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The Limits11
ドラフトピックレポート: 金子 真実
by 中村 修平
金子 真実というプレイヤーをご存知だろうか?
自身の就職による生活環境の変化と、元々金子が多趣味だったこともあって、2009年以降トーナメントシーンを引退。宣言通りほとんどマジックの場にも姿を見せなくなってしまったので、知らなくても当然かもしれない。
しかしその経歴は、チーム戦最後のプロツアー、2007年のサンディエゴで決勝ラウンドへと勝ち進み、翌々月のグランプリ・フィレンツェ(参加者1076人)では優勝するという偉業を達成、更に同年の世界選手権でも9位に入賞。プロクラブレベル6を獲得して、プロツアーレポーターのリッチ・ハーゴンをして
『日出づる国のライジングスター』
と呼ばれた、今大会でも屈指の実績保持者だ。
それだけでなく金子には『華』という訳ではないが、なんというか・・・そう、非常にユーモラスなエピソードを多数持っていることで知られている。
例えばロチェスタードラフトで開催された2005年プロツアー・名古屋では、1回目のドラフトを3連勝で駆け抜けぬけながら、次のドラフトでうっかり同卓のプロツアーチャンピオンにヘイトドラフトをカマしてしまい、壮絶な対抗ヘイトドラフトをされた挙句の3連敗で初日落ち。
かと思うと脳内構築のまま2ヶ月マジックに触っていない状態で海外グランプリに参戦し、トップ8入賞を果たしたり。
そういえばマジック史上初めてプロツアー決勝ラウンドで毒殺されたプレイヤーでもある。
ちなみに毒殺された瞬間、衝撃のあまりに発したある一言が、後に名言として広まり、関係者の手によってTwitterのハッシュタグとして加工されているところからも、金子の人気、人柄は推し量れよう。
その金子がイニストラード発売を機にマジックの世界へ帰ってきた。
本人曰く、
「ちょっとドラフトをしようかなくらいだったんですけど、気がつけば相当やってしまいました。マジック面白いっす」
それでいて筆者も取れなかったThe Limitsの権利まで取ってしまっているのだから流石である。
「僕みたいな雑魚が無様に負けるのなんて、見ていても全然楽しくないんで勘弁して下さい」
いやいや、お手並を拝見といこうか。
今回のリミッツ参加者は66人の為、多数の7人ポッドが発生している。
プレイヤーとしてみるならば7人ポッドは不戦勝が発生する可能性が高く、最低でも1勝2敗が確定していると旨みが多い。
金子が座る5番卓も7人ポッド、ちゃんとそこを引いているのはさすが金子であるが、1手目の濃さも流石は金子というべきものだった。
《禁忌の錬金術》、《ウルヴェンワルドの神秘家》、《静かな旅立ち》、《捕食》といった初手級のカードが並ぶ中、最後に覗いたレア枠には更に頭ひとつ抜けている《弱者の師》。
筆者としてはパックを開いてすぐ見えた《礼拝堂の霊》で決まりと思われたのだが、やはり最後に現れた《邪悪な双子》をかなり長い間見つめている。
結局、金子が選んだのはこの《邪悪な双子》。
いきなりピックが3色に跨ってしまったのだが、どういう意図があるのだろう。
それとも『双子』に対して筆者の知らない何か特別な思い入れがあるのだろうか。
一応除去の《飢えへの貢ぎ物》、《宿命の旅人》、《戦墓のグール》といった軽量なクリーチャーの中で金子が選んだのは、好きな人はそれこそ何かの宗教と思えるくらい好きという癖のあるカード、《不可視の忍び寄り》。
《肉屋の包丁》などハマれば強いカードだがギャンブル色が強いピックであるが、まあ金子も罹患者なのかもしれない。
てっきり《銀筋毛の狐》を取るのかと思われたのだが、後で金子に確認すると上のプレイヤーが白の両面カード《スレイベンの民兵》を取ったため、白から身を引いたということ。
イニストラードならではの判断。
その他候補としては《絞首台の守部》。黒は確定して2色目を探す形か。
他に候補としては《アヴァシン教の僧侶》くらい。
単純なカードの強さに加え、両面カードで自分が青というアピールができる点でも《礼儀正しい識者》に軍配。
《錯乱した助手》のような2マナ圏との選択だったが、カードパワーを優先してこちらにといったところか。
筆者としては《死の重み》《錯乱した助手》《鏡狂の幻》という順番だと思われたのだが、金子の選択は《鏡狂の幻》。
決め手となる飛行クリーチャーが欲しかったというのは解るのだが、低マナ域の確保はできているのだろうか?
《悪鬼の狩人》というコモン、アンコモン含めて白のトップクラスカードがあって白に後ろ髪引かれる気分ではあるが、こちらはこちらで青黒のトップコモン。
これについては文句なく。この手順で取れたのは僥倖。
《チフス鼠》が脇にあったのだが、《不可視の忍び寄り》との兼ね合いもあってのことか。
《マルコフの上流階級》もいるが、現状で金子のデッキに必要なのは2マナ以下のカード。この環境で2ターン目までに動けないのはそれだけで負けと言ってもよいくらい。
見た目以上に使い勝手が良い擬似除去カード。
黒をやっている限り、できれば1枚は欲しいカードをこの巡目で確保できたのは非常に美味しい。
2パック目の初手が《礼儀正しい識者》だったのが良い方向に作用したようだ。
黒の除去に青の飛行とドロー操作という王道デッキが形になりつつある。
後は足りない部分の補強、飛行クリーチャーの増強と低マナ域の確保さえできれば充分に3連勝を狙えるデッキになるだろう。
自身の両面は《ハンウィアーの砦守り》。だがすぐ右隣が《ルーデヴィックの実験材料》を見せたことから流れてくる期待は高まる。
初手として錬金術は青黒と方向性が定まっている今なら申し分ないもの。
次点はかなり落ちて《霊捕らえの装置》。
この《霊捕らえの装置》を、一時はそのまま取ってしまうのではないかというくらい気にかけていた姿が印象的であった。
予想通り、《ルーデヴィックの実験材料》が流れてきた、
しかし一緒に流れてきたのは全体を含めた青のトップカード、《カラスの群れ》。この展開に、ニヤニヤから一転、クネクネと身をよじり出した金子。筆者はピックを見ているからわからないでもないが、見た目完璧にただの変質者である。
まあ、それも含めて金子らしいでカタがついてしまうのではあるのだが・・・
《ランタンの霊魂》か《グール起こし》。
てっきりこの2枚のどちらかだと思っていたのだが金子の選択は《熟慮》。おそらく2マナ以下が足りないという判断だろう。
2手目で泣く泣く流した実験材料は下にあっさり回収されて、金子の顔がいい感じに歪む。
当たり前である。
取れるレベルの黒と青のカードがないパック。
ドラフトも終盤なのだし、一番使われたくないカードをカットするのは妥当なところ。
次点の《スカースダグの信者》はデッキ的に価値が低いので。
《霊捕らえの装置》を目にした際、金子がちょっと意外そうな顔をしたと筆者には思われたのだが、後から話を聞くと、1手目でかなり時間をかけたのは、この《霊捕らえの装置》が返ってくるかを検討していたらしい。
前後の挙動の不審さの裏腹で考えていることは考えている。流石。
ドラフトピックが終了した段階での評価としては、全体としてはデッキになっているもののところどころで足りないカードがあり、3-0にはやや厳しいかといったところ。 金子自身もそういう認識のようで、筆者が気になった箇所を尋ねにきた時は、ちょうど自身のピックについて再検討を重ねているところだった。 筆者がもっとも気になっていた1パック2手目の《邪悪な双子》と《礼拝堂の霊》については、《邪悪な双子》の方が半歩分、評価が上だったので自分内評価に従って最悪《弱者の師》を捨ててもいいやという形でピックしたとのこと。 細かい点については上記ピックレポートの方に挿入してあるのでそちらを参照して頂きたい。
最後にこれからの3ラウンドについて抱負を聞いてみよう。
金子 「今年の日本選手権で8位になった実力を見せてやりますよ。ゴメン、ウソデスバイクダサイ」
筆者 「はじめっから素直にそう言えば良いのに・・・。というか今年の日本選手権ってそもそも大阪に金子さんいたっけ?」
金子 「あ、ゲーム間違いました。スミマセン、ゴメンナサイ、バイクダサイ。」
いろんな意味で心配になる金子の近い将来はどちらだ。
→ Round 1: 金子 真実(千葉) vs. 山口 弘太郎(兵庫) へ続く。
1パック目
1手目 《弱者の師》
2手目 《邪悪な双子》
3手目 《不可視の忍び寄り》
4手目 《旅行者の護符》
5手目 《死の重み》
6手目 《マルコフの上流階級》
7手目 《吸血鬼の侵入者》
8手目 《村の食人者》
9手目 《死体の突進》
10手目 《夜の恐怖》
初手《弱者の師》から筆者の予想外の方向に転換したが、その試みは今のところ成功しているように思える。 7手目の《吸血鬼の侵入者》を獲得できたことは卓内での黒の人気の薄さ、そしてポジションの良さを物語っている。 2パック目以降は黒を確定として、補色を青か白のどちらにしようかといったところだろう。2パック目
1手目 《礼儀正しい識者》
2手目 《電位式巨大戦車》
3手目 《鏡狂の幻》
4手目 《禁忌の錬金術》
5手目 《夜の犠牲》
6手目 《幽体の飛行》
7手目 《戦墓のグール》
8手目 《感覚の剥奪》
9手目 《秘密を掘り下げる者》
10手目 《グール呼びの詠唱》
3パック目
1手目 《禁忌の錬金術》
2手目 《カラスの群れ》
3手目 《熟慮》
4手目 《霊炎》
5手目 《肉切り屋のグール》
6手目 《夜の犠牲》
3、4手目が厳しいものだっただけにここで2枚目の《夜の犠牲》を取れたことは大きい。7手目 《チフス鼠》
8手目 《霊捕らえの装置》
9手目 《硫黄の流弾》
こんな手順まで流れてくる《硫黄の流弾》を苦笑しながらカット。10手目 《歩く死骸》
《グール起こし》か《歩く死骸》か。 鶏を取るか、卵を取るかのおそらく最後の選択は、軽い方の《歩く死骸》。ドラフトピックが終了した段階での評価としては、全体としてはデッキになっているもののところどころで足りないカードがあり、3-0にはやや厳しいかといったところ。 金子自身もそういう認識のようで、筆者が気になった箇所を尋ねにきた時は、ちょうど自身のピックについて再検討を重ねているところだった。 筆者がもっとも気になっていた1パック2手目の《邪悪な双子》と《礼拝堂の霊》については、《邪悪な双子》の方が半歩分、評価が上だったので自分内評価に従って最悪《弱者の師》を捨ててもいいやという形でピックしたとのこと。 細かい点については上記ピックレポートの方に挿入してあるのでそちらを参照して頂きたい。
9 《沼》 8 《島》 -土地(17)- 1 《戦墓のグール》 1 《チフス鼠》 1 《秘密を掘り下げる者》 1 《歩く死骸》 1 《吸血鬼の侵入者》 1 《村の食人者》 1 《礼儀正しい識者》 1 《マルコフの上流階級》 1 《肉切り屋のグール》 1 《邪悪な双子》 1 《電位式巨大戦車》 1 《鏡狂の幻》 1 《カラスの群れ》 1 《霊捕らえの装置》 -クリーチャー(14)- | 1 《グール呼びの詠唱》 1 《死の重み》 2 《夜の犠牲》 1 《幽体の飛行》 1 《熟慮》 2 《禁忌の錬金術》 1 《死体の突進》 -呪文(9)- |
RESULTS 本大会の対戦結果・順位
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