、高橋に食らいついていく。

 前のターンに《神秘を操る者、ジェイス》をプレイした高橋はフルタップ。できればここで勝負を仕掛けたい薬師だったが、《時を越えた探索》によって墓地は空っぽになっているため、このターンの《真実を覆すもの》プレイはできない。よってその隙に付け入ることはできず、《タッサの神託者》をプレイするのみでターンを終える。

 《神秘を操る者、ジェイス》健在の中でターンが返ってきた高橋は、その能力でハンドアドバンテージを稼ぎつつ着実に勝利を手繰り寄せていく。薬師は《タッサの神託者》でそんな《神秘を操る者、ジェイス》に対して攻撃を仕掛けるが、これには高橋の《致命的な一押し》が刺さる。

 ならばと薬師が第2メインフェイズに叩きつけたのはに《真実を覆すもの》!! 墓地の枚数は3枚。これがライブラリーの代わりとなり、薬師のライブラリーは3枚になった。

 ――否。3枚になってしまった・・・・・・・。高橋は不敵に笑みを浮かべ、ターンをもらうと《神秘を操る者、ジェイス》の[+1]能力を起動する。今度の対象は、薬師。

 すべてを察した薬師は天を仰ぐ。このミラーマッチは、自身のライブラリーを減らさないことには勝利には近づけない。しかし、減らしすぎればそれもまた敗北に近づくことになるのだ。高橋は2枚目の《神秘を操る者、ジェイス》をプレイし、[+1]能力を起動。当然、対象は薬師。

 3-2×2=-1。ライブラリーの枚数が負の値を取ることはないので、薬師のライブラリーは0枚。つまり、ドロー・ステップにカードを引くことはできない。

薬師「……やっちまった~」

 2枚目の《神秘を操る者、ジェイス》の存在をケアできなかった薬師。このターン引くはずだったライブラリーは、1枚足りない。

薬師 0-1 高橋

ゲーム2

 全勝に王手をかけた高橋に対し、薬師は《思考囲い》で仕掛けていく。高橋の手札から《真実を覆すもの》を抜き去った薬師は、続いて《選択》で手札を整え、勝負に備える。

 対する高橋も《海の神のお告げ》でドローを得て、《思考消去》で薬師の手札を狙う。だが、これに薬師の《神秘の論争》が突き刺さり、《思考消去》は解決されることなく墓地へと向かうこととなる。

 返す薬師は《悪夢の織り手、アショク》で高橋のライブラリーから《真実を覆すもの》を追放。これで手札破壊と合わせて2枚の《真実を覆すもの》が、高橋のライブラリーから失われることとなった。

 ふむ、と小考しつつ、高橋は《神秘を操る者、ジェイス》をプレイして、今度は薬師のライブラリーを削りながらドローを得る。

高橋「結構ね、このマッチ難しいんですよ。ライブラリー削るの」

 高橋は徐々にエンジンがかかってきたのか、筆者に向けてアドバイスをくれる(高橋のカバレージを取っているときは結構よくある。ちなみにとても助かる)。薬師もそんな高橋に呼応し、「削りすぎてもいけないし、自分のライブラリー削りすぎるのも危ないし、駆け引きがありますよね」と語り、「聞きたいなー、プレイのこと。後で教えてくださいね」と高橋に話しかけていた。

 そんなやりとりの末にターンを受けた薬師は、再び《悪夢の織り手、アショク》の[+1]能力を起動。なんとこれが3枚目の《真実を覆すもの》をめくり、ついに高橋のライブラリーに残る《真実を覆すもの》は1枚のみとなってしまう。

薬師 英樹

 思わず「強いな~」と漏らす高橋だったが、できることをするだけだ。《神秘を操る者、ジェイス》でドローを得つつ、互いに《時を越えた探索》を撃ち合う。高橋が《思考囲い》をプレイすれば、薬師も《蔑み》で高橋の手札を減らし、クリーチャーが出てきたなら除去する。ゲームが決まるその刹那を少しでも先延ばしにするかのように、互いのリソースを交換し合い、1ミスが死に直結する緊張感の中で、2人のプレイはますます冴え渡っていた。

 しかし、これまでのゲームの中で互いに《時を越えた探索》を撃ち合った枚数では差がついていない。そうなると、継続的なアドバンテージ源である《神秘を操る者、ジェイス》をコントロールしている高橋のほうがリソース上は有利だった。まして高橋は薬師の《悪夢の織り手、アショク》にライブラリーを減らしてもらっている・・・・・・・・・・のだ。

r9_game2_library.jpg

 高橋のライブラリーは残り17枚、続くドローで16枚となっていた。このライブラリーをどこまで削る? どうすれば勝てる? 高橋はこの「詰めマジック」を決してあやまつことのないよう、じっと考え込む。

 まずは《神秘を操る者、ジェイス》の[+1]能力を起動。対象は自分。これで残り13枚となったライブラリーを、《時を越えた探索》でさらに減らす。残り11枚――

 「ここにこれ、ここにこれで……これ引きたい、これはいらない……」そう呟きながら、ライブラリーの底に送るカードまで考え込む。もはやライブラリーの底は決して遠くはないのだ。すでに《神秘を操る者、ジェイス》の忠誠値も9を数え、次のターンに奥義による大量ドローも見えている。ライブラリーの下から5枚目や6枚目のカードと言えど重要なリソースなのだ。

 返す薬師は《致命的な一押し》。これで高橋の《タッサの神託者》を除去し、信心を減らし、祈るような表情を浮かべながらターンを終える。

 しかし、高橋はそれを意にも介さない。《選択》とドローステップのドローで、ライブラリーは残り9枚になっていた。《神秘を操る者、ジェイス》で7枚ドローし、残り2枚。高橋は先のターンに「ライブラリーのボトムに積み込んだ」通りのドローを得て、2枚目の《神秘を操る者、ジェイス》をプレイ。

 この[+1]能力でライブラリーを削り切り、続くドローをするには――

r9_shakehands.jpg

 1枚、足りない。

薬師 0-2 高橋

薬師 英樹 - 「青黒・真実を覆すもの」
プレイヤーズツアー・名古屋2020 / パイオニア (2020年2月1~2日) (サイドボード枚数非公開)[MO] [ARENA]
6 《
3 《
4 《湿った墓
4 《水没した地下墓地
2 《異臭の池
2 《詰まった河口
4 《寓話の小道
-土地(25)-

4 《タッサの神託者
4 《真実を覆すもの
-クリーチャー(8)-
4 《致命的な一押し
4 《選択
4 《思考囲い
2 《蔑み
3 《湖での水難
1 《思考消去
4 《時を越えた探索
2 《発見 // 発散
3 《神秘を操る者、ジェイス
-呪文(27)-
1 《ゲトの裏切り者、カリタス
1 《減衰球
1 《否認
1 《バントゥ最後の算段
1 《肉儀場の叫び
1 《神秘の論争
1 《虚空の力線
1 《悪夢の織り手、アショク
-サイドボード(8)-
高橋 優太 - 「青黒・真実を覆すもの」
プレイヤーズツアー・名古屋2020 / パイオニア (2020年2月1~2日) (サイドボード枚数非公開)[MO] [ARENA]
6 《
3 《
4 《湿った墓
4 《水没した地下墓地
2 《異臭の池
2 《詰まった河口
4 《寓話の小道
-土地(25)-

4 《タッサの神託者
4 《真実を覆すもの
-クリーチャー(8)-
4 《致命的な一押し
4 《選択
4 《思考囲い
2 《検閲
2 《湖での水難
2 《海の神のお告げ
2 《思考消去
4 《時を越えた探索
3 《神秘を操る者、ジェイス
-呪文(27)-
1 《ヴリンの神童、ジェイス
1 《正気泥棒
1 《墓掘りの檻
1 《喪心
1 《軍団の最期
1 《究極の価格
1 《減衰球
1 《神秘の論争
1 《衰滅
1 《最後の望み、リリアナ
1 《悪夢の詩神、アショク
-サイドボード(11)-
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RESULTS

対戦結果 順位
15 15
14 14
13 13
12 12
11 11
10 10
9 9
8 8
7 7
6 6
5 5
4 4
3 3
2 2
1 1

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