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プロツアー『タルキール覇王譚』
第6回戦:Shahar Shenhar(イスラエル)vs. Jeremy Dezani(フランス)
Marc Calderaro / Tr. Chikara AOKI
2014年10月10日
2014-15年度シーズンのプラチナレベル・プロ、グランプリ優勝3回にして誰もが認めるナイスガイ、シャハール・シェンハー/Shahar Shenharが先に席についてジェスカイ・アグロデッキをシャッフルし始めた。ルイス・スコット=ヴァーガス/Luis Scott-Vargasの用意する食事を取りながらチーム「ChannelFireball」のビーチハウスで一週間練習して、シェンハーはジェスカイ・アグロを使うことに決めた。大会で意識される数少ないデッキの一つではあるが、ミラーマッチに備えることができるならすべてのマッチアップを戦えるそうだ。チームはデッキの各所に微調整を行い、シェンハーはその中で最も首尾一貫しているデッキを選んだ。
「緑ベースのデッキに勝てるんだ」と彼は言う。「赤いデッキにもね。」チームが仮想敵にしていた《ジェスカイの隆盛》コンボ・デッキにも有利がつくように調整してあると続ける。これから対戦相手が繰り出すマルドゥ・プレインズウォーカーデッキの類にも備えはあるようだ。
シェンハーの説明は最上級にして最高だが、対戦相手であるジェレミー・デザーニ/Jeremy Dezaniにはただ一言「ナンバー1」で済む。今現在、ジェレミー・デザーニは世界ランキング1位なのである。ジェレミーは昨年の新しいフォーマットのプロツアーで、《風番いのロック》の雄叫びが空に響き渡るが如く、マジックのトップレベルに登りつめてよく知られるようになった。遅れてやって来た彼のデッキは、クリーチャーの少ない、というかほとんど入っていないマルドゥ・プレインズウォーカーズで、《紅蓮の達人チャンドラ》、《龍語りのサルカン》、そしてもちろん《太陽の勇者、エルズペス》といったカードで徐々にアドバンテージを稼いでいき、盤面をコントロールする。
シャッフルを終え、手札を引いてキープし、試合が始まる。
ゲーム展開
大事な大事なダイスロールに勝ち、3色コントロールデッキのデザーニはより速い攻撃的な相手に対し半ターン先行する。ジェスカイ・デッキはできるだけ早く相手を倒さなくてはいけないので、速度は相対的なものだ。火力の入ったデッキによって、ゲームを遅らせながら刻々と過ぎるターンを送り、その過程で手札を整えて、必要とあらば火力を解き放って戦場をコントロールする。シェンハーはゆっくりと展開、開幕から毎ターン連続でタップイン土地を置き(《神秘の僧院》を2枚、《啓蒙の神殿》を1枚)、デザーニの最初の呪文に備えた。4ターン目の《紅蓮の達人チャンドラ》がファーストアクション。
《紅蓮の達人チャンドラ》は忠誠値が5になった後、すぐに小さなカードアドバンテージエンジンになる。デザーニに《進化する未開地》がもたらされ、ライブラリトップから土地をプレイし、手札にある《進化する未開地》を捨てて《苦しめる声》を唱えられるようになった。これは望ましい成果だ。カードアドバンテージ面からすると良さそうに見えるが、デザーニはシェンハーに対して何もできない。
シェンハーはターン終了時に4枚のアンタップ土地から火力を唱え始める。ターン終了時の火力からは常に厳しさを学べる。《マグマの噴流》、《稲妻の一撃》、《かき立てる炎》がデザーニを幾度も焼く。ライフにほとんど動きのなかった第1ゲームが、急速に19-10(シェンハーがリード)へと動く。最初のゲームは複数枚の《稲妻の一撃》に対してクリーチャー除去が無意味なため、マルドゥ・プレインズウォーカーズにとっては辛いものだろう。
デザーニは適切な状況では大活躍する《はじける破滅》を抱えている。しかし現状では役立たずだ。シェンハーはクリーチャー呪文を唱えようとは夢にも思わない。
そして火力、火力、火力。デザーニが攻撃、あるいは防御をする間もなく終わってしまった。
デザーニ 0 - 1 シェンハー
シェンハーは《オレスコスの王、ブリマーズ》と《軽蔑的な一撃》を投入し、デザーニはライフ獲得とブロッカー供給のために《ニクス毛の雄羊》と《毅然たる大天使》を加える。《ニクス毛の雄羊》は攻撃クリーチャーをブロックし、火力を「食べて」くれるのでとりわけ良い。《毅然たる大天使》は、まあまあ。
このゲームで役に立たないカードを抱えたのはシェンハーだった。デザーニのデッキはクリーチャーが極めて少なく、極めてというのはほぼノンクリーチャーに近いという意味であるが、シェンハーはそのことを知る由もないので、入っているかもしれない《軍族の解体者》のような重要なカードのために《停止の場》を手札に控えさせていた。この役立たず・テーマはシェンハーの土地が3枚で止まることにより、図らずも悪化することになる。後手とはいえ、1ターンに2つの呪文を唱えられないのはかなりの制限だ。とはいえ、デザーニは3枚しか入っていない《オレスコスの王、ブリマーズ》を戦場に出したのだが。
デザーニは《マルドゥの魔除け》で(《停止の場》に引っかからない)1/1の戦士トークンを2体出し、《稲妻の一撃》で《道の探求者》を除去した戦場を行進させる。このゲームでは、デザーニは先を見越してスタートを切っていた。2体目の《道の探求者》も《はじける破滅》で除去して、シェンハーのライフを13にしてターンを返す。
シェンハーは土地を置けず、デザーニの潜在的なプレイに対応できないよりは、と8枚になった手札からディスカードしてターンを終える。プランはしばらくうまくいった。《軽蔑的な一撃》と《否認》で2枚の恐ろしい《紅蓮の達人チャンドラ》の着地を許さないが、1/1トークンが快調に飛ばしている。
実際、デザーニは《太陽の勇者、エルズペス》――御存知の通りトークンをもっと作り出せる――を解決でき、たくさんのトークンがいてとても嬉しそう。3体のトークンを追加して、4枚目の土地が見つからないシェンハーのライフは残り7、もうダメそうだ。
「《悲哀まみれ》はやめて欲しいね」 デザーニは笑う。
「《ヨーグモスの墳墓、アーボーグ》入ってないです」 作り笑いで返すシェンハー。
負ける前のターンにやっと4枚目の土地が見つかったシェンハー。それから言ったとおり、負け。
デザーニ 1 - 1 シェンハー
最終ゲーム、シェンハーは先手に戻る。つまり、デザーニのライフを速やかに合計6点減らした《ゴブリンの熟練扇動者》と《カマキリの乗り手》が手に負えなくなる可能性があった。両方とも《稲妻の一撃》で手っ取り早く追い出されたが、予定通りのダメージは残していった。
シェンハーはより大きな一撃を繰り出す《オレスコスの王、ブリマーズ》を唱える。《稲妻の一撃》では回答にならず、対応できないならすみやかにゲームが終わってしまう。ライフは15対14だがあっという間に変わってしまうだろう。「勝てないなら自分で使え」と言われているとおり、デザーニは自分も《オレスコスの王、ブリマーズ》を戦場へ。シェンハーにゴブリントークンが1体いるもののクリーチャーは互角。お互いに攻撃することができないので不気味ななにらめっこ。
またも土地が詰まるシェンハーだが、今回は4枚の土地があり、柔軟性は残されている。打ち消し呪文でデザーニのプレインズウォーカーを退け、《オレスコスの王、ブリマーズ》が睨み合う。戦場に加わった唯一の変化である《ニクス毛の雄羊》が、受動的なデザーニにゲームが続けば続くほど多くのライフを供給し続ける。
手詰まりを打開したのはターン終了時の《時を越えた探索》だ。《ジェスカイの魔除け》と《龍語りのサルカン》を見つけ出す。プレインズウォーカーが唱えられ、睨み合っていた《オレスコスの王、ブリマーズ》を屠り、シェンハーはデザーニのライフを11に落として、その過程でトークンを得る。《ニクス毛の雄羊》が残っていてデザーニのライフをそっと後押ししてくれているが、テンポの変化に対する小さな報酬でしかなかった。しかしデザーニには計画があった。彼がゲームの趨勢を変化させうる、大きな振り子の揺れが戻ってくるように見受けられた。
デザーニは崖っぷちから最後の2枚のカードを使う。《稲妻の一撃》が《龍語りのサルカン》を除去し、残ったマナで《毅然たる大天使》を呼び出す。ライフが20に戻り、手札に何もないデザーニはテーブルを覗き込み、ターンを返す。《毅然たる大天使》は神様の贈り物のように思えたが、シェンハーには回答があった。
ここでクイズ:《ジェスカイの魔除け》の3つ目のモードは? ヒントをあげると、それはすごく、すご~くライフが欲しくてたくさんのトークンがある時に本当に役に立つ。そう!全てのクリーチャーに+1/+1修正と絆魂だ! シェンハーはデザーニのライフ獲得を眺めていたが、それ以上にライフを得て、同時にたくさんのダメージを叩き出した。
2体の猫・トークン、《道の探求者》、《オレスコスの王、ブリマーズ》、そして懐かしのゴブリン・トークンがシェンハーのライフを31にして《毅然たる大天使》を葬り去った。《ニクス毛の雄羊》はまたもや孤独に戻った。
もうこのゲームはおしまいだ。デザーニは筋書きを理解できなかったがほぼ負けのようだ。彼は最後のカードを引き、それは《対立の終結》ではなかった。《ニクス毛の雄羊》が彼を見上げて思っていただろう。「なぁ。俺は頑張ったよな」
デザーニ 1 - 2 シェンハー
RESULTS 本大会の対戦結果・順位
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