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プロツアー『ラヴニカのギルド』
プロツアー『ラヴニカのギルド』注目の出来事
Corbin Hosler and Adam Styborski
2018年11月11日
(編訳注:埋め込み動画は英語実況のものとなります。)
ラヴニカが再びスタンダードにやって来た。そしてこの大人気次元は、その魅力をまた私たちに届けてくれた。プロツアー『ラヴニカのギルド』ではメタゲームが一新され、新たなデッキが登場し、素晴らしいプレイヤーの物語が紡がれ、マジックの歴史に残る最高のブラフが生まれ、そしてもちろん、マジックにその身を尽くして努力を重ねたプレイヤーが頂点へ昇った。
本記事では、プロツアー『ラヴニカのギルド』の注目の出来事をお送りする。
決着のとき
今大会では、プロツアー本戦が始まる前から注目の出来事が起きた。セス・マンフィールド/Seth Manfieldとルイス・サルヴァット/Luis Salvattoは2017-2018年シーズンのプレイヤー・オブ・ザ・イヤーを決めるポイント・レースを同率首位で終え、ここアトランタの地で行われる決定戦にてすべてを懸けた戦いに臨んだのだ。
プレイヤー・オブ・ザ・イヤー決定戦は過去にもほとんど行われておらず、ブラッド・ネルソン/Brad Nelsonがギョーム・マティノン/Guillaume Matignonを打ち破ってタイトルを獲得した2011年が唯一の例だ。史上2度目となる今回は、マンフィールドとサルヴァットが特殊ルールで行われる4本先取の戦いに挑んだ。彼らはほとんど同じデッキは組めない構築ルールのもとでそれぞれ4つのデッキを用意し、1ゲームマッチの試合を行った。一度勝利を収めたデッキは以降使用できないため、つまり用意した4つのデッキすべてで勝たなければならなかった。
両者とも革新的なデッキや最強のデッキを揃えて挑んだ決定戦は、最初から最後まで一進一退の白熱した戦いになった。そして2017-2018年度のプレイヤー・オブ・ザ・イヤーはサルヴァットのものになり、彼はマジックの歴史にその名を刻んだのだった。
ゲーム以上のもの
マジックは多くの人に多くのものをもたらしている。ある人には競技の舞台を。またある人には友人とのリラックスした時間を。ある限られた人にとっては、仕事にもなっている。
そしてダスティン・ウェイド・ロバーソン/Dustin Wade Robersonや彼の父ヴァンス・モーガン/Vance Morganのような人にとっては、(彼らの言葉を借りるなら)マジックは「生きがい」になっている。この週末、彼らは家族の物語を私たちに伝え、プロツアーは関わる者すべてにとって特別なものであることを知らせてくれた。
白ウィニーが再びの戴冠
マジックの古典的戦略である「白ウィニー」(白の軽量クリーチャーを並べて《栄光の頌歌》(元々は《十字軍》)能力で強化する戦略)が最後に勝ったのは、2013年のプロツアー『ドラゴンの迷路』のときだと言って差し支えないだろう。その大会では、クレイグ・ウェスコー/Craig Wescoeが操る「セレズニア・アグロ」が優勝した。そのデッキは、各カードの役割を見ると今大会の優勝デッキとほとんど変わらない。ラヴニカへの再訪とともに再び白ウィニー戦略がプロツアーの頂点に立ったのは、驚くことではないのだ。
だが今大会においては、白ウィニーは優勝しただけでなく――大会を席巻した。トップ8入賞デッキのうち、(《ベナリアの軍司令》を採用したものや、赤をタッチしたものなど形はさまざまながら)実に6つが白ウィニーを軸にしたものだった。最も人気を集めたのは「ゴルガリ・ミッドレンジ」だが、『ラヴニカのギルド』に登場する5つの陣営がすべて姿を見せる多様性あふれる環境の中で、頂点を取ったのは《正義の模範、オレリア》率いるボロスだった。
14 《平地》 4 《聖なる鋳造所》 2 《断崖の避難所》 -土地(20)- 4 《不屈の護衛》 4 《空渡りの野心家》 4 《短角獣の歩哨》 2 《癒し手の鷹》 4 《アダントの先兵》 4 《ベナリアの軍司令》 4 《敬慕されるロクソドン》 -クリーチャー(26)- |
4 《軍団の上陸》 2 《征服者の誇り》 4 《ベナリア史》 4 《議事会の裁き》 -呪文(14)- |
4 《トカートリの儀仗兵》 3 《実験の狂乱》 2 《反応 // 反正》 1 《苦悩火》 3 《暴君への敵対者、アジャニ》 2 《断崖の避難所》 -サイドボード(15)- |
環境がこれからどうなっていくのかは誰にもわからない――小型クリーチャーの群れを対処する手段は間違いなくあるだろう。しかし少なくともこの週末は、古典的なマジックが戻ってきたのだ。
「ジャガーノート」の快進撃再び
歴代最強のマジック・プレイヤーのひとりと評されるカイ・ブッディ/Kai Budde。プロツアー・トップ8入賞10回のうち「優勝7回」という凄まじい戦績は他に並ぶ者なく、その強さを何よりも雄弁に物語っているだろう。最近はプロツアーの舞台で姿を見ることが少なくなったものの、この週末はその存在感を遺憾なく発揮していた。
中でも、新たに殿堂顕彰者となったプロツアー王者にして世界選手権王者セス・マンフィールドとの戦いは格別だった。接戦を繰り広げた両者が迎えた最終ターン、マンフィールドは残りライフ1点ながら土地を立たせたブッディに対しどう攻撃するか、難しい決断に直面していた。そしてマンフィールドは、3体並んだ1/1クリーチャーのうち2体で攻撃することを選んだ――除去1枚ならそのまま勝てて、もし生き残ってもこちらはブロッカーを用意できる。
たしかに彼の選択は「ほとんどの」除去を回避できるものだった――《ヴラスカの侮辱》を除いて。ブッディは(攻撃してきた2体ではなく)マンフィールドを守る唯一のブロッカーへ《ヴラスカの侮辱》を差し向け、ライフを1点残して逆に致命打を与える体勢を作り上げたのだ。
世界中で話題を集めた《残骸の漂着》
今大会の準決勝第2試合は、プロツアー決勝ラウンドの歴史の中でも最も注目すべき戦いのひとつになった――ふたりのプロツアー王者が、すべてを懸けた戦いで激突したのだ。ジェレミー・デザーニ/Jérémy Dezaniは自身が唯一プロツアー・トップ8入賞を記録したプロツアー『テーロス』で、そのまま優勝を果たしたプレイヤーだ。一方の殿堂顕彰者ルイス・スコット=ヴァーガス/Luis Scott-Vargasは10年前にプロツアー・ベルリン2008で優勝を経験しており、それ以外にも実に8度にわたってプロツアー・サンデーの舞台にその名を残していた。
まさに最強の中の最強を決めるこの戦いにおいて、両者はこの週末の最強デッキ――ボロス・アグロを手にしていた。両者ともそのデッキを武器に今大会を席巻し、準々決勝でもそれぞれの戦いをしっかりと勝ち抜いてこの準決勝の舞台へ至ったのだ。
3ゲーム先取の準決勝で最初の2ゲームを連取したスコット=ヴァーガスだが、第3ゲームでは絶望的に不利な状況まで追い込まれていた。しかしそこで、マジックの歴史に残る出来事が起こった。《一番砦、アダント》とそれを起動できるだけのマナを残していたLSVは、ブロックの可能性を吟味して視覚的に確かめようと吸血鬼・トークンに手を伸ばすデザーニに、トークンを掴んで手渡した。そして攻撃宣言が確定すると、LSVはすぐさま手札から《残骸の漂着》を示した。プロツアー史上最高のブラフにやられたと悟ったデザーニは、そのまま右手を差し出したのだった。
こうして、勝敗は決した。LSVがプロツアー『ラヴニカのギルド』決勝へ進出したのだ。
エレンボーゲンが「昇殿」を果たす
決勝戦の最終第5ゲームではLSVがあまりに厳しい連続マリガンを喫することになったが、それでもアンドリュー・エレンボーゲンはこの試合を通して王者にふさわしい見事なプレイを見せてくれた。準決勝でLSVが《残骸の漂着》でデザーニを吹き飛ばす瞬間を目にしたエレンボーゲンは(あるいは優れたプレイヤーはみなそうかもしれないが)、その威力を意識してプレイする必要があった。
サイドボードから入れた1枚のカードを引き込む確率は極めて低い。それでもエレンボーゲンが警戒していた通り、今日のスコット=ヴァーガスは「持っていた」のだ。第4ゲーム、盤面の上でスコット=ヴァーガスを圧倒し、致命打を与えられるだけの軍勢を揃えたエレンボーゲンだが、彼はそこで一度動きを止めた。スコット=ヴァーガスが4マナを残してターンを返すと、エレンボーゲンは負け筋を徹底的に潰す決断をした。
「絶対に持っているはずだ」と言い放ったエレンボーゲンは、「勝ち星で追いつく」という誘惑に負けず、見事な采配を見せた。そしてついにスコット=ヴァーガスに《残骸の漂着》を撃たせ、勝負を最終ゲームまで持ち込んだのだった。
エレンボーゲンが最終ゲームも勝ち取ったことは、言うまでもないだろう。
(Tr. Tetsuya Yabuki)
RESULTS 本大会の対戦結果・順位
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