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プレイヤーズコンベンション横浜2024
デッキテク:宮脇 猛(愛知)の「ドメイン・カスケード」 ~モダン環境最新のコンボ~
チャンピオンズカップファイナル シーズン2ラウンド2は最新セット『カルロフ邸殺人事件』のリリース週に開催されている。となれば、やはり気になるのは新カードの活躍である。
とはいえモダンフォーマットのカードプールには約20年もの蓄積があり、並のカードではサイドボードの候補にすら挙がらない。まぁ、そうポンポンと環境が激変するようなカードが出るのもそれはそれでどうなのと思わないでもないが、しかしパワーカードがひしめき合うこのフォーマットで環境に食い込むようなカードはよほどのカードでもない限り……
よほどのカードあったーー!! この《ギルドパクトの力線》こそがモダン環境を激変させるのではないかと目される1枚だ。「力線」サイクルの最新カードであるこの《ギルドパクトの力線》は、初手にあるとき戦場に出せるおなじみの能力に加えて全ての土地が全ての基本土地タイプを持つという豪快な色マナ補助能力と全ての土地でないパーマネントが全ての色を持つというこれまた豪快な色変更能力を持つ。
特に相性がいいのが「版図」能力や《ドラコの末裔》との組み合わせだ。《ギルドパクトの力線》があれば、コントロールしている基本土地タイプの種類だけボーナスを得られる「版図」の能力を常にフルパワーで使用することができ、しかも《ドラコの末裔》は2マナ4/4飛行・警戒・呪禁・絆魂・先制攻撃・トランプルを持った(しかも脇も強化できる)《怒りの天使アクローマ》も震え上がる驚異的マナレシオの怪物が誕生する。
この新カードに飛びついたのは、元より「版図」能力を使いこなしていたモダンのアグロデッキ「ドメイン・ズー」だが、他の既存デッキである「カスケード・クラッシュ」もまた、デッキのスロットを3種12枚変えて「ドメイン・カスケード」というデッキに生まれ変わっている。
果たしてそんな「ドメイン・カスケード」とはどのようなデッキなのか? チャンピオンズカップファイナル初日6回戦終了時点で5‐1という優秀な成績を収めていた「ドメイン・カスケード」の使い手であり、昨年6月に開催されたチャンピオンズカップファイナル サイクル3では初日全勝を飾った強豪、"東海あの人"こと宮脇 猛(愛知)に話を伺った。
宮脇 猛(愛知)
デッキ選択の理由
──「今回宮脇さんは『ドメイン・カスケード』を使用されています。『カルロフ邸殺人事件』発売から日も浅いタイミングで新しいデッキを手にするのは英断であるように感じますが、なぜこのデッキを使用されたのでしょうか?」
宮脇「僕も元々は従来のティムール3色の『カスケード・クラッシュ』を使用する予定だったんです。しかし、デッキ登録が締め切られる日の朝に友人から『《ギルドパクトの力線》ヤバいぞ』と連絡が来て……」
──「Magic Onlineで《ギルドパクトの力線》入りのデッキリストが結果を残して、モダンプレイヤーたちが賑やかになっていたころですね」
宮脇「そうですね。僕はそれを聞いても『安定性がないのでは?』と半信半疑だったのですが、とりあえずMagic Onlineで結果を残したリストをコピーして回してみたんです。すると安定性の欠如については意外と懸念していたほどでもないことが分かりました」
──「多くの方が土地をトライランド(基本土地タイプを3種類持った土地)に変えたりギルドランドを変更したり、自力で5種の『版図』を達成できる形にすることで《ギルドパクトの力線》なしでも《ドラコの末裔》をプレイできるようなリストにされていますよね」
宮脇「ええ。実際《ギルドパクトの力線》を引けなくとも2ターン目に《ドラコの末裔》をプレイできることは多いですし、3ターン目に『続唱』して4ターン目に《ギルドパクトの力線》を素出しするというパターンもあります。特にティムールカラーの純粋な『カスケード・クラッシュ』と当たったとき、《ドラコの末裔》+《ギルドパクトの力線》が決まると相手は手も足も出なくなるので、デッキパワーが純粋に強化されたと感じました」
──「今日今大会で使用した、実際の使用感はどうでしょうか?」
宮脇「さすがに《ギルドパクトの力線》+《ドラコの末裔》のパッケージはそうそう初手に揃うことはありませんが、さっきも言ったとおりデッキパワーが上がっていることを実感できる場面も多かったので、このデッキを選んだのは正解だったと感じています」
デッキリストの変化と工夫
──「《ギルドパクトの力線》+《ドラコの末裔》+《力線の束縛》の『版図』パッケージが入ったことで、逆に《死亡 // 退場》や《濁浪の執政》などが抜けています。こういった変化は強みも弱みもあると思うのですが、いかがでしょうか?」
宮脇「元のリストと比べると、《死亡 // 退場》が抜けたことで1ターン目の除去がなくなってしまったのは弱みになっているかもしれません。相手が先攻でプレイした《敏捷なこそ泥、ラガバン》などに対処できなくなってしまうんです。僕はこれを嫌って1枚だけですが《四肢切断》を採用しています」
宮脇「とはいえ《死亡 // 退場》などはミラーマッチなどでサイドアウトすることも多いカードなので、1ターン目にノーガードになってしまうことに目を瞑ればデッキ強化の恩恵を受けることの方が多かったですが」
──「他にデッキリストを作成される上で工夫された点などはありますか?」
宮脇「他のリストでは《宝石の洞窟》を採用している方もいますが、僕は裏目を嫌って抜いています。そういえば、土地については今日当たったミラーマッチの相手が『カルロフ邸殺人事件』の諜報ランド(基本土地タイプ2種を持ち、戦場に出たときに諜報1を行う土地のサイクル)を採用していて、これは採用すべきだったなと思います。僕はタップインが弱いかなと思って入れなかったんですが、(ミラーマッチの)対戦が終わったあとにゲーム内容を振り返る中で、諜報ランドの感触などを聞いていると、中盤戦以降のドローの質を上げられることの恩恵は思っているより大きいと感じました」
──「たしかにフェッチランドで探すこともできて、暇なターンに探すことで無駄なドローを減らせる可能性があるのはミラーマッチや『ラクドス想起』との消耗戦で重宝しそうです」
主要なデッキとのマッチアップ
──「今回このデッキを選択したのは正解だったと仰っていましたが、実際のところ主要なデッキとのマッチアップはどのような感触でしょうか?」
宮脇「まず、今大会では『ラクドス想起』とティムール『カスケード・クラッシュ』がトップメタだろうと考えていました。ティムール『カスケード・クラッシュ』に強いというのは先ほど述べたとおりですが、『ラクドス想起』は元々相性の上で五分~微有利くらいで相性はそれほど悪くないデッキで、これは《ギルドパクトの力線》を採用した今でもそれほど大きく変わりません」
宮脇「もちろん、《死亡 // 退場》を抜いたことで《敏捷なこそ泥、ラガバン》という裏目は発生するようになりましたが……コンボにこだわって手札をキープしても《悲嘆》などで抜かれてしまうので、土地さえあればいいくらいの感覚でラフにキープするとよい結果になることが多いです」
──「なるほど。今大会では『ボロスバーン』なども多いようですが、このマッチはどうでしょうか?」
宮脇「従来のティムール型だと明確に不利でしたが、『ドメイン・カスケード』では《ギルドパクトの力線》+《ドラコの末裔》を揃える勝ちパターンが生まれたのでいくらか改善されていると思います。とはいっても、今大会では一度『ボロスバーン』と当たって一敗してしまっているので、せいぜい多少マシになったかな?というくらいです」
──「4回戦で宮脇さんが当たった『トロン』系のデッキなどとの相性はどうでしょうか?」
宮脇「4回戦では運良く勝ちを拾えましたが、『トロン』とのマッチアップはティムールカラーだったころに比べて相性が悪くなっています。《ティシャーナの潮縛り》が抜けたり、サイドボードの《血染めの月》や《月の大魔術師》が減ったことでキツくなりました」
──「なるほど。最後に、今後このデッキを調整していくとしたらどういった調整が考えられますか?」
宮脇「メインデッキをいじるとしたら、今すぐ試したいのは諜報ランドです。サイドボードはどのデッキを見るかによりますね……5色になったことでサイドボードの選択肢は増えて、このリストでは《ドラニスの判事》のような『続唱』系デッキ全般に刺さるカードを採用できるようになっているので、自由度は増していると思います」
──「ありがとうございました。このあともがんばってください!」
鳴り物入りでモダン環境に登場した《ギルドパクトの力線》。特に、元々モダンのメタゲームで目立っていた「カスケード・クラッシュ」がさらなる強化を得たというのは環境に与えているインパクトも大きそうだ。
このカードによって強化されたデッキは今のところ「ドメイン・ズー」と「カスケード・クラッシュ」が目立っているが、今後研究が進むことで《ギルドパクトの力線》+《ドラコの末裔》+《力線の束縛》パッケージを採用したデッキは増えていくかもしれない。
《ギルドパクトの力線》を手に入れて、モダンフォーマットは新たな境地を開拓することができるのか?今後も注目していきたい。
2 《耐え抜くもの、母聖樹》 1 《繁殖池》 4 《溢れかえる岸辺》 1 《森》 1 《神聖なる泉》 1 《島》 4 《霧深い雨林》 1 《平地》 1 《蒸気孔》 1 《寺院の庭》 2 《樹木茂る山麓》 1 《ザンダーの居室》 -土地(20)- 4 《断片無き工作員》 3 《緻密》 4 《ドラコの末裔》 -クリーチャー(11)- |
4 《否定の力》 1 《四肢切断》 4 《暴力的な突発》 4 《火 // 氷》 4 《衝撃の足音》 4 《ロリアンの発見》 4 《ギルドパクトの力線》 4 《力線の束縛》 -呪文(29)- |
1 《ドラニスの判事》 1 《時を解す者、テフェリー》 1 《アーテイの嘲笑》 2 《神秘の論争》 2 《兄弟仲の終焉》 1 《月の大魔術師》 3 《忍耐》 1 《減衰のマトリックス》 3 《活性の力》 -サイドボード(15)- |
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