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マジックフェスト・京都2019
デッキテク:細川 侑也の「スゥルタイ・コンシード」
(この記事は1日目午前に取材したものです)
グランプリの対戦エリアを見渡すと、そこには史上まれにみるほど多様なデッキタイプが並ぶスタンダード環境があった。
トップメタとされる「スゥルタイ・ミッドレンジ」であっても、隣り合って対戦している方が珍しい。
そんな群雄割拠の時代において輝くものといえば……やはりデッキビルダーの存在をおいて他にないだろう。
そして、デッキビルダーといえば。
デッキリストには《アズカンタの探索》が4枚、《荒野の再生》が4枚……だが、肝心の《運命のきずな》はゼロ。
一見して異形とわかる、そんなデッキを持ち込んだプレイヤーがいた。
プロツアー初出場となるミシックチャンピオンシップ・クリーブランド2019では、サイドボードに《原初の呪物》を積んだ独創的な「シミック・ネクサス」を駆り、11勝4敗1分という好成績を収めていた男。
細川 侑也。
ここではそんな細川に、今回のグランプリ・京都2019における使用デッキ、「スゥルタイ・コンシード」についてのインタビューをお願いした。
――「(リストを見て) このデッキはすごいですね……まず、このデッキはどういった経緯でできたんでしょうか?」
細川「ミシックチャンピオンシップのとき、ゴールドレベル・プロのシャヒーン・スーラニ/Shaheen Sooraniがスゥルタイ・カラーで《運命のきずな》の入っていない《荒野の再生》コントロールを使っていて、2日目にデッキテクをとられていたんですが、それを見た原根 (健太) くんが『僕、初日にあのデッキと当たって負けましたよ。たぶんメインに全然クリーチャー入ってない感じですね』って言ってたんですよね。で、それを聞いて『確かにそのノンクリーチャーのコンセプトは強そうだな』と思ったので、自分で『こんな感じかな』と妄想して1から組み上げたんです」
細川「あとからスーラニのデッキを見たら、緑が濃いのと《ハイドロイド混成体》がたくさん入っていたりしてノンクリーチャーではなかったので、青黒メインのこの形はほぼオリジナルですね」
細川「そもそも僕はスタンダードで一番強いカードは《荒野の再生》だと思っていて、それをうまく使える形をずっと探していたんですよね。『シミック・ネクサス』は確かに強いですが、《荒野の再生》に依存しているのと単色アグロに弱いという弱点があって。最近ティムール《荒野の再生》というデッキも出てきましたが、《荒野の再生》への依存度が大きい点では一緒です。そこにきてこのデッキは、そういった問題点を解決した良いデッキだと自負しています」
――「スタンダードのメタゲームにおいて、どういった点が強みなんでしょうか?」
細川「まずどのマッチアップでも腐るようなカードがほとんどなく、全方位をメタれている点ですね。今のスタンダードのメタゲームは単色アグロ、スゥルタイ、ネクサス、コントロールと多様なアーキタイプに分かれていますが、《思考消去》や《悪意ある妨害》など、多くのカードがマッチアップの裏目なく相手とカードの交換ができるようになっています。マナ・カーブも2マナを頂点としてかなり軽く作ってあるので、単色デッキ相手にテンポが追いつかず呪文を打ち損ねるということもありません」
細川「また特にこのデッキの場合、アグロ相手に腐りがちなカウンターが、《荒野の再生》で行動回数が増えていることで腐りづらくなっているのが大きいですね。僕はコントロールデッキこそ《荒野の再生》を使うべきだと思っています。残ればリターンが大きいし、割られてもネクサスデッキと違って大して問題にはならないですからね」
細川「あとは、デッキリストが知られていないローグデッキであることも明確に強みだと思っています。MTGアリーナのおかげで試行回数が稼ぎやすくなったので、みんな既存のデッキ相手は密度濃く練習してきていると思うんですよね。ただそれだけに、いざローグに当たったときのアドリブの対応力は落ちていると思うんですよ。本来リアルの大会に出ていればそのへんは補われる部分ですが、MTGアリーナの流行により、ローグ相手にどういうサイドボードをすればいいかという訓練が疎かになっているのではないか……と、予想しました」
細川「たとえばこのデッキはよく『相手版《ヨーグモスの意志》』こと《記憶の裏切り》で勝つんですが、このカード誰も使ってなさすぎて、打ったらまず効果を確認されますからね(笑)」
――「なるほど。ベースはモダンにおいては《神秘の指導》との組み合わせで少し見られた、《荒野の再生》による行動回数の増加を生かした除去コントロールということになるかと思うんですが、そうなるとネクサスデッキ相手には相性が悪くなりそうですよね」
細川「そうなんです。それを解決するため、《漂流自我》を搭載しています。最初はメインに入っていましたが、《首謀者の収得》を入れればサイドに置いておくだけでメインから打てるのが良いですね」
細川「あとこのデッキを作っていて面白かったこととして、最初は《強迫》などで落とされることをケアして《首謀者の収得》を2枚入れていたんですが、リアルの大会に出たら偶然全く同じコンセプトでデッキを作っている人がいて、しかもその人は《首謀者の収得》を1枚《任務説明》に差し替えていたんです。『天才か!』って思って、その人に話を聞いて早速採用することにしました」
――「一見するとクリーチャーが横並びする相手には厳しそうに見えるのですが、そうでもないんでしょうか?」
細川「メインから《肉儀場の叫び》が3枚入っているので、意外となんとかなりますね。最近はスゥルタイも《野茂み歩き》を抜いた『オメガ・スゥルタイ』になってきたりしているので、このカードは実質《神の怒り》になることが多いです」
――「最後に、どうしてこのデッキは『スゥルタイ・コンシード』なんでしょうか?」
細川「対戦しているとあまりの妨害の手数の多さに相手が嫌になって投了するから、ですね(笑)」
――「ありがとうございました」
赤単・青単・白単という3種類の単色デッキに加えてスゥルタイと、多様な攻め方がある現スタンダード環境。
そこにおいて受けデッキは「そのどれかに対しては裏目になってしまうカード」を手札に抱えやすく、それと同時にフィニッシャーもある程度信頼できる枚数を採用しなければならない結果、その枚数差で負けてしまうことが多い。
だが、もしフィニッシャーを採用するスロットを最小限にし、裏目をすべてなくすことができたならどうだろうか?
細川が生み出した「スゥルタイ・コンシード」は、環境における受けデッキのソリューションとなるかもしれない。
3 《島》 3 《沼》 4 《湿った墓》 4 《水没した地下墓地》 4 《繁殖池》 2 《内陸の湾港》 4 《草むした墓》 2 《森林の墓地》 -土地(26)- -クリーチャー(0)- |
4 《アズカンタの探索》 4 《喪心》 4 《思考消去》 1 《暗殺者の戦利品》 1 《任務説明》 1 《否認》 4 《悪意ある妨害》 3 《肉儀場の叫び》 4 《薬術師の眼識》 4 《荒野の再生》 2 《ヴラスカの侮辱》 1 《首謀者の収得》 1 《秘宝探究者、ヴラスカ》 -呪文(34)- |
4 《正気泥棒》 2 《強迫》 2 《渇望の時》 2 《押し潰す梢》 1 《記憶の裏切り》 1 《漂流自我》 2 《最古再誕》 1 《探知の塔》 -サイドボード(15)- |
RESULTS 本大会の対戦結果・順位
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