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マジック:ザ・ギャザリング世界選手権2018
決勝:Javier Dominguez(スペイン) vs. Grzegorz Kowalski(ポーランド)
2018年9月23日
1年間のマジックの競技が、この瞬間に帰着する。数回のプロツアー、そして何十ものグランプリから、この才能に満ちあふれた2018年世界選手権の場が整った。2回のドラフト、14ラウンドのスイス、緊迫した準決勝2戦、それらここまでのあらゆることがこの1マッチに集まっている。グジェゴジェ・コワルスキ/Grzegorz Kowalskiとハビエル・ドミンゲス/Javier Dominguezの、3本先取の勝負である。
ドミンゲスは彼にとって2回連続となる世界選手権決勝に臨むことになり、それ自体が信じられない実績である。しかし、彼は再び準優勝にとどまるつもりはない。彼の目は、この2度目の機会を逃さず優勝に向けられている。
コワルスキは彼の歴史を作ろうとしていた。彼の初めてのグランプリ・トップ8入賞は2012年のことだが、昨年プロ・シーンに躍り出て、グランプリ・リヨンでの優勝を含む素晴らしいシーズンを過ごした。
ドミンゲスとコワルスキはともにここ数か月のスタンダードを席巻している「赤黒アグロ」デッキをプレイしていた。決勝に残った2人は、それぞれ準決勝で「赤単ウィザード」と「白青《王神の贈り物》」を破っており、その終着点がここになる。新人のコワルスキが制するのか、ドミンゲスが昨年の決勝で敗れて以来の雪辱を果たすのか。
ゲーム展開
どちらのプレイヤーも、ミラーマッチで超速の立ち上がりは見せなかった。その代りに、ドミンゲスは《屑鉄場のたかり屋》で《キランの真意号》を動かし、第3ターンからダメージを与え始める。一方のコワルスキも、自陣に《ピア・ナラー》と《屑鉄場のたかり屋》を並べていく。
ドミンゲスは《反逆の先導者、チャンドラ》を出してコワルスキのライフを9点まで削り、均衡を破った。しかしコワルスキも逆転の一手を準備していた。《ピア・ナラー》は起動した《キランの真意号》の前に倒れるも、《反逆の先導者、チャンドラ》を退場させる。そして《木端 // 微塵》で《キランの真意号》を除去し、盤面をひっくり返してターンをドミンゲスに返した。
だが、ドミンゲスもこれでガス欠ではなかった。《栄光をもたらすもの》で優勢を取り戻すと、《ゴブリンの鎖回し》が決勝での先勝を確実なものにした。
ドミンゲスは第2ゲームをいい滑り出しで優位に立ったが、コワルスキの《削剥》と《ゴブリンの鎖回し》で《航空船を強襲する者、カーリ・ゼヴ》と《ボーマットの急使》が除去されて急速に脱輪してしまう。コワルスキの《反逆の先導者、チャンドラ》が《航空船を強襲する者、カーリ・ゼヴ》を出すためのマナを生産し、第2ゲームの支配を決めたように見えた。
ドミンゲスにできることは《再燃するフェニックス》を出すことだけだった。強力な手ではあるが、コワルスキは強力なプレインズウォーカーがある状態でアンタップできてしまう。《反逆の先導者、チャンドラ》の起動型能力と《木端 // 微塵》で《再燃するフェニックス》を対策したが、2体目がこの何度も登場する飛行クリーチャーでコワルスキを削り切ろうというドミンゲスの陣に登場する。しかしコワルスキにも、《ピア・ナラー》が作る飛行機械・トークンという飛行クリーチャーがあり、次のターンの《反逆の先導者、チャンドラ》を守る重要なブロック・クリーチャーである。
あるいは、そう見えた。ドミンゲスは危険な線を渡り、《マグマのしぶき》で飛行機械を除去すると《再燃するフェニックス》で《反逆の先導者、チャンドラ》を攻撃した。コワルスキが除去を持っていれば、それはもう大惨事だ。2度の決勝経験者にとって幸いなことに、攻撃は通り、さらに彼の《反逆の先導者、チャンドラ》で《航空船を強襲する者、カーリ・ゼヴ》も片付いた。
最初の数ターンの強烈なやり取りのあと、両プレイヤーが薄い戦場で優位を取り合ってゲームの進行は遅くなった。しかしドミンゲスはコワルスキの持っていないもの、《ボーマットの急使》を持っていた。このちっぽけな1マナ・クリーチャーはスタンダードのキーパーツになっており、手札を補充する能力は赤デッキにそれまでなかったカード・アドバンテージをもたらしている。ドミンゲスが《ボーマットの急使》で得られたのは2枚だけだったが、その2枚は非常に強力なカードだった。《熱烈の神ハゾレト》が《再燃するフェニックス》とともに戦場に出て、ドミンゲスがゲームを完全に掌握した。
しかしながら、序盤攻勢だったコワルスキがドミンゲスを悩ませるべく立ち戻った。両陣営の数回の攻撃の結果、ライフは6対5でコワルスキの優勢。ドミンゲスは自分のターンのカードを引き、両プレイヤーの墓地を見て、そして悪いことに気がついてしまった。どうやっても、コワルスキが墓地から唱える《木端 // 微塵》の後半部分のプレイを防ぐことができず、ちょうどライフ5点を失うことになるのだった。
サイドボードありのゲームに移行して、両プレイヤーとも《チャンドラの敗北》のような可能な限り多くの対策カードやカード・アドバンテージ・エンジンをデッキに詰め込んでデッキの速度を落とした。最初に登場したのはドミンゲスの《ウルザの後継、カーン》だったが、すぐにコワルスキの《反逆の先導者、チャンドラ》がそれに対峙する。
プレインズウォーカーが突出して重要なゲームにおいて、ドミンゲスが自分の《ウルザの後継、カーン》を除去したのが正着と言うのは意味がわからないかもしれないが、彼が《ウルザの後継、カーン》の2つ目の能力を使って《ゴブリンの鎖回し》を手に入れたときに行なったのはまさにそれだった。手札にあった2枚目の《ゴブリンの鎖回し》とあわせてコワルスキの《反逆の先導者、チャンドラ》を除去し、先制攻撃を持つパワー6を戦場に突きつける。さらには《栄光をもたらすもの》を加え、ドミンゲスは戦場を完全に掌握し、コワルスキには1体の《熱烈の神ハゾレト》のみとなった。
コワルスキがマッチで不利になるのはこれが初めてでも最後でもないが、第2ゲームと同様、彼は自分の計画に忠実だった。《チャンドラの敗北》で《栄光をもたらすもの》を除去し、《木端 // 微塵》で《ゴブリンの鎖回し》の1体に対策して、《熱烈の神ハゾレト》の攻撃を通せるようにする。両プレイヤーとも墓地に《木端 // 微塵》を構え、ゲームはいよいよ終盤に差し掛かる。こういった状況では、破壊不能クリーチャーは有利を持つことになるものだ。ここでもそうで、《熱烈の神ハゾレト》が数ターンに渡ってドミンゲスにダメージを与え続け、やがて《微塵》の射程に捉えたのだった。
こうして、コワルスキは2-1と逆転し、初めて世界選手権に挑んだプレイヤーがあと1勝で王座を手にするところまで来た。
まず彼は、今度はドミンゲスの側に現れた《ウルザの後継、カーン》と戦わねばならなかった。それは手札にカードを蓄えていく。しかし、前のゲームと全く同じように、コワルスキは完璧な回答を持っていた。《マグマのしぶき》を放ち、さらに《熱烈の神ハゾレト》にカードを捨てることで攻撃を解禁して《ウルザの後継、カーン》を打ち倒す。
しかしドミンゲスはまだ終わらなかった。彼はサイドボードから《最古再誕》という完璧な回答を入れており、これによってコワルスキは《熱烈の神ハゾレト》を生け贄に捧げるしかなかった。コワルスキは自分の《ウルザの後継、カーン》で反撃に移るが、ドミンゲスのさらなる《熱烈の神ハゾレト》――と、次のターンに待つ《最古再誕》の「奥義」――が流れを大きく変える、そしてすぐに、強力な英雄譚によって《ウルザの後継、カーン》がドミンゲスの元に訪れて、それから数回の攻撃によってマッチは世界王者を決める最終ゲームへと続くことになった。
ゲームが始まり、緊張が極限まで高まる中、第3ターンにドミンゲスが《大災厄》を唱えてコワルスキの手札を公開させると、《ウルザの後継、カーン》2枚、《反逆の先導者、チャンドラ》、《再燃するフェニックス》があった。ドミンゲスは《ウルザの後継、カーン》1枚を追放してターンを返す。コワルスキの土地が3枚で止まった。ドミンゲスが《ピア・ナラー》や《熱烈の神ハゾレト》といった戦力を並べる間、コワルスキは土地も唱えられるカードも引くことなく、ただ引いてはパスするだけのターンを重ねていた。
そして突然終わりが訪れた。ドミンゲスは何枚ものカードを続けて唱え、《熱烈の神ハゾレト》で攻撃できるようにする。そして巨大な攻撃ステップの後、コワルスキは手を差し出し、彼のチームメイトが雪辱の旅を終えて、2018年マジック世界王者になったことを祝福したのだった。
(Tr. YONEMURA "Pao" Kaoru)
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