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マジック:ザ・ギャザリング世界選手権2017
初日ドラフト・ラウンド全勝者たちが語る今環境の鍵
Frank Karsten / Tr. Tetsuya Yabuki
2017年10月6日
世界選手権2017の出場選手24名は、3つの卓に分かれ『イクサラン』ブースタードラフトで今大会の火蓋を切った。そして初日のドラフト部門が終了すると、各卓に全勝プレイヤーが現れる――世界ランキング23位のクリスティアン・カルカノ/Christian CalcanoとMagic Online王者ジョシュ・アター=レイトン/Josh Utter-Leyton、世界ランキング12位のウィリアム・ジェンセン/William Jensenの3名だ。
そこで彼らに話を聞き、『イクサラン』リミテッドへの取り組み方を尋ねた。三者から学べたのは、この環境ではマナ域を軽い方で固めたアグレッシブなデッキが有効であることや、空いている色だけでなく、特に空いている「部族」を見極めることが肝要であることだ。
クリスティアン・カルカノの場合
9 《沼》 7 《山》 -土地(16)- 3 《立ち枯れの守り手》 1 《這い回る心止虫》 1 《凶兆艦隊の船長》 1 《深海艦隊の扇動者》 1 《帆凧の掠め盗り》 1 《女王湾の兵士》 1 《ティロナーリの騎士》 2 《巧射艦隊の拷問者》 1 《身勝手な粗暴者》 1 《流血の空渡り》 1 《深海艦隊の殺し屋》 1 《聖域探究者》 -クリーチャー(15)- |
2 《卑怯な行為》 1 《強迫》 4 《向こう見ず》 1 《板歩きの刑》 1 《依頼殺人》 -呪文(9)- |
1 《手付かずの領土》 1 《啓蒙》 1 《宿営地の守り手》 1 《もぎ取り刃》 1 《セイレーンの嵐鎮め》 1 《魔術遠眼鏡》 1 《秘儀での順応》 1 《焦熱の連続砲撃》 1 《剣呑な交渉》 2 《血潮隊の聖騎士》 1 《破砕》 1 《凶兆艦隊の侵入者》 1 《金色の歩哨》 1 《葉を食む鞭尾》 1 《血潮隊の司教》 1 《蔓延する腐敗》 1 《女王の工作員》 -サイドボード(18)- |
2016-2017年シーズンで自己ベストを大きく更新し今大会の出場を決めたプラチナ・プロにして世界の旅人であるクリスティアン・カルカノは、『イクサラン』ドラフトでは「オーラ」呪文を好んだ。彼は低マナ域にカードを集中させた「黒赤」デッキをドラフトし、立ちはだかる対戦相手をすべて打ち倒した。第3回戦では、「赤白恐竜」をドラフトした前世界王者セス・マンフィールド/Seth Manfieldをも破った。
カルカノのデッキで特に目立つのは、4枚投入された《向こう見ず》だ。3枚採用した《立ち枯れの守り手》をはじめとする軽量クリーチャーと組み合わせることで、序盤から極めて素早い攻勢を実現させたのだ。確かに、マンフィールドとの戦いにおいてもカルカノは序盤から3/3飛行で攻撃を始めており、さらにマンフィールドが持つ解答は《帆凧の掠め盗り》で追放していた。カルカノは、ダメージ・レースを完全に支配したのだ。
その試合後、私はカルカノにドラフトの感想を尋ねた。「1パック目から《聖域探究者》が出ました。『白黒吸血鬼』は好みの戦略でしたが、でもその後すぐに白は空いていないとわかって、別の色に行かなくちゃと思ったんです」
「3手目に《セイレーンの嵐鎮め》をピックしたものの、青の流れは良くありませんでした。だから赤のカードを集め始めました。その後遅い順目で《凶兆艦隊の船長》が流れてきて、そのパックの最後に《向こう見ず》も来ました。2パック目の初手は《深海艦隊の扇動者》です。この環境では2マナ域のクリーチャーが必須ですから。その後はオーラ呪文をかき集めました」
カルカノは一体どれだけ《向こう見ず》が好きなのか?「大ファンですよ。いつでも絶対使うとまでは言いませんが、今回のデッキでは大活躍です。軽量クリーチャーをしっかり用意できれば、《向こう見ず》のようなカードの威力が上がるんです」
序盤のカードを優先してコストの重いカードの使用を避け、集めたキー・カードをしっかりと活かす。それによりカルカノは一貫したデッキを組み上げることに成功し、対戦相手が体勢を整える前に圧倒することができた。こうして彼は、全勝スタートを切ったのだ。
ジョシュ・アター=レイトンの場合
9 《森》 8 《島》 -土地(17)- 2 《クメーナの語り部》 1 《ジャングルの探査者》 2 《深根の戦士》 2 《見習い形成師》 1 《イクサーリの卜占師》 1 《アゾカンの射手》 1 《セイレーンの見張り番》 1 《蔦形成師の神秘家》 1 《水罠織り》 2 《嵐を変容する者》 1 《翡翠の守護者》 -クリーチャー(15)- |
2 《潜水》 1 《選択》 2 《川守りの恩恵》 1 《見張りによる消散》 1 《創発的成長》 1 《川の叱責》 -呪文(8)- |
1 《水没した地下墓地》 1 《廃墟の地》 1 《継ぎ当ての翼》 1 《凶兆艦隊の貯め込み屋》 1 《繁雑な火炎砲》 2 《取り消し》 1 《目隠し霧》 1 《深根の水域》 1 《激情の猛竜》 1 《航海士の喪失》 1 《海賊のカットラス》 1 《鮮血の秘儀》 1 《破砕》 1 《源流の歩哨》 1 《真っ二つ》 1 《輝く報復》 1 《棘尾ケラトプス》 -サイドボード(18)- |
殿堂顕彰に選ばれたジョシュ・アター=レイトンは、『イクサラン』ドラフトにおける大切なこととして「空いている部族」を見つけることを挙げた。どの部族でも、空いているならやるべきだ、と。今回のドラフトでは、彼は「青緑マーフォーク」デッキを組み上げ、ドナルド・スミス/Donald Smithとの全勝をかけた戦いを制した。スミスのドラフト・デッキも同じく「青緑」だったが、それはマーフォークと海賊を組み合わせたものであり、アター=レイトンほどひとつのテーマに集中したものではなかった。
アター=レイトンのデッキは、マーフォークの部族シナジーを徹底的に追求したものだった。デッキ内のほとんどのマーフォークが他のマーフォークに特定の能力や+1/+1カウンターを与えるものであり、その上でさらに部族を強化する《川守りの恩恵》も2枚搭載されている。
アター=レイトンのシナジーの追求はこれに留まらない。彼は《嵐を変容する者》と《水罠織り》を組み合わせ、「戦場に出たとき」の能力を再利用できるようにしている。実際、この組み合わせはドナルド・スミスとの戦いで2度も発揮された。アター=レイトンは《風と共に》がエンチャントされた《難破船あさり》を長時間拘束し、ブロックされないクリーチャーによる攻撃でライフ・レースを制したのだ。また別のゲームでは、アター=レイトンが初手にピックした《川の叱責》が勝負を決めた。アター=レイトンいわく、「このセットで最強の1枚」とのことだ。
ボム・レアで好調なスタートを切ったアター=レイトンは、2手目で《翡翠の守護者》ではなく《怒り狂う長剣歯》を優先した。「《怒り狂う長剣歯》が《川の叱責》と一緒に使えないことはわかっていましたが、強力な方を取りました。空いている部族をやるためなら、初手にピックしたボムを諦めることも必要です。そうしないと、デッキに採用できるカードが足りなくなるでしょう」
アター=レイトンはその後も赤のカードをピックしたが、4手目か5手目に《蔦形成師の神秘家》が流れてきたところで「マーフォーク」が空いていることを察知した。「そこから舵を切りました。隣もマーフォークをやっていたため2パック目はひどい有様でしたが、3パック目が完璧でした」結果的に、アター=レイトンのドラフト・デッキはこの卓を滑らかに泳ぎ切ったのだ。
「取りたい戦略は吸血鬼かマーフォークですね。強力なアンコモンを揃えることができれば、マーフォークが最強の部族だと思います。ですが他の戦略を完全に切り捨てることはしません。私の基本方針は、あくまで『空いている部族に行くこと』です。どの部族でも、空いていると判断すればそこへ向かいます」
ウィリアム・ジェンセンの場合
9 《山》 8 《平地》 -土地(17)- 2 《巣荒らし》 1 《オテペクの猟匠》 1 《ティロナーリの騎士》 2 《身勝手な粗暴者》 2 《縄張り持ちの槌頭》 1 《激情の猛竜》 2 《鉄面連合の海賊》 1 《結束した角冠》 1 《荒くれ船員》 1 《薄暮の賛美者》 1 《日の出の追求者》 1 《太陽冠のハンター》 -クリーチャー(16)- |
1 《吸血鬼の士気》 2 《確実な一撃》 1 《軍団の裁き》 1 《崇高な阻止》 1 《薄暮軍団の弩級艦》 1 《決別の砲撃》 -呪文(7)- |
1 《根縛りの岩山》 2 《宿営地の守り手》 1 《苛立ち》 1 《岸の守り手》 1 《川守りの恩恵》 1 《トカートリの儀仗兵》 1 《目隠し霧》 1 《押し潰す梢》 1 《秘儀司祭の杯》 1 《軍団の征服者》 1 《軍団の裁き》 1 《女王の任命》 1 《若返りの儀式》 1 《かき回すゴブリン》 1 《風雲艦隊のスパイ》 1 《原初の呪物》 1 《太陽鳥の祈祷》 1 《船団呑み》 -サイドボード(19)- |
1998年にプロツアー・デビューを果たしプロツアー・トップ8入賞5回を誇るウィリアム・「ヒューイ」・ジェンセンは、間違いなくこの場にいるプレイヤーの中で最も経験豊富だろう。フィーチャー卓でドラフトを行った彼のピックはドラフト・ビューワーで確認できる。右隣に座ったマーティン・ミュラー/Martin Mullerと狙う色が被り難しいドラフトになったが、ジェンセンはその中でもなお見事な腕前を見せた。
第3回戦では、《不吉な旗艦》や《深海艦隊の船長》といったレアに支えられたハビエル・ドミンゲス/Javier Dominguezの「青黒海賊」デッキを破り、初日ドラフト・ラウンド全勝を達成したのだ。なお、その試合の模様はこちらから視聴できる(英語)。
ジェンセンはのちに語る。「ハビエルとのゲームは心からマジックを味わえる最高の戦いだった。全軍で攻撃するか一切攻撃しないか、毎ターン駆け引きが生まれたし、攻守が目まぐるしく入れ替わった。やがてライフ・レースに発展し、本当に良いゲームを楽しめたよ」
ドラフトでは、ジェンセンは《縄張り持ちの槌頭》を初手にピックすると2手目で《弱者成敗》か《ティロナーリの騎士》かの2択に直面した。
「ここでは《ティロナーリの騎士》をピックした。《縄張り持ちの槌頭》へ繋げる2ターン目の動きとして最高のカードだ。初手を鑑みると《弱者成敗》の方が欲しいところだが、シナジーは優先する価値があるし、個人的にアグレッシブなデッキが好きだからね。それから、世界選手権のような大会では多少のリスクは負うべきだ。この環境ではどのシナジーも強力だから、シナジーを優先する意味があるんだ」
「1パック目は赤のカードをひたすらに集めた。赤は空いていると思ったからね。この環境のドラフトで驚くほど強い《決別の砲撃》も6手目に取れた。白は空いていないと思っていたが、2パック目の2手目にもう1枚《縄張り持ちの槌頭》をピックできた。このカードを2枚搭載できるなら、大半が赤のカードで白のカードはわずかでも十分だ。《縄張り持ちの槌頭》はこの環境で実に優れた1枚だからね」
3パック目の優秀なカードは隣のマーティン・ミュラーがピックしていったため、何枚か数合わせのカードを採用せざるを得なかったジェンセンだが、それでも彼のデッキは満足のいくものになった。こうして、同じ2色をドラフトするプレイヤーを同卓に抱えながらも、ジェンセンは見事全勝を果たしたのだ。
この環境における色の選択の重要性について尋ねると、彼ははっきりと答えた。「色は重要じゃない。『部族』だ。同卓のプレイヤーが同じく白をドラフトしていても、あちらが吸血鬼でこちらが恐竜なら問題ない」
ジェンセンの挙げた例では強力な除去を流すわけにはいかず、部族の半分だけ空いているという奇妙な状況に陥る可能性もあるが、それでも今大会のドラフト全勝者たちの話から判断するに、「空いている部族を見つける」のが『イクサラン』ドラフトの鍵であることは間違いないだろう。
RESULTS 本大会の対戦結果・順位
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