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EVENT COVERAGE
プロツアー『ニクスへの旅』
『テーロス』ブロック構築2日目、メタゲームブレイクダウン
Nate Price / Tr. Tetsuya Yabuki
2014年5月17日
昨日の第4回戦、私たちは『ニクスへの旅』が参戦した『テーロス』ブロック構築の第一歩を見届けた。そこには予想していたものと同じくらい、多くのサプライズがあったのだ。
緑、黒、そして白の3色は、それぞれが200を超えるデッキで使用され、だいたい同じくらいの採用率だった。青と赤はその半分ほどに収まっている。この結果は、今回のフォーマットが持つカードのパワー・レベルの分布に対する大方の意見に、かなり近いものとなった。この環境で成功するために欠かせない鍵となるカードが《森の女人像》と《クルフィックスの狩猟者》である、と大多数のプレイヤーが判断したことから、私は緑を使うデッキが相当数を占めると予想していたが、他の2色もまた多くのプレイヤーを集めたというわけだ。黒のアグレッシブなデッキは今大会の開催前からMagic Online上で最も使われたデッキであったため、今大会でも引き続き存在感を示したということにそれほどの驚きはない。加えて、アグレッシブなデッキの動きを鈍らせ、またシナジー重視のデッキを打ち崩すのに黒の除去が極めて有効であることは、多くのトップ・プレイヤーたちが指摘していた通りだ。一方、白について述べるなら、それはただ一語――「エルズペス」に尽きる。
『テーロス』ブロックで最も強力なカードはどれか、という質問に対して最も多い解答が、《太陽の勇者、エルズペス》であった。彼女は白を支える原動力なのだ。そこへ加えて、「このフォーマットで最強のアグレッシブな戦略」という意見で一致したデッキを形作る核となるのが、白の「英雄的」クリーチャーたちであった――それが、「白青『英雄的』」デッキだ。
さらに深い分析へと潜る前に、まずは初日のデータをご覧いただこう。
アーキタイプ | 使用者数 | 使用率(%) | 初日勝率(%) |
白黒緑「星座」 | 53 | 15.1 | 45.65 |
赤緑エルズペス | 51 | 14.6 | 51.19 |
黒単アグロ | 47 | 13.4 | 48.29 |
黒青緑コントロール | 35 | 10.0 | 55.43 |
白青「英雄的」 | 22 | 6.3 | 43.93 |
白黒緑リアニメイト | 17 | 4.9 | 51.52 |
赤単「英雄的」 | 17 | 4.9 | 45.00 |
黒緑「星座」 | 12 | 3.4 | 52.87 |
エスパー・コントロール | 12 | 3.4 | 53.11 |
白赤「英雄的」 | 9 | 2.6 | 47.62 |
赤緑モンスターズ | 7 | 2.0 | 54.29 |
白黒緑ミッドレンジ | 6 | 1.7 | 73.33 |
無限開花 | 5 | 1.4 | 31.88 |
ジャンド・モンスターズ | 5 | 1.4 | 50.00 |
赤緑アグロ | 5 | 1.4 | 76.00 |
青黒「神啓」 | 5 | 1.4 | 66.67 |
白単「英雄的」 | 5 | 1.4 | 60.00 |
緑単「星座」 | 4 | 1.1 | 45.00 |
青単信心 | 3 | 0.9 | 42.86 |
黒青緑「星座」 | 3 | 0.9 | 28.57 |
青黒コントロール | 3 | 0.9 | 46.67 |
白黒アグロ | 3 | 0.9 | 53.33 |
バント「英雄的」 | 2 | 0.6 | 40.00 |
白黒ミッドレンジ | 2 | 0.6 | 25.00 |
5色ミッドレンジ | 1 | 0.3 | 80.00 |
バント「星座」 | 1 | 0.3 | 0.00 |
バント・コントロール | 1 | 0.3 | 40.00 |
バント・ミッドレンジ | 1 | 0.3 | 20.00 |
バント・プレインズウォーカーズ | 1 | 0.3 | 100.00 |
黒緑リアニメイト | 1 | 0.3 | 80.00 |
黒赤ミッドレンジ | 1 | 0.3 | 0.00 |
グリクシス・コントロール | 1 | 0.3 | 0.00 |
白緑モンスターズ | 1 | 0.3 | 0.00 |
白黒緑モンスターズ | 1 | 0.3 | 20.00 |
白黒「英雄的」 | 1 | 0.3 | 40.00 |
白黒赤コントロール | 1 | 0.3 | 60.00 |
白黒赤ミッドレンジ | 1 | 0.3 | 80.00 |
白緑信心 | 1 | 0.3 | 80.00 |
白単アグロ | 1 | 0.3 | 0.00 |
白青コントロール | 1 | 0.3 | 80.00 |
白青難局 | 1 | 0.3 | 20.00 |
ご覧の通り、2位との差は小さいものの、今大会で最大勢力を築いたのは「白黒緑『星座』」であった。チーム「MTG Mint Card」やチーム「TCGPlayer」といったいくつものチームがこの環境に対して同じ結論を出し、《クルフィックスの狩猟者》と《森の女人像》、黒の除去、《太陽の勇者、エルズペス》、そして最高のカード・ドロー・エンジンである《開花の幻霊》をひとつのデッキにまとめたものを選択したのだ。実際に今大会すべてのプレイヤーが敵にせよ味方にせよこのデッキと触れたことから分かるように、「白黒緑『星座』」は知られていないものではない。このデッキには白を足す量や《英雄の導師、アジャニ》を採用するかどうかなど、いくつかのバリエーションはあるものの、デッキのパーツのうち75%から80%は似通ったものだ。
見た目からして明白というほどではないが、「白黒緑『星座』」は会場の10%を占める「黒青緑コントロール」に極めて近い。「ChannelFireball」の名を冠するふたつのチームによって生み出され、使われた「黒青緑コントロール」もまた、「白黒緑『星座』」と同様に《クルフィックスの狩猟者》と《森の女人像》、そして欠かすことのできない黒の除去をひとつのデッキに詰め込むところから構築の基盤ができている。そこから先は、白を採用して《太陽の勇者、エルズペス》を使うか、青を採用して《悪夢の織り手、アショク》と《予知するスフィンクス》を使うかに分かれるわけだ。初日の勝率を見ると「黒青緑コントロール」が「白黒緑『星座』」を上回っているようだが、それでも「星座」メカニズムを排して単純に強力なカードを採用した「白黒緑ミッドレンジ」の形には遠く及ばない結果になった。
アグレッシブなデッキの中で初日最も使われたのは、会場内の13.4%を占めた黒単アグロだった。Magic Online上でも言えることだが、この数字がそのまま活躍のほどを表すものとは限らない。勝率は50%に届かないくらいで、Magic Onlineでの結果が反映されたものとなっている。「白青『英雄的』」は今大会に参加したプロ・プレイヤーの多くがベスト・アグロ・デッキと判断したデッキだが、結果は芳しくなく、かろうじて勝率40%を確保したところで留まった。それでも、実に多くのバリエーションが使われたのは事実である。今回は極めて強力な防御クリーチャーと単体除去がいたるところに姿を見せたため、アグレッシブなデッキは予想以上に厳しい状況に直面したと言えるだろう。このデッキを使って初日のブロック構築部門全勝を飾ったジャレッド・ベッチャー/Jared Boettcherのように、活躍を見せたプレイヤーはいる。そして初日に最も成功したアグロ・デッキは、「赤緑アグロ」だった。これは一般的な「赤緑モンスターズ」デッキを中心にしながらも、《ゼナゴスの狂信者》や《大歓楽の幻霊》、《黄金の雌鹿》、《火飲みのサテュロス》といったカードを用いてマナ・カーブを軽い方へ寄せたものだ。メキシコ選手権優勝経験者でありグランプリ・メキシコシティ2014では決勝まで残ったマルセリーノ・フリーマン/Marcelino Freemanが、この怒れる緑と赤の軍勢を支えに初日のブロック構築全勝を果たしている。
今大会で最も意外なデッキは恐らく、チーム「Revolution」が使用した「青黒『神啓』」デッキだろう。チーム「Revolution」は、殿堂顕彰者ラファエル・レヴィ/Raphael Levyやメリッサ・デトラ/Melissa DeTora、現在プレイヤー・オブ・ザ・イヤー・レースで先頭を走るジェレミー・デザーニ/Jeremy Dezani、そして彼とプロツアー『テーロス』で決勝を競ったピエール・ダジョン/Pierre Dagenを擁する、フランスとアメリカのプレイヤーが手を携えたチームである。彼らが使用した「青黒『神啓』」は、《胆汁病》や《英雄の破滅》、《悪夢の織り手、アショク》、《予知するスフィンクス》といった、最高の黒と青のカードを取り揃えたデッキだ。核となるそれらのカードを、《果敢な泥棒》や《苦痛の予見者》、《黄金の呪いのマカール王》などの「神啓」メカニズムでサポートする。そしてさらに、いぶし銀の《バネ葉の太鼓》が「神啓」とマナの安定を支えるのだ。このデッキが初日の勝率67%を記録したことを考えると、今週末のトップ5カードに《バネ葉の太鼓》が入ることも想像に難くないだろう。初日のブロック構築部門で全勝したレヴィがそのまま活躍を見せれば、もう紹介せざるを得ない。
皆さんがすべてのデータを読めるように、もう少しだけ分析を続けることにしよう。以下は、これから2日目のブロック構築部門を控えた状態でのデッキ分布だ。
アーキタイプ | 使用者数 | 使用率(%) |
赤緑エルズペス | 34 | 15.45 |
黒単アグロ | 29 | 13.18 |
白黒緑「星座」 | 29 | 13.18 |
黒青緑コントロール | 28 | 12.73 |
白青「英雄的」 | 15 | 6.82 |
白黒緑リアニメイト | 11 | 5.00 |
赤単「英雄的」 | 10 | 4.55 |
エスパー・コントロール | 8 | 3.64 |
黒緑「星座」 | 6 | 2.73 |
赤緑モンスターズ | 6 | 2.73 |
白赤「英雄的」 | 6 | 2.73 |
白黒緑ミッドレンジ | 5 | 2.27 |
赤緑アグロ | 5 | 2.27 |
青黒「神啓」 | 4 | 1.82 |
白単「英雄的」 | 4 | 1.82 |
ジャンド・モンスターズ | 3 | 1.36 |
緑単「星座」 | 2 | 0.91 |
無限開花 | 2 | 0.91 |
青黒コントロール | 2 | 0.91 |
5色ミッドレンジ | 1 | 0.45 |
バント・コントロール | 1 | 0.45 |
バント「英雄的」 | 1 | 0.45 |
バント・プレインズウォーカーズ | 1 | 0.45 |
黒緑リアニメイト | 1 | 0.45 |
青単信心 | 1 | 0.45 |
白黒アグロ | 1 | 0.45 |
白黒赤コントロール | 1 | 0.45 |
白黒赤ミッドレンジ | 1 | 0.45 |
白緑信心 | 1 | 0.45 |
白青コントロール | 1 | 0.45 |
ここから取り挙げるべき事実はいくつかある。まず、初日に最も多く使われた「白黒緑『星座』」だが、対策をじっくりと練ってきたプレイヤーたちを前に苦戦を強いられた。勝率は50%代前半に留まり、使用率上位のデッキの中で最も2日目進出プレイヤーが少ないデッキとなってしまったのだ。このデッキを使って2日目に進出したプレイヤーは半数をなんとか越える程度で、その勝率を見れば、原因はプレイヤーのドラフトの腕ではなく構築のデッキ選択にあることは明白だ。そして、使用率上位のデッキの中で最も活躍したものは、選択したプレイヤーの実に80%を2日目へ送り出した「黒青緑コントロール」であった。最後に、2日目は局面が大きく変わり、「赤緑エルズペス」が最も多く使われるデッキに登り詰めたことにも触れるべきだろう。このデッキもまた「《森の女人像》と《クルフィックスの狩猟者》のセットを使うデッキ」のバリエーションではあるものの、ゲームをコントロールして勝つのではなく対戦相手を殴り倒すことで勝利を掴む、という違いがあるのだ。
RESULTS 本大会の対戦結果・順位
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