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プレイヤーズコンベンション千葉2023
第11回戦:茂里 憲之(東京) vs. 清藤 和哉(愛知) 〜道標なき分水嶺〜
予選8回戦を駆け抜けた1日目と比べると、チャンピオンカップファイナルの2日目は短いもので、予選ラウンドは9〜12回戦のわずか4回のみとなる。しかも参加人数が228名と少ないため、第12回戦開始時点でトップ8進出、もしくはトップ18入賞によるプロツアー権利の獲得が確定しているプレイヤーも出てくる。となると、彼らの多くはID(両者任意のもとに行われる引き分け処理)を行う可能性があり、仮にそうなった場合第11回戦終了以降、特に上位陣のスタンディングには大きな動きがなくなるというわけだ。
すなわち第12回戦を控えたこの第11回戦こそが、今大会出場者たちにとっての登竜門となる。そんな運命の舞台、フィーチャーマッチテーブルに呼ばれたのは茂里 憲之と清藤 和哉の2名だ。競技プレイヤーとしてマジックをプレイしてきた彼らが求むものは唯一つ。プロツアー進出、さらに言えばその先のプレイオフラウンド進出だ。
茂里 憲之(東京)
“デジタル世代”茂里 憲之は元MPL所属選手として名の通ったプロプレイヤーだろう。比較的最近頭角を現したプレイヤーでありながら、ただ強いだけでなく記事執筆や配信活動を通して精力的に、かつ惜しみなく自身のノウハウを共有している。今や競技マジック界の技量の底上げに貢献しているといっても過言ではない存在と言えよう。
今大会では「アブザン脂牙」を使ってここまでに8勝2敗の好成績を収めている。《大牙勢団の総長、脂牙》によって《パルヘリオンⅡ》をリアニメイトし、最速で3ターン目に13点クロックを刻みながら4/4の天使トークン2体を盤面に残すことができるというコンボの爆発力は環境屈指だ。はたして今回も《パルヘリオンⅡ》が火を吹くか?
清藤 和哉
一方の清藤 和哉もまた、チャンピオンズカップファイナル サイクル1でトップ8に入賞した経験を持つ実力者だ。今シーズンで2度目となる大舞台進出へのチャンスを物にして、ブレイクを目指したいところだろう。
デッキは先日開催されたカナダ地域選手権で準優勝を収めたことで話題となった「アゾリウス・ロータス」だ。《厳しい試験官》と《睡蓮の原野》のコンボでデメリット能力を打ち消すことでマナを加速し、《ドミナリアの英雄、テフェリー》と組み合わせることで圧倒的なゲームコントロールを可能としたユニークなデッキである。
両者デッキリストを交換し、黙々と対戦の準備を進める。緊張感あふれる対戦テーブルだったが、冷静と興奮、慎重と大胆、鋭さと鈍さ、矛盾する2つの内面を勝負の中で都度使い分けて見事ここまで戦い抜いてきた2人はこの大舞台を前にもあくまで平常心で対戦に臨む。
勝てば次なるステージへ大きく近づき、逆に負けてしまえば、少なくともトップ8進出に関して言えばほぼ目がなくなる(トップ18入賞のプロツアー権利獲得は可能性がある)。分水嶺に浮かぶ泡沫は、それぞれどちらへ流れてゆくのか。
チャンピオンズカップファイナル サイクル3、第11ラウンドが幕を開ける。
茂里 憲之(東京) vs. 清藤 和哉(愛知)
ゲーム1
先攻の茂里が《忌まわしい回収》で墓地を肥やす。墓地に落とされた4枚の中にはさっそく《パルヘリオンⅡ》が見え、コンボの下準備を着実に進めていく。
さらに最速の動きで「昂揚」を達成した《ウルヴェンワルド横断》が《大牙勢団の総長、脂牙》を手札へと導く。ここまで軽快に飛ばす茂里に対し、清藤はその手札に《冥途灯りの行進》を携え、茂里の攻撃に対抗する構えだ。
茂里 憲之(東京)
しかし、茂里はここで《思考囲い》。清藤の手札から虎の子の《冥途灯りの行進》を抜き、前方確認を終えると満を持して《大牙勢団の総長、脂牙》をプレイ。その能力で《パルヘリオンⅡ》をリアニメイト。一挙にライフが削られてしまい、清藤はさっそく苦境に立たされることとなる。
返す清藤は《至高の評決》でなんとか盤面を切り返すが、さきほどの《パルヘリオンⅡ》の攻撃でライフは1まで減らされてしまっていた。もはや一刻の猶予も残されていない清藤に対し、再びターンを受けた茂里がその手札からプレイしたのは《ウィザーブルームの命令》。
もはやモード選択を聞くまでもないとカードを片付ける清藤。これぞアブザン《大牙勢団の総長、脂牙》の真骨頂とも言うべき圧倒的スピードに残るライフも吸いつくされ、清藤が第1ゲームで膝を屈することとなった。
茂里 1−0 清藤、
ゲーム2
第1ゲームは手札破壊を挟みつつ《大牙勢団の総長、脂牙》+《パルヘリオンⅡ》のコンボを決められてしまい、されるがままになってしまった清藤。第2ゲームでは巻き返しを図ることができるのか。
互いに1マリガンの手札からゲームを開始して、再び先に攻撃のイニシアティブを握ったのは茂里だった。《思考囲い》で清藤の手札から《ドビンの拒否権》を抜きつつ、《ウィザーブルームの命令》で墓地を肥やす。
返す清藤は《厳しい試験官》。清藤自身のデッキの動きをサポートするキーカードでありつつ、この誘発型能力を制限する能力は茂里のゲームスピードも着実に遅らせる。茂里は《屑鉄造りの雑種犬》を出し、仕方なしに《厳しい試験官》の追加コストを支払って誘発型能力を解決する。
なんとか「昂揚」を達成した茂里が状況を打開せんとプレイしたのは《ウルヴェンワルド横断》。サーチしたのはもちろん《大牙勢団の総長、脂牙》だったが、これをプレイすると清藤の《冥途灯りの行進》が刺さり、盤面には《屑鉄造りの雑種犬》1体のみと攻めあぐねる展開となってしまう。
茂里が着実に足を取られている間にもゲームを掌握せんと着実にマナを伸ばしてドローゴーを続ける清藤。茂里は苦しい展開ではあるが、攻め続けるしかない。《ラフィーンの密通者》をプレイし、《厳しい試験官》の追加コストも支払って手札を整える。
しかし、清藤も茂里にやすやすと攻撃を再開させはしない。《厳しい試験官》に痺れる茂里に対して清藤がプレイしたのは《ドミナリアの英雄、テフェリー》!
こうなってしまうとさすがに茂里もまだまだライフに余裕のある清藤を狙っている場合ではない。《ラフィーンの密通者》で《ドミナリアの英雄、テフェリー》に攻撃を行い、その忠誠度を2まで減らすが、打倒するには至らない。
清藤 和哉(愛知)
この隙に清藤はさらに《ドミナリアの英雄、テフェリー》でドローを進め、茂里の攻撃に備える。茂里の攻撃には《厳しい試験官》をブロッカーに回しつつ《ドミナリアの英雄、テフェリー》を守り、茂里の再びの《ウィザーブルームの命令》を受けてもなお、そのライフは14も残されている。
返す清藤は《記憶の氾濫》をフラッシュバックして潤沢な手札をさらに整え、《ドミナリアの英雄、テフェリー》でアドバンテージ差を広げていく。盤石な清藤の前に成すすべのない茂里は、最後のドローをチェックし、自らの勝ちの目が薄いことを確信すると「降参します」と速やかにカードを片付けた。
茂里 1−1 清藤
ゲーム3
先攻の茂里が《ウルヴェンワルド横断》で土地を手札に加えながら、《屑鉄造りの雑種犬》をプレイ。その誘発型能力でさっそく墓地に《パルヘリオンⅡ》を置く快調な滑り出しを見せる。
後手に回ってしまい、《厳しい試験官》をプレイするのみでターンを終える清藤とは対照的に、茂里は《忌まわしい回収》で《腐れ花》を手札に加えつつ、「昂揚」を達成して《ウルヴェンワルド横断》。続いてこれによってサーチした《大牙勢団の総長、脂牙》をプレイして、《パルヘリオンⅡ》を戦場に叩きつける!
フルタップの清藤はこれを眺めていることしかできず、続く《パルヘリオンⅡ》の攻撃に18点あったライフはわずか5まで減らされることとなった。
ならばと次なる茂里の攻撃に備えてマナをオープンにしてターンを終えた清藤だったが、茂里からの無慈悲な《強迫》。その手札には《残骸の漂着》と《冥途灯りの行進》、そして《魂の仕切り》が見える。この中で最も困るのは全体除去である《残骸の漂着》だろう。いわんやこれを落とし、さらに《ヴェールのリリアナ》をプレイして清藤の手札を減らしつつ天使トークンと《大牙勢団の総長、脂牙》による攻撃の号令をかけようとする。
無論、清藤も攻撃宣言前に《冥途灯りの行進》と《魂の仕切り》で《大牙勢団の総長、脂牙》と天使トークン1体を除去するも、残った1体の天使トークンの攻撃が通って残りライフは1。第1ゲーム同様、風前の灯となってしまう。
返す清藤は《安らかなる眠り》で茂里の墓地を追放するが、盤面の天使トークンを対処することはできない。続く茂里の《ヴェールのリリアナ》の能力で手札もなくなってしまい、茂里の天使トークンの攻撃を阻むものは何もなくなった。
茂里 2−1 清藤
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