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マジック:ザ・ギャザリング世界選手権2017
ドラフト6-0への最後の一歩
Meghan Wolff / Tr. Keiichi Kawazoe
2017年10月7日
ドラフトでは多くの価値あるものに直面できる。あなたが開封したカードが目の前にあり、他のプレイヤーの思い描く戦略があり、相手が組み上げたデッキがあり、あなたのデッキには多種多様なカードが含まれているのだ。
ドラフトで勝つためには、才能と忍耐、技術、そして一握りの運が必要だ。特に、2回のドラフトで6連勝しようとするならなおさらである。カードの評価検討に多大な時間を費やしている、世界を代表する24人のプレイヤーを相手にその成績を成し遂げるのは、一見不可能に見えるかもしれない。
もちろん、それは殿堂顕彰者のウィリアム・「ヒューイ」・ジェンセン/William "Huey" Jensenにとっても同様だが、しかし彼はこの世界選手権で傑出した、印象的で、信じられないほどの成績として、ドラフト全勝を成し遂げた。単なる驚きの言葉だけでは不十分かもしれないが、それでも驚かずにはいられない。彼はこの世界有数のプレイヤーたちを相手に、第10回戦を終えた時点で10-0という成績であり、ジェンセンは唯一、2回のドラフト両方で全勝したプレイヤーとなった。
2日目、彼の序盤のピックは最終的にプレイした黒赤海賊デッキの方向には向かっていなかった。最初の2ピックとデッキの最終型との間の差は、受けの広い形で周囲のシグナルに対して柔軟に対応する、というドラフト戦略の良い手本として現れているだろう。この戦略は、競合の少ない部族を早い段階で見つけることが勝負を分けるような、この環境で特に重要なものであった。
彼はドラフトを《薄暮の賛美者》、《日の出の使者》から始めた。多少の差こそあれ、この2枚は受けの広い白のカードであり、いくつかのデッキで使うことができるはずだった。
しかし4手目で、ジェンセンは攻撃的な海賊シナジーで光る、赤の3マナ3/3である《身勝手な粗暴者》をピックした。
そして、その後さらに2枚の《身勝手な粗暴者》を続けて手に入れたのだ。
このカードは、攻撃的なオール・イン戦術で複数引いたとき、お互いに威迫を与えられるという点で特によく働くカードだ。この3手で、ジェンセンは自身のドラフトの方針を完全に変えてしまった。そこから続くピックで赤いカードを取り、さらには数枚の黒の海賊をもピックした。
その後、2パック目の2手目で、赤白恐竜をドラフトしていたジョシュ・アター=レイトン/Josh Utter-Leytonが《人質取り》を流してきた。これは最強でないとはいえ、このデッキにとって環境で最も良いカードのひとつだ。《凶兆艦隊の貯め込み屋》と《水没した地下墓地》をピックできていたため、ジェンセンはこの強力なレアをタッチするために基本土地の《島》をデッキに入れる必要すらなかった。
「大量の海賊と、《焦熱の連続砲撃》が2枚取れていたんだ」と、ジェンセンは自身のデッキの強さを評価する。「言うまでもなく強力なシナジーだね、相手のクリーチャーにだけ全体2点を打てるんだから。ただ、私のデッキに限って言えばちょっと落ちるんだ。2マナ域が吸血鬼だから、それも一緒に流れちゃうのさ。ただ、そうは言っても、《焦熱の連続砲撃》のことを覚えておけば、その2マナ域で先にうまく相打ちをとることは難しくないはずさ」
その2マナ域について言えば、ジェンセンは3パック目でうまく優先順位をつけることで、良いカーブを作り上げた。
「マナ・カーブ的な理由から、1手目で《不死の古き者》より《女王湾の兵士》をピックしたんだ。回してみて《不死の古き者》をプレイできる機会はなかったし、たぶん良い選択だったんだと思うよ」
8 《山》 7 《沼》 1 《水没した地下墓地》 1 《未知の岸》 -土地(17)- 2 《凶兆艦隊の貯め込み屋》 2 《女王湾の兵士》 3 《身勝手な粗暴者》 1 《巧射艦隊の拷問者》 1 《流血の空渡り》 2 《鉄面連合の海賊》 1 《結束した角冠》 1 《凶兆艦隊の侵入者》 1 《人質取り》 1 《風雲艦隊の放火魔》 1 《風雲艦隊の紅蓮術士》 1 《太陽冠のハンター》 -クリーチャー(17)- |
1 《両手撃ち》 1 《稲妻の一撃》 1 《確実な一撃》 2 《焦熱の連続砲撃》 1 《弱者成敗》 -呪文(6)- |
1 《廃墟の地》 1 《溺死者の行進》 1 《苛立ち》 1 《日の出の使者》 1 《女王の任命》 1 《かき回すゴブリン》 1 《財力ある船乗り》 1 《破砕》 1 《凶兆艦隊の侵入者》 1 《無法の物あさり》 1 《薄暮の賛美者》 1 《裕福な海賊》 2 《女王の工作員》 1 《不死の古き者》 -サイドボード(15)- |
ドラフト最終戦の第10回戦、ジェンセンは緑白恐竜で先ほどブラッド・ネルソン/Brad Nelsonと引き分けたばかりのサム・ブラック/Sam Blackと対峙する。彼が第3ゲームを時間切れで終えたとき、戦場はクリーチャーとダイスで埋め尽くされ、両者とも相手に有効打を与えられなくなっていたのだった。
ブラックは多くの高タフネスなクリーチャーを用意できるのだ。
第1ゲーム、ジェンセンは《女王湾の兵士》から《身勝手な粗暴者》、《凶兆艦隊の侵入者》と繋いだ。一方、ブラックは多くのプレイヤーから最優秀コモンのひとつと見られている《縄張り持ちの槌頭》のほか、数枚の恐竜で盤面を固めた。
ジェンセンは、《焦熱の連続砲撃》2枚でブラックの盤面を一掃した。ブラックはもはやジェンセンのアタッカー3体(うち2体は威迫を持つ)を止められるだけのブロッカーを用意できず、そのまま3ターンでライフを削り切った。
ジェンセンは、第2ゲームのためのサイドボーディングに向けて大事な選択をしていた。人によってはドラフト中に見落としがちなことだが、相手のカードにより効果的に働くカードをメインデッキの強力なカードと入れ替えるべく、サイドボードに用意しておかなければならないのだ。
ブラックが《勝者の戦旗》を使っていたため、ジェンセンは《無法の物あさり》、《溺死者の行進》、そして《破砕》を選択した。これは、サイズに劣る自分のクリーチャーで勝つためにはアドバンテージを取る必要があることを知っていたからだ。
第2ゲーム、ブラックは前のゲーム以上に強固な盤面を構築し、ジェンセンの攻勢を押しとどめることに成功した。ブラックが《吠えるイージサウルス》を出したとき、両プレイヤーは7~8体のクリーチャーをコントロールしており、ジェンセンの立場は悪くなっているように見えた。
《アゾカンの射手》が恐竜をつつき、ブラックのクリーチャーすべてに+1/+1カウンターが置かれた。《襲撃》がさらにこれを繰り返し、ジェンセンのクリーチャー1体がついでに処理されてしまった。そしてさらに、攻撃で数体のクリーチャーと引き換えにジェンセンのライフを4まで追い込んだ。この損失は、すなわち数ターンの間有効な攻撃が難しくなってしまったことを意味していた。
そこで、ジェンセンは《人質取り》を引き当てた。1ターンにして、彼はブラックの《吠えるイージサウルス》を奪ったのだ。次のターン、すでにライブラリーは残り1枚だったが、攻撃に進んだ。彼は他のクリーチャーをまとめて総攻撃を選択したのだ。
《焦熱の連続砲撃》2発がジェンセンの恐竜を激昂させる。《太陽冠のハンター》はブラックに6点のダメージを与え、そして《吠えるイージサウルス》は全軍に2個の+1/+1カウンターを置いた。さらに、彼はそこに《稲妻の一撃》で無慈悲な止めを刺し、3つ目のカウンターを置き、ブラックのライフもまた4まで追い込まれた。
ジェンセンが最後のカードを引くターンで、自身のライフを0にするに足るダメージを受けると悟ったブラックは、残った恐竜たちを片付けた。
第10回戦が終了し、ジェンセンはそのリードをさらに広げることとなった。ジェンセンは10勝0敗となり、その後ろを追いかけるプレイヤーは7勝3敗のジョシュ・アター=レイトンと、6勝4敗の3人となった。
「言葉もないよ」と彼は対戦後に言った。「何を言えばいいのかわからないんだ」
RESULTS 本大会の対戦結果・順位
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