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マジック:ザ・ギャザリング ジャパンオープン2023
決勝:中道 大輔 vs. 名出 和貴 ~忠義 vs. 執念~
578名の参加者も、ついに残すところあと2人となった。
これまでの戦いやトップ8デッキリストを見てもわかるように、最新セット『エルドレインの森』はスタンダード環境を明確に塗り替えた。
その要因の一つは、かつて《砕骨の巨人》や《恋煩いの野獣》が当時のスタンダードを席捲したのと同じように、1枚で2枚分の働きをする当事者カードのカードパワーにあるだろう。
そして決勝戦は奇しくも、そんな『エルドレインの森』の当事者カードのカードパワーを最大限に発揮せんとするアーキタイプ同士の決勝となった。
中道 大輔。グランプリ・千葉2019優勝に加えて日本選手権2021FINALでも優勝と華々しい戦歴を持つ強豪にしてマジック歴27年の超古参プレイヤーは、もう1年半前の出来事にもかかわらず、その日本選手権2021FINALでも相棒となり自らに勝利をもたらした「白単アグロ」のことを忘れてはいなかった。
相棒として選択する決め手は、手に馴染むかどうかだ。「最大の理由は白単アグロに勝たせてもらったから今回も使用しました」と語ったほどの「白単アグロ」への忠義が中道にはある。
名出 和貴。2017-18シーズンは最多のプレインズウォーカー・ポイントを獲得したほどに世界各地のグランプリを飛び回っていたほどの情熱をマジックに捧げていた元シルバーレベル・プロが、海外武者修行で磨いた勝ち方と勝利の味を久しぶりにトーナメント参加で思い出したかのように目覚ましい活躍を見せた。
勝利のためには、デッキタイプにこだわりは持たない。「リスト公開性の長丁場のトーナメントだったので、丸いミッドレンジを持ち込みました」と語ったほどの勝利への執念が名出にはある。
中道も、名出も、いずれもこの日本公式ウェブサイト上にインタビューが残っているほどのマジック歴を持つプレイヤーであり、海外プロツアーに出た経験も持つ、名の知れた強豪だ。
だが、勝者は常にたった1名。はたして勝つのは忠義か。それとも執念か。
マジック:ザ・ギャザリング ジャパンオープン2023。その決勝戦が、ついに幕を開けた。
ゲーム 1
先攻の名出が土地5枚の手札をマリガンすると、今度は緑マナが出ない土地内容。それでもダブルマリガンよりマシとキープするが、中道の《離反ダニ、スクレルヴ》に対して現状の手札で数少ないプレイできるカードである《執念の徳目》を早速合わせざるをえない立ち上がりとなる。
しかも結局緑マナが出る土地も引けず、中道が送り出した《呪文書売り》に対しては2枚目となる《ミシュラの鋳造所》を置いてターンを返すことしかできない。続く《銅纏いの先兵》に対しては《呪文書売り》を《切り崩し》してライフを守るが、なおも返すターンに《苔森の戦慄騎士》の出来事側を唱えてもさらなる土地にアクセスすることができず、ターンエンドとなってしまう。
この隙に中道は再び《呪文書売り》を展開し、2マナを構えたまま2点アタックでターンを返す。
対してなおも土地が引けない名出は、それでも《苔森の戦慄騎士》の出来事側のもう1ドローでようやく《死天狗茸の林間地》を引き込み、《苔森の戦慄騎士》をブロッカーに立てることに成功する。
だが、中道はそのエンド前に《忠義の徳目》の出来事側で騎士・トークンを生成すると、自分のターンに追放領域から《忠義の徳目》を着地させる!
返す名出は《グリッサ・サンスレイヤー》をブロッカーに立てるが、中道は《骨化》でこれを即座に追放。さらに《呪文書売り》で自身を強化してのフルアタックに対し、《銅纏いの先兵》だけは《苔森の戦慄騎士》と相打ちにするも、8点を受けて早くも残りライフは10。さらに《スレイベンの守護者、サリア》までも戦線に追加されてしまう。
《黙示録、シェオルドレッド》を出してはみるものの、《ミシュラの鋳造所》起動からのフルアタックで、ぴったり10点のライフを削り切られてしまった。
かくして圧巻の攻勢を見せた中道の忠義が、まずは1ゲームを先取する。
中道 1-0 名出
ゲーム 2
再び先攻となった名出だが、今度はダブルマリガンの憂き目に見舞われてしまう。それでも《徴兵士官》に続く《銅纏いの先兵》には《喉首狙い》を合わせ、《墓地の侵入者》で戦線を止める上々の展開を見せる。
それに対し中道も、《銅纏いの先兵》を出して3点アタックからの《有望な信徒》でトップスピードの展開。
だがここで名出のサイドカード、《危難の道》が突き刺さる!1対3交換でダブルマリガン分のアドバンテージを取り返す。
しかし中道も《輝かしい聖戦士、エーデリン》を展開して簡単には引き下がらない。一方名出の手札のスペルは早くも底を尽き、「夜」にすることで《墓地の侵入者》を戦線を止める4/4の壁とする。
だが、なおも中道は《墓地の侵入者》の「護法」の上から《軍備放棄》!《骨化》を捨ててまでも《輝かしい聖戦士、エーデリン》の道を開け、なおも第2メインで手札を空にしながら《婚礼の発表》を設置するビッグプレイを見せる。
それでも名出はここでトップデッキした《執念の徳目》で人間・トークンを除去。盤面には6マナ、ライフ20点。《輝かしい聖戦士、エーデリン》のクロックと7枚目の土地、どちらが早いかという状況を作る。
対して中道も攻め手を緩めない。《輝かしい聖戦士、エーデリン》が生成した人間・トークンは《ミシュラの鋳造所》に阻まれながらも、《婚礼の発表》の2枚目を設置し、爆発的にクロックを増加させにかかる。
しかし中道が《有望な信徒》を送り出したところで、戦闘開始時に名出がトップしていた《喉首狙い》で《輝かしい聖戦士、エーデリン》を除去すると、風向きが変わってくる。
そしてついに名出が7枚目の土地を引き込み、満を持して《執念の徳目》が設置される!
ただ、返すターン5体による10点アタックを受けて名出の残りライフは8点。エンド前に《婚礼の発表》の2枚目も変身し、パワー3が5体という恐るべき盤面で名出にターンが回ってくる。間に合うか。
ひとまずアップキープに《輝かしい聖戦士、エーデリン》を蘇生しつつ《開花の亀》を召喚し、《ミシュラの鋳造所》をタップ状態で釣りあげてターンエンド。できることはすべてやった。あとは祈るしかない。
一方、待っていても《執念の徳目》で状況が悪くなるだけな中道は迷わずフルアタック。名出は《ミシュラの鋳造所》まで総動員してのブロックで残りライフ2点まで追い詰められる。
この局面で、はたして中道の側にクリーチャーの追加は……ない!《ミシュラの鋳造所》をセットするのみでターンを終える。
返すターン、名出の《執念の徳目》が相打ちした《開花の亀》を釣りあげ、さらに《下水王、駆け抜け侯》がブロッカーに立つ。クリーチャーの数は、ついに名出が上回った。
こうなると2点がどこまでも遠い。中道の「白単アグロ」には、ここまで完全に固められた盤面から2点を削る飛び道具は存在しない。
かくしてダブルマリガンでも諦めない名出の執念が、1ゲームを取り返した。
中道 1-1 名出
ゲーム 3
先攻の中道が《銅纏いの先兵》からの《輝かしい聖戦士、エーデリン》という展開。対して名出は《眠らずの小屋》を2ターン連続処理しつつ、《銅纏いの先兵》に《切り崩し》を当てる立ち上がり。
さらに中道が《有望な信徒》を出しての戦闘フェイズに入ったところで《輝かしい聖戦士、エーデリン》にも《喉首狙い》を当て、ライフ20点をキープする。
だが、《苔森の戦慄騎士》を出しつつ2マナを立たせた名出に対し、エンド前に《忠義の徳目》の出来事側で騎士・トークンを生成した中道が、さらに自ターンの《軍備放棄》で《苔森の戦慄騎士》を除去しながら《呪文書売り》を召喚すると、戦闘に入る前に《呪文書売り》に《喉首狙い》を打たざるをえず、名出の完璧な防御に綻びが生まれはじめる。
なおも名出は《グリッサ・サンスレイヤー》を召喚して防御に立てるが、ここで中道は完璧な解答となる《銅纏いの先兵》+《骨化》!
5点アタックで名出のライフは残り14点。返す名出は《墓地の侵入者》を出し、ライフを回復しつつ反撃の隙を窺うしかない。
しかし、ここで中道はさらに《救出専門家》で《銅纏いの先兵》を蘇生!
強化を受けられない騎士・トークンは残して、4/3の《有望な信徒》と3/2の《銅纏いの先兵》の2体のみアタック。これに対し名出は《銅纏いの先兵》と《墓地の侵入者》を相打ちさせるかどうか悩むが、結局スルーして残り8点。ここまで押し込まれたなら、解決策はサイドカードの《危難の道》しかないという判断だ。
MTGアリーナへの祈りを込めてドローする名出……だが、ドローは《切り崩し》。ターンエンドするしかない。
返す中道は5枚目の土地をセットしながら《ミシュラの鋳造所》を起動し、今度こそフルアタック。これに対して名出は《眠らずの小屋》を起動してブロッカーに立てつつトップした《切り崩し》を《ミシュラの鋳造所》に当て、どうにかライフ3点を残す。
今度こそ、ここしかない。ギリギリまで耐え抜いた勝利への執念が、名出にもたらしたもの。
それは。
《苔森の戦慄騎士》だった。出来事側で使用した段階で、たとえ《危難の道》で中道の場を一掃できたとしても中道の場にある2枚目の《ミシュラの鋳造所》によって詰んでしまう。
それでも、《苔森の戦慄騎士》はここまで名出に幾度も勝利をもたらしたカードであり、 《苔森の戦慄騎士》がいたからこそ名出がここまで勝ち上がれたことには違いないのだ。
そう、つまり。
最後に勝ったのは、騎士の忠義だった。
中道 2-1 名出
クリーチャーの展開順。《呪文書売り》が絡んだマナの使い方。正確なダメージ計算。占術の判断。サイドインアウト。どれをとっても中道の判断は常に精確で、リスクリターンのバランスが精緻にとれたものだった。
白単というデッキは本体火力やコンボなどの飛び道具のないビートダウンゆえに、ダメージの取りこぼしやわずかなテンポロスも許されない。そんな縛りが、2日間15回戦という長丁場にあっても中道の集中力を極限まで研ぎ澄まし続けた。
それはもちろん、27年というマジック歴によって誰よりも蓄積された経験則を持ち、局面を似たシチュエーションに変換して細かな情報入力を脳内で省略できる中道だからできたことだ。
そして。
そんな非凡な使い手である中道にだからこそ、デッキも忠義をもって応えてくれたのだろう。
マジック:ザ・ギャザリング ジャパンオープン 2023、優勝は中道 大輔!おめでとう!!
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