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日本選手権2019
第3回戦:行弘 賢(東京) vs. 後藤 洋昭(岐阜) ~ケシスを使う者 vs. ケシスを倒す者~
プレイヤー紹介
世界に32人しかいない「マジック・プロリーグ(MPL)」に参加するトッププロ・プレイヤー、行弘 賢。ワールド・マジック・カップ2018ではキャプテンとして日本を団体戦トップ8入賞へ導いた経歴も持つ。栄えある「日本王者」の称号を求めて、今大会に参戦していた。
従えるデッキは「4色ケシス・コンボ」。MTGアリーナの大会で突如として登場した、禍々しくも美しいチェイン(連鎖)コンボ・デッキは、その迫力と実力から一気にスタンダードのメタゲームの頂点に上り詰めた。ケシスを使うか、ケシスを倒すか。行弘は使う側を選んだ。
対する後藤 洋昭も長らく競技シーンでマジックを続ける強豪プレイヤーだ。リミテッド・フォーマットで開催された「The Limits08」ではトップ4に入賞しており、他のリミテッド大会の入賞経歴にもその名前を確認することができる。
後藤のデッキは「緑単タッチ黒」といえるデッキタイプのようだ。《鉄葉のチャンピオン》と《蔦草牝馬》という驚異的なアタッカーをメインにしたビートダウン・デッキ。それぞれのブロック制限能力で自然と戦闘を優位に進められる、見た目以上に器用なデッキだ。「黒」をメインカラーの1つに据えつつサイズの小さいクリーチャーも多い「4色ケシス・コンボ」にも、しっかりとそこは刺さっていく。ケシスを使うか、ケシスを倒すか。後藤は倒す側を選んだ。
行弘 賢 vs. 後藤 洋昭 |
ゲーム1
お互いマリガンからの6枚キープ。「最近の環境末期は、マリガンするデッキが多いですね」と言葉にした行弘に、後藤も「強い動きを求めることが多いですよね」と返す。
後藤 洋昭 |
始まったゲームは《生皮収集家》から《楽園のドルイド》と「ビートダウン」軸に攻め側として動き始めた後藤に対し、《迷い子、フブルスプ》から《モックス・アンバー》、《精励する発掘者》と「コンボ」軸を揃えていく行弘が耐えるという様相だ。
後藤が果敢にライフレースを仕掛け、ゲームの主導権を握っていく。《蔦草牝馬》を追加して成長させた《生皮収集家》のアタックを仕掛ける。手札に追加の《迷い子、フブルスプ》を持つ行弘はチャンプ・ブロックでこれを凌いだ後に2体目の《迷い子、フブルスプ》と《夢を引き裂く者、アショク》を続けてプレイして、《精励する発掘者》を誘発させていく。
《夢を引き裂く者、アショク》の能力も含めて、すべての「ライブラリー削り」の能力を自らに向かわせて墓地を急速に肥やす行弘。あとは《隠された手、ケシス》本体までどこかでたどり着けばコンボ・スタートの合図となりそうであったが、そうはさせじと後藤は止まらない。
《アーク弓のレインジャー、ビビアン》の[-3]能力で《精励する発掘者》を撃墜しつつ、《夢を引き裂く者、アショク》を落としてから行弘本体へとアタックを続ける後藤。《ドミナリアの英雄、テフェリー》のみを手札に抱える行弘は、横に並んだアタッカーたちを捌く呪文もマナも、耐えるためのライフも足りないことを確認するとゲームを畳んだ。
行弘 0-1 後藤
ゲーム2
2ターン目《万面相、ラザーヴ》の「諜報」で《モックス・アンバー》を墓地に送った行弘。続けて3ターン目《伝承の収集者、タミヨウ》の[+1]による宣言「《精励する発掘者》」では《害悪な掌握》を墓地に落としつつ1枚がヒットし、コンボ始動のためのパーツはもう残りわずかとなった。
ゲーム1に続いてマリガンを強いられた後藤も、《樹皮革のトロール》から《鉄葉のチャンピオン》を続けるが、この《鉄葉のチャンピオン》は《伝承の収集者、タミヨウ》の[-3]能力で《害悪な掌握》を墓地から拾われて対処され、脅威となりきれない。
示せるプレッシャーを減らした後藤だが、「行弘のキルターンまであとわずかな猶予しかない」と判断して、2体目の《樹皮革のトロール》と《楽園のドルイド》をプレイし、プレッシャーを高めていく。
しかしこの判断は、振り返れば事実と異なるものとなった。
行弘は2体目の《精励する発掘者》をプレイしたあと、《隠された手、ケシス》を示す。コンボ・スタートの合図だ。
- 歴史的な呪文が唱えられるたびに、2体の《精励する発掘者》によって4枚、墓地が肥える。
- 肥えた墓地から《隠された手、ケシス》によって2枚の伝説のカードを追放し、《モックス・アンバー》を唱えられるようにする。
- 墓地の《モックス・アンバー》を唱えることで墓地が再び肥える。戦場の《モックス・アンバー》がレジェンド・ルールによって墓地に再び置かれる。
- 再び《隠された手、ケシス》で他の2枚の伝説のカードを追放し、墓地に落ちた《モックス・アンバー》を唱えられるようにする。
大量の伝説カードで構成された「4色ケシス・コンボ」デッキは《モックス・アンバー》を大量に唱え直し、ライブラリーを大量に削り、《モックス・アンバー》によってマナを蓄え、フィニッシュに繋げるというのがコンボの基本の動きだ。
特に軽量の伝説カードである《迷い子、フブルスプ》を挟むことでカードを引き増し、プレイするカードそのものの選択肢も広げていく。《精励する発掘者》の対象を途中から相手に切り替えるだけで簡単にライブラリー・アウト勝ちができるし、《ケイヤの誓い》の使い回しや《神秘を操る者、ジェイス》による自らのライブラリー・アウトでの勝利も達成できる。
行弘はそんな「4色ケシス・コンボ」のお手本のような動きをし続けてみせる。《モックス・アンバー》が4周ほどもしたとき、後藤はたまらず「決まりますかね」と聞いた。「そうですね、ここから残りのランドが全部上だったとしても、決まりますね」と返す行弘。「自分のデッキも見られちゃいますもんね、じゃあ次行きましょう」と後藤が結んで、ゲーム2が幕を閉じた。
行弘 1-1 後藤
後藤「あそこから決まるとは」
後藤の悔恨が漏れる。後藤は「あとわずかな猶予しかない」と踏んでいたが、それは間違いで「猶予はなく、最後のターン」であった。後藤が《樹皮革のトロール》の展開との二択でプレイをためらったカードが最後に手に残っていた。《大いなる創造者、カーン》。
《モックス・アンバー》を起動できなくさせる《大いなる創造者、カーン》は、対ケシス・コンボにおいてタイミングによっては必殺となる1枚だ。
その「撃ち時」を見誤ってしまったことに対して、後藤はため息をついていた。
ゲーム3
ゲーム3は、お互いダブルマリガンまでもつれこむ。後藤は3ゲームともマリガンと付き合うことになり、「一度くらい7枚でマジックしたかった」と漏らした感想はごく自然なものだろう。同じくマリガンを続ける行弘にとっても嬉しいことではないはずだが、「これ(マリガン)もまたマジックですよ」と笑って返す。
ため息をもたらしながらもロンドン・マリガンで得た後藤の5枚の手札は、強い意志でマリガンを選択した結果が伴い、決して弱いものではない。1ターン目《ラノワールのエルフ》から2ターン目《鉄葉のチャンピオン》、3ターン目には土地こそ止まったが《楽園のドルイド》。手札には《アーク弓のレインジャー、ビビアン》も用意できていて、上々のスタートだ。
しかし行弘のビッグ・アクションがその後藤に襲いかかる。後手2ターン目《迷い子、フブルスプ》、そして3ターン目に2枚の《モックス・アンバー》を続け、(1枚を使い捨て)5マナを捻出する。《ウルザの殲滅破》。
土地の止まった後藤がアタッカーとマナ・クリーチャー2体を一方的に失うという、クリティカルな一撃となった。
行弘 賢 |
手札の少ない後藤は再展開に時間を必要とし、その間に行弘は《迷い子、フブルスプ》の出し直しや《時を解す者、テフェリー》でカードを引き増しつつ、《万面相、ラザーヴ》、《精励する発掘者》、そして《祖神の使徒、テシャール》を続々と戦場に送りこむ。
途中《隠された手、ケシス》が墓地に落ちると、《万面相、ラザーヴ》が「コピー能力」のスタンバイを始め、手札こそ枯れているが墓地というリソースを潤沢に活用する準備が着々と整っていく。
後藤も《樹皮革のトロール》から《アーク弓のレインジャー、ビビアン》と続けられたが、すでに行弘のもとにはコンボ・パーツの群れが揃っていて、[-3]能力で1体を落としても次ターンの行弘のアクションを止めることはかなわなかった。
行弘 2-1 後藤
ゲーム後
「ゲーム2のキルターンを見誤ったのが大きかった」と、《大いなる創造者、カーン》を行弘に示しながら、プレイの前後順で大きく試合が変わった可能性を示す後藤。
「出されてたら、止まってましたね」と行弘も頷く。「4色ケシス・コンボ」対策としてにわかに評価を高める《大いなる創造者、カーン》。もともとの構成的にもケシス・コンボとは十分にやり合える「緑単」ベースのデッキであれば一気に勝ちをもぎ取れることになる1枚となるのは間違いなさそうだが、展開との両天秤にかかりやすいのは仕方ないところだ。
後藤は次こそは、と《大いなる創造者、カーン》を持つ手に力を込めてケシス・コンボへの雪辱を誓っていた。「4色ケシス・コンボ」は今大会においてもトップクラスの使用率であり、おそらくは再び当たることにもなるだろう。そして今度こそは《大いなる創造者、カーン》も活躍の機会を見せるはずだ。
その後、「《ウルザの殲滅破》が強かったね」と語ったのは行弘だ。伝説のパーマネントになんら影響を及ぼさないのはメリットにもデメリットにもなる効果だが、自分は損害を受けず相手だけが一方的に全滅するという様子は、《神の怒り》の亜種カードのなかでもひときわ異質であり強力だ。
「4色ケシス・コンボ」の1枚1枚はほとんどがそうした「クセの強いカード」であり、それらがまとまると非常に汎用性の高いデッキとして完成している稀有なデッキだ。「なんとなく」使っても強い、しかし「100%使いこなす」のには非常に高い水準のプレイングスキルが要求されるデッキでもある。
トッププロ・プレイヤー行弘 賢が「100%の4色ケシス・コンボ」で日本選手権を勝ち進む。
RESULTS 本大会の対戦結果・順位
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