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プロツアー『破滅の刻』
決勝:Paulo Vitor Damo da Rosa(ブラジル) vs. Samuel Pardee(アメリカ)
By 矢吹 哲也
今大会に限った話ではないが、そしてマジックに限った話でもないが、「競技」の世界における頂点は見るものすべてを惹きつけてやまない。
そしてそこへ至る道のりにはさまざまなドラマがあり、人が生み出す想いの結晶がある。それらはどれも光り輝き、途中で倒れた者の分も頂点へ向かい続ける者の背に付いて運ばれ、結合し、大きくなっていく。
この試合でパウロ・ヴィター・ダモ・ダ・ロサ/Paulo Vitor Damo da Rosaが勝てば、劇的な大逆転でプレイヤー・オブ・ザ・イヤー獲得。
サミュエル・パーディー/Samuel Pardeeが勝てば、自身初のプロツアー優勝と世界選手権の参加権利獲得。
すべてが懸かった最高の舞台で行われる真剣勝負は、一種の芸術だ。それは見るものの心に触れ、驚愕させ、奮い立たせ、感動させ、そしてときには、温かい涙が流れることもある。
したがって、これから行われる5つのゲームは、どれも今大会のすべてが詰まった「芸術作品」である。
パウロ・ヴィター・ダモ・ダ・ロサ(ラムナプ・レッド) vs. サミュエル・パーディー(緑黒「巻きつき蛇」)
作品No.1:「閃光」
この作品は、ダモ・ダ・ロサの稲妻の如き攻撃が光るものとなった。
ダモ・ダ・ロサは1ターン目に《ファルケンラスの過食者》を繰り出し、続けて《ボーマットの急使》を加えると早速3点のダメージをパーディーへ。ダモ・ダ・ロサはさらにもう1枚《ファルケンラスの過食者》を戦線に追加すると、パーディーが繰り出した《巻きつき蛇》を《削剥》で除去し、2枚目の《巻きつき蛇》を《アン一門の壊し屋》で封じ、瞬く間にパーディーのライフを残り4点に叩き落とした。
パーディーは《最後の望み、リリアナ》に最後の望みをかけるが、ダモ・ダ・ロサはクリーチャーによる攻撃で1点を通すと、《陽焼けした砂漠》と《反逆の先導者、チャンドラ》の[+1]でフィニッシュ。
わずか4ターンの出来事であった。
作品No.2:「成長」
この作品では、雄大な自然が持つ力をパーディーが表現する。
ダモ・ダ・ロサは再び1ターン目から《ボーマットの急使》で攻勢を仕掛け、2ターン目には《航空船を強襲する者、カーリ・ゼヴ》を展開。しかしパーディーが《巻きつき蛇》、《最後の望み、リリアナ》と展開すると、ダモ・ダ・ロサの攻め手に陰りが生まれた。
それでもダモ・ダ・ロサは《村の伝書士》を加えて攻撃を続け、《最後の望み、リリアナ》の忠誠度を下げる。
パーディーは《巻きつき蛇》で反撃し、そして、一気にもう2枚の《巻きつき蛇》を並べた。
そして迎えたターン。パーディーは《ゼンディカーの代弁者、ニッサ》を繰り出し、[-2]で全軍に4個もの+1/+1カウンターを置いた!
これにはダモ・ダ・ロサもたまらず投了。互いに凄まじいまでの動きを見せ、メインデッキでの戦いは終わりを告げた。
作品No.3:「悲劇」
この作品では、パーディーの身に悲劇が起きる。
パーディーはマリガンを選択し、ダモ・ダ・ロサは2ターン目の《地揺すりのケンラ》で攻撃に出た。パーディーはそこへ《致命的な一押し》を撃ち込み、2枚目の《地揺すりのケンラ》にも再び《致命的な一押し》。
しかしパーディーの土地は2枚で止まっており、対するダモ・ダ・ロサは《反逆の先導者、チャンドラ》、《ボーマットの急使》と展開を続ける。
引けども引けども土地は来ず、ダモ・ダ・ロサの《反逆の先導者、チャンドラ》の忠誠度が「奥義」を起動できるほどに大きくなると、パーディーは盤面に寂しく残る2枚の土地を片付けた。
作品No.4:「佳境」
この作品をもって、両者が生み出す連番作品は最高潮を迎える。
パーディーは1ターン目《ウルヴェンワルド横断》で土地を持ってくると、ダモ・ダ・ロサは《ファルケンラスの過食者》でゲームを始める。パーディーが繰り出した《巻きつき蛇》に対してダモ・ダ・ロサは《航空船を強襲する者、カーリ・ゼヴ》を戦線に加えて、両者のにらみ合いになった。
パーディーは2枚目の《ウルヴェンワルド横断》を唱え、土地を2枚立たせてターンを渡した。ダモ・ダ・ロサは《地揺すりのケンラ》で《巻きつき蛇》のブロックを封じると、《ボーマットの急使》も加えて全軍で攻撃。《闇の掌握》で《航空船を強襲する者、カーリ・ゼヴ》を除去したものの、一挙5点のダメージを受ける。
しかしパーディーはX=2で《歩行バリスタ》を展開。《巻きつき蛇》の効果により+1/+1カウンターは3個置かれる。ダモ・ダ・ロサは攻撃を続け、2体のクリーチャーを失いながらも《ショック》との合わせ技で《巻きつき蛇》を退場させた。
パーディーは《ゼンディカーの代弁者、ニッサ》を呼び出し、盤面を固めにかかる。だがダモ・ダ・ロサは《栄光をもたらすもの》で空から急襲し、それを落とした。
しかしパーディーはここで《墓後家蜘蛛、イシュカナ》を着地させ、盤面を固める。
ダモ・ダ・ロサは《地揺すりのケンラ》を「永遠」で戻し、攻撃。残った植物・トークンがその攻撃を防ぎ、蜘蛛の軍勢がパーディーの身を守る。そして繰り出される《新緑の機械巨人》。蜘蛛・トークン1体に3個、《墓後家蜘蛛、イシュカナ》へ1個の+1/+1カウンターを置くと、まさに鉄壁の防御が築かれた。
ダモ・ダ・ロサはしばらく盤面を吟味したものの、手を出せずターン終了。パーディーは《地揺すりのケンラ》を除去すると、全軍で反撃した。これで一挙10点が入り、ダモ・ダ・ロサは投了に追い込まれることになった。
作品No.5:「栄光」
最終戦、これまでのすべてが結実する場所。
しかしパーディーはここでもマリガンを喫し、6枚でゲームを始めた。ダモ・ダ・ロサは2ターン目に《航空船を強襲する者、カーリ・ゼヴ》を展開し、パーディーは《残忍な剥ぎ取り》を戦場へ送り出す。
ダモ・ダ・ロサは《地揺すりのケンラ》と《ボーマットの急使》を送り込み、攻撃を加えた。パーディーは《最後の望み、リリアナ》で《地揺すりのケンラ》を墓地へ送ったが、ダモ・ダ・ロサは《アン一門の壊し屋》を戦線に加え、それを即座に退場させる。
パーディーは《歩行バリスタ》をX=2で繰り出し、《ボーマットの急使》を除去。
その返しのターンだった。ダモ・ダ・ロサは《栄光をもたらすもの》を繰り出し、全軍攻撃を仕掛ける。パーディーは5点のダメージを受け、残りライフは6点。
パーディーの手札には《最後の望み、リリアナ》と土地のみが残っていた。彼は《最後の望み、リリアナ》を繰り出して、その時を待つ。
ターンを迎えたダモ・ダ・ロサは、ひと呼吸置いて《地揺すりのケンラ》を「永遠」し、パーディーの盤面に残る《残忍な剥ぎ取り》をブロック不可に。
そして全軍を向かわせると、パーディーは「おめでとう」と右手を差し出した。ダモ・ダ・ロサはその手を力強く握り返したのだった。
ダモ・ダ・ロサ 3-2 パーディー
試合を終えた両者はヘッドセットをはずし、マイク越しではなく直接互いの健闘を称え合った。互いのワンプレイが互いをさらに高め合う試合を通じて、両者は充実感と大きな喜びを共有している。
頂点で生み出される芸術は、これからも見る者を感動させることだろう。もしかしたら、次の作品を生むのは画面の前のあなたかもしれない。
3日間を通して色とりどりの見事な作品を見て回った今大会も、いよいよ出口が近づいてきた。
最後に、1枚の写真をご覧いただこう。
その作品のタイトルは......そう、「王者」だ。
パウロ・ヴィター・ダモ・ダ・ロサ、プロツアー『破滅の刻』優勝おめでとう!
RESULTS 本大会の対戦結果・順位
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