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マジック:ザ・ギャザリング世界選手権2018
準決勝:Grzegorz Kowalski(ポーランド) vs. Ben Stark(アメリカ)
2018年9月23日
プロツアー殿堂顕彰者であり、プロツアー・パリの優勝者であり、有名なライターであり、「世界最高のリミテッド・プレイヤー」の話題によく取り上げられるアメリカのベン・スターク/Ben Starkにとって、世界選手権トップ4への進出はほとんど時期外れのように見えた。スタークは長きに渡りこのゲームを支配し、本当にその力が衰えたことはなく、結果を残し続けてきた。彼は今シーズンに5度目のプロツアートップ8を達成した。
彼の流儀によく見られるように、このトーナメントで彼は会場の半分以上いると想定されていた(そして彼の想定は大正解だった)「赤黒アグロ」の下を行くようにデザインされたメタ仕様の「赤単アグロ」を披露した。ミラーマッチで勝つために赤黒デッキの大型化が進む世界において、スタークは《帆綱走り》を脇腹に叩き込み、《魔術師の稲妻》を1~2発本体に打ち込んでとどめを刺すという、それらが思いもよらないところに密かに着目した。これは基本的に彼が週末すべてでやっていたことだ。その戦略を続けない理由は見当たらなかった。
スタークに相対するのはポーランドのグジェゴジェ・コワルスキ/Grzegorz Kowalskiだ。プロツアートップ8に彼の名前はなく、このシーズンに初めてプラチナに到達しただけで、ヨーロッパのマジック・コミュニティの外側からは比較的不明な部分もあり、コワルスキが初出場で世界選手権の舞台で成功を収めたことは彼自身も驚いていた。彼はトップ8に入れたら良いほうだと言っていたので、この結果は彼の最初の予想以上のものだと言える。彼がトップ8ではなくトップ4で足切りだったことを知らなかったのか、それともシングルエリミネーション進出を目指していなかったのかは明らかではない。
しかしコワルスキはここ数年静かに一貫した結果を出しており、ポーランド代表チームを率いて去年のワールド・マジック・カップの決勝に導いて以降、多くの人にとってコワルスキの秘密は解明された。そしてそれでも謎が解明されないとしても、彼がミラーマッチ用に調整された「赤黒アグロ」を使い、世界最高のプレイヤーの集う場で初日を首位で終えたことで、今や間違いなく明らかになった。
ちょっとした助けが必要なので、彼のデッキとベン・スタークとの組み合わせは引き次第になる。赤黒の最高の1、2、3の動きにはどんなスタンダードのプレイヤーもほとんど敵わないが、より標準的な動きではスタークのデッキの構成にやられてしまうことになる。《ボーマットの急使》などの普段は強力なカードもスタークの1/2や先制攻撃持ちに対して機能せず、そしてスタークのデッキはコワルスキのものよりも多くの火力呪文をプレイしているので、彼のライフが10以下になった場合は火力の射程圏内にあることを気にしなければならず、そうなると盤面の存在は実際問題にならないのだ。
ゲーム展開
スタークにとって1ゲーム目後手であることは良い兆しではなかった。また彼は土地1枚の初手をキープしたのために窮地に追い込まれた。とても良い土地1枚の初手だった――タフネス2の1マナクリーチャーが2枚、1マナの除去が2枚、そして《熱烈の神ハゾレト》が1枚――が、彼は自らのデッキのトップに翻弄されたままだった。
スタークは盤面で最初のダメージを《ギトゥの溶岩走り》と《帆綱走り》――本当にたくさん走っている――で叩き出した。《ゴブリンの鎖回し》で死ぬクリーチャーはいないので、3ターン目にコワルスキがそれを出したときに戦場に影響を受けたものはなかった。コワルスキは抜け目なくこのクリーチャーを《キランの真意号》に搭乗させるためには使わず、 ブロックして盤面を維持するために残した。スタークがさらに圧力をかけられるようになるためにはあともう1枚だけ土地が必要だった。
しかしスタークが4ターン目を迎えた時、彼は依然として1枚の《山》しか戦場に出せていなかった。アドバンテージ・ゲージが大きく遠ざかっても、彼は無表情のままだった。もし彼の表情が変わっても、誰も気づかなかったと思う。
しかしその無表情もコワルスキが《熱烈の神ハゾレト》を唱えたときには薄笑いへと変わり、スタークはすぐにカードを片付けた。2枚目の土地を待ちながらスタンダード最強のクリーチャーから逆転するには、彼はあまりにも遅れを取り過ぎていた。彼はそのことを少し笑い、そして次の戦いのためにシャッフルを行った。
2ゲーム目はスタークが先手でゲームを始め、彼の2ターン目の《地揺すりのケンラ》はコワルスキの《マグマのしぶき》に突っ込んでいった。2枚目の火力呪文をスタークの《ゴブリンの鎖回し》に打ち込んだとき、コワルスキは大きく有利な、空の盤面を見つめていた。
この対戦における「赤黒アグロ」のやるべきことは、小型クリーチャーが用をなさなくなった後にスタークのデッキが火力呪文をで焼き切ることができないようにライフを十分な高さに維持することだった。そして4ターン目にスタークが何も出していない状態で彼がチャンドラと《屑鉄場のたかり屋》を置いてライフがまだ19だったとき、 かなり良い感じだったことは間違いない。
スタークがコワルスキのパーマネントを始末した後、彼の手札には《熱烈の神ハゾレト》と2枚の火力呪文があった。この殿堂顕彰者にはまだなんとかする余地が残されていたが、コワルスキのデッキが本格的に回りだしたときに、彼はそれを切り抜けなければならなかった――そしてそれは2枚の《再燃するフェニックス》の形でやってきたのだ。
スタークは手札を空にして、両方の火力呪文を《再燃するフェニックス》と(戻ってこないように)トークンに打ち込み、コワルスキにダメージを与えるべく5/4破壊不能を振り回した――ライフ合計は16対14でスターク有利だ。彼はダメージレースに持ち込んだが、勝つためには良い引きをしなければならない。
コワルスキは《ピア・ナラー》と《キランの真意号》で圧力を維持し、スタークにこのゲームの最初の音――重い溜息を出させた。彼はやってきたものを見た。彼はもはやこのダメージレースに勝とうとはしなかった。
コワルスキは《キランの真意号》に搭乗させるために《屑鉄場のたかり屋》を戦場に戻し、全軍で攻撃した。スタークの最後の手札は《再燃するフェニックス》を一時的に除去しライフを6に留める火力呪文だったが、救いにならないドロー・ステップの後、彼は再びカードを片付けた。
さて、対戦相手の選んだデッキを倒すために具体的にメタったデッキは、0-2でサイドボード後のゲームへと向かっていた。スタークの優れたメタゲーム・プランは彼をトップ4に導いたが、準決勝ではうまく行かなかった。
3ゲーム目、スタークの引きは1ゲーム目のように偏ってしまった。彼は再び土地1枚の手札に賭け、そして再びライブラリーの上の助けだけを求めていた。しかし前のゲームと同じく、彼は2枚目の土地を引けなかったことを厳しく咎められることになった。
コワルスキは堅実な手札をキープし、スタークの1マナ除去による足止めにもミスすることはなかった。スタークは4ターン目にも土地を見つけられず、このゲームと、そしてマッチに敗北した。
グジェゴジェ・コワルスキが3勝0敗でベン・スタークを下し世界選手権2018の決勝に進出!
(Tr. Takuya Masuyama)
RESULTS 本大会の対戦結果・順位
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