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EVENT COVERAGE
プロツアー『異界月』
2日目スタンダード・メタゲーム・ブレイクダウン
Marc Calderaro / Tr. Tetsuya Yabuki
2016年8月6日
喜ばしいことに、初日のアーキタイプ分析からは多くのことが読み取れた! 新たなデッキの数々が頭角を現したことも然ることながら、恐れられていた「バント・カンパニー」の数もはっきりした。アーキタイプ単体でも19%、《集合した中隊》を採用したデッキを含めれば24%だ。
それでは、初日の結果と数字を見ていこう。全体の分析を見る前に、まずはある1行に注目する。
アーキタイプ | 2日目使用者数 | 初日使用者数 | 2日目進出率 |
---|---|---|---|
バント・カンパニー | 31 | 58 | 53.4% |
合計/平均 | 185 | 302 | 61.3% |
「バント・カンパニー」は大敗を喫することになった。そしてサンプルとしては数が少ないものの、「緑白トークン」も同じ憂き目を見ている。
アーキタイプ | 2日目使用者数 | 初日使用者数 | 2日目進出率 |
---|---|---|---|
緑白トークン | 6 | 14 | 42.9% |
合計/平均 | 185 | 302 | 61.3% |
既存のデッキからは他に、「白黒コントロール」が辛うじて平均を維持している。
アーキタイプ | 2日目使用者数 | 初日使用者数 | 2日目進出率 |
---|---|---|---|
白黒コントロール | 13 | 21 | 61.9% |
合計/平均 | 185 | 302 | 61.3% |
オーライ、焦らすのはこの辺にしよう。以上のデッキが芳しくない成績に終わったということは、今大会では何が活躍したのだろう? 全体の分析をご覧あれ。
アーキタイプ | 2日目使用者数 | 初日使用者数 | 2日目進出率 |
---|---|---|---|
黒緑「昂揚」 | 32 | 37 | 86.5% |
バント・カンパニー | 31 | 58 | 53.4% |
4色「現出」 | 13 | 17 | 76.5% |
白黒コントロール | 13 | 21 | 61.9% |
青黒ゾンビ | 11 | 19 | 57.9% |
ティムール「現出」 | 11 | 17 | 64.7% |
ジャンド「昂揚」 | 10 | 12 | 83.3% |
黒緑ミッドレンジ | 7 | 12 | 58.3% |
赤緑ランプ | 7 | 8 | 87.5% |
緑白トークン | 6 | 14 | 42.9% |
ナヤ「伝説」 | 5 | 6 | 83.3% |
スゥルタイ・コントロール | 5 | 6 | 83.3% |
バント・スピリット | 4 | 6 | 66.7% |
赤緑「昂揚」ランプ | 4 | 5 | 80.0% |
青黒「マッドネス」 | 3 | 4 | 75.0% |
白青スピリット | 3 | 7 | 42.9% |
バント・エルドラージ・儀式 | 2 | 3 | 66.7% |
青緑「現出」 | 2 | 2 | 100.0% |
白単人間 | 2 | 4 | 50.0% |
ゾンビ「現出」 | 2 | 4 | 50.0% |
アブザン・コントロール | 1 | 2 | 50.0% |
アブザン「過ぎ去った季節」 | 1 | 1 | 100.0% |
バント人間 | 1 | 2 | 50.0% |
黒緑「過ぎ去った季節」 | 1 | 2 | 50.0% |
青赤「熱病の幻視」 | 1 | 3 | 33.3% |
エスパー・コントロール | 1 | 1 | 100.0% |
赤白「伝説」 | 1 | 1 | 100.0% |
青単「岸の飲み込み」 | 1 | 2 | 50.0% |
赤単アグロ | 1 | 1 | 100.0% |
赤単エルドラージ | 1 | 1 | 100.0% |
赤単ゴーグル | 1 | 3 | 33.3% |
赤白ゴーグル | 1 | 1 | 100.0% |
合計/平均 | 185 | 302 | 61.3% |
2日目も様々なアーキタイプがあると言って間違いない。さらに分析を進めて、この数字を読み解いていこう。まずは最上位からだ。
黒緑「昂揚」
ここまでで最高の活躍を見せているのは、「黒緑『昂揚』」――墓地へ大量のカードを落とし、それらを(《最後の望み、リリアナ》などで)再利用し、強大なる《約束された終末、エムラクール》でゲームを決めるデッキだ。
このアーキタイプには様々な形があるものの、その区分を決めるのはやや難しい。長期戦に特化したものもあれば速さに特化したものもあるが、中でも大きな違いが見受けられるのは《残忍な剥ぎ取り》を採用するか《過去との取り組み》を採用するかだろう。なお、《森の代言者》や《棲み家の防御者》といったクリーチャーを採用したより「アグレッシブな」形もあるが、名声を得ることになるかどうかは定かでない。
《残忍な剥ぎ取り》を採用した「黒緑『昂揚』」の2日目使用者数は23人。つまり、9人が採用していないということになる。チーム「East-West Bowl」とチーム「Face to Face Games」が持ち込んだデッキには《残忍な剥ぎ取り》が採用されていた(チーム「East-West Bowl」のメンバーには「ティムール『現出』」を使用したプレイヤーもいる)。一方、クリーチャーの枠に《墓後家蜘蛛、イシュカナ》や《巨森の予見者、ニッサ》、《精神壊しの悪魔》(そしてもちろん《約束された終末、エムラクール》)を採用し、より長期戦に目を向けたバージョンを使用したプレイヤーは、《過去との取り組み》を選択している。
《過去との取り組み》は、(こちらも活躍した)「ジャンド『昂揚』」にも採用されている。「ジャンド『昂揚』」は、「黒緑『昂揚』」に赤をタッチして《焦熱の衝動》をメイン・ボードから採用し、その他赤の優れた呪文をサイドボードに搭載した形だ。
さまざまな形の中でより優れたものがどれかは、まだわからない。しかし「黒緑『昂揚』」系のデッキが今大会を席巻したのは間違いないだろう。すべてのバージョンを合わせて、2日目進出率85.7%を誇っているのだ。
4色「現出」
次に目立つのは、「4色『現出』」と呼ばれるデッキの活躍だろう。だが厳密に言えば、このアーキタイプを「4色『現出』」でひとくくりにするのは適切ではない――このアーキタイプをひとつの要素でまとめるのは難しく、また使用者がみな同じ形を使っているわけでもないのだ。とはいえ使用者の多くは、しばらくぶりに姿を見せたオーストラリアのダン・アンウィン/Dan Unwinのバージョンを使用しているようだ。
また、先週末日本で行われたトーナメントにて「狂気の天才」浅原 晃が使用したデッキに、インスピレーションを受けたものを使用しているプレイヤーもいる。浅原は大会直前に大慌てでこのデッキを組み上げ、1度もプレイ・テストをすることなく大会に臨んだという。彼は予選ラウンドを1ゲームしか落とさずに駆け抜けた――その1ゲームも、デッキ登録の不備によるゲーム・ロスだった。
このデッキの動きを見てみると......実に複雑だ。まずは《ヴリンの神童、ジェイス》や《首絞め》、《群れの結集》、《過去との取り組み》で墓地を肥やす。続けて《憑依された死体》を墓地から釣り上げ(ここで《コジレックの帰還》などの強力なカードを捨てておきたいところだ)、《秘蔵の縫合体》をすべて戦場に戻す。
ここまでくれば、あとは何でもできる。4枚搭載された《ウルヴェンワルド横断》で《州民を滅ぼすもの》や《老いたる深海鬼》といった「現出」クリーチャーを呼び出すもよし、《墓後家蜘蛛、イシュカナ》を連打して大量の蜘蛛を生み出すもよし、《約束された終末、エムラクール》を唱えるのもよし、あるいは単純にゾンビやスピリットの群れで攻撃するもよしだ。
このデッキは《秘蔵の縫合体》を存分に活かすため、もしかしたら「4色『縫合体』」と呼ぶのが正しいのかもしれない(さまざまなカードを「縫合」して、見事な動きを生み出すこのデッキにぴったりだ)。しかし中には、《秘蔵の縫合体》を採用しないものもあるのだ!
私たちは今後もこのデッキから目を離さないつもりだが、現時点ですでに耳目を驚かせているのは間違いないだろう。このデッキについては、のちにレイ・「ブリスターガイ」・ウォーキンショー/Ray "blisterguy" Walkinshawが記事を書く予定なので、ぜひご覧いただきたい。
ティムール「現出」
「4色『現出』」ほど意欲的な作品ではないものの、「ティムール『現出』」も目を離せないデッキだろう。使用者によって構成に多少の差異はあるが、大きな目的は(《原初のドルイド》や《作り変えるもの》、《巡礼者の目》といった)アドバンテージを生み出すカードを生け贄に捧げて、(《絡み草の闇潜み》や《老いたる深海鬼》、《不憫なグリフ》といった)さらなるアドバンテージに繋げるというものだ。
このデッキには他に赤のカードが採用されていない(そもそも《山》すら採用されていない)にも関わらず、《コジレックの帰還》が欠かせない1枚となっている。また序盤の速度を重視して《約束された終末、エムラクール》をサイドボードに置いた形もあるが、多くは《約束された終末、エムラクール》によって勝つプランをとっている。《不憫なグリフ》で勝つこともあるものの、通常は時間を稼ぎ、大いなる父にして母へ......いや、性別を持たぬ古の神へ......いや......その存在が何であるかは問題じゃないだろう。
前述したふたつのデッキほどの活躍はせず、扱いが難しいという声も多く聞くが、このデッキが楽しいということは間違いない。
赤緑ランプ系
最後に分析するのは、日本のプレイヤーとチーム「Pantheon」が使用している「赤緑」の違いだ。これらを分けるのは、「昂揚」へのアプローチと「マナ加速」への力の入れ方だろう。前者は《発生の器》や《過去との取り組み》、さらに《群れの結集》を採用し、合わせて《面晶体の這行器》と《面晶体の記録庫》によるマナ加速から《約束された終末、エムラクール》や《世界を壊すもの》、《龍王アタルカ》といった大型クリーチャーへ繋いでいる。
一方、後者はライブラリーを掘り進めることに力を入れている。特徴的なのは、《苦しめる声》や《炎呼び、チャンドラ》、それから4枚積みされた《集団的抵抗》など、緑のカードではなく赤のドロー・カードを用いて墓地を肥やしている点だ。
どちらの形も、使用者は少ないものの優れた成績を収めている。
分析結果
以上の分析から得られる最大の事柄は何だろうか? それは、巨大で莫大で強大で絶大で、触手を振るう《約束された終末、エムラクール》の活躍だ。「大活躍」と言っていいだろう。その圧倒的質量はすべてを捻じ曲げ、それに応じてメタゲームは動いた。
今後長きにわたり、サイドボードに《エルドラージの寸借者》や《無限の抹消》の姿が見られるようになるだろう。中にはそれをすでに見越したプレイヤーもいた。《約束された終末、エムラクール》が追放されても戻せるよう、《久遠の闇からの誘引》を採用したリストもあったのだ。すべてはエムラクールのために。
それから、《墓後家蜘蛛、イシュカナ》も大きな活躍を見せている。《約束された終末、エムラクール》と《墓後家蜘蛛、イシュカナ》は、手を取り合って今大会を勝ち進んでいるようだ。彼らはきっと友だちになったのだろう。多くの足と多くの触手を持つことについて、その類似性と違いを話し合っているに違いない。
そして、《最後の望み、リリアナ》のことも忘れてはいけない。このカードが持つ能力は、すべてが現在のスタンダード環境に噛み合っている。クリーチャーを除去する能力、墓地を肥やす能力、墓地からクリーチャーを再利用する能力。まさに至高の1枚と言えるだろう。
また、《コジレックの帰還》はたちまち「カンパニー」系のデッキを壊滅させた。「バント・カンパニー」はいまだ強力で多くの勝利をものにしているが、かつてと比べて盤石とは決して言えない状況になった。
さあ、ここからが見どころだ。プロツアー2日目のメタゲームはドラフトの戦績も絡むため、正確でない部分も確かにある。しかし2日目に進出したプレイヤーがみな構築で好成績を残したとは言えないが、それでも失敗したデッキを見分ける良い指標にはなる。
最後に、初日の使用者数上位10デッキを2日目進出率の高い順に並べた表を掲載しよう。ここから多くのことが読み取れるはずだ。
アーキタイプ | 2日目使用者数 | 初日使用者数 | 2日目進出率 |
---|---|---|---|
赤緑ランプ | 7 | 8 | 87.5% |
黒緑「昂揚」 | 32 | 37 | 86.5% |
ジャンド「昂揚」 | 10 | 12 | 83.3% |
4色「現出」 | 13 | 17 | 76.5% |
ティムール「現出」 | 11 | 17 | 64.7% |
白黒コントロール | 13 | 21 | 61.9% |
合計/平均 | 185 | 302 | 61.3% |
黒緑ミッドレンジ | 7 | 12 | 58.3% |
青黒ゾンビ | 11 | 19 | 57.9% |
バント・カンパニー | 31 | 58 | 53.4% |
緑白トークン | 6 | 14 | 42.9% |
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