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マジック:ザ・ギャザリング ジャパンオープン2022
準決勝:平見 友徳 vs. O. Nozomi ~マジックという名の沼~
マジックには沼がある。基本地形の《沼》ではなく、一度引き込んだ者を決して離さないという意味での沼が。
6年前、グランプリ・名古屋2016でグランプリ・チャンピオンとなり、今年の2月には日本選手権2021 FINALでもトップ8に入賞した経験を持つ平見 友徳も、そんな沼に引き込まれた1人だ。
対するO. Nozomiも、トップ8プロフィールによればマジック歴は『基本セット第5版』の頃から、つまり少なく見積もっても『基本セット第6版』が発売された1999年以前から13年以上にわたってプレイし続けているとのことで、こちらはもはや沼の一部になり果てていると言っても過言ではないかもしれない。
そんな2人の対戦は、皮肉にも「どちらがより深く沼に、そして《沼》に潜れるか」を決するに相応しい「黒単ミッドレンジ」の同型対決となった。
ただしO. Nozomiの側はトップ8デッキリストを見てもわかるように、《進化した潜伏工作員》の不採用であったり《セレスタス》を1枚差ししたりしているなど、一般的なリストに独自のアレンジを加えたものとなっている。
頭から爪の先までマジックという名の沼に浸かった者同士のミラーマッチ、絶対に譲れない準決勝が始まった。
ゲーム1
後攻の平見が1ターン目《進化した潜伏工作員》スタートなのに対し、マリガンスタートのO. Nozomiはそれでも引き込んだ《勢団の銀行破り》を2ターン目に設置すると、3ターン目も能力起動でまずはマリガン分の手札を補充する立ち上がり。対する平見も3ターン目には《勢団の銀行破り》を設置し、ミッドレンジの強みである短期決戦のテンポゲームと長期戦のアドバンテージゲームのどちらにも対応できる構えを見せる。
一方O. Nozomiの続く動きは芳しくなく、4ターン目も《勢団の銀行破り》をメインで起動してターンエンドと、「5枚目の土地がなく」「《絶望招来》が複数枚手札にある」ことを強烈に匂わせるムーブ。
これを見て平見は《進化した潜伏工作員》による2点アタック後に《不笑のソリン》を展開、[-2]能力を使用して吸血鬼・トークンを生成してターンエンド。《絶望招来》の影がちらついている以上、2マナ立っているところに貴重な《勢団の銀行破り》を「搭乗」してわざわざ《冥府の掌握》に晒しにいくようなリスクは犯さない。
対し、返すO. Nozomiはなおも5マナ目を引き込めない。手札を覗いてみると《絶望招来》《絶望招来》《黙示録、シェオルドレッド》《黙示録、シェオルドレッド》《不笑のソリン》《ヴェールのリリアナ》《墓地の侵入者》というヘビー級の内容で、やむなく意を決して《勢団の銀行破り》の3回目の起動で宝物・トークンと操縦者・トークンを出し、最低限5マナ目は確保しつつ引き込んだ《隠し幕》をブロッカーに立てる。
他方平見はまずは落ち着いて《不笑のソリン》[+1]で《勢団の銀行破り》を手に入れると、2体アタックからブロックされた《進化した潜伏工作員》には「接死」を付けて《隠し幕》を破壊しつつ、「《食肉鉤虐殺事件》X=3」のリスクがある《墓地の侵入者》はあえて出さずに《勢団の銀行破り》用のマナを構えてターンエンドすることで、《絶望招来》を誘いにいく。
ここで5枚目の土地を引き込んだO. Nozomiは注文通りの《絶望招来》。平見は吸血鬼・トークンと《不笑のソリン》を失うが、これは《絶望招来》と《不笑のソリン》との交換に2点ルーズと1枚ドローが付いたというくらいで、むしろ最小限の被害に抑えた形となる。
さらに平見はO. Nozomiの土地が寝たこのタイミングで《墓地の侵入者》を出して1点ドレインから《勢団の銀行破り》に「搭乗」し、《進化した潜伏工作員》と2体で攻撃。O. Nozomiが操縦者・トークンで《勢団の銀行破り》に「搭乗」したところで《冥府の掌握》を合わせ、一挙7点を叩きこむ強烈なカウンターでO. Nozomiのライフを残りライフ5点まで追い詰めることに成功する。
だが、平見が《絶望招来》を引けていない限り、まだO. Nozomiの側にも天秤の傾きを戻すチャンスが残されている。まずは《ヴェールのリリアナ》を出し、[-2]で《進化した潜伏工作員》を生け贄に捧げさせると、さらに《墓地の侵入者》を召喚してお返しの1点ドレインでターンエンド。
返すターンに平見は《進化した潜伏工作員》を出して間髪入れずに3/3にまでサイズアップさせると、《勢団の銀行破り》「搭乗」から《墓地の侵入者》と2体でO. Nozomiへとアタック。《墓地の侵入者》同士が相打ちとなりつつも操縦者・トークンをチャンプブロックさせ、さらに《進化した潜伏工作員》の能力でドローしてターンを返す。
一方O. Nozomiは2枚目の《絶望招来》で《進化した潜伏工作員》を処理しながら《しつこい負け犬》を召喚し、なおも《ヴェールのリリアナ》[+1]で平見の手札を攻め立てる。ここで《勢団の銀行破り》への「搭乗」要員がおらず、思うように攻めを継続できない平見は《不笑のソリン》を出して[+1]を使用、《冥府の掌握》を手に入れるのだが、気づけばライフは平見9点対O. Nozomi6点と互いに危険水域で、しかも攻め手が尽きかけている平見に対してO. Nozomiは序盤ヘビー級だった手札が功を奏してまだまだ余力を残している。
そして、ここからはO. Nozomiの反撃が始まる。2枚の《絶望招来》で広がった手札差を生かして《ヴェールのリリアナ》[+1]で平見の手札を締め上げつつ、《不笑のソリン》を出して[-2]で吸血鬼・トークンを生成。さらに《しつこい負け犬》でプレイヤーにアタックすると、第2メイン・フェイズに《黙示録、シェオルドレッド》を送り出す。
これには平見もたまらず《食肉鉤虐殺事件》「X=5」で盤面をリセットし、《不笑のソリン》[-2]で吸血鬼・トークンを生成してターンを返すが、O. Nozomiの《ヴェールのリリアナ》[-2]に対応して《勢団の銀行破り》の3回目を起動して操縦者・トークンを生け贄に捧げたところで、O. Nozomiの《食肉鉤虐殺事件》で結局トークンも対処されてしまう。
平見は再度《不笑のソリン》[-2]で吸血鬼・トークンを生成するが、O. Nozomiは《不笑のソリン》《ヴェールのリリアナ》をコントロールしている状態であり、追撃で送り出された《黙示録、シェオルドレッド》はエンド前《冥府の掌握》で破壊するもリソースを交換しているだけでも天秤はO. Nozomiの側に少しずつ傾いていく。
それでも、ここで平見に起死回生のチャンスが訪れる。《不笑のソリン》の[+1]能力で手札に加わったのが《道路脇の聖遺》!黒単というカラーリングでライフ損失なしで2枚ドローできる強力なトップデッキで、さすがにそろそろ《絶望招来》を引いてほしいとばかりに即起動するが、あにはからんやドローは《沼》2枚。やむなく吸血鬼・トークンの攻撃で《ヴェールのリリアナ》だけ落としてターンエンド。
一方O. Nozomiは《不笑のソリン》[-2]で吸血鬼・トークンを立てつつさらなる《黙示録、シェオルドレッド》を召喚。これも平見が放ったエンド前の《冥府の掌握》によって除去されるが、ライフは5対5、しかもいよいよ平見のリソースは本当の本当に打ち止めという状況。
続く平見の通常ドローも《沼》で、《不笑のソリン》の[+1]を起動してみるも見えたのは《ヴェールのリリアナ》。意を決して手札に加えて戦場へ、[-2]でO. Nozomiの吸血鬼・トークンを除去するが、平見の吸血鬼・トークンもお返しとばかりに《冥府の掌握》され、ライフは平見が2、O. Nozomiが3という状況。
そして折しもO. Nozomiの墓地には《しつこい負け犬》があった。
ライフ2点の状態で撃てる平見のインスタント除去は《切り崩し》と《魂転移》が1枚ずつ。しかも手札が4枚もあって、何もないなんてそんなことがあるのだろうか。それでも、O. Nozomiの側もいつ《絶望招来》を引かれるかわからないため、ここは覚悟を決めるしかない。意を決して、墓地からの「奇襲」!……そして平見の手札には、《沼》ばかりが並んでいた。
互いにすべてを出しきった総力戦の果てに、わずかライフ1点の差でO. Nozomiが超ロングゲームを制しきったのだった。
平見 0-1 O. Nozomi
ゲーム2
《沼》5枚に《しつこい負け犬》《ヴェールのリリアナ》という手札をマナフラッドのリスクは承知の上でキープした平見だったが、O. Nozomiが放った後手1ターン目の《強迫》によって《ヴェールのリリアナ》が抜かれ、2ターン目の《しつこい負け犬》も《冥府の掌握》で早々に対処されてしまう立ち上がり。
さらにタイミング良く引き込んだ《墓地の侵入者》から《しつこい負け犬》の「奇襲」につなげて攻めを継続しようとしたところで、なおも2枚目の《冥府の掌握》で《墓地の侵入者》をも捌かれてしまう。
それでも、O. Nozomiが《セレスタス》を設置した返しの《強迫》で《絶望招来》だけは叩き落とし、再びの《しつこい負け犬》「奇襲」でO. Nozomiのライフを10点まで削ったはいいものの、隣に見えている《黙示録、シェオルドレッド》がどうしようもない。
やがて《黙示録、シェオルドレッド》が着地すると、《セレスタス》との組み合わせでみるみるうちにライフを回復していく。対照的に、度重なる《しつこい負け犬》の「奇襲」で減っていた平見のライフはたった一度の攻撃を受けた時点であっという間に6点にまで落ち込んでしまう。
そして平見に残された最後のドロー。それは……?
無情にも、合計11枚目の《沼》!
かくして平見はマナフラッドという名のマジックの沼に飲み込まれてしまった。だが、こうした大一番での心が折れる敗戦、それに伴う悔しさこそが最終的にはより深い沼へと誘ってくるというのが、マジックというゲームが持つ中毒性なのだ。
平見 0-2 O. Nozomi
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