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第29回マジック:ザ・ギャザリング世界選手権

戦略記事

第29回マジック世界選手権 メタゲームブレイクダウン

Frank Karsten

2023年9月22日

 

 デッキリストが揃い、データの準備も整い、マジックの2022-23プレミアプレイシーズンの集大成が明日から開幕する!第29回マジック世界選手権は、9月22~24日にMagicCon: Las Vegasにおいて開催され、105名の世界最高のマジック:ザ・ギャザリングの選手たちが賞金総額100万ドルと、年間で最も名誉あるタイトルをかけて戦い合う。

 多くの世界選手権出場者たちが出場権利を手にしたのは、プロツアー・ファイレクシアプロツアー・機械兵団の進軍、そしてプロツアー・指輪物語でのトップフィニッシュだが、参加者の中には地域チャンピオン、アリーナ・チャンピオンシップのトップフィニッシュ選手、Magic Online Champions Showcaseの優勝者たち、そして昨年の世界選手権の上位4名も名を連ねている。現世界王者のネイサン・ストイア/Nathan Steuerは圧倒的なシーズンを経て、なんと異なる4種類の方法で出場権獲得を達成したのだ!

 本大会のフォーマットは、金曜日と土曜日の朝に『エルドレインの森』ブースタードラフト、その後に各日4回戦ずつスタンダードが行われる。また、スタンダードは日曜日に行われるトップ8のフォーマットでもある。一挙手一投足を追うためには、twitch.tv/magic(日本ではマジック日本公式YouTuneチャンネル)での配信をご覧あれ。配信は金曜日と土曜日が東部標準時午後2時(日本では翌午前3時)から、日曜日は東部標準時午後1時(日本では翌午前2時)から開始となる。詳細は観戦ガイドを確認しよう。

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スタンダード・メタゲームブレイクダウン

 スタンダードは60枚デッキのフォーマットであり、現在は『イニストラード:真夜中の狩り』以降のスタンダード・セットを使用する。今年に限り秋セットのリリースに伴うローテーションは起こらなかったため、『エルドレインの森』は純粋にカードプールを拡張するのみとなった。多数の新カードがメタゲームを揺り動かす中、世界選手権に出場する105名のデッキは以下の通りに分類された。

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アーキタイプ 使用者数 使用率
1. エスパー ・ミッドレンジ 20 19.00%
2. 赤単アグロ 10 9.50%
3. エスパー ・レジェンズ 9 8.60%
4. ドメイン・ランプ 9 8.60%
5. ゴルガリ・ミッドレンジ 8 7.60%
6. 白単人間 7 6.70%
7. ラクドス・リアニメイト 7 6.70%
8. エスパー ・コントロール 5 4.80%
9. アゾリウス兵士 4 3.80%
10. 5色アラーラ 3 2.90%
11. 青単大釜 3 2.90%
12. スゥルタイ ・ミッドレンジ 3 2.90%
13.セレズニア・エンチャント 3 2.90%
14. グリクシス ・ミッドレンジ 2 1.90%
15. ラクドス・サクリファイス 2 1.90%
16. バント・コントロール 1 1.00%
17. ラクドスブリーチ 1 1.00%
18. アゾリウス ・コントロール 1 1.00%
19. スゥルタイ・フェアリー 1 1.00%
20. シミック大釜 1 1.00%
21. ドメイン・コントロール 1 1.00%
22.5色リアニメイト 1 1.00%
23. ディミーア・フェアリー 1 1.00%
24. アゾリウス・トークン 1 1.00%
25. ラクドス・バーン 1 1.00%

 メタゲームを彩る多数のアーキタイプにはアグロ、ミッドレンジ、コントロール、ランプ、コンボ、そして多くの刺激が存在する。特に昨年の世界選手権と比べると、最多勢力となったスタンダードデッキが参加者の69%を占めていたのに対して、健全で楽しく、多様性に富んでいるように思われる。本大会の全スタンダード構築デッキリストは、9月22日(金)第4ラウンドのゲームプレイ開始時(東部標準時午後5時ごろ、日本時間翌6時ごろ)に第29回マジック世界選手権のイベントページで公開される予定だ。

 スタンダードでは黒のミッドレンジ戦略が依然として支配的だ。実際、全メインデッキとサイドボードの中で最も使用枚数が多い土地でないカードは《喉首狙い》、《切り崩し》、そして《黙示録、シェオルドレッド》となっている。それでも、『エルドレインの森』のリリース前後のメタゲームを比較すると、世界選手権出場者たちのデッキ選択には何点かのサプライズ、進化、そしてイノベーションが見て取れる。

ラフィーンの復活:合計29名のプレイヤーが《策謀の予見者、ラフィーン》を採用した。依然として環境の最高の3マナ圏の1枚なのだ。《鏡割りの寓話》、《絶望招来》そして《勢団の銀行破り》が5月に禁止されてから、多くのプレイヤーが《策謀の予見者、ラフィーン》が支配的になることを予想していたが、そうはならなかった。クリーチャーを採用しない「エスパー・コントロール」と他の黒系ミッドレンジがより一般的となった。しかし、数週間の高レベルな調整を経て、多くの世界選手権出場者たちはこの3色の伝説を採用するデッキへと落ち着いた。彼らの構築は2つの異なるバージョンに分かれている。9名のプレイヤーは《スレイベンの守護者、サリア》や《英雄の公有地》を採用したクリーチャー重視の構築のエスパー・レジェンズで、20名は《婚礼の発表》と《かき消し》を採用したスペル重視の構築のエスパー・ミッドレンジだ。いずれにおいても、《策謀の予見者、ラフィーン》の「謀議」の誘発が世界選手権での成功の鍵となるだろう。

リアニメイトの帰還:「ラクドス・リアニメイト」は今年前半に人気の合ったデッキであったが、《鏡割りの寓話》の禁止が《ギックスの残虐》のために《偉大なる統一者、アトラクサ》を墓地に送ることが困難になった。結果としてこの戦略はスタンダードのトーナメントからほぼ姿を消すことになったが、7名の世界選手権出場者たちはこのデッキを死地からよみがえらせた。そして、「ラクドス・ブリーチ」と「5色リアニメイト」は戦略的に似通っている。新たな構築というのは《蒐集家の保管庫》か《大勝ち》でアトラクサを墓地に送るか、もしくは多色を揃えた7マナまでランプするかだ。《アイレンクラッグ》の登場により、4ターン目のアトラクサが非常に現実味を帯びているのだ。

美味なる大釜:『エルドレインの森』は新たなコンボを生み出した。そして、4名のプレイヤーが《アガサの魂の大釜》での無限マナ生成に挑戦するのだ!シミックの構築は大釜を使って《眠り呪いのフェアリー》を追放し《囁かれる希望の神》にカウンターを乗せ、タップとアンタップを繰り返すことで無限マナを加えることができる。青単の構築では《訓練場》がアンタップにかかるコストを減らし、同様に無限マナを生み出すことができる。これらのデッキが最高の舞台で動くのを見ることは非常に興奮することだろう。

アラーラへの侵攻》の魅力:『エルドレインの森』環境のスタンダードの最初の週で最高クラスにエキサイティングだったデッキは、《アラーラへの侵攻》で確実に《木苺の使い魔》を当てることだ。バトルのテキストの書き方により、《木苺の使い魔》の出来事側を唱えることが許されており、《墓所の冒涜者》を切削し即座に《アラーラへの侵攻》を変身させればゲームを終わらせる効果をもたらす。とはいえ、この戦略には脆弱性となる欠点があった。4マナ以下のカードを他に1枚しか採用する余裕がなかったため、「赤単アグロ」や「白単人間」が現れこのデッキを追いやった。環境の他のデッキは手札破壊、打ち消し、もしくは《機械の母、エリシュ・ノーン》を投入してこのバトル・カードをストップした。結局、《大狸》というイノベーションがあったにもかかわらず、たった3人の世界選手権の参加者しか《アラーラへの侵攻》を登録しなかったのだ。5色デッキでは「ドメイン・ランプ」がより人気を集めた。爆発的なコンボのポテンシャルよりも、《装飾庭園を踏み歩くもの》を選択しゲーム序盤を重視しているのだ。

『エルドレインの森』使用カードランキング

 既存のスタンダードのカードプールが設定した高いハードルにもかかわらず、『エルドレインの森』はこのフォーマットにかなりのインパクトを与えた。以下の表は、世界選手権で新たにスタンダードに新登場したカードをまとめたものである。

カード名 総使用枚数 メインデッキ サイドボード
執念の徳目 97 84 13
忠義の徳目 68 68 0
下水王、駆け抜け侯 59 53 6
眠らずの小屋 52 52 0
苔森の戦慄騎士 44 44 0
擬態する歓楽者、ゴドリック 40 40 0
魅力的な悪漢 37 37 0
眠らずの城塞 32 32 0
呪文書売り 28 28 0
退廃的なドラゴン 27 1 26
木苺の使い魔 26 26 0
眠り呪いのフェアリー 24 24 0
巨怪の怒り 22 22 0
豆の木をのぼれ 21 15 6
開花の亀 21 21 0
アイレンクラッグ 18 18 0
アガサの魂の大釜 17 16 1
魔女跡追いの激情 16 12 4
塔の点火 15 8 7
一巻の終わり 14 2 12
威厳あるバニコーン 13 10 3
手練 12 12 0
歪んだ忠義 8 0 8
自我の流出 8 8 0
呪文どもり 8 8 0
蒐集家の保管庫 8 8 0
有角の湖鯨 7 5 2
王国焦がしのヘルカイト 4 4 0
食事を終わらせるもの、ジンジャー卿 4 4 0
失われし伝承の歩哨 4 3 1
ランクルのいたずら 4 0 4
無感情の売剣 4 4 0
眠らずの尖塔 3 3 0
人狐のボディガード 3 3 0
フェアリーの剣技》  3 3 0
鏡に願いを 2 2 0
錠前破りのいたずら屋 2 2 0
眠らずの蔓茎 2 2 0
覆われた羊飼い 2 0 2
忌まわしき干渉者、アショク 2 0 2
速足の学び 2 2 0
フェアリーの夢泥棒 2 2 0
おかわり 1 0 1
レッドキャップのどぶ住まい 1 0 1
氷封 1 1 0
僻境との対峙 1 1 0
王のもてなし 1 1 0
豆の木のワーム 1 1 0
ストームケルドの先兵 1 0 1

 最重要な新登場カードは、《執念の徳目》と《忠義の徳目》だ。カードアドバンテージ、ゲーム後半の持続力、そして柔軟性を白や黒のデッキに与える。実に40名もの世界選手権出場者が75枚の中に《執念の徳目》を採用しており、その中には「ドメイン・ランプ」「ラクドス・リアニメイト」「ゴルガリ・ミッドレンジ」そして「エスパー・レジェンズ」のプレイヤーも含まれている。つまり、このカードは多く目にすることになるだろう。《忠義の徳目》は主に「エスパー・ミッドレンジ」と「白単人間」に見ることができる。

 《下水王、駆け抜け侯》もまた、プレイされているのを多く見かける。というのもほとんどの黒系ミッドレンジを使用するプレイヤーが1~2枚を採用しているのだ。十分な時間が与えられれば、単独でネズミの軍勢を生成し、《策謀の予見者、ラフィーン》や《忠義の徳目》の効果を高める。戦場に長期的に影響を与えるため《下水王、駆け抜け侯》は《墓地の侵入者》よりも多くプレイされているようだ。

 新たなアーキタイプを生み出したカードという観点では、《眠らずの小屋》と《苔森の戦慄騎士》によって「ゴルガリ・ミッドレンジ」と「スゥルタイ・ミッドレンジ」が出現した。繰り返すミッドレンジの脅威と、マナフラッドを緩和し色を整えるカードがこれらのデッキを進化させ、事実上「ディミーア・ミッドレンジ」と置き換わった。

 全「赤単アグロ」デッキは《魅力的な悪漢》と《擬態する歓楽者、ゴドリック》が追加されたことで恩恵を受けた。ゴドリックは「ラクドス・サクリファイス」と「ラクドス・バーン」にも採用されている。特に1ターン目に《熊野と渇苛斬の対峙》が自身を追放して戦場に戻ってくる3ターン目にプレイできれば非常に強力だ。追加の努力なしに「祝祭」を達成するのだ。《魅力的な悪漢》と《巨怪の怒り》が生成する「役割」によってゲーム後半もパーティーを継続することができる。

 最後に取り上げる新カード《呪文書売り》は「役割」を毎ターン生成することができ、《銅纏いの先兵》に適したクリーチャー・タイプだ。《光輝王の野心家》を彷彿とさせるこのカードは、「白単人間」の優れた新戦力であり、7名の世界選手権出場者が登録した。つまり、スタンダードでは依然として黒系ミッドレンジ戦略が主流だが、相対するアーキタイプは多様性に富んでいるのだ。

 どんなカードや戦略が頂点に立つのか、そして誰が競技マジックの歴史にその名を刻むのかを知りたいのであれば、配信をお見逃しなく!放送は9月22日金曜日にtwitch.tv/magic(日本ではマジック日本公式YouTuneチャンネル)で開始だ!

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