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日本選手権2019
デッキテク:横川 裕太の緑青「カーン」ランプ ~キーカードは《保有の鞄》!?~
(※本記事は第5回戦終了時に取材したものです。)
日本選手権のスタンダード・ラウンドのゲームを見て歩いていると、見慣れないカードが置かれていた。
《保有の鞄》。もしかしたら、能力をしっかり把握していない人も多いかもしれない。
そんなカードをどう使うのか、使用者の横川 裕太にお話を伺った。
9 《森》 6 《島》 4 《繁殖池》 4 《内陸の湾港》 2 《神秘の神殿》 -土地(25)- 4 《ラノワールのエルフ》 4 《枝葉族のドルイド》 2 《楽園のドルイド》 4 《発現する浅瀬》 4 《茨の騎兵》 3 《裏切りの工作員》 4 《ハイドロイド混成体》 -クリーチャー(25)- |
3 《模写》 3 《大いなる創造者、カーン》 4 《世界を揺るがす者、ニッサ》 -呪文(10)- |
3 《紺碧のドレイク》 1 《裏切りの工作員》 1 《隕石ゴーレム》 3 《大食のハイドラ》 1 《保有の鞄》 1 《異形化するワンド》 1 《不滅の太陽》 4 《幻惑の旋律》 -サイドボード(15)- |
――《模写》入りの緑青系ランプは時折見かけますが、構成が独特ですね。特に《保有の鞄》が印象的です。
横川「《保有の鞄》は、実はこのデッキのキーとも言える部分です。地味なんですが、発見した時は興奮しました(笑)」
――素晴らしいですね! では、まずはデッキの基本的なコンセプトからお聞かせください。
横川「基本的にはエレメンタル《模写》ランプです。《発現する浅瀬》を《模写》で増やし、大量のマナとカードで押しつぶします。
通常のリストとの最大の違いは、《運命のきずな》と《伝承の収集者、タミヨウ》が入っていないことです。これらのカードで山札を掘り進み、《運命のきずな》からの追加ターンを重ねることで勝つパターンが一般的なんですが、《運命のきずな》が単体だと強くないことが気になったんです。
このデッキには《アズカンタの探索》《荒野の再生》や各種のプレインズウォーカーのようなアドバンテージを得るカードが少なく、ターンを得ることでリソースを拡充できません。どこまで行っても『7マナの追加ターン』でしかありませんでした。
《運命のきずな》を撃ったとしても、土地やマナ・クリーチャーを引いてしまって何もできないパターンが多く、抜くことを決意しました」
――では、その解決方法として《運命のきずな》を抜き、入れたカードが……?
横川「《大いなる創造者、カーン》と《裏切りの工作員》です」
横川「《裏切りの工作員》は《模写》との相性が良いんです。そもそも《模写》の対象にしたいカードが《発現する浅瀬》4枚と《茨の騎兵》4枚の合計8枚しかありませんでした。数枚追加できるようになったのはうれしいですね。
あとは、《茨の騎兵》で墓地にちゃんと落ちてくれるカード(《運命のきずな》は墓地に落ちないため)であるというのも利点です。メタゲーム的にも、《隠された手、ケシス》デッキを倒そうとしてくる中速以下のデッキに対して非常に強いです」
――一方で、《大いなる創造者、カーン》は《隠された手、ケシス》デッキへの対策ですね。
横川「はい。最初は《墓掘りの檻》や《減衰球》のような置物で《隠された手、ケシス》デッキを対策したのですが、《時を解す者、テフェリー》で手札に戻されちゃって、全然だめだったんです(笑)。
メインにおいては、《大いなる創造者、カーン》で《隠された手、ケシス》デッキに勝ち、それ以外のデッキに対して《裏切りの工作員》が突き刺さります。アグロ・デッキに対しては、《茨の騎兵》+《模写》の動きを目指します。これが決まると、アグロ・デッキに突破されないラインが完成するんです」
――なるほど。
横川「《運命のきずな》を入れていた時から、《茨の騎兵》+《模写》の組み合わせでアグロ・デッキに勝てることはわかっていました。《運命のきずな》を抜いた分、《隠された手、ケシス》デッキと中速以下のデッキに勝てるように組めれば完璧だなと考えていたんです」
――そのために入れた《大いなる創造者、カーン》からサーチするカードは4種類ですね。1種類ずつ教えてください。
横川「『《隠された手、ケシス》デッキに強い』という触れ込みで、『エスパー・コントロール』と『グリクシス・コントロール』が現在勢力を伸ばしています。《保有の鞄》はそれらへの対策です。
まず、このデッキのサイドボードは、そもそもアグロ・デッキへの対策に寄っています」
――《幻惑の旋律》4枚、《大食のハイドラ》3枚、《紺碧のドレイク》3枚。確かにかなり多いですね。
横川「まあ、赤単のようなデッキに対して弱いので仕方がないんですけどね。このようにサイドボードを組むと、どうしても《ラノワールのエルフ》のようなコントロールに弱いカードが余ってしまいます。そうしたカードを引いても別のカードに変換できるように《保有の鞄》が入っているんです。
それから、《ハイドロイド混成体》でカードを増やした後の《思考消去》も辛いんですよね。強いカードの絶対数が少ないので、《ハイドロイド混成体》の除去に加えて《思考消去》で手札の一番強いカードを抜かれて負け、というパターンも多いんです。そうすると必要のないカードが手札に余るので、それらを変換する目的で使用しています」
横川「《不滅の太陽》は普通にプレインズウォーカー対策です。今日も『ジェスカイ・コントロール』相手に4体のプレインズウォーカーを出されたんですけど、これのおかげでなんとかなりました。
また、《隠された手、ケシス》デッキの勝ち筋を完全に封じる役割も持っています。《大いなる創造者、カーン》で《モックス・アンバー》を止めても、《神秘を操る者、ジェイス》で負けてしまうことがありますからね」
横川「《隕石ゴーレム》は、サイドボードからサーチできる《裏切りの工作員》のような立ち位置です。無色なので、《神々の思し召し》のプロテクションも効かないんですよ。重さは気になるんですけど、器用なので選択肢としてはアリかなと。緑系デッキのくせして《帰化》系のカードが1枚も入ってないので(笑)」
横川「《異形化するワンド》は《贖いし者、フェザー》デッキ対策です。実はこのデッキ、《贖いし者、フェザー》デッキにはあまり強くないんですよね。《異形化するワンド》ならプロテクションをすり抜けて除去ができるので、対策に良いよ、というのを友人から聞いて採用しました」
――わかりやすかったです。このデッキ、よく見るとコントロール・デッキへの対策が少ないんですね。
横川「《運命のきずな》が入っていたころから、もともとコントロール・デッキに対しては有利、少なくともあまり不利ではなかったんです。《発現する浅瀬》+《模写》のリソース勝負に、今のコントロール・デッキはついてこられないんですよ」
――《運命のきずな》が抜けて困ったことはありますか?
横川「もともと《運命のきずな》が必要になるマッチアップは《風景の変容》デッキくらいだったんですよね。今は《隠された手、ケシス》デッキの流行で数を減らしているので、あまり困っていないです。最悪、《裏切りの工作員》で《死者の原野》を奪う戦い方もありますしね」
――なるほど。
横川「《風景の変容》デッキに当たらなくなった今、あらゆるデッキに対して闘えるデッキに仕上がったと思います」
――では、苦手なデッキはありますか?
横川「……やっぱり、《贖いし者、フェザー》デッキです。《神々の思し召し》があまりにも強すぎるんです。こっちの決め技は弾かれるし、《贖いし者、フェザー》を止められるクリーチャーは全部緑なので、ブロックもできなくなっちゃいます」
――《贖いし者、フェザー》デッキとはどのように戦いますか?
横川「《世界を揺るがす者、ニッサ》のような重いカードをひたすら抜いて、全体的にデッキを軽くします。《茨の騎兵》、《発現する浅瀬》、《紺碧のドレイク》を《模写》で増やして戦いますね。このデッキ、回し始めてあまり時間が経っていなくて、ちょっと詰め切れていない部分があるんですけどね」
――実際にこの形を組み上げてからどれくらいプレイしているんですか?
横川「えっと……1週間くらいですね」
――1週間!
横川「《運命のきずな》入りのリストで出てボロ負けした数日後くらいですから……晴れる屋の環境名人戦(8月31日開催)の後、火曜日(9月3日)に完成しました」
――今日は9月7日なので(※取材当時)、1週間どころか、わずかに4日間でしたね(笑)
横川「完成してから初めての大型大会です(笑)。その割には感触が良いですね」
――本日の成績はどうでしょうか?
横川「初日のスタンダード・ラウンドを4勝1敗で終えられました」
――素晴らしいです。この後のドラフト・ラウンドも頑張ってください。
インタビューの後、横川は「自分を倒してくれる友人」が重要だと語った。
デッキ同士の相性を正しく見極めるには、忌憚なく意見を交わせる、信頼の置ける調整メンバーが必要だ。例えば《異形化するワンド》などは友人からのアドバイスで投入したとのことだし、《減衰球》が《贖いし者、フェザー》デッキにあまり効果的でないことも友人に教えてもらったという。
横川の緑青「カーン」ランプ。生後わずか4日ながら、各種のデッキを相手に正しくカードを選択できた結果、初日を4勝1敗の成績で終えることができた。
その構成は、「自分を倒してくれる友人」のおかげで生まれたと言う。
横川の快進撃。「生後5日目」となる日本選手権2日目も期待大だ。
RESULTS 本大会の対戦結果・順位
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