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EVENT COVERAGE
第27回マジック:ザ・ギャザリング世界選手権
世界選手権に挑む日本の星々
2021年10月4日
今年最大のイベントが、間もなく幕を開ける。2020-2021シーズンにおける選ばれし16名が、「第27回マジック:ザ・ギャザリング世界選手権」という舞台で次なる世界王者を決める戦いに挑むのだ。
彼らの戦いには賞金総額250,000ドルと、優勝者には「将来のマジック:ザ・ギャザリングのカードにその姿が描かれる」という賞金以上に価値あるものが懸かっている。
そんな世界選手権の歴史の中でも、2005年は日本のマジック・プレイヤーにとって最も印象的な大会だったと言えるだろう。横浜で行われたこの年の世界選手権では、プレイヤー・オブ・ザ・イヤーも団体戦も個人戦も、すべてのタイトルを日本人選手が総なめにしたのだ。
- 諸藤 拓馬、大礒 正嗣、志村 一郎のチームが、日本に初めて世界選手権団体戦の優勝トロフィーをもたらした。
- 森 勝洋が世界選手権個人戦優勝。
- のちに殿堂顕彰者となる津村 健志が、わずか1点差で2005年度のプレイヤー・オブ・ザ・イヤー獲得。偉業を歴史に刻んだ。
日本人選手の圧倒的活躍が見られたこのシーズンにおいても世界選手権の結果は目をみはるものであり、これをきっかけに日本は、競技マジックの舞台において驚くべき才能に満ちた地力ある国という評価を確固たるものにした。この出来事は、今日に至るまで語り草となっている。
それから年月を経て迎えた「第27回マジック:ザ・ギャザリング世界選手権」。16の席のうちほぼ3分の1を、日本のベテラン・プレイヤーと新星が占めた。高橋 優太、佐藤 レイ、茂里 憲之、井川 良彦、佐藤 啓輔の5人が、日本へ再び「世界王者」のタイトルをもたらすべく戦いに臨んでいるのだ。
高橋は『ローウィン』時代からのフェアリー好きで、「フェアリーの王」として知られている。彼はプロツアー・サンディエゴ2007で山本 賢太郎とともに決勝へ進出し、その名を一気に知らしめた。続けて2つのグランプリ(グランプリ・神戸2008とグランプリ・静岡2008)で優勝すると、その後も長いキャリアの中で複数のグランプリ・トップ8入賞を記録し、2016年の「プロツアー『異界月』」や2020年の「プレイヤーズツアー・名古屋2020」でもトップ8入賞を達成している。
2001年からマジックを続けている佐藤 レイが、優れたリミテッド・プレイヤーとしての名声を得たのは「グランプリ・上海2012」でのことだった。グランプリ優勝は通算で2回(グランプリ・香港2017で個人戦タイトル、グランプリ・名古屋2018では行弘 賢と山本 賢太郎とのチームで優勝)、グランプリ・トップ8入賞は3回を記録している。2020-2021シーズンは安定した活躍で「MPLガントレット」へ進出し、そこでの戦いを経て「第27回マジック:ザ・ギャザリング世界選手権」への切符を手にした。
井川が躍進するきっかけになった大会は、「プロツアー・サンディエゴ2010」だ。このイベントは「第27回マジック:ザ・ギャザリング世界選手権」と同様に、スタンダードとブースター・ドラフトの2フォーマットで行われた。彼はその後もグランプリ・トップ8入賞5回とキャリアを築いていき、「2019ミシックチャンピオンシップⅠ(クリーブランド)」では決勝の舞台に上がった。基礎を大事にする彼は、世界選手権でのドラフトという大きな挑戦を楽しみにしている。
「意外に思われるかもしれませんが、僕は構築よりもリミテッドでの勝率の方が高いんです」と井川は言う。「ドラフト・ラウンドがあるのは、僕に有利に働くと思いますよ」
佐藤 啓輔はマジックと麻雀、ラーメンへの愛で知られている(これらの中での順位は不明だが)。『ウルザズ・レガシー』でマジックに夢中になった彼がハイレベルな舞台での戦いを始めたのは、2010年代のはじめ頃だ。そこからグランプリで2度のトップ8入賞を記録すると「『カルドハイム』チャンピオンシップ」ではトップ16に入り、「チャレンジャー・ガントレット」に出場。そしてその大舞台で見事トップ4入賞を果たし、「第27回マジック:ザ・ギャザリング世界選手権」の席を確保した。
世界選手権出場が決まったとき、佐藤はそれが現実であると信じられなかったという。「すぐには実感できませんでしたね」と語る佐藤は、やがて喜びを爆発させて次のように語るのだった。
「世界選手権に出られる。それだけでもう、僕の夢は叶いましたよ」
今回の世界選手権に出場する日本人選手の中でも特に「新星」と呼ぶべきが、茂里 憲之だ。世界選手権への道をまさに駆け上がった茂里の歩みは、大学でマジックを紹介された2019年から始まった。驚くべきことに、彼は大学院で学びながらもMTGアリーナで25,000ゲーム以上プレイし、さまざまなオンライン・トーナメントで腕を磨いた。そして彼自身が言うように「SCG Tour online」に何度も挑戦し、そこで「『カルドハイム』チャンピオンシップ」への参加権利を得ると、自身初のトップ8入賞を果たし練習の成果を示してみせたのだ。
MPLで活躍する行弘 賢のような日本の革新的プレイヤーの足跡を追うように、茂里は強力なメタ外のデッキをプレミア・イベントへ持ち込み結果を出した。「『カルドハイム』チャンピオンシップ」では「グルール・フード」、そして「チャレンジャー・ガントレット」では独自の持ち味を加えた「イゼット・コントロール」で好成績を残したのだ。彼はマジックのデッキ構築の難しさに惹かれ、メタゲームを打ち破る新しいデッキの探究を楽しんでいるのだという。
初めて参加したプレミア・イベントで第4位という成績を収めたことからも茂里のレベルの高さが伺えるが、彼自身はチームメイトのおかげだと語る。彼は、同じく日本のプレイヤーである松崎 照央が主催する「Akio Pros」と呼ばれるDiscordコミュニティの一員なのだ。
「チームメイトたちのおかげで、デッキの最適化を効率的にできています。ガントレットに向けての練習に力を貸してくれた友人たちには、感謝の気持ちでいっぱいです」
チームワークは夢を叶える力となるか?
5名は世界選手権の舞台に上がる機会を得たことに意気込み、世界王者の栄冠を勝ち取るべく時間と労力を注ぎ込んでいる。彼らが頼みとするのは自身の技術だけでなく、チームメイトやコミュニティのサポートも大きな力になるだろう。
高橋 優太と佐藤 レイ、井川 良彦の3名は、今シーズンの成功を支えたチームで「第27回マジック:ザ・ギャザリング世界選手権」への準備を進めている。高橋は2020-2021シーズンにおける「ライバルズ・リーグ」での好成績で世界選手権に招待されており、「MPL/ライバルズ・ガントレット」ではメタゲーム上の優位を得た佐藤と井川が4つの世界選手権の席のうち2つを占めた。その安定感と技術の高さで、彼らは世界最高のマジック・チームであることを改めて証明したのだ。
3人は昔ながらの友人で、それぞれが2000年代中盤の日本人選手たちの大活躍に続いてきたベテランだ。チームを率いるのは井川だが、彼は「チームメイトはみんな高い技術を持っているから、お互いに学び合っていますよ」とチームを評している。
チームにはライバルズ・リーグを戦い抜いた熊谷 陸や原根 健太も所属しており、また(あの「世界選手権2005」でトップ8に入賞した)中村 修平や、高橋の導師として彼のキャリアの大きな支えとなった津村 健志という殿堂顕彰者たちも練習をともにしていることを、高橋は教えてくれた。
(左から)中村 修平、フランク・カーステン/Frank Karsten、森 勝洋、鍛冶 友浩、浅原 晃、マルシオ・カルヴァリョ/Márcio Carvalho、ディン・ユアン=リョン/Ding Yuan Leong、アンドレ・コインブラ/André Coimbra
日本の優れたプレイヤーたちが揃ったこのチーム。井川が世界選手権での活躍に自信をのぞかせるのも頷けるというものだ。彼が言う通り、「ベスト・チーム」に違いない。
一方、茂里 憲之と佐藤 啓輔もまた、ともに道を歩むことになったようだ。茂里は引き続き「Akio Pros」の面々と準備を進め、このコミュニティでともに練習しないかと佐藤に声をかけたのだ。
「Akio Pros」にはMTGアリーナでマジックを始めたプレイヤーも数多く在籍しているが、茂里にとってはこのコミュニティが大きな存在となっている。
「いつもマジックの議論を交わし、新しいデッキをともに試していますよ」と茂里は言う。「みんないい人で、強いプレイヤーになるという熱意を持っています。議論の中でいつも多くのアイデアを提案してくれるんです」
茂里のテスト方法は、「チャレンジャー・ガントレット」のときも功を奏した。彼はこの方法で、(「RedBull Untapped World Finals2020」を制した)チームメイトの小坂 和音とともにメタゲーム上のベスト・デッキを掘り当てたのだ。
佐藤 啓輔はスタンダードの練習は1人で行うことにしたが、『イニストラード:真夜中の狩り』ドラフトの練習はコミュニティを頼ることにした。彼は自分の強みが構築フォーマットにあると感じており、「リミテッドと比べたら圧倒的に強い」と信じている。世界選手権でも構築ラウンドの方が多いため、そこに大きなチャンスがあると見ている。
佐藤は「『カルドハイム』チャンピオンシップ」でも「チャレンジャー・ガントレット」でも1人で練習をして結果を出してきた。とりわけチャレンジャー・ガントレットは、プレイヤーとしての充実感を得られた大会だったという。
「タフな戦いを経て世界選手権への切符を手にした瞬間の充実感は、絶対忘れられませんよ」
最高の競技シーズンの締めくくりに世界選手権の舞台に立てることは、嬉しいという言葉ではとても言い表せないだろう。この5人は、高い技術を持つ対戦相手たちや時差と戦い、感染症の世界的流行で普段とはまったく異なる1年を送り、さまざまなストレスを乗り越えてきた。その中でも歩みを止めず、競技の世界における夢を掴んだのだ。
「子どもの頃に『World Championship Decks』を買いました」と、高橋は振り返る。高橋少年が手にしたのは、カイ・ブッディ/Kai Buddeが「世界選手権1999」を制したデッキだった。「それから20年かかりましたが、ついに僕自身が世界選手権に出られるんです!」
茂里は世界王者のタイトルを狙うだけでなく、「『カルドハイム』チャンピオンシップ」の準々決勝で敗れたアルネ・ハッシェンビス/Arne Huschenbethとの再戦も熱望している。「上手いなんてものじゃありませんでしたね……でも次は勝ちます!」
彼らの活躍を目の当たりにしては、プレミア・イベントにおける日本人選手の圧倒的な強さを称えずにはいられない。6人の殿堂顕彰者や複数の世界王者(直近では2012年)を擁する日本は、定期的に高い腕前を持つプレイヤーを輩出している。その国を代表するというプレッシャーはあるだろうが、今大会に出場する5名はそれにふさわしい準備をしてきた。
世界選手権は間もなく開幕し、出場選手たちの技術とプレイテスト、そして決意がそこに集約される。果たして佐藤 レイ、高橋 優太、井川 良彦の3名が再び最終日のテーブルを独占するのか? それとも佐藤 啓輔がさらなる躍進を見せるのか? あるいは茂里 憲之が将来のマジックのカードにその顔を残し、華々しい物語の結末を完璧に締めるのか?
ぜひ「 #FindYourChampion 」企画に参加し、「第27回マジック:ザ・ギャザリング世界選手権」を見守ろう。大会の模様は10月8~10日の全日程を twitch.tv/magic にて生放送でお届けする。彼らが「世界王者」のタイトル獲得という夢を実現し、マジックにおける日本の成功の歴史にその名を刻む瞬間をお見逃しなく。
「第27回マジック:ザ・ギャザリング世界選手権」日本語版放送ページ・放送日程
日本語版放送出演者
- 実況:石川朋彦(@katuobusi717) 担当:DAY1、DAY3
- 実況:ブルナー実久(@mksnake007) 担当:DAY2、DAY3
- 実況:海老江邦敬(@kuroebi_games) 担当:DAY1、DAY2
- 解説:八十岡翔太(@yaya3_) 担当:DAY1、DAY2、DAY3
- 解説:行弘賢(@death_snow) 担当:DAY2、DAY3
- 解説:原根健太(@jspd_) 担当:DAY1
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