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マジックフェスト・名古屋2019

戦略記事

デッキテク:モリカツにオーコ攻略の秘策あり!

Moriyasu Genki

 マジックの「攻略本」のようなポジションでありたい。

 そう話す元・世界王者(世界選手権2005優勝)、森 勝洋。通称モリカツ。

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 しばらくマジックの競技シーンから離れていたが、森は最近、MTGアリーナでのスタンダード・ランキング1位を取るなど、マジックへの思いを再燃させていた。

 そのモリカツが今回のグランプリ・名古屋に持ち込んだデッキは、アーキタイプとして呼ぶのであれば「《パンくずの道標》入りジャンド・サクリファイス」。

 「《王冠泥棒、オーコ》が支配している」といって過言でない環境で、モリカツは《王冠泥棒、オーコ》を使う側ではなく《王冠泥棒、オーコ》に立ち向かう側のデッキを用意した。

 前環境の「ケシス・コンボ」のように突如現れ、そしてモリカツが自らの記事で周知したことで一気に今大会のメタゲームの一角に食い込んできたこのデッキは、一体どのような経緯で作成されたのか。

森 勝洋 - 「ジャンド・サクリファイス」
グランプリ・名古屋2019 / スタンダード (2019年11月2~3日)[MO] [ARENA]
4 《
2 《
1 《
4 《草むした墓
4 《踏み鳴らされる地
4 《血の墓所
1 《ロークスワイン城
2 《寓話の小道

-土地(22)-

4 《金のガチョウ
4 《大釜の使い魔
3 《楽園のドルイド
4 《波乱の悪魔
2 《残忍な騎士
3 《意地悪な狼

-クリーチャー(20)-
4 《魔女のかまど
4 《むかしむかし
4 《害悪な掌握
4 《パンくずの道標
2 《ゴルガリの女王、ヴラスカ

-呪文(18)-
2 《残忍な騎士
2 《打ち壊すブロントドン
2 《夏の帳
4 《アングラスの暴力
2 《軍団の最期
2 《炎の職工、チャンドラ
1 《戦慄衆の将軍、リリアナ

-サイドボード(15)-

モリカツ「見た目は弱そうなんだけど、回したら実は強いじゃんって思ってもらえれば嬉しいな。まず自分でデッキを作ろうというところから始まった。最近はインターネットでデッキリストをすぐ検索できるからコピーデッキから入る人も多いけど、俺は『デッキの組み方』は格(いたる)さんから教わっているから。組めるから、組むよ」

 モリカツが格さんと呼ぶ人物。石田 格。夭折した天才は、素晴らしい競技成績だけでなく日本国内へのプロ制度の導入を果たすなど、「マジック」という業界自体に多大な貢献を果たした偉大な人物だ。

 モリカツは石田の生前、藤田修とともに組んだチームでグランプリ準優勝(グランプリ・台北2001)を果たしている。友へのように、師への如く。彼への想いをデッキ構築という手法に乗せて天に伝えているかのように話した。

モリカツ「リミテッド・カードなんだけど可能性があると思って、《パンくずの道標》4枚から構築を始めて、残りの56枚を決めていくという形で組んでいった。フード(食物)・デッキには絶対勝とうと思って、次に決まったのは、《魔女のかまど》と《大釜の使い魔》。この3枚が揃うと、毎ターン実質2ドローが決まってリソースとライフレースで戦える。全体の6割7割はフード・デッキが占めると思っていて、そこに勝てるデッキを作ろうと思ったよ」

 《パンくずの道標》。食物と強烈なシナジーを発生させる反面、食物のもともとの能力で生け贄に捧げた場合は2マナと加えて1マナかかり、能力を機能させるのにマナがかかりすぎてしまうのがネックだが、《大釜の使い魔》を墓地から戦場に戻すためにはマナが不要のため、《魔女のかまど》が揃えば毎ターン食物を供給しつつ1マナでサイクルが回るようになる。

 『エルドレインの王権』リミテッドでは時折見ることのあったシナジーだが、スタンダードでもしっかりと通用すると見切ったのはモリカツの手腕によるところだろう。

モリカツ「《大釜の使い魔》と《魔女のかまど》を使うと、《波乱の悪魔》も強い」

 この3枚のシナジーは既存の「ラクドス・サクリファイス」もメインのエンジンとして採用されている部分だ。ただし、このデッキ全体の軸はあくまでゴルガリ(緑黒)であり、赤いカードはメインとサイド合わせても数枚程度に抑えられている。《大釜の使い魔》を含む黒の相方として、赤ではなく緑を主体とした理由もモリカツは語ってくれた。

モリカツ「この環境は、『シミック・フード』ももちろん同じなんですけど《金のガチョウ》を1ターン目に出すという動きが強いと思っていて。4枚の《むかしむかし》と合わせるとかなり1ターン目に出せる可能性は高いんですよね」

 環境を定義していると思われている「シミック・食物」や「スゥルタイ・食物」での《王冠泥棒、オーコ》ではなく、その初速を支える《金のガチョウ》にこそスタンダード攻略の鍵があると見出したモリカツ。

 《むかしむかし》+《金のガチョウ》のセットを採用した上で《大釜の使い魔》+《魔女のかまど》を併せて用意したことで、「シミックベースよりも強い《金のガチョウ》デッキ」を作り上げてみせた。

モリカツ「もともと《魔女のかまど》と《大釜の使い魔》はクリーチャー戦には強いので、プレインズウォーカーに負けないようにした。特に2ターン目《王冠泥棒、オーコ》というフード・デッキの最大風速に負けないようにプレインズウォーカー対策をたくさん積んでる。出たターンに絶対に対処する。《魔女のかまど》《大釜の使い魔》を揃えながら、相手のプレインズウォーカーには対応し続ける」

 メインには《害悪な掌握》4枚と《残忍な騎士》2枚。さらに《ゴルガリの女王、ヴラスカ》も2枚。サイドでは《アングラスの暴力》4枚、追加の《残忍な騎士》2枚と、合わせて16枚のプレインズウォーカー対策、もっと言うのであれば「《王冠泥棒、オーコ》と《世界を揺るがす者、ニッサ》への対策」を取っている。

 《王冠泥棒、オーコ》に負けないようにした、という表現は決して言い過ぎではないだろう。

 《金のガチョウ》、《楽園のドルイド》、《意地悪な狼》。食物デッキを支えるクリーチャー部分はこのデッキでも採用されている。

 「フード」かつ「サクリファイス」。それぞれの良いところを《パンくずの道標》という両方にまたがるキーカードを中心にして組み合わせたようだ。

モリカツ「フード以外のデッキ、特に『ティムール・荒野の再生』には、除去が使えないから少し不利ですね。エンチャント破壊も2枚しかないので、《荒野の再生》貼られたら好き放題されちゃうから、どうやっても有利にはならないかな。ただ少ないデッキだとは思っていて、それでもフードには無理なく勝てるようにしていて、これだけフードが多いからそこに寄せた構築にしてる。例えば相手が《金のガチョウ》《王冠泥棒、オーコ》《ハイドロイド混成体》みたいな動きをしてきても大丈夫。《世界を揺るがす者、ニッサ》からの《ハイドロイド混成体》からの《ハイドロイド混成体》は……厳しいね(笑)」

 「シミック・食物」が同型戦を制するように黒を足して「スゥルタイ・食物」へと変化したように、モリカツはさらにその「スゥルタイ・食物」をも「食べる」リストを1から練り上げた。明るく話すが、容易な作業ではない。事実かなりの時間を調整に費やしたとも話していた。その労力をかけた背景にはモリカツの自信と、想いがあった。

 『攻略本』みたいな形でみんなに情報を伝えていきたい。そして自分ならそれができると語るモリカツ。

モリカツ「事前に記事でみんなに伝えるのは決めていて、ただそれでネタが割れたからってメタられて負けるようなデッキじゃダメなんだよね。《世界を揺るがす者、ニッサ》が残って負けるとか、ライフ詰められて負けるとかそういうのを潰していって、1枚の不安もないくらいの75枚が完成してるよ。相手側がどういう風に立ち回らないといけないのか判断つきにくいのも、オリジナルの強みがあるかな。海外遠征とかでガッツリプレイしていく気はそんなにないけど、MTGアリーナの大会や、国内大会では裏方でやっていきたいな思ってるよ」

 新しいアーキタイプとしての《パンくずの道標》入り「ジャンド・サクリファイス」と、今後もデッキビルドを続けていくと公言するモリカツに今後も注目だ。

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RESULTS

対戦結果 順位
15 15
14 14
13 13
12 12
11 11
10 10
9 9
8 8
7 7
6 6
5 5
4 4
3 3
2 2
1 1

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