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マジックフェスト・京都2019

インタビュー

「ロンドン・マリガン」についての第一印象は?

Hiroshi Okubo

 マジックの歴史は常に変化とともにあった。革新的なカードの存在によってメタゲームが移ろうのも然り、トーナメントの方針が改善されていくのも然り。そして、ゲームの根幹をなすルールについての変化もその例に漏れない。

 2015年、プロツアー『マジック・オリジン』にて導入された通称「バンクーバー・マリガン」。これはマリガンを行ったプレイヤーはゲーム開始時に占術1相当を行うことができるようになるという変更だ。それ以前のマリガンルールではマリガンをしたプレイヤーへの救済措置はなく、手札が減ってしまったプレイヤーはゲーム中の不利を覆すことができないまま第1ターンの開始を待たずしてゲームの趨勢が決してしまうことも少なくなかった。

 この革新的な変更によって「土地を置くことさえできないままゲームが終わってしまう」といった展開は確実に減った。しかし、マリガンにはそれでもなおまだ変化の余地が残されていると判断されたようだった。

「あなたがN回目のマリガンを行うとき、あなたはカードを7枚引き、その後N枚のカードをあなたのライブラリーの一番下に望む順番で置く」

 これは記事で発表された新たなマリガンルール、「ロンドン・マリガン」の概要だ。あくまで4月のミシックチャンピオンシップ・ロンドン2019ならびにMagic Onlineで試験運用されるのみで、正式に採用されるかどうかはまだ決まってはいないようだが、もしもこのマリガンルールが正式に採用されるようならば実に刺激的な変更と言えるだろう。今以上に初期手札の事故の確率が軽減されることになるし、積極的にマリガンを選択できるようになるかもしれない。

 とはいえ、もちろんより整った初期手札を得やすくなるというのは弊害もある。コンボデッキは今以上に高い頻度で1ターンキルや2ターンキルを乱発するようになるかもしれないし、《虚空の力線》のようなカードとの相互作用についてもコミュニティの議論の的になっている。

 そこでこの記事では、ロンドン・マリガンがもたらす変化についてプロたちがどのような考えを持っているのか話を伺った。

渡辺 雄也(MPLプレイヤー)

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渡辺「DCGっぽいというか、よりいろんな層の人がプレイしやすくなる(ストレスを感じにくくなる)ような試みだと感じますが、やっぱり下の環境への影響が大きすぎるというのが正直な印象ですね。特定のキーカードに依存するデッキや、速いデッキにとってのメリットが大きすぎますから。極端な話ですが、たとえばモダンのトロンデッキなどはウルザランド3種、あるいはウルザランド2種+《探検の地図》を引くまでマリガンできますし」

――「たしかにそうですね。では、逆にスタンダードやリミテッドではいかがでしょうか?」

渡辺「スタンダードやリミテッドも、1ターン目や2ターン目の動きが重要になる単色のアグロデッキが安定しすぎてしまうんじゃないかな? と。そもそもマジックはマリガンしないように、あるいはマリガンしても戦えるように構築したりプレイするのも技術のうちだと思うので、マリガンの制約を軽くしすぎるのも考えものかもしれませんね」

 

高橋 優太(ゴールドレベル・プロプレイヤー)

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高橋「事故負けが減るのは間違いなくて、その点ではリミテッドが一番顕著に影響が現れると思う。スタンダードも同様かな。この2つについてはロンドン・マリガンのルールは絶妙なバランスを突いてるかもしれない。ただ、下の環境については明確にコンボ有利になりそうだね」

――「下の環境といえば、高橋さんはヴィンテージなどもプレイされていますよね。たとえばロンドン・マリガンがヴィンテージにも適用されるようになったらどうなるでしょうか?」

高橋「それはもうメタゲームが変わるかもしれないレベル、もしくは新たに制限カードが出るかもしれないね。たとえばヴィンテージのドレッジはこれまで《Bazaar of Baghdad》を引くためだけに手札が2枚になるまでマリガンするようなこともあったし、逆に2枚になったとしても《Bazaar of Baghdad》さえあれば勝てるようなデッキだった。もちろんドレッジ以外のデッキも同様に別次元の強さになると思うから、影響の大きさは他のフォーマットとは比較にならないよ」

 

ペトル・ソフーレク/Petr Sochurek(ゴールドレベル・プロプレイヤー)

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ソフーレク「新しいマリガンルール? 僕は好きだよ。特にスタンダードやリミテッドはもっと白熱したゲームができるようになるだろうね。ただ、モダン以下のフォーマットについては環境が変わるくらいの変化があるかもしれない」

――「モダン以下では環境が変わる、ですか。ロンドン・マリガンが試験運用されるミシックチャンピオンシップ・ロンドン2019のフォーマットはモダンですが、たとえばモダンはどうなっていくと思いますか?」

ソフーレク「今は『青赤フェニックス』がモダンのベストデッキと言われているけど、ロンドン・マリガンによって受けられる恩恵が比較的小さいから、相対的に弱体化することになるかもしれない。逆に『トロン』や『ドレッジ』のように、少ない手札でも戦えてキープ基準が明確なデッキは強化されることになるんじゃないかな? たぶんレガシーやヴィンテージも同じような感じだと思うよ」


 3人のプレイヤーに話を伺ったが、いずれも下の環境には大きな影響がありそうだと語っていた。ソフーレクはモダンの勢力図も変わりそうだと述べていたし、ヴィンテージにも精通している高橋はその変化について具体的な言葉で語ってくれた。ロンドン・マリガンによって特定のキーカードを探しやすくなるなら、たしかに環境に変化が起こる可能性は十二分にありそうだ。

 そんな中で、渡辺は「ストレスなくプレイできるようになりそう」とロンドン・マリガンに肯定的な姿勢を示した上で「マリガンはデッキ構築やプレイングでカバーするもの」であると述べていたのが印象的だ。一見ストイックすぎるようにも思えるが、マジックというゲームの本質を捉えた意見でもありそうだ。

 ロンドン・マリガンが正式に採用されることになるかどうか。その答えが出るのはまだ先のことになりそうだが、マジックの次なる変化の可能性に期待が高まる。

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RESULTS

対戦結果 順位
15 15
14 14
13 13
12 12
11 11
10 10
9 9
8 8
7 7
6 6
5 5
4 4
3 3
2 2
1 1

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