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プロツアー『神々の軍勢』

戦略記事

野生への解放

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Nate Price / Tr. Masashi Koyama

2014年2月21日


 2枚のカードが解禁され、1枚のカードが禁止され、フォーマット全体が変貌した。ようこそ、モダンの新たな段階へ。第一印象では、数ヶ月前にプレイしていたモダンとそこまで大きな違いは無いように見えるかもしれない。主要なデッキの大部分はそのままだし、フィールドを構成している要素はかなり予測可能なデッキたちだ。それでも、これらのモダン禁止リストの変更は各所に大きなダメージ(と助け)を与えた。

「ジャンドの数は減ったね」チーム「ChannelFireball ― 万神殿」のウィリアム・ジェンセン/William Jensenは語りだした。「誰でもみんな使っていたものだけれども・・・」

 この過去と現在の間において最も大きく、明白な相違点に関して、ジェンセンは切り出した。

 ゴーンと鐘が鳴り、悪い魔女は死んだ。

 《死儀礼のシャーマン》が会場ではなく、家からプロツアーの中継を眺めなければいけなくなったことで、ジャンドは最も重大なツールのひとつを失うこととなった。ジャンドというデッキにおいて、利点と適応能力、そして強力なカードは常に増加してきた。現在、状況は全く異なるものとなった。

「《死儀礼のシャーマン》の禁止はジャンドだけにダメージを与えたわけではありません」世界ランキング2位、チームChannelFireballのジョシュ・アター=レイトン/Josh Utter-Leytonは語る。「そのカードを使用しているデッキは他にもありました。しかし、ジャンド以上に傷ついたデッキはありません。《出産の殻》デッキも《死儀礼のシャーマン》を使っていましたが、《貴族の教主》のようなカードを入れるだけで大丈夫です。むしろ、《死儀礼のシャーマン》の相手をしなくて良いということでむしろ好転したとまで言えるかもしれません。禁止前は、ジャンドは《出産の殻》と並んで、フィールドで最良のデッキの2つのうち1つでした。《死儀礼のシャーマン》はジャンドのマナカーブを完璧に埋めていました。今では、いつプレイしても強力な1マナ圏のカードがなくなりました。そのことはジャンドにとっては大きな打撃です。確かにプレイに値するデッキではありますが、高みに座していたところから、その他全てのデッキと同等のところまで落ちてきました。」

 ジャンドが衰え始めたことで、他のデッキたちが以前にはできなかったことができるようになる。そもそも、《死儀礼のシャーマン》特有の動きにより封じられていたデッキがあるのだ。

「墓地を利用するデッキや戦略は概して以前よりも良くなりました。《死儀礼のシャーマン》を倒すための解答を見出す挑戦をする必要がなくなりました。」とジェンセンは説明した。

 アター=レイトンも完全に同意した。

「ジャンドが弱体化したので、」と彼は付け加える。「多くのコンボデッキやシナジーを持たないクリーチャーデッキにチャンスが与えられました。ジャンドは《ヴェールのリリアナ》、手札破壊、《闇の腹心》、《漁る軟泥》など核を成す強力なカードのおかげで、そういったデッキ相手には常に強かったですからね。さらに、ジャンドは素晴らしいサイドボードカードも備えていました。今では、ジャンドへの締め付けが厳しくなったので、より多くのデッキへの門戸が開きました。ですので、より多くのデッキがプレイされる光景を見ることができるでしょう。素晴らしいことです。」

「全力のジャンドと格闘していたデッキもいくつかあります」世界ランキング3位のリード・デューク/Reid Dukeが続ける。「《欠片の双子》が例として思いつきますね。ジャンドの下降はクリーチャー戦略の可能性を広げました。面白いのは、《野生のナカティル》が参入することで、クリーチャー戦略の幅が狭まることなのですが...」

この子猫ちゃんが帰ってきたことでめまぐるしい変化が起きるだろう。

 《野生のナカティル》の話をしよう。そのインパクトは《死儀礼のシャーマン》とほとんど同じぐらいに重大なものだ。

「ええ、Zooデッキが《野生のナカティル》を手に入れることは歴然たる差があります」世界ランキング12位のオーウェン・ターテンヴァルド/Owen Turtenwaldが目を大きく見開いて、頭を振りながら語る。

「平たく言えば」とデュークは微笑んだ。「《野生のナカティル》をデッキに入れればゲームに勝利するチャンスは格段に向上するでしょう。僕らのチームが感じたのは、Zooが最大かつ、最強のデッキになるということでした。だから、僕らがやらなければいけないことは、Zooに対して相性がいいか確認することでした。例えば、僕が使っているデッキは黒緑の「ザ・ロック」スタイルのデッキで、Zooよりはデッキパワーは低いですが、僕は《台所の嫌がらせ屋》や《漁る軟泥》のようなカードを使いたかったのです。」

 アター=レイトンも非常に似た意見を持っていた。

「Zooをプレイするなら2種類のデッキがあります。《野生のナカティル》入りのZooと、《密林の猿人》入りのZooです。」と彼は言う。「片方は良いデッキで、片方は良くないデッキです。この2つのデッキの違いはただただ大きい。クロックの差を解消するために追加ターンが必要なようなものですからね。《野生のナカティル》は非常に重要であるといえます。無料の追加《稲妻》のようなものですね」

 《死儀礼のシャーマン》と《野生のナカティル》に関する変更のポジティブな衝撃の一方で、《苦花》の解禁の影響はほとんど感じることができない。《苦花》解禁の発表にあたり、ソーシャルメディアはプロツアーで乱用される恐れについて大騒ぎしていた。初日にフロアを周って見たところ、1枚のカードによってがっかりさせられるようなことは見受けられなかった。どうやら、プロツアーの参加プレイヤーたちの多くは、《苦花》がインターネット上の人々が考えていた戦術的核にはならない、と判断したようだ。

フェアリーの台頭と君臨が非常に大きく取り沙汰されたが、多くのトップチームが試した後では、過度な期待だった。

「《苦花》の解禁は本当に良い動きだと思いますよ。というのもそのカードは圧倒的ではないからです」とデュークは私に語った。「非常に独特で強力なカードなので、望まれるならばモダンで使われうるでしょう。プロツアー競技者たちは皆《苦花》が解禁されても、性急にデッキを作ることはしなかったようです。ですがもし、トークン戦略やフェアリーデッキを望むのであれば、今では新たな素晴らしい道具があります。そのことはトーナメントにおいてとても良いことだと思います」

「このカードが禁止された時というのは、先制措置的な禁止だったと思います」ターテンヴァルドは説明する。「かつてエクステンデッドというフォーマットがありましたが、何が強力であるかは知られていました。なので、モダンをつまらなくすると分かっていたカードはまとめて禁止されたのです。このトーナメントも全く同様に動いています。《死儀礼のシャーマン》が禁止され、突然、このカードが無い世界の文脈に照らして全てのカードを再評価しなければいけなくなりました。この決断はフォーマットが退屈になることから遠ざけ、実際にその通りとなりました。」

 《苦花》はこのプロツアーでは大きなインパクトを残すことはできなかった。それは、誰もこのカードについての解答を見出す時間が無かったからだ。ほぼ全ての主要チームの代表者がフェアリーを試したが、すぐに却下したことを認めた。

「問題は、デッキに何もしないカードが多く含まれているということでした。」アター=レイトンは説明した。「《》はコストが高すぎてこのフォーマットでは競争力のあるものではありません。《呪文づまりのスプライト》や《謎めいた命令》、そして《苦花》は素晴らしいカードですが、デッキのその他の部分はモダンで勝ち抜くのに十分な強さではないのです。」

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RESULTS

対戦結果 順位
16 16
15 15
14 14
13 13
12 12
11 11
10 10
9 9
8 8
7 7
6 6
5 5
4 4
3 3
2 2
1 1

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