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マジック:ザ・ギャザリング ジャパンオープン2022
決勝:卯月 祐至 vs. O. Nozomi ~パーフェクト・ゲーム~
マジックにおいて、完全なゲームなどというものは存在しない。完全なプレイヤーが存在しえないのとまた同時に。
何せ、勝率55%も出れば御の字で、勝率60%にも届こうものなら狂喜乱舞するというような世界に我々は生きている。
サイコロのたった一度の試行で6が出たからといって、「おお、このサイコロは他のサイコロと違って最強だ!」などとのたまう輩はいないだろう……人はそれを「上ブレ」と呼ぶ。
だが、勝率55%を繰り返した果ての強者も、ただの「上ブレ」による一発屋のフロックも、たった1回の勝利という結果を見ただけでは区別することができない。
だから我々は物語を見る。そのプレイヤーがどんな道のりを積み重ねてきたのか。どんな戦いの果てにここに立っているのか。
687名いた参加者が、たった2人に絞られるまでの物語を我々は知っている。The Finals 2019トップ4の卯月 祐至が、準決勝で持ち時間3分を切りながらも《邪悪を打ち砕く》にたどり着いたその苦闘を。その正体はどうやら某強豪レガシープレイヤーらしいO. Nozomiが、準決勝で決して恵まれた手札を与えられたわけでもないにもかかわらずグランプリ・チャンピオンである平見との同型対決を制することができたその手腕を。
ゆえに、我々は知っている。この戦いでどんな経過の果てにどちらが勝ったとしても、それは正しく実力どおりの結果を示すものであるということを。
この戦い。優勝賞金50万円のかかった大一番。『団結のドミナリア』発売に伴うスタンダード新環境の王者を決めるための、最も重要な一戦。
マジック:ザ・ギャザリング ジャパンオープン 2022、決勝戦。
この日の最後のゲームが、ついに始まった。
ゲーム1
先攻の卯月が《しつこい負け犬》スタートなのに対し、後攻のO. Nozomiは《勢団の銀行破り》を設置する立ち上がり。
だが3点アタックからのセットランドゴーで返した卯月に対してO. Nozomiは3枚目の土地が引けず、さらにメインで《勢団の銀行破り》を起動してもなお引けなかった結果、3ターン目にしてディスカードという憂き目にあってしまう。
一方の卯月はそんなO. Nozomiを尻目に《婚礼の発表》を設置して畳みかける。
O. Nozomiも返すターンにはようやく3枚目の土地を引き込み、《セレスタス》を設置して、いったんターンエンド。そして卯月が戦闘フェイズに入ったところで、《切り崩し》で《しつこい負け犬》を処理しにいく……が、「奇襲」による攻め手の継続を嫌ったこのプレイが裏目に出てしまう。
すなわち、卯月は対応して《放浪皇》![+1]能力で4/3になった《しつこい負け犬》は《切り崩し》の対象外となり、早くもO. Nozomiのライフは残り9点。
さらになおもO. Nozomiは返すターンにも4枚目の土地を引けず、《勢団の銀行破り》のドローも《冥府の掌握》で如何ともしがたい。
卯月のターンに唱えてみるも《かき消し》され、残りライフは5点。戦闘後には《放浪皇》[-1]による侍・トークン生成、さらに《婚礼の発表》が《婚礼の祭典》へと変身して、5/4、2/2、3/3で「X=3」の《食肉鉤虐殺事件》では間に合っていない盤面になってしまう。
しかも、いずれにせよこの局面で卯月が抱えている手札は《軽蔑的な一撃》である可能性が高い。ならばとそれを逆手にとるべく、夜状態の《墓地の大食い》を出すO. Nozomiだったが、これもタフネスが4であることによって逆に《邪悪を打ち砕く》されてしまい、瞬く間にO. Nozomiのライフはゼロを割ってしまうのだった。
卯月 1-0 O. Nozomi
ゲーム2
土地5枚に《隠し幕》《冥府の掌握》という手札を強気にキープしたO. Nozomiが、マリガンスタートながらも《しつこい負け犬》スタートの卯月に対して3ターン目の《暴き目》変身で攻め立てる。
だが、明らかになった卯月の手札は土地、土地、《婚礼の発表》《放浪皇》《夜明けの空、猗旺》というバランスが良い上に強力なもの。O. Nozomiは《放浪皇》を奪い去る。
ここから卯月は《婚礼の発表》、O. Nozomiは《セレスタス》を展開。返す卯月は《墓地の侵入者》を出して潜在的なクロックを増加させる。
卯月の戦線が伸びきったこの局面でO. Nozomiは《食肉鉤虐殺事件》を抱えており、「X=3」で《暴き目》を維持しながら盤面をリセットすることもできたのだが、先に見えている《夜明けの空、猗旺》を抜き去るべく《窃取》を唱える。そして結果卯月が引き直していた《放浪皇》を落とすことで、《食肉鉤虐殺事件》の最大バリューを狙いにいく選択をする。
だが返すターン、卯月が引き込んだのは《邪悪を打ち砕く》!盤面をたった一体で支えていた《暴き目》が打ち砕かれ、8点アタックと1点ドレインでO. Nozomiを一気に追い詰める。
さらにターン終了時に《婚礼の発表》を《婚礼の祭典》へと変身させながらのドローが、このゲームの趨勢を一気に決定づけた。
すなわち、《軽蔑的な一撃》トップデッキ! 思わずカードを手札で踊らせる動作から、卯月の嬉しさが伝わってくる。
はたして、手札確認後にまさかの二連トップデッキとは露知らないO. Nozomiは、プラン通り「X=4」の《食肉鉤虐殺事件》で盤面の一掃を目論むのだが、「グッドゲーム」のエモートとともにこれが打ち消されると、《婚礼の祭典》によって膨れ上がったクロックによる12点アタックが、速やかにラストゲームの幕を引いたのだった。
卯月 2-0 O. Nozomi
プレイヤーは完全でないがゆえに、完全に近づくための努力をする。
大会全体を通じて、卯月の長丁場にもかかわらず要所要所での的確なプレイングには感嘆させられることしきりだった。
最適なデッキ選択、プレイング、サイドボーディング……決勝戦でのあまりに出来過ぎとも言えるパーフェクト・ゲームは、それらを積み重ねた卯月だからこそたどり着くことができたサイコロの6の目とも言えるかもしれない。
だが今日という日を経た以上、もはや卯月をフロックと笑う者はいないはずだ。
この大会で勝つために卯月が積み重ねた努力の物語は、ゲームを目撃したすべての人々の記憶にこれから残り続けるだろうからだ。
マジック:ザ・ギャザリング ジャパンオープン 2022、優勝は卯月 祐至! おめでとう!!
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