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マジック:ザ・ギャザリング世界選手権2015

観戦記事

準決勝: Paul Rietzl(アメリカ) vs. Owen Turtenwald(アメリカ)

吉川 祐輔
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Chapman Sim / Tr. Yusuke Yoshikawa

2015年8月30日


ポール・リーツェル/Paul Rietzl(世界ランキング3位/ハンガーバック・アブザン)vs. オーウェン・ターテンワルド/Owen Turtenwald(世界ランキング10位/アブザン・コントロール)(スタンダード)

 今週末に臨む前、ポール・リーツェルはこう語っていた。プレイヤーの中でも、最も決勝で対戦したい相手はオーウェン・ターテンワルドであると。その予言は実現しなかった。なぜなら、彼らは準決勝で相対することになったのだから。

 ターテンワルドは言っていた。スタンダードこそが、王者を決めるために最も重要なフォーマットであると。そこで上手くいけば、見返りは他のフォーマットより際立って大きい。リーツェルも同様のことを述べていて、モダンやリミテッドに比べて多くの時間をスタンダードに費やしてきたという。

 その注力にもかかわらず、彼らはスタンダード部門では平均的な成績、つまり金曜日の4戦のうち2勝を挙げるにとどまった。しかしながら、この世界選手権で彼ら自身初となるトップ4を決めるには十分だった。そして今、彼らは対面している。2点のプロ・ポイント、決勝の座、さらに2015年世界王者への挑戦権を懸けて!

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勝負はポール・リーツェルの「ハンガーバック・アブザン」が制するか、それともオーウェン・ターテンワルドの「アブザン・コントロール」か?
それぞれのデッキ

 双方のプレイヤーがアブザンの必須パーツ、《包囲サイ》《アブザンの魔除け》や、それらを唱えるための《砂草原の城塞》、『テーロス』の占術土地を取り揃えている。しかし、彼らのゲームプランはわずかに違っていた。

 リーツェルの「ハンガーバック・アブザン」デッキは、非常にスピーディというわけではないものの、積極策を取ることに長けた構築になっている。その場合、ターテンワルドはその攻撃を「アブザン・コントロール」の各種除去で遅くしていくことがゲームプランとなる。こうなると消耗戦は間違いなく、双方がわずかなカード・アドバンテージを求めて争うことになるだろう。

 消耗戦を生き残るのはどちらとは言いがたい。双方とも最終兵器として《太陽の勇者、エルズペス》を備え、中終盤における一種の回復力を担うカードも持ち合わせているのだ。

 ターテンワルドは《棲み家の防御者》を4枚入れており、一方のリーツェルは2枚のみである。リーツェルの《英雄の導師、アジャニ》は完璧な役割を果たすだろうし、そのためターテンワルドは《英雄の破滅》の扱いに気を使う必要があるだろう。

 リーツェルのメインデッキにある《ドロモカの命令》は2枚のみであるため(それもサイドボードに落とされるであろうということも含めて)、ターテンワルドの《クルフィックスの狩猟者》は生き残りやすいと思われる。これは、長い目で見て彼にアドバンテージをもたらすだろう。《巨森の予見者、ニッサ》もまた、長引いたゲームで有効になるカードのひとつだ。

 《衰滅》もまた、ターテンワルドの有利に働く。リーツェルが保険として《搭載歩行機械》を入れていてもだ。この邪魔な構築物はさほど脅威にならないことがわかっている。リーツェルが何とかして3個目の+1/+1カウンターを置き、《アブザンの魔除け》で守れる態勢になれば話は別だが。

ゲーム展開

 ターテンワルドが予選ラウンドの成績により、第1ゲームで先攻を選ぶ権利を得た。彼は迷いなく初手7枚をキープした。これは素晴らしい手札であると見える。リーツェルは少しの間考えていたが、結局初手をキープすることに決めた。

 2回にわたる《ラノワールの荒原》経由の《思考囲い》でターテンワルドのライフが14になることから始まり、リーツェルの《羊毛鬣のライオン》《先頭に立つもの、アナフェンザ》《太陽の勇者、エルズペス》と土地4枚が明らかになった。まず序盤の圧力となる《羊毛鬣のライオン》が、次に《太陽の勇者、エルズペス》が捨てさせられた。そして、ターテンワルドの《巨森の予見者、ニッサ》が続く。

 《先頭に立つもの、アナフェンザ》が予想通りリーツェルの第3ターンに登場したが、《残忍な切断》で即除去された。ターテンワルドの側に変異が続き、《巨森の予見者、ニッサ》が2回目の攻撃に向かう。

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経験豊富なリーツェル。ここでそれが活かされるか?

 リーツェルはライフを14としながら、燃料補給を求めて《アブザンの魔除け》を唱えた。2枚目の《先頭に立つもの、アナフェンザ》が現れたが、すぐにターテンワルドは《棲み家の防御者》を表向きにすると《残忍な切断》を再利用しようとした。

 ここでリーツェルは自身の《残忍な切断》で対応する。結果、《巨森の予見者、ニッサ》が墓地へ、そして追放領域に送られた。これはターテンワルドの手札にある《黄金牙、タシグル》を考慮したと思われるプレイだった。案の定、この動きによってターテンワルドは《包囲サイ》と《黄金牙、タシグル》の両方を次のターンに唱えられなくなった。土地は6枚、墓地には3枚のカードしかなかったのだ。

 とはいえ《包囲サイ》である。

 その誘発型能力、さらに2回にわたる《棲み家の防御者》の攻撃で、リーツェルのライフは4に落ち込んだ。クリーチャーに対処できるカードは《英雄の破滅》しかなく、それぞれがサイドボードに手を伸ばすことになった。

 ターテンワルドは《龍王ドロモカ》《究極の価格》《クルフィックスの狩猟者》を1枚ずつと《思考囲い》4枚すべてを抜き、《勇敢な姿勢》2枚、《骨読み》2枚、《対立の終結》2枚、《精霊龍、ウギン》1枚を入れた。

 リーツェルは《ドロモカの命令》2枚、《先頭に立つもの、アナフェンザ》2枚を外し、《自傷疵》《英雄の破滅》《黄金牙、タシグル》《責め苦の伝令》を1枚ずつ加えた。

 第2ゲーム、双方のプレイヤーは最初の2ターンをアブザンのマナ基盤構築に費やし、それぞれが3色すべてを揃えた。ターテンワルドの初動《巨森の予見者、ニッサ》がさらなる《》をもたらし、リーツェルは《アブザンの魔除け》で2枚引いた。

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長きにわたって頂点での勝利を求めてきたターテンワルド。それが今日になるのだろうか?

 リーツェルの《包囲サイ》は速やかに《アブザンの魔除け》で追放されたが、《羊毛鬣のライオン》と1/1の《搭載歩行機械》で戦線を立て直した。さらに《自傷疵》で《巨森の予見者、ニッサ》を、《英雄の破滅》で《包囲サイ》を除去して圧力をかけ続ける。これでターテンワルドは《衰滅》を使わざるを得なくなり、リーツェルには2体の飛行機械・トークンという戦力が残るのみで一安心となった。

 しかし、リーツェルの追撃は《太陽の勇者、エルズペス》と《英雄の導師、アジャニ》。ターテンワルドの手に余るのは明らかだった。

 《胆汁病》で兵士・トークン3体を除去し、(《棲み家の防御者》経由で墓地から戻した)《衰滅》で時間は稼ぐものの、ターテンワルドは悩みの種である2人のプレインズウォーカーを除去する方法が見つからない。

 リーツェルが《太陽の勇者、エルズペス》の紋章を得るに至り、ターテンワルドはもう十分だと判断したのだった。

 遅れをとりたくないターテンワルドは第3ゲームで先攻を選んだ。リーツェルがこのマッチで初めてのマリガンを選び、6枚を選んだ後に間違いなく占術を行なった。

 リーツェルの《羊毛鬣のライオン》が即座に現れ、ターテンワルドが《クルフィックスの狩猟者》と《包囲サイ》で迎え撃つ。《英雄の破滅》2連発で《羊毛鬣のライオン》の道が切り開かれ、2回の攻撃が通ってターテンワルドはライフ14。リーツェルが5枚目の土地に届きそうなところで、ターテンワルドは《羊毛鬣のライオン》が「破壊不能」「対処不能」になる可能性を避けるため、《英雄の破滅》を唱えることを決断した。

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選択肢を吟味するリーツェル

 代わって《真面目な訪問者、ソリン》が現れ、リーツェルは吸血鬼・トークンを生成してターテンワルドの2体の変異に立ち向かわせることにした。この2体の《棲み家の防御者》は、ターテンワルドの燃料をしばらく確保してくれることになる。

 戦闘の助けにするため、リーツェルは2/2の《搭載歩行機械》を送り出し、《真面目な訪問者、ソリン》の1番目の能力で全軍を+1/+0した。これでパワー3のクリーチャーがいることになって、「大変異」した《棲み家の防御者》が2体来ても1体を防ぐことが可能になった。

 だが、ターテンワルドの第7ターンは圧巻だった。

 《巨森の予見者、ニッサ》を出して7枚目の土地を持ってくると、彼女を即座に変身させる。《精霊信者の賢人、ニッサ》が〈目覚めし世界、アシャヤ〉を呼び出し、それでもターテンワルドには両方の《棲み家の防御者》を表向きにする4マナが残されている。これで、《包囲サイ》と《英雄の破滅》を墓地から拾いながら、《真面目な訪問者、ソリン》と《搭載歩行機械》を打ち倒すことに成功したのだ。

 《搭載歩行機械》の陥落により、リーツェルには航空戦力として吸血鬼1体と飛行機械2体が残された。さらにターテンワルドの《包囲サイ》《棲み家の防御者》、そして4/4エレメンタルに持ちこたうる《包囲サイ》も持っていた。だが、防衛戦はあまりにもろく、ターテンワルドが回収した《英雄の破滅》を考えればなおのことだった。

 リーツェルは〈目覚めし世界、アシャヤ〉に《究極の価格》を当てて7点を受け、これで双方のライフが7となった。ターテンワルドは飛行クリーチャーから4点を受けて《包囲サイ》の能力で負ける可能性を避けて、安全策として《衰滅》でリーツェルの戦線を一掃し、《包囲サイ》が無傷で残された。

 これにリーツェルは《英雄の導師、アジャニ》で応え、《黄金牙、タシグル》を見つけ出すと、残っていた土地1枚と墓地のカードを大量に「探査」することでこれを唱えた。これで《包囲サイ》を迎え撃ったが、戦闘後《黄金牙、タシグル》に《胆汁病》を、《英雄の導師、アジャニ》に《英雄の破滅》を撃たれると、何も残らなかった。

 《包囲サイ》は続くターンもレッドゾーンを突進し、さらなる《包囲サイ》がターテンワルドの手札から現れると、リーツェルの最後のライフは吸い尽くされたのだった。

 リーツェルは追い詰められ、これを覆すには残る2ゲームを連取するしかなくなった。さもなくば、2015年の世界王者になるという彼の夢は散ってしまう。

 不運にも、彼は再びマリガンを強いられた。緊張のさなかにあり、それが比較的新しいルールであることが災いして、リーツェルは占術を忘れてしまった。幸いにして、それで痛手を受けることはまったくなかった。なぜなら、ライブラリーの一番上のカードはいずれにせよ欲しいものだったということが、第1ターンの《静寂の神殿》でわかったからだ。

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集中を保つターテンワルド

 リーツェルの最初の《羊毛鬣のライオン》は《胆汁病》に遭ったが、2枚目はターテンワルドの《巨森の予見者、ニッサ》とすれ違いながら攻撃を通すことができた。

 4枚目の土地を置けなかったため、リーツェルは《アブザンの魔除け》で探しに行ったが、うまく行かなかった。ターテンワルドはリーツェルのマナ不足につけこんで、《巨森の予見者、ニッサ》の攻撃後に《包囲サイ》を放つ。

 リーツェルのライフは今や9しかなく、きわめて速いゲームになりそうだった。幸い、リーツェルはアンタップ状態で出せる土地を引き込み、自身の《包囲サイ》を出して盤面をわずかに取り戻した。

 ターテンワルドは《包囲サイ》を《残忍な切断》したが、リーツェルも《勇敢な姿勢》と《羊毛鬣のライオン》で応える。

 しかしながら、勝負は終わりを迎えそうだった。ターテンワルドが6枚の土地すべてをタップして《太陽の勇者、エルズペス》を戦場に叩きつけたのだ。これは最もタフなライオンといえど、支えきれるものではない。

 《英雄の破滅》を引き込めなかったことで、《太陽の勇者、エルズペス》を倒すエレガントな方法はリーツェルにはなかった。さらに悪いことに、ターテンワルドは7枚目の土地をプレイして《巨森の予見者、ニッサ》を変身させたのだ。これで、終わりなき兵士・トークンの軍勢と《精霊信者の賢人、ニッサ》と2枚の《クルフィックスの狩猟者》からよどみなく流れ込むカードによってリーツェルが押し切られるのは時間の問題に見えた。

 ターテンワルドのもとにいる2人のプレインズウォーカーを脅かすべく、リーツェルは「強襲」した《風番いのロック》を呼び出し、+1/+1カウンターを3個置いて6/7の鳥・トークンを作り上げた。しかし、それにもターテンワルドは《勇敢な姿勢》と《英雄の破滅》を用意しており、リーツェルは握手を求めるしかないのだった。

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「決勝頑張れよ、相棒」と伝えるリーツェル
オーウェン・ターテンワルドがポール・リーツェルを3勝1敗で下し、世界選手権2015の決勝に進出!
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RESULTS

対戦結果 順位
14 14
13 13
12 12
11 11
10 10
9 9
8 8
7 7
6 6
5 5
4 4
3 3
2 2
1 1

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