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日本選手権11

決勝: 石田 龍一郎(愛知) vs. 藤本 知也(大阪)
歴代日本王者に名前を連ねるのは、先ほどまで座っていた森や、世界基準の大礒、圧倒的安定感で成績を残し続ける中村と、少し名前を挙げてみただけでも十分過ぎるほどに、確かな腕を持った面々だ。
また、日本選手権での準々決勝敗退率「4分の4」の世界王者・三原が、ジンクスを破って準決勝へと駒を進めた。
反対側のブロックを見れば、絶望的とすら思えたオポーネントマッチパーセンテージを覆し、TOP8に入った井川が、これまた絶望的と思われた準々決勝での玉田との激戦を制した。
彼らに勢いを感じたし、彼らは実績を持っているし、「あぁ、井川と三原が決勝をやるのか。」なんてことを少し考えていたのだけど、トーナメントに残っている人数が最後の2人となった時に、そこに彼らの名前はなかった。
では、決勝戦を行う、フィーチャーテーブルに座る二人は、弱いのか?
愚問である。
石田は、自らが持つ豪運を最大限引き出せる、「ブン回り重視の前のめり型」の白単《鍛えられた鋼》という、メタゲームだけでなく、自らの特性に合ったデッキをきっちりと選択して、スタンダード・ラウンドを8-0と、無敗で駆け抜けた。
運という要素を絶対に無視することができないマジックというゲームで、自分の持つ運を信じ、動きにムラがあることは否めないデッキを見事に操って、強敵を打倒してきたのだ。
大阪の藤本は、師・藤田 剛史の作った白緑ビートダウンで、前日予選を突破し、その勢いのままに、決勝へと駒を進めてきた。この4日間での彼の成績は、18勝3敗という、圧倒的なものである。スタンダードのみに言及するのなら、14勝1敗。彼のデッキが、日本が誇るデッキビルダー藤田剛史が作ったということは、まぎれもなく、彼の持つアドバンテージだろう。だが、その下駄を脱いだとして、彼に確たる地力が無ければ、この圧倒的な成績はあり得ない。
彼らは、間違いなく強いのだ。
だが、まだ一つだけマッチが残っている。"日本王者"という栄誉は、一人にしか与えられない。
生涯色褪せないであろう、日本王者という肩書を手にすることができるのは、果たしてどちらなのか?
Game 1
軽やかに親指を立てて、もはやこの3日間で日本中に知らしめたのではないかと思われる豪運を、いかんなく発揮しそうなキープ宣言をした石田。対する藤本は、大きく悩んでキープ。 先攻の石田、1ターン目に《メムナイト》《羽ばたき飛行機械》《信号の邪魔者》というロケットスタート。対する藤本は《極楽鳥》をプレイ。 2ターン目、石田は《激戦の戦域》をセット。《オパールのモックス》からの《急送》で《極楽鳥》を即退場。《激戦の戦域》によって、2ターン目にして6点クロックという、レガシー等と比較してもなお非常識なほどの盤面を創り上げる。 出鼻を挫かれた藤本は《巣の侵略者》を出してターンを返すことしかできない。
in自らの得意とする、ロケットスタートで勝利した石田。 対する藤本は、石田のゲームスピードについていきながら、自分の得意とするターンまでゲームを引っ張るために、マナブーストからの《酸のスライム》《ワームとぐろエンジン》《大修道士、エリシュ・ノーン》や、各除去カードを使いながらの、コントロールデッキ然とした立ち回りが要求される。
1《忍び寄る腐食》
2《忘却の輪》
out
1《刃の接合者》
1《刃砦の英雄》
1《出産の殻》
Game 2
互いにマリガンはなし。 1ターン目にマナ加速ができない藤本に対し、《平地》セットランドから、《信号の邪魔者》《羽ばたき飛行機械》が2体。 だが石田はターンを終了する素振りを見せず、さらに手札に手をかけ、キャストするのは《メムナイト》をさらに2体。1ターン目にして初手から6枚を使い、6点クロックを形成。

Game 3

Game 4
土地5枚と《きらめく鷹》2枚という、どうにもかみ合わないハンドを、初めてマリガンする石田。 次の6枚は、《きらめく鷹》2枚に《鋼の監視者》《鍛えられた鋼》、《平地》《激戦の戦域》と、必要なものは揃っているものの、序盤からのプレッシャーをかけられない手札を嫌い、マリガン。 王手をかけられたこの一番で、初めて彼の運に陰りが見える。 5枚と少しさみしくなった手札をキープし、《メムナイト》、オパールのモックス/Mox Opal》《平地》と展開してターンエンド。ダブルマリガンながらも、その後の爆発を予感させるスタートを切る。 藤本は土地を置くのみでターンを終了。 石田は2枚目の土地を置き、《きらめく鷹の偶像》をプレイし。《メムナイト》を静かにレッドゾーンへ。対する藤本は自らのターンで少し悩んで、《水蓮のコブラ》を展開するのだが、これは《急送》されてしまい、出鼻を挫かれてしまう。 藤本の勝利の鍵となるクリーチャー《水蓮のコブラ》を、テンポを全く失わずに退けることに成功した石田。これにデッキが応え、《磁器の軍団兵》をトップデッキ。 これを展開して、クリーチャー化した《きらめく鷹の偶像》と《メムナイト》がレッドゾーンへと送り込まれる。藤本のライフは16となり、石田の盤面には6点分のクロック。ダブルマリガンとは思えない展開で、ゲームの主導権を握る石田。 藤本は《未達への旅》をプレイし、《磁器の軍団兵》を追放するのだが、《水蓮のコブラ》を対処されてしまったからなのか、対応が後手後手になってしまう。 石田のセットした《激戦の戦域》により、クロックは5点と危険水域まであがり、藤本のライフは11。さらに《羽ばたき飛行機械》が戦線に追加される。デッキの爆発力と、回避能力を持ったクリーチャーがいることを考えれば、全く油断ができない盤面となる。 何とか飛行持ちのクリーチャーを対処したい藤本、祈るように、力を込めてドローするのだが、ライブラリは藤本に味方しない。根本的には解決しない、《刃の接合者》をプレイするが、《羽ばたき飛行機械》《きらめく鷹の偶像》を止めることができない。 藤本の手札には3枚の《酸のスライム》が控えており、アンタップインの緑マナ源さえ引くことができれば、上空のクリーチャーを丁寧に除去していくことができる。 今引けば、まだ間に合う。ここで引けば、王手をかけた、日本王者の栄冠が自らのものとなる。アンタップインの緑マナ源は、6枚。十数パーセントの確率で、日本選手権で優勝ができる。 この、高いとも低いとも言えない確率に懸けて、もう一度、先ほどは叶わなかった、緑マナを求めてライブラリトップを手札に加える。
Game 5
月並みな言葉だが、日本選手権2011の、まさに最後のゲーム。 互いに少し悩んで、キープを宣言。 土地を置いて、ターンを返す藤本。後手の石田のファーストドローは、《鍛えられた鋼》。この3日間、幾度となく、対戦相手を打ち砕いてきたであろうこのカードが、ライブラリのトップに眠っていることに、何か運命を感じる。 そして、当然、ライブラリのトップを見ずにキープを宣言しているのだから、石田の展開はキレがいい。《メムナイト》《きらめく鷹》《オパールのモックス》と展開してターンを終了。 2ターン目、《水蓮のコブラ》という白緑ビートダウンのベストムーブで応える藤本。この、爆発力の源泉が生き残るか否かで、藤本のゲームプランは大きく変わるが、これは石田、自らのターンに入って、何の迷いもなく、《墨蛾の生息地》から出したマナで自らをクリーチャー化し、金属術を達成。《急送》で《水蓮のコブラ》を葬る。アタックして、3点のダメージを与える。 藤本は、《刃の接合者》をプレイ。地上はがっちりと、3/3先制攻撃のゴーレムが防衛線を作る。 石田はここで大きく悩む。 彼が決定したプランは、2枚目となる《墨蛾の生息地》をプレイ。これを起動して金属術を達成、《オパールのモックス》を目覚めさせて《鍛えられた鋼》を設置。 アタックする《きらめく鷹》は強化されないものの、追加の《メムナイト》プレイ。地上はゴーレムトークンに固められているものの、3/3の《墨蛾の生息地》2体で一気にゲームを決めるプランを選択する。 藤本に突き付けられた、残り時間は2ターン。《酸のスライム》をはじめとする、《鍛えられた鋼》か《墨蛾の生息地》に干渉できるカードを引かない限り、勝利はない。 1ターンでも猶予を伸ばし、勝利をつかみ取るために、藤本はここで大きく悩む。 後手に回ってしまった藤本が選択したのは、厳しいながらもダメージレースを行いながら、何とか解決策を引くというもの。ゴーレムトークンでアタックして、《野生語りのガラク》をプレイ。ビーストトークンを生成して、地上の陣容を厚くする。 だが、対する石田は、《墨蛾の生息地》を2体とも起動して《きらめく鷹》を《野生語りのガラク》に、《墨蛾の生息地》でアタックして、依然として主導権を握りながら、藤本に瞬時に毒を6つ与え、王手。 ミラディンの傷跡ブロックでスタンダードによみがえった、毒というメカニズムでプレッシャーをかけられている藤本。2枚目の《野生語りのガラク》と《極楽鳥》をプレイして、何とか、ブロッカーを用意して、ライブラリトップに、望みをかける。 石田は、目前に迫った、日本王者への道を、絶対に踏み外さないように慎重に、何度も盤面を確認する。 2枚の《墨蛾の生息地》が、またしてもクリーチャーへと変貌を遂げ、藤本へと襲い掛かり、《極楽鳥》を毒死させながら、藤本自身へも、9つ目の毒カウンターを与える。 藤本のターン、祈りなのか、記憶をたどる作業なのか、天を仰いで少し時間をかけてから、ゆっくりと、ドローをする。 そこに、この盤面を打開するカードがあるわけもなく、 藤本は、逡巡の後、石田の勝利を祝福する握手のために手を差し出す。 それを受けて握り返し、なおも信じられないという表情で、
石田は天に拳を突き上げるのだった。
石田 3-2 藤本
自らのドローを信じて、勝ち筋に一番近い最善手を選び続けた、若き新星が、日本王者の栄冠を手にした。
この日本選手権優勝で、プロツアーへの初めての参加権利を獲得した、石田。
即ち、プロプレイヤーとしてのキャリアをスタートさせたのである。
Conguraturation! Ryuichirou Ishida!!!RESULTS 本大会の対戦結果・順位
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