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マジック:ザ・ギャザリング ジャパンオープン2023
マジック:ザ・ギャザリング ジャパンオープン 2023 予選ラウンド メタゲーム・ブレイクダウン
スタンダードは、未知の領域に突入した。
つい先日、9月8日金曜に新セット『エルドレインの森』が発売となったわけだが、先だって発表されていたローテーションの変更により、いずれのセットもスタンダード落ちすることなく、カードプールに単純に追加されたにとどまったからだ。
これにより9月17日現在、スタンダードの使用可能セットは『イニストラード:真夜中の狩り』『イニストラード:真紅の契り』『神河:輝ける世界』『ニューカペナの街角』『団結のドミナリア』『兄弟戦争』『ファイレクシア:完全なる統一』『機械兵団の進軍』『機械兵団の進軍:決戦の後に』『エルドレインの森』の10セットにまで膨れ上がっている。
収録枚数が少ない『機械兵団の進軍:決戦の後に』は1セット分と数えられるか微妙にしても、これまで8セットが最大だったスタンダードのカードプールが、丸々1セット分以上拡張されていることになる。マナベースも、フィニッシャーも、コンボも、かつてないほどに豊潤で、このカードプール内で組めるデッキの可能性がどこまで広がるのか、全く予測がつかない。
そんな未知のスタンダードを早速楽しめる舞台が、MTGアリーナ上で昨年に引き続き開催されるこのマジック:ザ・ギャザリング ジャパンオープン 2023というわけだ。
優勝賞金50万円を目指すべく集まったプレイヤーの数は総勢578名。この大舞台に、参加者たちはどのようなデッキを用意してきたのか。ここではデッキリスト公開制により既に公開されている参加者たちの初日通過デッキリストを見ながら、本大会のメタゲーム・ブレイクダウンをお届けしよう。
マジック:ザ・ギャザリング ジャパンオープン 2023 予選ラウンド メタゲーム・ブレイクダウン
デッキ名 | 使用者数 | 割合 |
---|---|---|
5色ランプ | 78 | 13.5% |
ゴルガリ・ミッドレンジ | 65 | 11.3% |
エスパー・ミッドレンジ | 52 | 9.0% |
赤単アグロ | 50 | 8.7% |
ディミーア・ミッドレンジ | 32 | 5.5% |
エスパー・コントロール | 30 | 5.2% |
白単アグロ | 23 | 4.0% |
ナヤ・トークンズ | 19 | 3.3% |
スゥルタイ・ミッドレンジ | 16 | 2.8% |
グルール・アグロ | 14 | 2.4% |
青単テンポ | 10 | 1.7% |
グリクシス・ミッドレンジ | 9 | 1.6% |
オルゾフ・ミッドレンジ | 9 | 1.6% |
ラクドス・アグロ | 9 | 1.6% |
その他 | 162 | 28.0% |
合計 | 578 | 100.0% |
※使用者数8名以下のデッキは「その他」に計上
※「5色《アラーラへの侵攻》コンボ」は「5色ランプ」に統合して計上。「エスパー・レジェンズ」は「エスパー・ミッドレンジ」に統合して計上。
※数字にズレがある可能性あり。ご了承ください
「黒の秋」とも呼ぶべき事態に陥っていた昨年大会のメタゲームと比べると、アグロ・ミッドレンジ・コントロールが各色にわたって満遍なく存在し、多種多様なデッキが活躍する環境になっていることが見てとれるだろう。
5色ランプ/5色《アラーラへの侵攻》コンボ
4《森》 3《平地》 1《島》 1《沼》 1《山》 4《ジェトミアの庭》 4《スパーラの本部》 4《ジアトラの試練場》 1《耐え抜くもの、母聖樹》 2《ミレックス》 -土地(25)- 4《装飾庭園を踏み歩くもの》 3《怒りの大天使》 4《偉大なる統一者、アトラクサ》 -クリーチャー(11)- |
4《太陽降下》 4《群れの渡り》 3《豆の木をのぼれ》 4《骨化》 4《力線の束縛》 1《アイレンクラッグ》 4《ゼンディカーへの侵攻》 -呪文(24)- |
2《ティラナックス・レックス》 1《人狐のボディガード》 1《金属の徒党の種子鮫》 1《沈黙を破る者、スラーン》 3《黄昏の享楽》 2《軽蔑的な一撃》 2《否認》 2《執念の徳目》 1《羅利骨灰》 -サイドボード(15)- |
「5色ランプ」は前環境の時点で既にコンセプトが完成していた強力なアーキタイプだったが、《豆の木をのぼれ》を獲得したことでさらにデッキパワーを底上げすることに成功した。《力線の束縛》とのシナジーはモダン級で、固め引けば手札のロスなく驚異的なテンポを獲得できる。
後述する5色《アラーラへの侵攻》コンボの台頭を受け、「エスパー・ミッドレンジ」が活躍している本大会では若干の向かい風だった点が否めないものの、隙が大きい大技のコンボ一発に頼るよりも、まだしも軽量除去やライフ回復で対戦相手を揺さぶれるこちらの形の方が勝機が出てくる。前環境からの経験も生かしやすいため、手に馴染んだ選択をしたプレイヤーも多かったようだ。
1《平地》 1《島》 1《沼》 1《山》 3《ジェトミアの庭》 3《ラフィーンの塔》 3《スパーラの本部》 3《ジアトラの試練場》 1《ザンダーの居室》 1《憑依された峰》 1《難破船の湿地》 1《嵐削りの海岸》 4《ラノワールの荒原》 1《低木林地》 1《ヤヴィマヤの沿岸》 1《天上都市、大田原》 -土地(27)- 4《木苺の使い魔》 1《機械の母、エリシュ・ノーン》 4《墓所の冒涜者》 4《ファイレクシアの肉体喰らい》 2《原初の征服者、エターリ》 1《偉大なる統一者、アトラクサ》 -クリーチャー(16)- |
1《喉首狙い》 4《群れの渡り》 4《力線の束縛》 4《執念の徳目》 4《アラーラへの侵攻》 -呪文(17)- |
4《鏡殻のカニ》 3《有角の湖鯨》 1《強情なベイロス》 1《機械の母、エリシュ・ノーン》 1《沈黙を破る者、スラーン》 2《神の乱》 1《太陽降下》 1《向上した精霊信者、ニッサ》 1《大群退治》 -サイドボード(15)- |
また、デッキ内の4マナ以下のカードを4枚の《木苺の使い魔》+1枚までに絞ることで《アラーラへの侵攻》から確定で《木苺の使い魔》の出来事側を唱えるコンボが前週にMagic Online上のイベントで2日連続で活躍していたことを受け、今大会でも注目の的となった。
わずか5マナの《アラーラへの侵攻》1枚からとんでもない盤面につながるのは圧巻で、エフェクトや効果音も相まってMTGアリーナでコンボが決まった時の気持ちよさは垂涎だが、ネタバレしてから1週間後の本大会では、話題の中心になりすぎてしまったためか、《かき消し》や《スレイベンの守護者、サリア》をはじめとしたナチュラルな対策を搭載したデッキをそもそも選択したプレイヤーが増加する一因を作ってしまい、あまり気持ちよくさせてもらえていなかった印象がある。そんな中で2日目に勝ち残った精鋭とも呼ぶべき2名の使い手の活躍に注目だ。
ゴルガリ・ミッドレンジ
5《森》 5《沼》 4《死天狗茸の林間地》 4《ラノワールの荒原》 4《眠らずの小屋》 1《耐え抜くもの、母聖樹》 1《見捨てられたぬかるみ、竹沼》 2《ミシュラの鋳造所》 -土地(26)- 4《苔森の戦慄騎士》 2《しつこい負け犬》 1《辺境地の罠外し》 3《墓地の侵入者》 2《グリッサ・サンスレイヤー》 2《下水王、駆け抜け侯》 3《黙示録、シェオルドレッド》 2《開花の亀》 -クリーチャー(19)- |
2《切り崩し》 4《喉首狙い》 2《シェオルドレッドの勅令》 3《執念の徳目》 3《ヴェールのリリアナ》 1《向上した精霊信者、ニッサ》 -呪文(15)- |
1《辺境地の罠外し》 1《黙示録、シェオルドレッド》 3《強迫》 3《石の脳》 2《羅利骨灰》 2《ファイレクシアの闘技場》 1《切り崩し》 1《多元宇宙の突破》 1《向上した精霊信者、ニッサ》 -サイドボード(15)- |
『エルドレインの森』からのカードで誕生した新興アーキタイプの中でも最もポテンシャルの高さを示したのがこちらの「ゴルガリ・ミッドレンジ」で、何度もブロックできる上に小回りが利く《しつこい負け犬》こと《苔森の戦慄騎士》が、ありとあらゆるタイミングでマナの使い道に選択肢を作るため、そもそも1対2交換のカードが多いために何も考えずに使っても普通に強いのにやり込めばやり込むほどデッキポテンシャルが応えてくれるタイプのデッキだ。
《執念の徳目》が露払い兼フィニッシャーとして脇を固めるほか、《眠らずの小屋》も対処されづらい後詰めとしてこのデッキに欠かせない役割を果たしており、土地・クリーチャー・インスタント・ソーサリー・エンチャント・プレインズウォーカーとあらゆるカードタイプを駆使して相手を追い詰めるコンセプトには、マジックで強くなるために必要な要素がこれでもかと詰まっている。このデッキを使いこなせれば、もはや中級者は卒業だろう。
エスパー・ミッドレンジ/エスパー・レジェンズ
1《島》 3《ラフィーンの塔》 4《闇滑りの岸》 2《金属海の沿岸》 3《砕かれた聖域》 1《さびれた浜》 2《アダーカー荒原》 2《コイロスの洞窟》 1《地底の大河》 1《眠らずの城塞》 2《皇国の地、永岩城》 1《天上都市、大田原》 1《見捨てられたぬかるみ、竹沼》 2《英雄の公有地》 -土地(26)- 4《敬虔な新米、デニック》 2《フェアリーの黒幕》 4《策謀の予見者、ラフィーン》 2《下水王、駆け抜け侯》 3《黙示録、シェオルドレッド》 -クリーチャー(15)- |
2《切り崩し》 4《喉首狙い》 3《かき消し》 4《婚礼の発表》 3《忠義の徳目》 3《放浪皇》 -呪文(19)- |
1《第三の道のロラン》 1《復活したアーテイ》 2《強迫》 2《邪悪を打ち砕く》 2《軽蔑的な一撃》 1《エルズペスの強打》 1《切り崩し》 1《否認》 1《ギックスの命令》 1《一時的封鎖》 1《漆月魁渡》 1《放浪皇》 -サイドボード(15)- |
唯一の全勝者が使用していたのは、奇しくも昨年大会の優勝者と同様の「エスパー・ミッドレンジ」。「エスパー・レジェンズ」との違いは、《フェアリーの黒幕》《忠義の徳目》《放浪皇》という「展開のインスタント」と《喉首狙い》《かき消し》という「妨害のインスタント」の併用によって相手のプレイに裏目を作るべく、インスタントタイミングでの動きを重視している部分にある。
もしこのデッキ相手に4マナオープンでターンを返されたら、デッキ公開制ですら最適な行動を判断するのは難しい。いわんや非公開制での対戦をや、だ。逆にこのデッキを使うことで、「手札に何もなくても2マナを構えることが対戦相手の行動を変えうる」というマジックの面白い部分の一つを体験することができる。今大会での活躍で今後はメタゲームの中心となっていくことも予想されるため、試しておいて損はないデッキだ。
1《平地》 4《金属海の沿岸》 3《闇滑りの岸》 2《砕かれた聖域》 3《コイロスの洞窟》 2《地底の大河》 3《皇国の地、永岩城》 3《天上都市、大田原》 2《見捨てられたぬかるみ、竹沼》 4《英雄の公有地》 -土地(27)- 4《離反ダニ、スクレルヴ》 4《スレイベンの守護者、サリア》 4《フェアリーの黒幕》 3《敬虔な新米、デニック》 2《侵攻の伝令、ローナ》 4《策謀の予見者、ラフィーン》 3《輝かしい聖戦士、エーデリン》 1《下水王、駆け抜け侯》 2《黙示録、シェオルドレッド》 2《復活したアーテイ》 -クリーチャー(29)- |
2《喉首狙い》 2《かき消し》 -呪文(4)- |
2《第三の道のロラン》 2《救出専門家》 1《黙示録、シェオルドレッド》 3《切り崩し》 3《婚礼の発表》 2《軽蔑的な一撃》 1《エルズペスの強打》 1《喉首狙い》 -サイドボード(15)- |
一方、『エルドレインの森』からの新カードはほぼないものの、《離反ダニ、スクレルヴ》→《スレイベンの守護者、サリア》→《策謀の予見者、ラフィーン》という強力な嵌めパターンでトップメタと対等に渡り合っているのが「エスパー・ミッドレンジ」よりもかなり攻撃的な「エスパー・レジェンズ」。《スレイベンの守護者、サリア》は5色ランプのシェアが大きかった今大会ではかなりのキーカードになったことだろう。
相手の動きに干渉する部分が少ないように見えて3種の「魂力」土地を呪文のように使えるため、《策謀の予見者、ラフィーン》の「謀議」を含めてテクニカルな判断が求められる。時には圧倒し、時には繊細に立ち回る2つの側面を使いこなせればデッキのポテンシャルを最大限引き出せそうだ。
赤単アグロ
19《山》 1《反逆のるつぼ、霜剣山》 3《ミシュラの鋳造所》 -土地(23)- 4《僧院の速槍》 2《フェニックスの雛》 3《魅力的な悪漢》 3《血に飢えた敵対者》 2《ロノムの発掘家、フェルドン》 3《擬態する歓楽者、ゴドリック》 3《怪しげな統治者、スクイー》 -クリーチャー(20)- |
4《火遊び》 3《巨怪の怒り》 4《稲妻の一撃》 2《ナヒリの戦争術》 4《熊野と渇苛斬の対峙》 -呪文(17)- |
1《シヴの壊滅者》 3《レジスタンスの火、コス》 2《塔の点火》 2《石術の連射》 2《焦熱の交渉人、ヤヤ》 1《祭典壊し》 1《抹消する稲妻》 1《歪んだ忠義》 1《兄弟仲の終焉》 1《ナヒリの戦争術》 -サイドボード(15)- |
古からのアグロの代表格である「赤単アグロ」も、『エルドレインの森』によって大きく強化された。《擬態する歓楽者、ゴドリック》は3マナのクリーチャーでありながら「祝祭」によって4/4飛行速攻で殴りかかれるという圧倒的な攻撃力を持つほか、《巨怪の怒り》は実質トランプル付きの《巨大化》のような打点増強力でありながら、さらに怪物・役割・トークンの効果によって早期に唱えれば唱えるほど継続的な打点を稼げるので、《火遊び》《稲妻の一撃》に続くスペル枠として活躍が期待される。
また、《魅力的な悪漢》は序盤は2/2速攻、後半は手札交換、サイドボードは《レジスタンスの火、コス》へのマナ加速など、状況に応じたプレイングを選択できる。環境上位を狙えるポテンシャルは十分にありそうだ。
ディミーア・ミッドレンジ
4《島》 4《沼》 4《闇滑りの岸》 4《難破船の湿地》 4《地底の大河》 1《天上都市、大田原》 1《見捨てられたぬかるみ、竹沼》 2《ミレックス》 -土地(24)- 4《眠り呪いのフェアリー》 4《フェアリーの黒幕》 2《夢見る決闘者、オビラ》 2《フェアリーの荒らし屋》 3《ヨーグモスの法務官、ギックス》 2《黙示録、シェオルドレッド》 2《復活したアーテイ》 -クリーチャー(19)- |
3《フェアリーの剣技》 4《かき消し》 4《呪文どもり》 3《喉首狙い》 3《漆月魁渡》 -呪文(17)- |
-サイドボード(0)- |
『エルドレインの森』でフィーチャーされた種族「フェアリー」にフォーカスしたデッキタイプ。《眠り呪いのフェアリー》は早期に設置すればするほど目覚めが早くなるフェアリーで、その後の《フェアリーの剣技》や《呪文どもり》といったシナジーのあるカードの効果も増幅してくれる。
往年の《苦花》と《霧縛りの徒党》ほどの嵌めパターンはないものの、カウンターの役割が強く求められる環境では、選択肢に上がってきそうだ。
トップ64 メタゲーム・ブレイクダウン
そして初日の9回戦が終わり、578名が64名にまで絞られた結果は以下のようになった。
デッキ名 | 使用者数 | 2日目進出率 |
---|---|---|
エスパー・ミッドレンジ | 13 | 25.0% |
赤単アグロ | 11 | 22.0% |
5色ランプ | 8 | 10.3% |
ゴルガリ・ミッドレンジ | 8 | 12.3% |
白単アグロ | 3 | 13.0% |
ディミーア・ミッドレンジ | 2 | 6.3% |
エスパー・コントロール | 2 | 6.7% |
スゥルタイ・ミッドレンジ | 2 | 12.5% |
グルール・アグロ | 2 | 14.3% |
グリクシス・ミッドレンジ | 2 | 22.2% |
青単テンポ | 1 | 10.0% |
ボロス・トークンズ | 1 | 25.0% |
ボロス召集 | 1 | 12.5% |
アゾリウス兵士 | 1 | 12.5% |
アゾリウス・ミッドレンジ | 1 | 14.3% |
白単ミッドレンジ | 1 | 25.0% |
ゴルガリ・ランプ | 1 | 33.3% |
緑単プレインズウォーカー | 1 | 100.0% |
エスパー・リアニメイト | 1 | 100.0% |
スゥルタイ《アガサの魂の大釜》コンボ | 1 | 50.0% |
青単《アガサの魂の大釜》コンボ | 1 | 50.0% |
合計 | 64 | 11.1% |
※「エスパー・ミッドレンジ」内の「エスパー・レジェンズ」の割合はほぼ半数。
※「5色ランプ」内の「5色《アラーラへの侵攻》コンボ」の割合は2名のみ。
上位メタの中では「エスパー・ミッドレンジ」「赤単アグロ」が好成績を収めている一方で、「緑単プレインズウォーカー」や《アガサの魂の大釜》コンボなど気になるローグの姿もある。
はたして、優勝を掴むのはどのアーキタイプとなるのか。戦いの模様は、各対戦カバレージでご覧いただきたい。
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