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プロツアー『霊気走破』

「プロツアー『霊気走破』」メタゲームブレイクダウン
2025年2月21日
デッキリストが提出され、データの分析も完了し、2025年最初のプロツアーがいよいよ走り始める!「プロツアー『霊気走破』」は2月21日から2月23日まで「MagicCon: Chicago」で開催され、世界トップクラスのマジックプレイヤー349名が、賞金総額50万ドル、世界選手権への招待、そしてプロツアー優勝トロフィーを懸けて競い合う。スタンダードでは3,500枚以上のカードが使用可能であり、スタンダード史上最も複雑かつハイパワーなメタゲームが参加者を待ち受けている。
プロツアーには、地域チャンピオンシップ、オンライン予選、過去のプロツアーで好成績を収めた優れたプレイヤー達が顔を揃えている。現マジック世界王者のハビエル・ドミンゲス/Javier Dominguezも名を連ね、さらなるトロフィーの入手を狙っている。金曜日と土曜日は各日ともに朝の『霊気走破』ドラフトで始まり、その後スタンダード5回戦が続いていく。日曜日はスタンダードでトップ8の対戦が行われ、プロツアー優勝者が誕生する。
全試合の模様はtwitch.tv/magicとPlay MTGのYouTubeチャンネルにて生放送でお届けする(日本語放送は日本公式YouTubeチャンネルをご覧ください)。初日と2日目は米国東部標準時12時(日本時間26時)から、日曜日は米国東部標準時11時(日本時間25時)から生中継を開始する。より詳細な情報は観戦ガイドから見ることができる。最高速度の興奮を是非体験してくれ。

スタンダード・メタゲームブレイクダウン
スタンダードは定期的なローテーションが行われている、60枚のデッキを使用するフォーマットだ。現在は『団結のドミナリア』以降の拡張セットが使用可能である。過去数ヶ月の間、スタンダード環境はグルール・マウス、ディミーア・ミッドレンジ、エスパー・ピクシーなどのデッキが席巻していた。しかし、『霊気走破』の参入によってメタゲームのギアは切り替わった。
アーキタイプ名 | 使用者数 | 使用率 |
---|---|---|
1. グルール・マウス | 66 | 18.9% |
2. エスパー・ピクシー | 58 | 16.6% |
3. 版図大主 | 53 | 15.2% |
4. ジェスカイ眼魔 | 21 | 6.0% |
5. 赤単アグロ | 11 | 3.2% |
6. ディミーア・ミッドレンジ | 9 | 2.6% |
7. ディミーア・バウンス | 9 | 2.6% |
8. アゾリウス眼魔 | 9 | 2.6% |
9. ゴルガリ・ミッドレンジ | 8 | 2.3% |
10. セレズニア・ケージ | 8 | 2.3% |
11. グルール力線 | 7 | 2.0% |
12. エスパー模範 | 7 | 2.0% |
13. アゾリウス全知 | 7 | 2.0% |
14. アゾリウス・コントロール | 7 | 2.0% |
15. ジェスカイ召集 | 7 | 2.0% |
16. ゴルガリ陰湿な根 | 4 | 1.1% |
17. ジェスカイ・モニュメント | 4 | 1.1% |
18. ボロス召集 | 4 | 1.1% |
19. ゴルガリ墓地利用 | 4 | 1.1% |
20. ゴルガリ抹消者 | 4 | 1.1% |
21. ディミーア・エンチャント | 3 | 0.9% |
22. グルール昂揚 | 3 | 0.9% |
23. バント・ケージ | 3 | 0.9% |
24. バント機械巨人 | 3 | 0.9% |
25. 白単世話人 | 3 | 0.9% |
26. アゾリウス・バニコーン | 3 | 0.9% |
27. マルドゥ・モニュメント | 3 | 0.9% |
28. イゼット・アーティファクト | 2 | 0.6% |
29. シミック・マーフォーク | 1 | 0.3% |
30. ボロス・ゴブリン | 1 | 0.3% |
31. エスパー・ミッドレンジ | 1 | 0.3% |
32. アゾリウス・アーティファクト | 1 | 0.3% |
33. 五色レジェンズ | 1 | 0.3% |
34. ディミーア・デーモン | 1 | 0.3% |
35. ラクドス・サクリファイス | 1 | 0.3% |
36. ジャンド消尽 | 1 | 0.3% |
37. アブザン陰湿な根 | 1 | 0.3% |
38. アブザン・ケトラモーズ | 1 | 0.3% |
39. セレズニア・アグロ | 1 | 0.3% |
40. オルゾフ・コントロール | 1 | 0.3% |
41. グルール消尽 | 1 | 0.3% |
42. スゥルタイ恐怖 | 1 | 0.3% |
43. ティムール消尽 | 1 | 0.3% |
44. グルール果敢 | 1 | 0.3% |
45. ティムール・カワウソ | 1 | 0.3% |
46. ティムール分析者 | 1 | 0.3% |
47. オルゾフ・ミッドレンジ | 1 | 0.3% |
今週末のトーナメントでは、アグロ、ミッドレンジ、コントロール、コンボなど幅広いアーキタイプが登場し、中には革新的な構築も散見される。すべてのデッキリストは2月21日(金)の第4回戦開始時、米国東部標準時午後2時頃に公開予定だ(日本時間28時頃)。それまでの間、最も多くプレイされるデッキを詳しく見ていこう。
グルール・マウス(使用者66名):圧倒的なスピードと容赦ない攻撃力を誇るグルール・マウス(別名:グルール・アグロ)は、爆発的なスタートと勇敢な誘発で一気に押し切ることを目指す。《心火の英雄》と《熾火心の挑戦者》の強力な誘発型能力は、《多様な鼠》や《巨怪の怒り》のようなカードで常に強化されていく。緑の要素は薄く、主に《脚当ての補充兵》、《探索するドルイド》、《亭主の才能》を数枚ずつ採用し、残りはサイドボードの効果的な選択肢として入ってきている。
エスパー・ピクシー(使用者58名):エスパー・バウンスとも呼ばれるこのデッキは、戦場に出たときの効果を持つエンチャントである《嵐追いの才能》、《望み無き悪夢》、《逃げ場なし》と、それらを手札に戻せる《養育するピクシー》、《孤立への恐怖》、《この町は狭すぎる》などを組み合わせることで強みを発揮する。《逃げ場なし》の誘発型能力を繰り返し使うことでアグロ・デッキを封じ込め、《望み無き悪夢》のループはコントロール・デッキをじわじわと追いつめる。
版図大主(使用者53名):ズアー・オーバーロードや版図コントロールとも呼ばれるこの4色デッキは、《永遠の策謀家、ズアー》の能力で大主を絆魂持ちの魔物へと変化させ、ゲームを一変させる攻撃時誘発へと繋げていく。デッキの中心となるのは《ホーントウッドの大主》で、《豆の木をのぼれ》を誘発させつつ《力線の束縛》のための版図を揃えていく。ここ数週間でこのデッキの使用率は急上昇しており、その理由の一つに《全損事故》の採用がある。このカードは《豆の木をのぼれ》を誘発させることができるためだ。
ジェスカイ眼魔(使用者21名):ジェスカイ眼魔は《忌まわしき眼魔》を墓地に送り、それを《救いの手》や《再稼働》で吊り上げることで重い追加コストの踏み倒しを狙うデッキだ。一度戦場に出ると戦場は予示クリーチャーで埋め尽くされていき、ゲームは眼魔に支配されるだろう。元々の白青型からジェスカイ眼魔へ進化したことで赤いカードが追加された。手札を捨てる効果を持つ《逸失への恐怖》や除去呪文の《塔の点火》、そしてサイドボードに《灯を追う者、チャンドラ》を用意している。しかし、環境は既にこの5/5の青い飛行クリーチャーを吊り上げる戦略に対して適応しており、今週末のサイドボード・カードの中で最も多く採用されているのは対策となる《安らかなる眠り》、《邪悪を打ち砕く》、《石術の連射》、《脚当ての陣形》、《除霊用掃除機》の5種類である。
これら4つのデッキの使用率を足すと、56.6%になる。グルール・マウスとエスパー・ピクシーは以前のスタンダード・フォーマット解説記事で私が取り上げた通り、『霊気走破』の発売前からトップメタのデッキだったため、これらの支配率は驚くところではない。しかし、版図大主とジェスカイ眼魔の台頭は新たなうねりとなるだろう。一方、ディミーア・バウンス、ゴルガリ・ミッドレンジ、ディミーア・ミッドレンジなどの黒のミッドレンジ・デッキは勢いが落ちており、前評判よりも数を減らしている。
残りの43.4%は、まさにメタゲームの多様性を表している。数十ものアーキタイプ(ほとんどが1%から3%)が、現在のスタンダードにおける競技シーンでのデッキ選択肢の多さを示している。『霊気走破』がスタンダードに新鮮なエネルギーを注入したことで、独創的なデッキが数多く登場している。スタンダードに向けて今のうちにシートベルトを確認しよう。エンジンがまもなく点火するだろう!
『霊気走破』で最も採用されたカードたち
現在のスタンダードのカード・プールは、新しいカードが参入するハードルが高くなっている。《巨怪の怒り》、《熾火心の挑戦者》、《心火の英雄》、《この町は狭すぎる》は「プロツアー『霊気走破』」において土地を除いて最も多くメインデッキに採用されたカードだ。多くのグルール・マウスと赤単アグロのリストは、最新セットのカードを1枚も採用していない。しかし、それでも『霊気走破』は確かな存在感を示した。既存のアーキタイプを強化したり、構築の軸となるカードが新たなアーキタイプを生み出したりしている。以下の表は、新たにスタンダードに加わったカードの採用状況を349枚のデッキリストから集計したものだ。
カード名 | 合計枚数 | メインデッキ | サイドボード |
---|---|---|---|
《全損事故》 | 166 | 161 | 5 |
《呪文貫き》 | 160 | 82 | 78 |
《ウェイストウッドの境界》 | 141 | 141 | 0 |
《不気味なガラクタ》 | 130 | 35 | 95 |
《勢い挫き》 | 107 | 89 | 18 |
《輝晶の機械巨人》 | 58 | 58 | 0 |
《食糧補充》 | 45 | 41 | 4 |
《ブリーチボーンの境界》 | 44 | 44 | 0 |
《灯を追う者、チャンドラ》 | 36 | 0 | 36 |
《脱皮の世話人》 | 35 | 35 | 0 |
《跳ね弾き》 | 32 | 32 | 0 |
《入れ子ボット》 | 29 | 29 | 0 |
《忍耐の記念碑》 | 28 | 28 | 0 |
《リバーパイアーの境界》 | 25 | 25 | 0 |
《油浸の機械巨人》 | 22 | 15 | 7 |
《激浪の機械巨人》 | 20 | 1 | 19 |
《サンビロウの境界》 | 19 | 19 | 0 |
《浚渫機の洞察》 | 17 | 16 | 1 |
《脅迫戦術》 | 17 | 0 | 17 |
《屑転がし》 | 15 | 15 | 0 |
《竜航技師》 | 15 | 15 | 0 |
《略奪するアオザメ》 | 12 | 12 | 0 |
《記録の守護者》 | 12 | 12 | 0 |
《アフターバーナーの専門家》 | 12 | 12 | 0 |
《新たな夜明け、ケトラモーズ》 | 10 | 10 | 0 |
《再利用隔室》 | 8 | 8 | 0 |
《キチン質の墓地歩き》 | 8 | 8 | 0 |
《轟音の速百足》 | 8 | 7 | 1 |
《重厚な世界踏破車》 | 7 | 7 | 0 |
《ウィローラッシュの境界》 | 6 | 6 | 0 |
《グリスレンチのゴブリン》 | 6 | 6 | 0 |
《乗り手を守れ》 | 6 | 0 | 6 |
《咆吼部隊の重量級》 | 4 | 4 | 0 |
《焼き切る非行士》 | 4 | 4 | 0 |
《たかり空エイ》 | 4 | 4 | 0 |
《爆弾車》 | 4 | 4 | 0 |
《幽体の干渉》 | 4 | 0 | 4 |
《帰還航路》 | 3 | 3 | 0 |
《危険な罠》 | 3 | 3 | 0 |
《ロケッティアの隊長、レッドシフト》 | 3 | 3 | 0 |
《開拓者、おたから》 | 3 | 3 | 0 |
《火に油》 | 3 | 0 | 3 |
《生体生成エンジン》 | 2 | 2 | 0 |
《栄光荒野のオオヤマネコ》 | 2 | 2 | 0 |
《光輝の睡蓮》 | 2 | 2 | 0 |
《アモンケット・サーキット》 | 2 | 2 | 0 |
《運任せ》 | 2 | 0 | 2 |
《思考の泉のマーフォーク》 | 1 | 1 | 0 |
《スピードデーモン》 | 1 | 1 | 0 |
《壮大な玉突き衝突》 | 1 | 1 | 0 |
《ガスタルの激ヤバ車》 | 1 | 1 | 0 |
《市場背負いの歩行機械》 | 1 | 0 | 1 |
《空見の戦車》 | 1 | 0 | 1 |
《忘却を超える速度》 | 1 | 0 | 1 |
《奔流川の記念碑》 | 1 | 0 | 1 |
採用枚数の観点からみると、《全損事故》と《呪文貫き》が最も大きな影響を与えており、そこから効率的な相互作用があることが影響していることが分かる。《全損事故》は版図大主やアゾリウス・コントロールの再興に大きな役割を果たした。わずか2マナで攻撃クリーチャーに対処でき、しかしマナ総量は5のため《豆の木をのぼれ》を誘発させて追加ドローももたらしてくれる。《呪文貫き》は再録カードではあるが、このゲームにおける極めて効率のよいカウンター呪文の重要性を再認識させてくれた。
対抗色の境界サイクルは多くのデッキに採用され、2色デッキのマナ基盤を大幅に改善させた。特に《ウェイストウッドの境界》は緑黒デッキの必須カードとなりつつあり、《森》の上位互換のように機能する。私が個人的に好きなデッキは強化されたゴルガリ抹消者デッキであり、この土地のおかげで《ファイレクシアの抹消者》と《薮打ち》の両方の採用が現実的になった。2枚のコンボでゲームに勝利することができる。
エスパー・ピクシーはメインデッキに《勢い挫き》を、サイドボードに《不気味なガラクタ》を採用している。これらの除去カードは《養育するピクシー》と相性がよく、バウンスすることでさらなるアドバンテージを得ることができる。また、《勢い挫き》は《吞気な物漁り》の能力を誘発させ、盤面を維持するのにも貢献する。さらにエスパー・ピクシーとディミーア・バウンスに留まらず、新たなアーキタイプであるエスパー模範も誕生した。このデッキは《セラの模範》によって、こういったパーマネント型の除去を使いまわすことができる。
『霊気走破』の機械巨人サイクルは、強力なクリーチャー達であり、《喉首狙い》、《逃げ場なし》、《この町は狭すぎる》などのよく使われる除去を回避できる。《油浸の機械巨人》はディミーア・ミッドレンジで採用されつつあり、《激浪の機械巨人》はアゾリウス全知のサイドボード・プランの新たな選択肢となりつつあるが、最も注目されているのは《輝晶の機械巨人》である。セレズニア・ケージで《薄暮薔薇の聖遺》と《脚当ての補充兵》をサーチすることができるため、除去、カード・アドバンテージ、クリーチャー展開を同時にこなすというユニークな結果をもたらしてくれる。また、新たに登場したバント機械巨人やバント・ケージといったデッキでは《マネドリ》を相方に据えることで、4/4飛行クリーチャーがほぼ無限に湧いてくる。
『霊気走破』のいくつかのサポート呪文は、デッキを少しずつ強化している。例えば《食糧補充》は史上最高の《予言》系カードとも言えるカードであり、アゾリウス・コントロールやアゾリウス眼魔の貴重な強化カードである。一方、《脱皮の世話人》はゴルガリ陰湿な根の重要なサポートカードとなり、《陰湿な根》と組み合わせることで大量の植物トークンを生み出す。ゴルガリ墓地利用系のデッキでは自身への切削により、《鞘破りの群れ》や《虚ろなる匪賊》のプレイに向けて墓地を肥やす。こういったカードの追加により、上位層ではなかったデッキがそれらに対抗できるパワーを手に入れている。
最後に、『霊気走破』は環境にうねりを与えるほど強力なデッキの軸となるカードとアーキタイプを生み出した。《忍耐の記念碑》は様々なジェスカイやマルドゥのデッキで採用され、《ファイレクシアのドラゴン・エンジン》をリアニメイトし、ドロー、宝物の生成、ライフルーズの破壊的な連鎖を実現するための中心となっている。一方、《アフターバーナーの専門家》は2ターン目に《浚渫機の洞察》を使用し、3ターン目に《竜航技師》で速攻付きで専門家を戻す強力なターンを実現する、新たな消尽デッキを誕生させた。
まとめ
確立された強力なデッキが支配するフォーマットにおいても、『霊気走破』は革新の追い風を強く吹かせている。スタンダード環境は再び活気づき、多くの新しいカードが確かな影響を与えている。しかし、真の試練はこれから始まる。一体誰が頂点に立ち、その名を競技マジックの歴史に刻むのだろうか? 「プロツアー『霊気走破』」は2月21日(金)に開幕する。熱狂の瞬間に立ち会うため、ぜひ配信をごらんあれ!
