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神河チャンピオンシップ
栄光の頂へと至った冒険者の道のり
2022年3月17日
イーライ・カシス/Eli Kassisがマジック:ザ・ギャザリングとの邂逅を果たしたのは、約30年前のことだ。
「私が10歳のときでした。普段なら外でサッカーをして遊ぶんですがね、その日はみんながカードゲームで遊びたがったんです」当時についてカシスはこう語った。「最初はガッカリしたんですよ。でも1人で遊ぶのも嫌でしたから、彼らと一緒に座って遊び方を学んだんです」
「そこから始まり、今に至ります」
友だちと初めて遊んだあの日から今日に至るまで、カシスが築きあげてきたキャリアは、グランプリに奔走し、あらゆるカバレージを読み漁ったことのある者って馴染み深いものであるだろう。なぜなら、カシスはグランプリではトップ8を8度経験し、そのうち2度は優勝、さらにトレードマークであるミッドレンジのデッキテクを何度も紹介されるほどの目玉プレイヤーであったし、何より共感を呼ぶ経験を多く経ているからだ。競技プレイヤーたちは、勝利も敗北も重ね、トーナメントに参加する度に少しずつ強くなり、そしてついに念願のブレイクを果たすその日まで――ただひたすらに走り続けたのだ。
「神河チャンピオンシップ」での優勝がカシスのキャリアにまた1つの強調点を加えた一方で、それは世界レベルの競技イベントで着実に成績を上げ続けた彼がたどり着いた頂であった。グランプリで2度優勝し、2019ミシックチャンピオンシップⅥ(リッチモンド)でトップ8に入賞した2018-2019シーズンにおけるカシスの驚異的な成績は、彼をマジック・ライバルズ・リーグへと押し上げた。
翌シーズンではライバルズ・リーグをトップの成績で終えたことで、翌年のマジック・プロリーグ入り、さらには「第27回マジック:ザ・ギャザリング世界選手権」への出場を射止めたのだ。彼が初めてカードを手にした、まさにその日から始まった旅路だ。
「たしか1993年の後半くらいだったと思います。地元の大会に出て、何マッチか勝ったんですよね。その時はただ楽しんでプレイしたことを覚えています。そうしたら店主のショーン/Shawnを含む大人たちが、シラキュースのトーナメントへ遠征するグループを作ることにしたんですよ。とても楽しかったと記憶しています。あと、惜しかったんですよね」 カシスは続けた。「トップ4まで行ったと思います。それで火が付いたんですよ。絶対に1位になってやるんだって。自分ならできる。ただ、成し遂げるまで何度でも挑み続ければいいんだ、とね。当時はまだFNMはなかったんですが、FNMのようなイベントで優勝できるようになるまでに、それから1年はかかりましたね」
その時に灯った火は、数年後にカシスを初のプロツアー予選へと導いた。
「当時は数えきれないほどドラフトで遊びましたよ。子どもなので仕事はありませんし、その時は学校も真剣に捉えていませんでしたから、注げるエネルギーはすべてドラフトに注いでいましたね」
初のプロツアー予選が初のプロツアー出場に繋がった――「プロツアー・ロサンゼルス1996」だ。そこで彼は52位となり、初のマネーフィニッシュも経験することとなる。
「13歳ですよ、どうしたらいいんでしょう?」 カシスが笑いながら語る。「52位になったことで、500ドルとカリフォルニア行きが手に入ったんです。なんだろうな。本当に楽しくて、最高の体験になりましたし、もっと同じ体験がしたい、しなくちゃって思いました」
グランプリやStarCityGamesのトーナメントへ奔走したその後の20年間で、カシスは「同じ体験」を何度も味わった。選択肢の多いミッドレンジを長く愛し、長期戦になるマッチアップも避けずに挑んだ。彼が「神河チャンピオンシップ」で巧みに操ったアルケミーの「オルゾフ・アドベンチャー」のようなデッキこそ、カシスが自身のプレイヤーとしての強みと捉えるものだ。
「私は計算がすごく早いんです。このおかげでペース良くプレイできますし、プレイヤーによっては複雑すぎて時間内に考えがまとまらないようなことも、答えを見つけることができます」
カシスを初のグランプリトップ8入賞へと導いたモダンの「バント・ナイトフォール」を見れば、その長所が如何に発揮されているかが見てとれる。
4 《森》 2 《平地》 1 《寺院の庭》 1 《繁殖池》 1 《神聖なる泉》 4 《吹きさらしの荒野》 4 《霧深い雨林》 1 《地平線の梢》 1 《ガヴォニーの居住区》 1 《ウェストヴェイルの修道院》 2 《幽霊街》 -土地(22)- 4 《極楽鳥》 4 《貴族の教主》 4 《復活の声》 3 《クァーサルの群れ魔道士》 2 《漁る軟泥》 1 《呪文滑り》 1 《タルモゴイフ》 4 《聖遺の騎士》 2 《クルフィックスの狩猟者》 2 《永遠の証人》 1 《台所の嫌がらせ屋》 -クリーチャー(28)- |
2 《流刑への道》 3 《珊瑚兜への撤退》 4 《集合した中隊》 1 《召喚の調べ》 -呪文(10)- |
1 《ブレンタンの炉の世話人》 1 《ガドック・ティーグ》 1 《戦争の報い、禍汰奇》 1 《シルヴォクののけ者、メリーラ》 1 《弁論の幻霊》 1 《静寂の守り手、リンヴァーラ》 2 《外科的摘出》 2 《真髄の針》 2 《よじれた映像》 1 《払拭》 2 《否認》 -サイドボード(15)- |
そしてそれは、ミッドレンジが猛威を振るった「神河チャンピオンシップ」、特にトップ8プレイオフにおいて、これ以上なく適したスキルであったのだ。
カシスは殿堂顕彰プレイヤーやライジングスターが集まるスター集団、「Team ChannelFireball」で調整をしている。
「私たちのチームからは17名が出場することになっていましたので、Discordにグループを作ってそこで調整しました」とカシスは語る。「2つのチームに分かれ、ほとんどのメンバーはアルケミー、そして残りがヒストリックの調整を担当し、その後お互いのデッキと知見を共有しました」
カシスはヒストリックを担当し、サクリファイス系のデッキ対策として黒をタッチしサイドボードに《碑出告が全てを貪る》を採用した「イゼット・フェニックス」を使用デッキに選んだ。安定感の高さを理由に選ばれた「イゼット・フェニックス」であったが、カシスはヒストリック・ラウンドを4勝4敗と、期待通りのスコアは得られなかった。
「まぁ、優勝しましたし思いっきりガッカリしたりはできないですけど、ヒストリックの成績のせいで優勝に至る道すら断たれるところでしたからね」
しかし、もう1つのチームデッキであるアルケミーの「オルゾフ・ベンチャー」が勝ち星の穴埋めを全うした。大会全体を見ても、トップの勝率を誇るデッキだ。しかし、チームは当初グルールやルーン系のデッキを使うことも検討していたようだ。これらはミッドレンジや白単だらけのメタゲームに呑まれ、期待されていたほどの勝率を出すことができなかったアーキタイプだ。
「がっぷり四つで、少しずつアドバンテージを取っていくゲーム展開が好きなので、とても魅力的でしたね。私は絶対にミッドレンジプレイヤーですよ。」
「Team ChannelFireball」のチームメイトたちは「オルゾフ・ベンチャー」を作り上げただけではなく、彼らとすることは仮想敵に対する戦い方やサイドボード戦略という、大会への準備には欠かせない思考の整理にまで一役買ったのだ。
「組織化して戦略を用意するのが大好きです。特定のマッチアップに対して、どのように挑むべきかを書き込むためのドキュメントが大量にありました。デッキリスト提出前のミーティングでも、どのようにサイドボードを入れ替えるか、想定されるマッチアップ全てにおいて入れる枚数、抜く枚数を確認しました」とカシスは説明した。「時間のかかる細かい作業であっても、長いトーナメントにおいては非常に大きな違いを生むんです」
しっかりと各マッチアップに対して事前に対策を決めておく戦略は、特に3マッチ先取のタイトルマッチにおいて有効であった。
「タイトルマッチは一番がっぷり四つな、消耗戦でしたね。マルドゥ対オルゾフです。同じカードを多く採用していましたから、ミラーマッチのようにも感じました。ただ、あちらの方が1色多いですから、ほんの少しこちらより長期戦に強いですよね。なので一番興味深いマッチアップでしたし、一番出し尽くした対戦でしたね。」
「オルゾフ・ベンチャー」が《鏡割りの寓話》のような強力な赤のカードを使えない一方で、「神河チャンピオンシップ」はあまり訪れるものもいなかった、「ダンジョン」を活用することができた。
去年の夏『フォーゴトン・レルム探訪』の発売により登場したダンジョン、《狂える魔道士の迷宮》、《ファンデルヴァ―の失われた鉱山》、《魂を喰らう墓》は構築戦において日の目を浴びることがなかった。しかし、最近になりアルケミーでの調整を受け、これら3つのダンジョンがついに輝くこととなったのだ。
「3種類も全く違うことが書いてるダンジョンがあるということは、ゲームプランを立てるための選択肢が1000個あるみたいなものですよ」 カシスは説明する。「《魂を喰らう墓》に入って1点ダメージを与えた後、さらに2点、とどこからともなく突然ダメージを与えて勝ったり、対マルドゥのような消耗戦には長期的にアドバンテージを得られる《狂える魔道士の迷宮》に入ったり、と臨機応変に対応できたり、面白いことができる選択肢が目の前に広がっているのはとても楽しいですね」
カシスがトップ8プレイオフを駆け抜ける道程で、私たちは3種全てのダンジョンの真価を目にした。《魂を喰らう墓》は準々決勝でジム・デイヴィス/Jim Davisにトドメを刺し、《ファンデルヴァ―の失われた鉱山》は多くの冒険者たちにとって最も足を踏み入れるダンジョンであった。タイトルマッチのザック・ダン/Zach Dunn戦では、《狂える魔道士の迷宮》が猛烈に火を噴いた。
最深部までは長く、曲がりくねった道のりであった《狂える魔道士の迷宮》も、死力を尽くした長期戦となったタイトルマッチにおける戦いにおいては最適解となったのだ。勝利を掴むために潜ったこのダンジョンにちなんで、コミュニティは彼に新たなニックネームを授けた――「狂える魔道士」だ。
これは、カシスにとっては喜ばしい称号であった。そして今、次に見据える大舞台「第28回世界選手権」でも今回と同様のご利益が得られることを願っている。
「引き続きTeam ChannelFireballとDiscordで調整を進めますよ。チームメイトも複数名世界選手権への出場権を得るでしょうし、結束力の強い調整チームが組めるでしょうから。また彼らとともに戦えることを楽しみにしていますよ。これまで、彼らに間違った方向へと手を引かれたことはありませんから」
しかしこれは、まだ数ヶ月も先のこと。それは次のチャンピオンシップも同様だ。「神河チャンピオンシップ」王者という称号、そして「狂える魔道士」というニックネームを得てなお、カシスは高みを目指し続ける。
1. Select the Mad Mage.
— Eli Kassis (@Eli_Kassis) March 16, 2022
2. Always Be Venturing.
3. Look real tired on camera.
4. Never let ‘em see you emote.
5. Don’t let your treasures just sit around. https://t.co/ltlrEqxCkV
「マジックで上達するためのコツを5つ挙げるとしたら?」
1.《狂える魔道士の迷宮》を選ぶ。
2.常に探索する。
3.フィーチャーのカメラでは常にしんどそうにする。
4.相手にエモートを見せるな。
5.宝物を無駄にするな。
「今でも夢のようだと感じますね。少しずつ噛みしめて、実感を得ているところです」
Congratulations to #NEOChamps champion Eli Kassis!
— Magic Esports (@MagicEsports) March 14, 2022
Kassis guided his Triumphant Adventurers through a stellar Top 8 to secure his win and put Orzhov Ventures on the Alchemy map. GGs Eli! pic.twitter.com/wcqXGnZGwI
イーライ・カシス選手、#NEOChamps優勝おめでとうございます!
輝かしいトップ8の面々を相手にカシス選手は「勝利した冒険者」を導き、優勝という結果をもって「オルゾフ・ダンジョン」デッキをアルケミーの地図に加えました。お見事です!
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