By 矢吹 哲也

　先日行われたプロツアー『破滅の刻』にてトップ８に入賞し、一躍世界にその名を知らしめた藏田 真太郎。今大会でも早速フィーチャー・マッチに呼ばれた彼は、落ち着いた所作で今日のデッキをシャッフルしていた。今や多くのプレイヤーの注目を集める彼だが、勢いそのままに今大会も制し、日本のマジック・シーンを先導する新たなスターの誕生となるだろうか。

　一方の冨澤は、昨年のグランプリ・千葉2016でグランプリに初参加して以来のプレミア・イベント参加であるという。普段は競技の場に立たない彼だが、かつての日本選手権の記事は好きで読んでおり、いつかこの舞台に立つことを夢見ていた。

　そして日本選手権は復活開催され、彼はその夢を果たすことになった。

　プロツアー・トップ８入賞者とのフィーチャー・マッチという最高の形で。

それぞれのデッキ

　試合後、熱戦を繰り広げた両者に今回のデッキについて尋ねると、藏田の口から驚くべきひと言が飛び出した。

「いや、実は今日使おうとしていたデッキを忘れてしまって」

　昨晩まではプロツアーでも使用した「赤黒アグロ」を使用するつもりだった藏田だが、今日会場でバッグを開けると、そのデッキがないことに気づいた。

　とんでもないアクシデントだがしかし、彼はいたって前向きだ。

「元々『王神の贈り物』デッキも候補に入っていて、最後まで『赤黒アグロ』とどちらを使うか悩んでいました。まあ最後に決断した方とは違ってしまいましたが、功を奏すればいいかな、と」

　そういうわけで、藏田のデッキはジェスカイ３色の「王神の贈り物」だ。

　対する冨澤は、現環境の速度に合わせ「赤青コントロール」を選択した。大振りな呪文が鍵となる藏田の「王神の贈り物」デッキに対しては有利にゲームを進められると思われるが、終盤の粘り強さも「王神の贈り物」デッキの怖さだ。

ゲーム展開

　先に動いたのは藏田。１ターン目に《査問長官》を繰り出すと、冨澤はそこへ《蓄霊稲妻》を撃ち込み除去する。しかしその後、藏田は《スレイベンの検査官》を３枚続けて展開！

　序盤の盤面を握った藏田はさらに《サヒーリ・ライ》を加え、アドバンテージ差を広げにかかった。しかしここで、冨澤の《破滅の刻》が藏田の盤面すべてを薙ぎ払う！

　手掛かり・トークンを生け贄にしてドローを進めながら、藏田は《歩行バリスタ》で盤面を立て直し始めた。続く藏田の攻撃に対し、冨澤は《奔流の機械巨人》で受け止める。

　２枚目の《査問長官》と《歩行バリスタ》を展開した藏田だが、《査問長官》は《削剥》で葬られ、さらに冨澤が放つ《天才の片鱗》はアドバンテージの優位をひっくり返した。

　《奔流の機械巨人》による攻撃を２度受け、藏田の残りライフは10点。盤面を盛り返そうと《発明の天使》を唱えた彼だが、しかし《検閲》と２枚目の《奔流の機械巨人》がこのゲームに蓋をしたのだった。

　第２ゲーム、冨澤は初手を見るなり「マリガン」と発声。６枚の手札でキープすると、占術で見たカードもライブラリーの底へ送った。

　藏田は再び１ターン目《査問長官》からゲームを始め、今度はそれを盤面に残すことができた。続けて３ターン目に《機知の勇者》を繰り出すと、４ターン目には《ゼンディカーの同盟者、ギデオン》を唱える。

　しかしこれは冨澤の《不許可》を受けて着地せず。それでも《査問長官》の能力で藏田の墓地は十分に肥えており、彼はさらに《スレイベンの検査官》を盤面に加えて攻め込む。

　しかし冨澤が放った《天才の片鱗》を《否認》で対処した藏田だが、続く《ヒエログリフの輝き》は対処できず。手札を充実させた冨澤は、ここから反撃に出る。

　藏田の攻撃で残りライフ10点となった冨澤。続く藏田の《サヒーリ・ライ》に対応して《天才の片鱗》を放つと、引き込んだ《否認》でそれを打ち消した。返しのターンに《氷の中の存在》と《竜使いののけ者》を盤面に展開し、藏田が《復元》から繰り出した《王神の贈り物》にも《削剥》を当てる。

　迎えたターン、冨澤はドラゴン・トークンを生成するとターン・エンド。藏田は《発明の天使》を展開し、クリーチャーを横に広げる。しかし冨澤はさらなる《天才の片鱗》を放ち、ドラゴン・トークンによる盤面のアドバンテージに加えて手札のアドバンテージも掌握した。

　意を決して攻撃に向かった藏田だが、ドラゴンが大きな壁となって立ちはだかる。冨澤のライフは残り８点だが、それを削り切るのはあまりにも難しい。

　その後２枚目の《王神の贈り物》が再び《削剥》を受けると、藏田は「負けました」とカードを片付けたのだった。

藏田 0-2 冨澤