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プロツアー『指輪物語』

観戦記事

「プロツアー・指輪物語」初日の注目の出来事

Corbin Hosler

2023年7月28日

 

(編訳注:埋め込み動画は英語実況のものです。)

 ようこそ、快晴のスペインへ!プロツアー・指輪物語で戦うため、268名のプレイヤーが輝くバルセロナへと旅してきた。世界選手権まで最後のプロツアーであるため、参加者たちは多くのものをかけてプレイすることになる。今後のプロツアーへの招待、世界選手権への出場権、そして総額500,000米ドルの賞金などだ。本トーナメントは『指輪物語:中つ国の伝承』の最高峰の戦いの封切りであり、プロツアーにモダンが帰ってきた記念すべき大会でもある。

 豪華なリミテッドフォーマットは期待を裏切ることなく、また集まった参加者も同様だった。私たちを迎えたのは想像以上に奥深いドラフトフォーマット、そしてプレイ区域は様々なデッキで満たされたモダンラウンドへと連なった。

 本トーナメントの開幕に際して、全ての注目を与えたのは現世界王者、ネイサン・ストイア/Nathan Steuerだ。彼は歴史的な快進撃をもってこの週末を迎え、本トーナメントでも熱い口火を切った。ストイアはドラフトを2勝1敗で終え、その後6勝2敗という成績でこの日を終えた。過去のトーナメントのような圧倒的なパフォーマンスというわけではないが、土曜日にトップ8進出する可能性は十分にある。

 混乱が収まり、ただふたりの全勝プレイヤーが首位の座をかけてにらみ合うことになった時、プロツアー・指輪物語は前回バルセロナで行われたプロツアーと似た様相を呈していた。つまり、「緑単トロン」がトップに立っていたのだ。

 サイモン・ニールセン/Simon Nielsenとザカリー・キューネ/Zachary Kiihneは友人同士であり、チーム「Handshake」、この1年のプロツアーで最も大きな成功を収めたチームであるが、その同僚でもあり、2日目でのポールポジションに立つために最後の7勝0敗プレイヤー同士として第8回戦で相まみえることになった。

サイモン・ニールセン

ザカリー・キューネ

 

 ミラーマッチで勝利を収めたのはニールセンだった。有名なワールド・マジック・カップのチームにおける「砂デン破」でマジックでの名声を高めたデンマーク人は素晴らしい形で1日を締めくくった。プロツアーは世界で最もタフなトーナメントのひとつだ。だが、それでも彼のパフォーマンスは突出していた。ニールセンはチームメイトであるデイヴィッド・イングリス/David Inglisを第1回戦で退けなければならず、その後すぐに殿堂の傑物たちの試練に晒されることになった。第2回戦でのリー・シー・ティエン/Lee, Shi Tienとドラフト最終ラウンドでのオリヴィエ・ルーエル=メルフォール/Olivier Ruel-Mailfortだ。これ以上に困難なことは無いだろうが、土壇場での強さによってニールセンは無傷でモダンへと進出した。彼はモダンラウンドにおいて彼の作り上げた「《一つの指輪》トロン」が残りの道を助けてくれると信じていた。

さあ、チーム「Handshake」が「トロン」をめっちゃ流行らせる時間だぜ!

まさにその通り、ニールセンはプロツアー・指輪物語2日目に向けて参加者たちの首位に立っている。

ドラフトの中心人物たち

 この日は『指輪物語:中つ国の伝承』ドラフトによって幕を開けた。競技プレイヤーたちにはお馴染みとなったリミテッドフォーマットを採用し、プロツアーにおいて新たなレベルに引き上げる機会を与えた。

 従来の常識は、可能な限り緑をドラフトするなというものだった。事実その通り、緑を含む2色のデッキで全勝を達成したのはひとりだけだった。

32名のプレイヤーが#PTLOTRの#MTGxLOTRドラフトで3-0。彼らのデッキは以下:

白青-3
白黒-5
白赤-3
青黒-2
青赤-3
青緑-1
黒赤-6
グリクシス-3
アブザン-2
ジャンド-1
バント-1
4色-1
5色-1

 代わりに、黒赤が最も成功したアーキタイプという結果になり、両色の本フォーマットにおける強さを反映することになった。《いとしいものを取り返す》《ゴラムへの拷問》そして《死者の沼地の亡者》といった黒のカードがニールセンの黒白デッキを3勝0敗へと導いた。《死人占い師、サウロン》もまあまあだった。

 

「通常、僕の戦略はオープンでいて、フォーマットの全部のアーキタイプをよく理解することなんだけど、20回くらいドラフトしてから、その段階ではまだ黒赤をドラフトしていないことに気づいたんだ」と彼は説明した。「それに気づいてからは、そのアーキタイプを調べて、学習するために無理やりドラフトし始めたんだ。そうしたら、それらの色の中位程度のドラフトでもいいことに気づいたんだ。このフォーマットではどちらかの色がベースになっていれば、大体問題ないよ」

「僕たちチーム『Handshake』は実際には緑を嫌ってはいなかった。緑白食物の戦略はハマれば上手くいった。トリスタン・ワイルドラルー/Tristan Wylde-LaRueは緑をドラフトするのが大好きで、リミテッドのミーティングの間、緑をドラフトする方法について1時間も語ってたよ!」

 黒赤はまた、長年のプロツアー常連であるクリスティアン・カルカノ/Christian Calcanoにも3勝0敗という結果をもたらした。恐らく最も興味深い道を通ってここにたどり着いた人物だ。このアメリカ人はヨーロッパの友人を訪問中に地域チャンピオンシップ予選に出場し……優勝したのだ。そしてもちろん、地域チャンピオンシップそのものでプレイする必要があった。そして……彼は本プロツアーへの出場権を手にしたのだ。さて、プロツアー初日はどうだったのだろう?


モダンと中つ国

 いつも通り、モダンが強度を欠くことは無く、幾度もモダンにしかできない方法で試合が大接戦にもつれ込んだり、一連の決断をめぐる展開になるのを目撃した。

 『指輪物語:中つ国の伝承』はバルセロナの地において大きな衝撃を与えた。トップニュースは《一つの指輪》だが、《オークの弓使い》はフォーマットを超えた強力さで多くの人を驚かせ、《一つの指輪》に肉薄する2番手に迫っている。

 

 《サムワイズ・ギャムジー》も同一だ。本フォーマットにおいて《大釜の使い魔》と《臓物の予見者》と並んで採用された。サム・パーディー/Sam Pardeeやルイス・スコット=ヴァーガス/Luis Scott-Vargasといった多くのプレイヤーが戦いに持ち込んだコンボだ。

 

 しかし、この日は《一つの指輪》の日だった。モダンのデッキリストで最も人気のあるカードであり、《機能不全ダニ》は会場にいたほぼ全員のサイドボードで人気の選択肢となった。

 「トロンは《一つの指輪》の最高の構造だよ」とニールセンは述べた。「当時、多くの人がトロンは想定外だと言っているのを聞いた。最悪のマッチアップは『ラクドス想起』だけれど、『負け確』にならない程度にデッキを調整できれば、トロンはラクドスに強いデッキに対して相当相性が良いんだ」。

 

 フランク・カーステン/Frank Karstenはプロツアー・指輪物語のメタゲーム全体を取材し、最も刺激的だった九つのデッキを紹介した。「緑単トロン」と「ラクドス想起」がトップニュースとなったが、プレイヤーの少ないアーキタイプも成功を収めた。「アミュレットタイタン」はジャック・ポッター/ Jack Potterの手によって6勝2敗の成績を収め、ロバート・グレイヴス/Robert Gravesが駆る革新的な「ソプターソード」も同様の成績となった。

 モダンの全デッキリストはこちらからご覧いただける。

今後の展望

 第8回戦をもって最初の足切りが終わった。私たちは土曜日、そしてトップ8を決めるレースへと向かう。2日目への進出は4勝4敗以上の成績が必要だが、169名のプレイヤーがその目標を達成し、『指輪物語:中つ国の伝承』のドラフトへと戻ってくる。そこから、モダンラウンド5回戦へと突入することになる。

 ニールセンが首位に立っているが、いつも通り上位戦線は混戦だ。「ジャーマン・ジャガーノート」であるところのカイ・ブッディ/Kai Buddeは7勝1敗の成績で突き抜け、有名どころのザカリー・キューネとマジック25周年記念プロツアー王者のグレッグ・オレンジ/Greg Orangeも同じく。これらのプレイヤーや、その他多くの選手が土曜日のプレイ開始時にニールセンを追いかけることになる。

 放送は中央ヨーロッパ時間午前11時/米国東部標準時間午前5時/日本時間午後6時から開始だ!twitch.tv/magic(日本では公式YouTubeチャンネル)で全てを目撃しよう!

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