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第29回マジック:ザ・ギャザリング世界選手権

観戦記事

第29回マジック世界選手権 初日の注目の出来事

Corbin Hosler

2023年9月23日

 

(編訳注:埋め込み動画は英語実況のものです。)

 第29回マジック世界選手権は105名のプレイヤーたちにより開幕した。MagicCon: Las Vegasで行われる3日間の過酷な戦いによって、次なる世界王者が決まる。

 しかし、トロフィーへの道のりはずっと前から始まっていた。

 まずは今年初めにフィラデルフィアで開催されたプロツアーの復活から始めよう。プロツアー・ファイレクシアには数年ぶりにプレイヤーたちが集結した。その後、ミネアポリスでプロツアー・機械兵団の進軍が開催され、そしてバルセロナでプロツアー・指輪物語が開催された。その道中には何十もの地域チャンピオンシップがあり、ハイレベルなMagic OnlineMTGアリーナのイベントが山ほどあった。

 それらすべてがラスベガスの地、そして出場権を得るのに十分なパフォーマンスを発揮した全員が一堂に会し、2022-23シーズンを締めくくる世界選手権へと我々を導いた。これにより、会場のあちこちで行われているすべての試合がフィーチャーマッチに値する、ハイレベルな戦いの場となった。 殿堂顕彰者、地域王者、プロツアー優勝者、そしてネイサン・ストイア/Nathan Steuerといった元世界チャンピオンがここに集結した。すべての道は世界選手権に繋がっていたのだ。

 すべての注目がネイサン・ストイア/Nathan Steuerが成功の物語を続けられるかどうかに集まっていたが、そうはならなかった。苦しいドラフトからの構築戦で4敗を喫してしまい、ストイアは2日目進出を逃してしまったのだ。こうして、優勝の本命は会場から脱落する形となった。

 では、一体誰が並みいる強豪を切り裂き、初日無敗を維持したのか?

初日無敗のアンソニー・リー/Anthony Lee

 デイビッド・オルセン/David Olsenとウィリー・エデル/Willy Edelを破りドラフトを3勝0敗とし(構築ラウンドではガブリエル・ナシフも破った)、ペドロ・モセリン/Pedro Mocelinに引き分けたのみで、彼は2日目に向けて首位の座についた。

 リーに聞けば、首位に立つのは衝撃的なことだという。しかし、彼の大事な調整相手であるハビエル・ドミンゲス/Javier Dominguezに聞けば、話は別だ。

 「彼は僕に"機は熟している"と言ったんです。そして、僕は良いプレイをしており、機が訪れるだろうとも」と最終ラウンドでイェツェ・ハウトベーク/Jitse Goutbeekを打ち破った後、リーは驚きつつも話してくれた。「そして、彼が正しかったんだと思います!彼と僕のふたりだけがチーム内で『ゴルガリ・ミッドレンジ』をプレイしていたけれど、スタンダードのマッチアップはどれも拮抗しているので、自分のデッキとそのマッチアップに精通していることが最も重要だと思いました。だから、僕たちはいちばん使いやすいデッキを採用したんです」

 リーにとって完璧にうまくいき、土曜の朝彼は総合首位で世界選手権トップ8への最短の道を歩む。

『エルドレインの森』の中へ

初日フィーチャードラフト

 プロツアー・イベントで成功するためには、常にドラフトが重要だ。2023年世界選手権では、これまで以上に重要だった。

 通常より少ない参加者により行われるため、世界選手権は通常の16ラウンドではなく14ラウンドで行われる。つまり、初日にドラフト3ラウンド、スタンダード4ラウンドが行われ、金曜日に4勝3敗以上で終わった全員が2日目に同じ戦いを繰り返すことになる。

 これは大会の開幕を飾るドラフト3回戦が、今シーズンのどのプロツアーよりも重要な意味を持つということでもある。

 それゆえにチーム「Worldly Counsel」はチーム内のリミテッドのエキスパートであるエドゥアルド・サジガリク/Eduardo Sajgalikを中心に、ドラフトの戦略について6時間に及ぶミーティングを行った。チームは彼に感謝し、戦わないにも関わらず彼を世界選手権に招待したのだ。

チーム「 Worldly Counsel 」の調整部屋が終了。最高だった!さあ、戦いの時間だ。できるだけこの生活を続けられるといいな!

 『機械兵団の進軍』に似たボーナスシートがある『エルドレインの森』は、ドラフト参加者たちにとって、未開封のパックを開けるたびに異なる経験に直面するという、ユニークな挑戦をもたらした。マジックの歴史上、重要な構築向けカードに加え、《孵化計画》のようなお買い得なメカニズム、材料も数多く存在する。

 そのため、プレイヤーがトーナメントの最初のパックを開封するときには、多くの可能性が広がっていた。塵も積もれば山となるで、それらの多くの可能性からドラフト勝者が現れるのを目の当たりにした。

 12名のプレイヤーが #MTGWorldsの『エルドレインの森』ドラフトで3勝0敗を達成!彼らの色の内訳は以下の通り

白単
黒単
白青×2
白赤
白緑
青黒
青赤
黒赤
赤緑
緑白タッチ赤
青緑タッチ白

 ハイレベルなドラフト・ポッドで単色デッキが全勝を達成するのは稀なことだ。しかし、ミッチェル・タンブリン/Mitchell Tamblynの(ほぼ)黒単とペドロ・モセリンの白単がともに全勝を達成したことで、2つの例を見ることができた。明らかに『エルドレインの森』では、予想以上のことが起きている。

 リミテッドにおける準備がいかに大切かということの証左だ。すべてのチームがエドゥアルド・サジガリクの手ほどきを受けられるわけではなく、ドラフトラウンドで苦戦を強いられたのはストイアだけではなかった。これにより午後のスタンダードは毎ラウンドがトーナメントの生死がかかるライン上での熱狂的な舞台と化した。

スタンダードのサプライズ

 スタンダードの全デッキと、最も刺激的なデッキリストはこちらでチェックできる。

 スタンダードのローテーションが正式に3年制に切り替わったことは、世界選手権で使用できるカードプールはプレイヤーたちが慣れ親しんでいたものよりも広くなったことを意味している。さらに、最高レベルでのスタンダードを数ヶ月間見ていないという事実と組み合わせると、このフォーマットは未だ《鏡割りの寓話》《絶望招来》《勢団の銀行破り》の禁止された生活に適応途中という事実だ。《アガサの魂の大釜》にこれらすべてのレシピを投げ入れることで、スタンダードは間違いなく驚きに満ちたものになると予想していたが、世界選手権の戦場はその期待を裏切らなかった。

 ドラフトが終了し、プレイヤーたちが昼食から戻り始めると、世界選手権の状況が輪郭を帯び始めた。先行している参加者たちは、2日目に向けて有利な位置を確保するために戦っている一方で、多くのマジックのビッグネームたちがトーナメントそのものを賭けて第7回戦を戦うことになった。

 その中には、第27回世界選手権王者である高橋優太を含む過去の王者たちも含まれており、高橋はこの日の最終ラウンドで殿堂顕彰者であるウィリー・エデルと相対することになった。3本の長い接戦の末、ブラジルのレジェンドであるエデルがこの2日目を賭けた試合から浮上したのだった。

 会場のほとんどが生き残るために戦っていた一方、視聴者たちは『エルドレインの森』で予想以上に激変した開かれたスタンダードのメタゲームのデモンストレーションを鑑賞することができた。世界選手権では、新たな構築と古典的なスタンダードのアーキタイプのアップデート版が混じりあい、その過程で《アガサの魂の大釜》がバリュー・コンボ・デッキをパワーアップさせる場面も見られた。

 #MTGWorldsの選手である@GuI_Dukat、@terribadmtg、そして@_SeanGoddard_たちと一緒に、「セレズニア・エンチャント」、「エスパー・コントロール」、そして「ラクドス・ミッドレンジ」のスクープを入手しよう!

 初日の終了の鐘はあまりはっきりとしたものを与えてくれなかった。上位者には異なる6種類のデッキがあり、その後位置にはより多種多様なデッキが控えている。その中には、今大会の優勝候補として本命の一人であったサイモン・ニールセン/Simon Nielsenもいる。彼は0勝2敗という壊滅的なスタートから、スタンダードで「アゾリウス兵士」を手に4勝0敗という完璧な成績を収め立ち直ったのだ。

展望

 午前中の『エルドレインの森』ドラフトが再度注目の的となり、少なくとも4勝以上を収めた50人のプレイヤーたちが第29回マジック世界選手権のトップ8、日曜日の舞台、そしてそれに付随する10万米ドルの小切手を賭けて戦うために戻ってくる。

 リーがポールポジションを手にしているが、ご想像の通り彼の後ろには厳しい戦場が広がっている。プロツアー王者であるリード・デューク/Reid Duke、ガブリエル・ナシフ/Gabriel Nassif、そしてグレッグ・オレンジ/Greg Orangeがそのすぐ後ろに控えている。

 太平洋時間午前11時(太平洋時間午前2時/中央ヨーロッパ夏時間午後8時/日本時間9月23日午前3時)に戻ってくる第29回マジック世界選手権の2日目に展開する全ては、生中継で観戦できる!

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