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第27回マジック:ザ・ギャザリング世界選手権
第27回マジック:ザ・ギャザリング世界選手権 2日目の注目の出来事
2021年10月9日
(編訳注:埋め込み動画は英語実況のものです。)
「第27回マジック:ザ・ギャザリング世界選手権」のトップ4が決まった。
2020-21シーズンの締めくくりとして、世界のトッププレイヤー16人が10回戦を戦い抜いた。世界選手権の2日目はトップへと駆け抜けた圧倒的な走りっぷり、長きにわたる復活劇、そしてトップ4進出がかかった緊迫のタイブレイカーマッチ2つが同時にやってきた。
長いシーズンを戦い抜くことでプレイヤーは世界選手権への参加を果たした。そして2日間に渡って『イニストラード:真夜中の狩り』ドラフトとスタンダードでの卓越ぶりを見せつけた彼らは、素晴らしい瞬間、劇的なトップデッキ、深い洞察力、そして配信で見られたこれまでのマジック・トーナメントの中でも最高の勝利への反応の1つをもたらしてくれた。
そしてそれはもちろん、これが世界選手権だからこそだ。それらはすべて、3日目にトップ4が再び姿を現し、世界王者のタイトルを争うために行われた。
- オンドレイ・ストラスキー/Ondŕej Stráský (イゼット天啓)
- 高橋 優太 (イゼット・ドラゴン)
- ジャン=エマニュエル・ドゥプラ/Jean-Emmanuel Depraz (ティムール・トレジャー)
- ヤン・メルケル/Jan Merkel (グリクシス天啓)
ここに至るまでの経緯を話そう。
ストラスキーが再び優位に立つ
過去2年間を通し、オンドレイ・ストラスキーが競技マジックに与えた影響は、どれほど大きく見ても過大ではない。同じく世界選手権に参戦しているスタニスラフ・ツィフカ/Stanislav Cifkaを含む有名なテストグループ「Czech House」の一員として、ストラスキーは様々なフォーマットでその環境を定義づけるデッキの作成や普及を担ってきた――そして再び世界選手権に参加したのだ。
彼の初日は『イニストラード:真夜中の狩り』ドラフトで3勝0敗するところから始まった。サム・パーディー/Sam Pardeeとの対戦に紙一重で勝利したのち、ストラスキーは初日で唯一の5勝0敗プレイヤーになった。それは2日目のための完璧な前準備だった――トップ4の席を確保するにはあと2勝するだけでよい――そしてそれは先頭を走るプレッシャーを伴うものでもあった。
ともあれ、それが彼の歩みを遅くすることはなかった。ストラスキーは2日目も2勝0敗スタートとし、トップ4の確保に必要な2勝をすぐさま手際よく獲得した。
ストラスキーは7勝0敗の大連勝を想像していたわけではないが、自身のチームがこのトーナメントで最高のスタンダード・デッキを握っていると確信している、と語った。
7 《山》 5 《島》 3 《凍沸の交錯》 4 《河川滑りの小道》 2 《ストーム・ジャイアントの聖堂》 2 《廃墟の地》 -土地(23)- -クリーチャー(0)- |
3 《消えゆく希望》 1 《棘平原の危険》 4 《感電の反復》 3 《表現の反復》 3 《ジュワー島の撹乱》 2 《才能の試験》 4 《ゼロ除算》 2 《悪魔の稲妻》 4 《予想外の授かり物》 2 《記憶の氾濫》 3 《家の焼き払い》 4 《アールンドの天啓》 2 《髑髏砕きの一撃》 -呪文(37)- |
3 《くすぶる卵》 2 《心悪しき隠遁者》 2 《黄金架のドラゴン》 1 《棘平原の危険》 3 《バーニング・ハンズ》 1 《環境科学》 1 《才能の試験》 1 《アルカイックの教え》 1 《マスコット展示会》 -サイドボード(15)- |
「もし明日勝てなかったらがっかりするだろうね」と彼は認めた。「可能性は十分あると思う。私たちのデッキは素晴らしく、自分でも良いプレイができたと思っている。それについてはトーナメント前の期待を確実に越えたね。世界選手権で優勝することは、人生の素晴らしい一幕の締めくくりとなるだろう。マジックは私におおむね望むすべてを与えてくれたので、最高の状態でこのゲームを締めたいと思う」
ストラスキーの圧倒的な結果は、世界選手権レベルのトーナメントを完全に支配した選手の中でもさらにほんの一握りのグループに含まれることになる。2012年に行われた16人によるプレイヤー選手権では八十岡翔太が11勝1敗という成績を残し、また2015年と2017年の世界選手権ではセス・マンフィールド/Seth Manfieldとウィリアム・「ヒューイ」・ジェンセン/William "Huey" Jensenがそれぞれ同等の成績を挙げた。
しかしこれらのプレイヤーは、ストラスキーのように無敗ではなかった。彼も間違いなく無敗という結果から彼らと戦績を同じくしようとするだろう。何しろ――マンフィールドとジェンセンは世界選手権で優勝しているのだから。
スタンダード変革
このようなハイレベルのイベントで真新しいスタンダード・フォーマット環境に取り組むのは久しぶりのことだったが、結果的にプレイヤーは『イニストラード:真夜中の狩り』スタンダード7回戦を戦い抜き、いくつかの予想の結果がおおむね出そろった。緑単はおそらくこのフォーマットの初期ではもっとも安定したデッキだったと思われるが、全員のデッキリストが公開された時点ではさまざまな《アールンドの天啓》デッキが注目を奪っていった。全体的に、主だったプレイヤーは環境を理解していると考えられた。
しかし実際に対戦が始まってみると、別のデッキを持ち込んだ2名のプレイヤーがトップ4へ進んだ。「ティムール・トレジャー」を採用したドゥプラと、「イゼット・ドラゴン」を駆る高橋だ。
ドゥプラは《ヤスペラの歩哨》と《厚顔の無法者、マグダ》のコンビを頼りとしたデッキで、高橋は――このフォーマットで最高の2マナ域と自ら評した――《くすぶる卵》を変身させ、《黄金架のドラゴン》に向けて準備を整えることに全力を注いだ。
5 《森》 1 《山》 4 《岩山被りの小道》 4 《樹皮路の小道》 4 《河川滑りの小道》 2 《バグベアの居住地》 2 《ハイドラの巣》 -土地(22)- 4 《ヤスペラの歩哨》 4 《厚顔の無法者、マグダ》 4 《裕福な亭主》 2 《無謀な嵐探し》 3 《月の帳の執政》 4 《黄金架のドラゴン》 -クリーチャー(21)- |
4 《レンジャー・クラス》 3 《ドラゴンの火》 2 《否認》 4 《エシカの戦車》 4 《髑髏砕きの一撃》 -呪文(17)- |
2 《ケッシグの自然主義者》 2 《茨橋の追跡者》 2 《無謀な嵐探し》 4 《バーニング・ハンズ》 3 《絡み罠》 2 《軽蔑的な一撃》 -サイドボード(15)- |
7 《島》 4 《山》 3 《凍沸の交錯》 4 《河川滑りの小道》 2 《ストーム・ジャイアントの聖堂》 -土地(20)- 4 《くすぶる卵》 4 《黄金架のドラゴン》 -クリーチャー(8)- |
1 《消えゆく希望》 1 《棘平原の危険》 4 《ドラゴンの火》 4 《表現の反復》 3 《ジュワー島の撹乱》 2 《轟く叱責》 1 《否認》 2 《ゼロ除算》 1 《雲散霧消》 1 《プリズマリの命令》 1 《襲来の予測》 4 《記憶の氾濫》 3 《アールンドの天啓》 4 《髑髏砕きの一撃》 -呪文(32)- |
4 《心悪しき隠遁者》 1 《消えゆく希望》 3 《バーニング・ハンズ》 2 《燃えがら地獄》 1 《プリズマリの命令》 1 《白熱する議論》 1 《環境科学》 1 《才能の試験》 1 《マスコット展示会》 -サイドボード(15)- |
その一方で、メルケルのテストチームには同じく世界選手権に出場しているマット・スパーリング/Matt Sperling、イーライ・カシス/Eli Kassis、そしてガブリエル・ナシフ/Gabriel Nassifという面々が揃っていた。彼らは《アールンドの天啓》をサポートしつつ、同じくそれを使う「イゼット天啓」デッキや「緑単アグロ」デッキに狙いを定めたグリクシスのデッキリストに適応することで優位に立ちそれらを打倒できると感じていた。
1 《島》 2 《山》 4 《河川滑りの小道》 3 《難破船の湿地》 3 《清水の小道》 4 《憑依された峰》 4 《荒廃踏みの小道》 2 《ストーム・ジャイアントの聖堂》 -土地(23)- 1 《くすぶる卵》 3 《溺神の信奉者、リーア》 -クリーチャー(4)- |
4 《消えゆく希望》 2 《強迫》 2 《棘平原の危険》 1 《血の長の渇き》 4 《表現の反復》 2 《感電の反復》 2 《ジュワー島の撹乱》 1 《安堵の火葬》 1 《燃えがら地獄》 1 《パワー・ワード・キル》 3 《セレスタス》 1 《悪魔の稲妻》 1 《プリズマリの命令》 3 《記憶の氾濫》 1 《家の焼き払い》 4 《アールンドの天啓》 -呪文(33)- |
4 《心悪しき隠遁者》 2 《マインド・フレイヤー》 3 《竜巻の召喚士》 1 《強迫》 1 《パワー・ワード・キル》 2 《真っ白》 1 《魂の粉砕》 1 《予想外の授かり物》 -サイドボード(15)- |
それは、このトーナメントの先頭を走り続けた(確実に本命と言える「イゼット天啓」を選び物事をシンプルに捉えた)ストラスキーを止められなかったものの、結果としてトップ4に「緑単アグロ」は不在となった。青赤含みのプレイヤーはこのトーナメントのメタゲームを正しく予測し、誰もが予測していなかったアーキタイプが混在するトップ4が決まったのだ。
トップ4へ繋がる信じがたいほどの復活劇
ストラスキーが最初の席を早くも確保した時点で、残された枠はたった3つだ。それはドラフトを0勝3敗という大荒れの結果で終えてしまい、世界選手権での希望がぎりぎり残るがけっぷちに立ってしまった高橋優太にとって特に手ごわい挑戦となった。
しかし最初に出遅れなければ驚愕の復活は起こりえず、それこそが高橋によって起こされたことだ。ストラスキーがトップ4入りを確定させた時点で成績を0勝3敗から4勝3敗とし、スタンディングの中間にまで這い上がってきた。
そこから高橋は「イゼット・ドラゴン」デッキで彼のマジック歴にふさわしいプレイをし、スタンダードの対戦で7勝0敗という素晴らしい成績を残した。事実、彼は6回戦以降1ゲームも落としていないのだ。
彼の驚くべき遂行能力がトップ4内でも発揮され彼のデッキを勝利に導くのは間違いないだろうが、トップ4を決めたときの彼の反応は今後も語り継がれていくだろう。
復活劇についていえば、ヤン・メルケルは「プロツアー初参戦初優勝」という自身の伝説が決してまぐれではないことを疑いの余地なく証明した。
「プロツアー・神戸2006」の王者は長い間ゲームから離れていたが、去年トップに返り咲き、それ以降は絶好調だ。彼は「『ゼンディカーの夜明け』チャンピオンシップ」で自身2度目となる優勝を果たし、「チャレンジャー・ガントレット」ではトップ12入りを決め、「ライバルズ・ガントレット」では同じドイツ人(で殿堂顕彰者でもあり「ジャガーノート」の異名を持つ)カイ・ブッディ/Kai Buddeを下すなど、2021シーズンで素晴らしい成績を収め、世界選手権への出場権を獲得した。世界王者へと向かう2日目では、自身の戦績にまた別の驚くべきタイトルを付け加えようと、冷静に大きな一歩を踏み出した。
トップ4のタイブレイカーマッチでチームメイトのマット・スパーリングに勝利したときのメルケルの反応は、高橋のそれとはまったく異なるものだったが、これもまた印象的なものだった。
「信じられないくらい嬉しいよ。これを言葉にするのは難しいし、ここまでは予想してなかった」と彼はトップ4を決めた後に語った。「トップ4入りがもう素晴らしい成果なので、どうなるとしても喜ばしいね」
トップ4最後の1人はドゥプラだ。奇しくも、トップ4プレイヤーすべてが初日のドラフトで同じポッドだったが、ドゥプラもまたメルケルと同じく1勝2敗の赤字から抜け出す必要があった。しかしそれを彼はやり遂げ、その道中すべての段階を戦い抜いた。その道のりには、タイブレークマッチに持ち込むために第10回戦でサム・パーディーとの手に汗握る一戦を勝ち取ることも含まれていた。
彼は1勝2敗というスタートから信じがたい復活を果たして勝利を成し遂げ、タイブレークマッチへと進んだ。その対戦相手は……サム・パーディーだ。トップ4入りが掛かった再戦で、かつ今大会3度目の対戦となった。ドゥプラは「緑単アグロ」に対してこの好機を最大限に生かしたのだった。
これでトップ4が決定した。あらゆるトーナメントで最高のプレイヤーの1人としてひそかに成長を続けているドゥプラがマジック界の頂点に上り詰めるまで、あとわずか1日だ。
「世界選手権はマジックプレイヤーにとって最大の成果になる」と彼は言う。「各種天啓デッキに対して私がどれだけ良いか悪いかは不明だ、かなり拮抗してることだけはわかるかな……勝ち目は薄いかもしれないが、良い手札と鍵となるターンでの打ち消し呪文があればチャンスはあるだろう」
先を見据えて
トップ4プレイヤーは10月10日9時(PDT、日本時間25時)に戻ってくる。そして4人中2人をタイトルマッチへと送り出すためのダブルエリミネーションブラケットが始まり、カード化と世界王者のタイトルというマジックでの不朽の存在をかけて最終決戦が行われる!
(Tr. Yuusuke "kuin" Miwa)
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